ベガ大王ですが、何か?   作:ないしのかみ

9 / 173
「BEGA~♪」と某ゲーム風に言ってみる。
初音〇クや重音テ〇辺りに言わせたら面白いんだけど、残念ながら作者はボカロもUTAUも持っていない(笑)。


9

 水晶宮。

 俺の住む施設の名である。

 惑星執務用の官邸設備もあるが、それよりも静養の為の保養施設と言った趣で、庭園が美しい優美な離宮と言った佇まいだ。

 俺は執務を続けている。

 開発予算を回し、工科大の方で試作機開発プロジェクトはスタートした。

 無論、施設的には限られるので軍の工廠にも手を回しておく。

 廃棄予定の旧式機を何機か手配したので、ズリルはやってくれるだろう。

 

「新型機の方はこれで良し。さて、キリカ達の冷凍光線の方は…」

「殿下、ヒメノ様一行が参りました」

 

 丁度良いタイミングでテイルが報告する。

 俺は直ちに面会するから通す様に指示し、やがてアラキとキリカ兄妹がやって来た。

 

「ベガだ。水晶宮へようこそ」

「アラキ・ヒメノ。妹キリカ共々、お招き下さり感謝致します」

 

 ふむ、緊張しているな。

 ズリルみたいにマイペースじゃ無くて、これが普通の反応なのだろうとは思うけど。

 俺は執務室の椅子から立ち上がって、つかつかと歩み寄る。

 

「君達の才能を是非ベガ星の為に役立てて欲しい」

「はっ、し……しかし、我ら兄妹に何が出来ましょうか?」

 

 アラキの顔に困惑の色が浮かぶ。美形だな。イケメン面して天才とは羨ましいぞ。

 キリカの方は不安そうに兄と俺を見比べている。

 

「冷凍光線。アレを役立てて欲しいんだ」

「はい。しかし、まだ研究途中で出力が低すぎます」

 

 俺は「恒星を冷却する為の物だと聞いている」と告げると、アラキは大きく頷いた。

 そんな大規模な装置であるから、まだ予定の性能に全然到達してないのは判る。

 

「相手が恒星で無ければ、何とかなるのだろう?」

「え」

「ぼくが要求する物はそれだ」

 

 俺はこれをベガトロン鉱山の開発プロジェクトへと結びつけた。

 坑道を掘る際に熱泉が出る事がままあるのだが、こいつを冷凍光線で冷却してしまえとの考えである。

 

「熱水帯を冷却ですか?」

「土木や地質学の方は専門外だと思うが、やってくれるか」

 

 付け加える様に「身体の弱いぼくに代わって、ベガトロン鉱山を視察して改善点の報告を頼みたい」との意向も伝える。

 いや、本当は俺自身が行きたいんだけどさ、ガンダルやテイルに言っても「危ないから駄目です」の一点張りで話にならないんだよ。

 

 坑道は過酷な状態らしいし、特に『温泉予土』と呼ばれる特殊な地層が過酷な環境をもたらしていると耳にするので行かせたくないらしい。

 これは熱水帯に地層が影響され、周囲が強酸化するという代物で、掘られた隧道が時間経過と共に崩壊してしまうのだと言う。

 落盤なんかに巻き込まれたら、目も当てられないし、大体、そんな環境では埃っぽいと思うので、ベガの呼吸器系が持たないんだろうね。

 

「私が……ですか?」

「無論、君と妹には総督府役人としてそれなりの身分も保障する」

 

 俺はベガ星の要であるベガトロン鉱山の為に、君の力を欲していると伝えた。

 また、生産性向上の為の改善点などもまとめてくれると嬉しいとも。

 

「ぼくが病弱なのが恨めしい。本当ならばぼく自身が赴きたいんだけど……」

 

 これは本音。

 専門外の分野へ就かされる彼が可哀想ではあるが、どうしてもぼくの代理役の人材が欲しかったのである。

 熱水帯を冷却して固めてしまえば、強酸化も抑えられるはずだし、トンネル工事も捗って一石二鳥だと踏んだのだけど、技術者としてのプライドもあるから、これは賭けだった。

 全くの畑違いの分野へ行け、と命令してる訳だからね。

 

「殿下。その役目、お引き受けしましょう」

「おおっ」

 

 俺はその両手を握って感謝する。

 あ、あれ? アラキが顔を真っ赤にしてるのはなんでだろう。

 テイルやキリカも何となく赤面して、顔に手を当てて視界を塞いでいる。

 

「あ……すまない」

 

 俺は握った手を解放する。BL的な何かを想像させてしまったらしい。

 テイルなんかは「きゃーっ、絵になるわ。凄い耽美な光景よ」とか呟いてるな。

 小声だけど、俺の耳は良いんだぞ、テイル。

 それでもアラキはうわずった声で「人々の為に役に立つ技術であるのを、証明して見せます」とも付け加えてくれた。それは頼もしいな。

 無論も冷凍光線装置の研究に関して、俺は鉱山関連の資金を提供し、その開発と改良に全力でバックアップするとの約束をしたのは言うまでも無い。

 

「キリカ・ヒメノ」

 

 一人置いてきぼり気味だった、アラキの妹を呼んだのは一寸した親切心だ。

 

「お兄さんの健康に気遣いなさい。ぼくは有能な臣下を失う事には耐えられないからね」

「はっ、はい。殿下」

 

 これで良し。

 お兄ちゃん『グレンダイザー』では病気で逝ってしまうからな。

 これで冷凍光線の開発も捗り、本編以上の開発速度で所定の性能が発揮出来る様になる筈だ。

 恒星を冷却する程の性能か、もし、植民星開発って話になったら転用可能だろうし、本編の如く、兵器としての利用も視野に入れられるだろう。

 

 

〈続く〉 




熱水帯を凍結させて一気に削岩。
キリカ達の冷凍光線の使い道を考えたら、こんな発想が浮かんで来ました。
黒部第三ダムの地獄の高熱隧道や、JR伊東線の旧宇佐見隧道の如き温泉予土が発生する、腐食トンネルみたいな地質攻略に役立つぞ。と。
ベガトロン鉱山開発に、とても有用じゃね?
まだ数万度相手の恒星冷却は無理だけど、これならば研究途中の技術でも役に立つしね。

キリカ曰く「元々は平和利用に研究した」技術なのだから、平和利用に使われて兄ちゃんも満足する筈だと思うから、トンネルと坑道の違いはあれど、アラキにはベガ星版『黒部の太陽』をやって貰いましょう。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。