『朝霧の巫女』のOSTです。日本神話風の旋律で中々好きなんですが、別のアニメ『電脳コイル』にも流用されているのを見た時、※「まるで眼鏡のコマーシャルだ」と呆れたのを思い出します。
古くは『エースを狙え!』と『ベルサイユのばら』そして『ザブングル』のOSTの旋律がそっくりで、流用していたとの事がありましたが、ネットも未発達で検証も出来なかった頃の話じゃあるまいし、今時なら一発でばれるのに「安易に曲を流用するなよ」と言いたくなりますなぁ。
※『Zガンダム』の「愛の協奏曲」と言うOSTが、HOYAの眼鏡CM曲に流用されている事は一部では有名。聞いててひっくり返った思い出が(笑)。
トライクは降下している。
マルク本星は大気が存在しない為、摩擦熱で真っ赤に燃えると言う事は無いが、オープントップの軽車両に男が一人跨がっただけの軽メカが宇宙空間をすっ飛んでる光景はシュールである。
「どう言う動力系で動いているのだ」
第一ブリッジで指揮を執るズリルは興味深そうに呟いた。
イオノクラフトか反重力なのか、しかし、ならば何故、トライクの三つのホイールが高速回転している理由が全く理解出来ない。
地面があって、その摩擦係数を利用して走るのがタイヤと言うメカニズムなのだが、当然だが宇宙空間には地面がある筈も無い。
「補佐官。戦闘が終了した模様です」
「被害は?」
先程射出した艦載機。円盤獣とワルガスダー艦隊との交戦結果が出た様だ。
ズリルはまず、被害から尋ねる。
「三機中、一機が撃墜されました。しかし、敵艦三隻は撃沈」
「痛み分けだな。揚陸艇相手でこれでは……。敵は後退したのか?」
「中程度の被害を与えた二隻はワープで逃げました」
ズリルは「宜しい。敵の再出現に備えよ」と告げると、心中で戦果の計算を始める。
やはり、円盤獣の完成度はまだまだである。
揚陸艇は戦闘力こそ持っているが、所詮は兵員揚陸用の空挺用であって戦闘艦艇では無いのに撃破されるとは情けない。
『まぁ、いい。小手先の戦闘結果より、今は殿下の救出の方が先だ』
今、艦に乗っている影武者で世間の目を誤魔化していると言うものの、テロンナ王女の結婚式までに本物のベガ王子を無事に奪回しないと我々全員の首が飛ぶ。
ヤーバン大王の怒りがこちらへ向かない為にも、マルク本星に居るらしい王子を保護せねばならないのだ。
ズリルは「第二ブリッジへ向かう」旨を告げると、妻を伴って移動する。マザーバーンはかなりの大型艦で、移動も徒歩では無く、小型のトンスポーターを使う程に広大だ。
「あなた。どう思いますか?」
「どうとは?」
「アステカイザーです」
後席に立つ妻が尋ねて来る。
答えかねていると「あれは……もしかすると人間では無いのかも知れません」と彼女は呟く。
「どう言う意味か?」
「文字通りの意味です。少なくとも生物ではありません。古代文明が生み出した兵器みたいな物かと……」
第二ブリッジに着き、二人は身分証明手続きを行って内部へと入る。
第二はベガ王子が拉致された事を知る者だけが出入りが許された場所だ。ズリルも指揮を執るなら第一よりもこちらの方が、意思疎通が楽だと思って移動したのである。
巨大なマザーバーンを操艦する為に、未熟な乗組員を慣熟させるべく向こうに赴いていたが、これからは正念場故、プロの陣取るこちらへと指揮権を委譲すべきと判断したからである。
「ズリル、ヨナメ参りました」
「ご苦労様です」
短い挨拶がテイルとの間に交わされる。
玉座に座るベガ王子は声を出さないのは、これは影武者であり、この場に居る本当の指揮官がテイル・テールであると言う事の証である。
「アステカイザー先行します」
「速いな。こちらが機動性の鈍い大型艦と言う事を差し置いても、宇宙戦闘機並みに速い」
「でも、剥き出しで乗ってるんだよねぇ。デブリとか当たったら大変な事になりそうだ」
アラーノ中尉とゴルヒ少尉はぐんぐんこちらを引き離しつつある、アステカイザーの愛車〝マッハビート〟を見て呆れていた。
それを横目で見つつ、ズリルは『成る程、ヨナメが言っている事にも一理あるか』と考える。
幾ら強化服を着ていようが、戦闘機並の速度で生身の身体ず大きな宇宙塵にぶつかったら一巻のお仕舞いだからである。しかし、それが兵器だとしたら?
ロボット或いはサイボーグ。
今の技術では機械的な部分が多くなってしまい、あのアステカイザーの様な生身に見えるボディは再現が難しい(不可能では無い)。
いや、古代アズテク文明ならば、我々の想像も出来ない技術力を持っていた可能性もある。
例えば、フリード星の魔神の様な。
「マルク地表に大型機動兵器!」
彼の思考はその一言で中断された。
マルク本星の地表に全高20mを越える機動兵器が鎮座していたからである!
◆ ◆ ◆
そう、あれはアステカイザーだった。
古代アズテクの戦士を名乗った謎の男が、マッハビート号に乗ったままこちらへ駆けて来るのである。
大胆にも、ベガ……じゃなくて、ブーチン獣か、プリンツゴリの股下を潜り抜けて。
ゴリはいささか戸惑う様な反応を見せるが、その一瞬を突いてアステカイザーの腕が一閃した。
「なんだとっ!」
声を上げたのはゴーマンだった。
何とアステカイザーは股下を潜り抜ける時、プリンツゴリの内股をカイザースライサーで撫で斬りにしたのである。
突然、脛を切られて飛び上がるとひっくり返るゴリ。
もし大気があったのならば、その口からは苦悶の苦悶の絶叫が鳴り響いていたろう。
ブーチン獣は巨大サイボーグ故に痛覚を残してあるらしく、苦痛を感じてしまうのだろう。
「邪魔者か」
それだけ呟き、逆にそれを意に介さないのがランダムである。
四方から襲いかかる蔦の触手を、ソリッドで斬り裂きながら前進する。
バクとガン、女神の命を受けた二人のシシが迎撃に向かうが、ランダムに辿り着く前に他のオストマルク人に阻まれしまう。
「くぅっ」
「ウスリー殿かっ!」
ランダムの周りに居る奴もかなりの使い手であるらしい。
躍りかかったバクの剣が簡単に受け止められ、返す刀で攻め込まれている。
《戦士よ。あの者達を観察するのです》
その女神の念波と同時にランダムは発砲した。
対戦車火器風ランチャーの尾部から発射煙が噴き出し、やや鈍い速度で弾頭がこちらへと迫る。 咄嗟に周囲の蔦がざざざっと動いて、幹本体を護るバリアーとなる。
《あぁぁぁぁ!》
苦悶のテレパシー。
だが、たちまち緑の壁が色を失って行くが、自称女神はそれを計算に入れていたらしく、本体へと通じる触手は切り離している様で、その一撃はある一定の範囲だけを枯死させるに留まる。
「やはり二発必要だったか」
そううそぶくと、ランダムは最後の弾頭を再装填すべく手を伸ばす。
その時、「叔父上!」の声と共にマグがランダムの前へと躍り出た。
驚いたのだろうか、ランダムは目を見開く。
その一瞬を逃がさずに、俺はサイコウェーブ……はっきり言うと弱い一撃なのだが、をランダムへと放った。
狙いは当たり、奴の手元から見事に発射筒を弾く。
てっきり発射筒は金属質な音を立てて転がるかと思ったが、塩ビパイプの様な鈍くて軽い音を立てたのが違和感だったな。
「……ベガ殿下だな」
だが、ランダムは慌てず騒がず、俺を見据えて問うて来た。
「ああ、ベガ・ヤーバンだ」
〈続く〉
10月初更新です。
アステカイザーはこの戦いに介入する気満です。
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