これ、歌詞が1から3番まであるんだけど、ちゃんと登場する敵の正体をきちんと歌ってるんだよね。不知火一族。独立幻野党。そしてタイタニアン。
主人公の静弦太郎が格好いいんですよね。え、アイアンキングの人は脇ですよ(笑)。
生身+アイアンベルト一本(と爆弾)で巨大ロボだの、宇虫怪獣だのと渡り合い、しかも勝っちゃうんだから、少なくとも私的には、変身抜きの純地球人では一番強いお方ではないかと。
敵はどいつも個性的だった。しかし、タイタンからの宇虫人はともかく、後から考えれば日本を恨む先住民族の末裔や国家転覆を謀る革命集団が、大和政府の国家警備隊と戦うのはヤバイ内容だよね。そう、実は弦太郎って非情な政府の手先なんだよなぁ。
揚陸艇は着陸床に停船する事無く、直接、エアロック近辺に降下した。
十字形のどれが艦首だ判らないノーズ部分が伸びた。
これは本来は移乗戦闘用の物なのだろう。
我が青春の宇宙海賊船や総統府脱出艦が備えたチューブミサイルみたいな物で、敵艦の側面に取り付いて舷側に破孔を開け、強襲兵を中へ強行突入させる為の機構である。
ポーティングパイプ。言うなればローマ帝国の軍船が使っていた〝コルヴス〟の宇宙版である。
それがエアロックにぴたりと張り付く形で接続すると、ハッチが開放され、数人の人影が基地内へと入って来るのが見えた。
「……ま、まさか?」
その艦内から現れたと思われる、数人の男達を見たガンの声がかすれる。
最初、現れるのは当然、宇宙忍者みたいなワルガスダーの異星人かと思っていたからだが、姿を見せたのは裃にも似た服装。袴に帯びたソリッド。
顔に毒物避けのガスマスクを装着しているのが不気味だが、それは格好からして、明らかにオストマルク人だった。
「何故、ここに!」
彼らはゴーマン中尉に挨拶している様だが、こっちの無線変調が追いつかないので、果たして何を言っているのかは判然としない。
だが、もっと驚いたのはオストマルク人達がガスマスクを脱いだ時だ。
「叔父上!」
「おおっ、ドン・ランダム殿か!」
驚愕するシシ一同。
特に絶句し、二の句を告げない様な表情で呆然とするのはマグである。
戦闘を歩いていた男。恐らく、そいつの個人名。
ドン・ランダム。
確か、名義の上ではマグの叔父。しかして実体は実父である。
オストマルク大使館付きの外交武官でもあり、ワルガスダーの手に堕ちて、贋者と入れ替わったとの報告を受けていた男だ。
「贋者じゃ無いのか?」
俺は疑っていた。
ワルガスダーの揚陸艇から現れたのだから、その可能性は充分高かったからである。
「女神を刈るのは任せた」
これはゴーマンの肉声だ。
向こうがガスマスクを取ったので礼儀と言う事なのか、ゴーマンも素顔を晒した為に再びマイクが肉声を拾って来たんだ。
ドン・ランダムと思われる男は頷き、そして、大型の銃器みたいな物をゴーマンから渡される。
発射筒に一回り大きめの弾頭が差し込まれた、地球で言う所のパンツァーファウストかRPGみたいな、対戦車火器風の肩撃ち式の奴だ。
「早めに仕事を片付けよう」
「頼んだぞ。あの猿にはほとほと手を焼いているのでな」
「予備弾薬は?」
ゴーマンが部下に命令すると一頭のダビスタサイボーグがやって来て、自分が背負っている弾薬帯を取り外して渡す。ケンタウロスが背中の装備を取る為に身体を捻っているのが、なんだが間抜けな光景だ。
ランダムは受け取ると、合成樹脂製のベルトに棍棒状の弾薬が三本刺さっているのを確認した。
「三発か」
「生憎、それで全部だ。特殊な弾薬なのでこれ以上の用意は出来なかった」
ランダムは「何とかなる」と答えながら、弾薬隊を肩から掛ける形で装着した。
そして片手に火器。もう片手に抜き身のソリッドを手に隔壁方面へと歩き出す。
「叔父上は何をしようと……」
「アレは大使館員達でござるな」
「うむ、見知った顔も幾つかある。アムール、ウスリー……」
混乱しつつも、バク達は状況を整理しようと努力をしている様子だ。
マグだけは混乱状態から、未だ立ち直っていないが、ガンは「ワルガスダーとか言ったか、あやつらに操れているのか」と唸り、バクも「女神様に敵対する気では?」と危機感を募らせる。
「ぼくの所に届いた報告だと、大使館員達は贋者に入れ替えられているとの情報がある」
俺は手短に、これまであった事を連中に説明する。
殆どかいつまんだ話だが、この手の情報を入手していないシシ達には新鮮な物だったらしい。
マグなんかは「それじゃ、あそこの叔父上は贋者なんだな!」と目を輝かせるが、俺は「洗脳されているだけで、中身は本物かも知れないぞ」と警告すると、意気消沈してしまった。
単純に、不埒な贋者を叩き斬れば良いと思っていた様だ。
「ワルガスダーがゲルマであれば……」
「ん?」
バクが何か思い付いたようだ。
彼はマルクに伝わる古の神話を例に出して、「精神交換。或いは精神融合みたいな、邪悪な術を使っているかもでござる」を口にした。
「そんな物があるのかい?」
「あくまでも創世神話の中での記述でござるが……」
んな、『クトゥルフ神話の呪文じゃ有るまいし』とは思ったが、この世界にも呪術的文化がある事を思い出して沈黙する。
考えてみれば、俺がマルク関係で学んだ物は殆ど一夜漬けの上っ面な知識に過ぎないからな。
「それって、ゲルマが用いた技なのかい」
「ボディジャックと言う技でござる」
「タイタンから来た宇虫人みたいだな」
某特撮〝鉄の王様〟に登場する、仮面と帽子とマント姿のエイリアンを連想する。
確か、怪光線を浴びると怪獣化するんだったな。
マントを持った手を広げて走る独特な走り方で新宿の雑踏を駆け抜けたり、ビル街で巨大化する図は、アマゾンから来た野生児が新宿地下街を徘徊するのと同じ位シュールだった記憶がある。
「おっ、ドンがキーラへ向かうぞ!」
ガンの声に振り返ると、確かにランダムはダビスタ人の並ぶ扉の前に到達し、隔壁の向こうへと歩もうとしている。
先程まで勢い良く燃えていた火勢も、燃料投下が一段落した為に鎮火しつつある。
暫く、ランダムは更に火が弱まるのを待っていたが、頃合いと見たのか隔壁を跨いだ。
モニターを隔壁の向こう側のカメラに繋いで切り替える。
二箇所のカメラから、同時に映されたランダムが隔壁を跨いで行く。
「キーラが!」
凶暴な筈の猿人もどきの反応がおかしい。
ランダムを取り巻いてうなり声を上げてはいるが、一向に襲いかかるそぶりを見せないのだ。
俺はちらと、女神を自称する植物の幹に視線を走らせた。
《我が子よ……》
それに気が付いたのか、そうで無いのかは知らないが、俺は複雑な感情が入り交じった念波を耳に(テレパシーなんだから、耳にも何も無いんだろうけど)したのだった。
〈続く〉
ドン・ランダム登場。
マルク編も種明かしが近くなってきましたが、未だ先は長そうです。
全ての伏線がまだ開示される訳じゃないし、マルク編でも幾つか伏線を仕込んでいますからね。ワルガスダーやブラックミストを含めて。
クトゥルフですが『精神交換』って呪文があったりします。〝イスの偉大の種族〟が良く使ってる奴。アレ怖いよね。突然、身体が異形の化け物の中に移されちゃうんだから。
今回は約2,400文字。まだ超過しています。