ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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大学へやって来たぞ。
さぁ、ズリル長官を捜せ(笑)。

告知通り、レディースメイドみたいな、秘書のテイルはオリキャラ二人目。
秘書役。身の回りの世話役はこの人担当。
ガンダルがタラン将軍みたいに四六時中、副官として側で勤めてくれれば楽だけどさ、そんな余裕はベガにゃ無いからね。
フルネームはテイル・テールって、今決めた。
肉親にツイン・テールとか居そうだね(笑)。


8

 俺がお忍びでベガ星工科大学に訪れたのは翌日だった。

 キャンパスは敷地は広く、瀟洒な建物がお洒落だ。

 俺は専用車(と言っても車輪は無くて、浮遊型)から外を見て嘆息した。学生達が和気藹々と青春を謳歌している。

 

「殿下、如何なさいましたか?」

「思えば、ぼくは学校に通えなかったからな」

 

 秘書であるテイルの言葉に苦笑して答える。

 この病弱な身体のせいで、この歳になるまで教育機関に通えなかったせいだ。

 教育は全て自宅学習。

 悔しいので鬼の様に勉強して(他にやる事無かったし、時間も潰せたから)、「王子は天才ですぞ」とか家庭教師に褒められたけどそれだけだ。

 目の前を「お兄ちゃーん」「はははっ、キリカは甘えん坊だなぁ」とか会話して歩いて行く若い兄妹とか見てると、普通のキャンパスライフを送れなかった事に嫉妬してしまいそうになる。

 

「今の男が工科大の天才……」

「ズリルか?」

「いえ、アラキ・ヒメノと言う男です。何でも冷凍光線を開発しているとか…」

 

 俺は耳を疑ったが、反射的に「では、あの妹はキリカか?」と尋ねてしまった。

 今は単なるロリだけど、成長すれば『グレンダイザー』に登場するコマンダー・キリカの面影が確かにある。

 こいつは思わぬ逸材を発見したぞ。

 

「えっ、確かに妹の名はキリカ・ヒメノですが、殿下はご存じなのですか?」

「さっきアラキが名を言ってただろう」

 

 と誤魔化す。確か、あの兄妹はベガ星人だったよな。ここに居るのも納得だ。

 成る程、この二人は早めに取り込む必要がある。

 後に調べたら、この二人は科学者としての素質は天才肌らしい。

 特に妹はまだ小学生なのに、大人顔負けの知識を有しており、先の見えない大天才として飛び級を果たしていた。

 

 この二人も俺専属の科学チームに引き入れる事を指示して、車は大学の建物に到着した。ここからはズリルに会う為に下車だ。

 ズリルへは俺、つまりベガ王子が訪れる事を事前に告げてある。

 建物内の貴賓室で待っている筈だ。

 

「居ませんね」

「うん。居ないな」

 

 テイルとの会話に、大学側の案内役をした学長が青くなっている。

 良い訳じみた「貴人と面会させるとの予定は伝えてあるのですが」と説明するが、貴賓室の何処にもズリルと思しき男は存在しなかった。

 

「貴人? ぼくの名は伝えなかったのかい」

「軽々しく口には出来ません。殿下が此処へいらっしゃると情報が漏れたら…」

 

 ふむ、それもそうか。

 

「遅れちゃってどうするのよ」

「どうせ、また、教授達のイヤミだよ。俺の才能にケチを付けるだけに決まっている」

「ズリルってば、すっぽかす気だったのね」

 

 廊下から足音と共に男女の会話が飛び込んで来た。

 

「ああ。君に見付からなきゃ、そうしてる。

 俺を呼び出した用事なんざ、どうせお説教だろうよ。ま、偉いさんだか何だか知らないが、すっぽかさなかっただけでも感謝して貰いたいな」

 

 シュンと自動ドアが開き、問題の男が現れる。

 成る程、こいつが後のズリル長官か。

 

「ズリル参りました!」

 

 ガンダルもそうだったが、やはり若い。

 眼帯は無く、薄汚い白衣を纏い、ひげ面にぼさぼさの頭。

 え、こいつ頭髪あったのか? いつも頭を変なキャップで覆ってたから禿げかと思ってたよ。こうして見ると新鮮だな。

 ズリルの隣にいるのは若い女。これには見覚えが無い。淡緑色の髪をぱっつんにして、やはり白衣を着ているが、こちらは白くて清潔だな。

 

「で、学長。今度は何の文句でありましょうや?」

「ズリル!」

 

 隣の女が諫めるが、当の本人は何処に吹く風。

 学長はゴホンと咳を一つすると、「呼んだのは私では無い。こちらのベガ殿下である」と告げて、俺の方を向く。

 

「殿下? ベガ姫でございますか」

「そうだ。姫では無く、王子だが」

「大した冗談だ。ベガ姫は病弱で、宮殿の中を歩き回るのが精一杯の筈。私をペテンにかけようとは、学長もお人が悪い」

 

 おいおい、本物だと思われてないぞ、俺。

 学長が「おいっ、不敬罪で死刑だぞ」と血相を変えるが、俺はそれを制して「あはははは」と笑い転げた。

 

「ズリル。円盤獣に関する君の論文を読んだがアレはユニークだな」

「はい、しかし、まだ机上の空論です。まずは試作し、理論を証明しないと始まりませんからな」

「結構。では試作機を作る許可を与えよう」

 

 ズリルは首を傾げる。まだ俺をベガ王子だと認識してないのだろう。

 隣にいる女は片膝を着いて臣下の礼を取っているが、ズリルの方は相変わらず不遜な態度で立ち尽くしているだけだ。

 

「と言っても、まずは軍の旧式機を下げ渡す。それを改造してみろ」

「なぁ、俺は夢を見ているのか。この小娘が本当にベガ殿下に見えてきたぞ」

 

 傍らの女に尋ねるズリル。

 女は立ち上がると、ズリルの横っ面を思いっきりひっぱたいた。

 

「痛い……夢では無いな」

「そうよ。本物のベガ殿下なのよ」

 

 まぁ、紆余曲折はあるが、俺はこれで科学担当の片腕を手に入れる事となる。

 さぁ、とにかく軍事改革のスタートを切る準備は出来たぞ。

 

 

〈続く〉    




キリカの兄ちゃんは名が不明だったので、「アラキ」とキャラデザ&作画担当の荒木伸吾氏の名を取りました。名字が「ヒメノ」なのは、その繋がりでやはり姫野美智女史からです。

しかし青田買いだな、ベガ王子(笑)。

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