ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

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今回の作業用BGMは『元気爆発ガンバルガー』から「ガンバー体操」です。
番組のEDなのですが、コミカルで面白い歌詞と動画も合っていて大好きでした。ヤミノリウスの歌パートが特に好きで、ガベさん笑いが印象に残りますね。
本編はエルドランシリーズ第2弾ですが、主人公は前作や次作の学級総勢約二十人に比べて三人とぐっと減ってる為、人物と話が掴みやすかった。でも、シリーズで一番好きな理由は正義のジャーナリスト闇野さん…じゃなかった、敵の大魔導士ヤミノリウス三世に尽きます。憎めなくて良い味出してるんだ、これが。
それに、結局大魔王を倒して地球を救ってしまうんだからね(本当だよ)。

担当声優の曽我部さんもヤミノリウスに惚れ込んでいて引退後まで彼を演じ続け、人生最後の収録もDVDボックスの特典でヤミさんを演じる事だったと聞き、「ああ、愛されているなぁ」と感じた次第。「こいつの為に『ガンバルガー』見てる奴が大半だ」とも、某悪人本で書かれていた事だけはあります。自分もその一人だけどね(笑)。


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              ◆       ◆       ◆

 

 傭兵達の進軍は続いていた。

 次の区画にある蔦は焼き払われ、その次の区画にある緑も同じ運命を辿る。

 あの特殊弾頭を用いずに通常火力のみで作業は行われている為、やや時間が掛かるのであるが、それでも掃討に要する時間は、一区画辺り約20分程度に過ぎない。

 

 普通なら燃えた部屋は高温になって兵も耐えられない筈なんだけど、傭兵が投入しているのはサイボーグ兵なので無関係である。

 但し、ゴーマンやランダムみたいな生身の者は、輻射熱を避けるべく後ろで待機して、冷えた頃に前進してくる事になる。

 ま、蒸し焼きにはなりたくないだろうからな。

 

『これに勝機を見出せるか?』

 

 高熱の中でも平然と動く人馬兵の群れを見ながら考えたが、こっちから攻めるのは自殺行為だと結論付ける。

 宇宙服で熱は防げるとしても、こっちはたったの四人。

 持っている武器は刀だけ。加えて俺とマグはまともな武器も無いのである。

 しかし、それでも時間が稼げるのは良い傾向だと思う。 

 

《さて、答えて欲しい》

 

 俺は念波を発して大木の方へと向く。

 時間があるのを利用して、今の内に疑問点を問うておく為だ。

 

《ぼくを此処へ呼んだ目的だ》

《貴方の力。戦士たる貴方の力で私を救って欲しいからです》

《救う?》

 

 意外な言だ。

 この俺に何の力があるって言うんだろう。

 

《はい》

《前にも言ったけど、ぼくは戦士ではないぞ》

 

 自称、女神は《いいえ》と否定した。

 続けて《貴方は戦士です。この宇宙をゲルマの手より救ってくれる存在です》とも言う。

 

《そんな力が……》

《貴方には超能力が有ります》

 

 いや、それは事実だけど、その力は己の評価では高い物じゃ無い。

 戦士として最前線で戦える様なサイコソルジャーって奴とは程遠い。身体も一寸無理すりゃ、咳き込むし、第一肝心なサイコパワーだって持続力が期待出来ないんだから。

 

《自信を持って下さい。貴方にはこの状況を覆す力があるのです》

《君はその方法を知っているのか?》

 

 よし、俺は『それなら聞いてやろうじゃないか』と開き直った。

 ちく、ちくと頭の片隅に警告みたいな痛みが走る。

 これは姉が言っていた第六感と言う奴だろう。良くない予兆みたいな物だが、『この事態を打開する為らはリスクも多少は冒してみないと』と、俺は敢えて無視した。

 

「高エネルギー反応!」

「何処だ。距離と方位を捜すでござる」

「外部だ。カメラを切り替える」

 

 っと決意した時に、何かの事態が動いたらしい。

 外部か、面倒な事態が起こると厄介だな。

 

「艦隊戦か。近そうでござるな」

 

 そのバクの言で、はっとなる。 

 そう言えば、一時間程前にボロ船で捉えていた宇宙艦隊戦の事を忘れていたからだ。

 外部カメラが捉えた映像には、確かに爆発の光輪が映っている。

 肉眼では詳細は見えないが、それでも望遠に頼らずに目視が可能な程だ。前のセンサー系が感知したのは爆発による高エネルギー反応だけだったのに比べれば、今度の戦闘空位域は遥かに近いと言って良い。

 

「ズームで拡大しろ」

「凄い。あれは大型艦でござるな」

 

 カメラが寄ってピントが合い、映し出されたのはピンク色の船体を持った大型円盤であった。

 四方に艦載機発進口を持ち、外縁からビームを発射している。

 

『完成したのか。マザーバーン』

 

 艤装途中だった筈であるが、それは見まごう事は無いベガ星軍の新鋭旗艦である。

 周囲を飛び回るワルガスダーの黄色い戦闘艇をハエみたいに叩き落としながら、堂々と航行している姿は感動物だった。

 同時に傭兵部隊の動きも慌ただしくなっている。

 

「敵艦隊だと?」

 

 報告を受けたゴーマンが吠える。

 

「悪党公団からは遅滞戦術を行いつつあるが、突破も時間の問題だとか」

「ええぃ、不甲斐ない。探索艦隊は撃退したんじゃなかったのか」

「新たに重装備の大型艦を投入してきた模様!」

 

 部下からの追加情報に頭をかきむしっている。

 

「クインバーンはテロンナ姫直属だぞ。そうそう動ける訳は……」

 

 ああ、ゴーマンの奴は勘違いしているな。

 情報が古いか、もしくはベガ軍を艦も揃えられぬ二流の田舎軍隊だと舐めているのだろうな。

 あれが、うちの軍が建造した新鋭艦だとの情報は掴んでないのだろう。

 

「どうする気だ?」

 

 その質問をしたのは、側で一服していたランダムだ。

 やや乱暴に「ああ、基地を無傷で奪還すると言う悠長な作戦は変更だ。場合によってはプリンツゴリを用いて殲滅戦に移行する」とゴーマンは言う。

 

「機動兵器で基地ごと叩き潰すのか」

「そうだ。ブーチン獣なら容易い」

 

 とんでもない事を言い出したな。

 機動兵器って事は、今、崖の上で待機しているあの巨獣型のロボをこの基地に突っ込ませるという話か?

 傭兵として考えれば大赤字だろ。丸ごと施設を取り返し採掘会社に恩を売るより、俺の抹殺の方に重点を置いたのか。

 

「女神は逃がす事になるぞ。

 基地を破壊しようが、確実に息の根を止められるのかは不明だからな」

「それは俺にとって二の次だ」

 

 ランダムに反論する中尉。

 

「悪党星団には悪いが、王子さえ亡き者にしてしまえばブーチン閣下への義理は果たせるからな」

 

 ブーチン獣……プリンツゴリ?

 ゴーマンの漏らした単語から、ある結論が導き出される。

 

「まさか、あれはキングゴリか」

 

 ベガ大王が『グレンダイザー』本編で繰り出す超兵器、それが宇宙生物を改造した巨大戦闘サイボーグだ。

 その名もベガ獣。その第一号機がキングゴリである。

 そう言えばベガ獣を開発する男はダントス防衛長官だが、確か、ブーチンの副官がダントス少将だったな……すると奴はベガ獣、いやブーチンの所で作ったならブーチン獣か、の開発に成功した訳か。

 

『大王(キング)じゃなくて王子(プリンツ)だから、プリンツゴリかよ』

 

 安易なネーミング、ではない……厄介な相手だった。

 と言うか、それ以前に基地ごと殲滅する様な手を取られたなら、俺達には何も出来ないじゃないか!

 

 

〈続く〉




新メカが登場。
でも、ブーチン獣は前にも名前をちょこっと出してますから、登場を予想していた方も多いかな。
そしてマザーバーン、ようやく進宙です。

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