元祖「ゴジラのテーマ」に歌詞を付けた歌で、あの曲聞くとどうしても口ずさみたくなりますね。もっとも自分の場合、モスラやらラドンは無視して、ひたすらゴジラとメカゴジラオンリーなんですけどね。
似たケースの曲に『水戸黄門』の主題歌に、「どんぐりころころ」の歌詞を付けて歌う奴とかもありますが(笑)。
◆ ◆ ◆
ラミア。
狂える様に舞い踊りながら、その幻影が消え去るのにはほんの数秒だった。
そびえ立つ幹は急速に色を失い、葉を落として枯れ果てる。
「見たかマグよ。あれが我らを騙していた女神を語る者の正体だ」
ランダムが口を開く。
子は呆然とそれを見ていたが、はっとなって「意味が、意味が分かりませぬ」と父を問い詰めた。
「お前もイヤハヤ家が行っていた秘儀を知っておろう。
我がハテサテ家もそうだが、女神は我々マルクの民に裏で何を要求していたのか」
「それは……人身御供」
「そうだ。大古からラミアは我々に犠牲を強要していた。お前が道具の如く男性を処刑するイヤハヤの秘儀を嫌悪し、女嫌いになっていたのは知っている」
父はかぶりを振り、教え諭す様な口調で語り始めた。
曰く、「我々は長年、騙されていたのだ」と。
「どう言う意味なんだ……」
「知りたいか、ベガ王子」
話が見えて来ずに呟く俺の声を聞きとがめて、古代アズテクの戦士が尋ね返して来る。
「出来れば」
「あのラミアは、本物のラミアではない。いや、ラミア自身が自分の代理として創造した複製体なのだから、ある意味本物であるのだが、彼女はアズテクのそれと同じ神として、庇護の代価として人々に贄を求めた」
「アズテク。君の本家であるアステカのそれか?」
アステカイザーは頷き、先を続ける。
「そうだ。アステカの文化は人々の祈りと犠牲の上で成り立っている。人々は神に感謝し、その庇護を得る為に自らを犠牲にして神を支える。そして女神ラミア、いや、女神を語る者も同じく、その犠牲の上に成り立っていた。両マルクの民が数万年に渡って彼女の為に捧げた犠牲者を供物としてな」
「ラミアはアズテクの神だったのか?」
「いや」
アステカイザーは首を振った。
「本物のラミア自身は別の文明から来ている。だが、この世界に来たラミアはゲルマの監視と言う目的の為に、この宇宙に自分の意志を残す必要があった。
その代理として作られたのが、あのラミア(蛇女)だ」
「まさか、その為にアズテクのシステムを……」
「正解だ。だが、ラミア自身はシステムを深く理解しなかった。推測だがな」
アステカ文明。
無論、俺の知識の内にある、地球のそれと同じ物かは分からない。
だが、地球のアステカ文明も神に捧げる人身御供から成り立っていた。
アステカ人は「太陽の不滅」を祈り、神へ人間の新鮮な心臓を神殿に捧げていた。そして豊穣や雨乞い、または戦勝を祈願して人間を供物として捧げていたとも言う。
人身御供は大量の贄を必要とする為、時には供物を得る為、戦争まで行われる事もあった。
しかし、生贄に捧げられる事が社会的にも名誉であると考えられていたとされており、人々は喜んで神々の贄となるべく、その身を捧げたとも言われている。
「産み出された偽ラミアは、最初はラミアと同じく慈悲深い者であったろうよ。
くくくくっ、だが、その内、自分の力の衰えに気が付いて、自身の供物となるべき者達を創造したんだ。ベガ王子」
ゆらりと立ち上がったのはゴーマンだった。
ぺっと唾を吐いて、「それが両マルク星だ。奴は産み出した自分の民を庇護すると同時に、自分を支える為の贄となる事を強要した。まぁ、この知識もワルガスダーに教えられた情報だから、もしかしたら、嘘なのかも知れないがな」と呟いて、銃を構え直す。
「ぼくを撃つのかい」
「撃ちたいのは山々だが、どうも任務が失敗に終わったらしくてな。俺の手で片を付けるのは別の機会になる」
「行かせんぞ!」
猛烈な勢いでアステカイザーが接近する。
ゴーマンはそれに発砲するがアズテクの戦士は意に介さず、命中しても平然としている。
「ゴリ!」
その叫びと共に天井を突き破って、巨大な腕が飛び込んで来た。
ブーチン獣の巨腕に阻まれてアズテクの戦士の行き足が止まる。
「おのれ、ゲルマが憑きし者め!」
「貴様の相手はしたくないのでな。退くぞ。ランダム!」
身を翻すとゴーマンはこちらを見て、不敵な笑みを見せた。
「また会おう。殿下!」
「待て。まだ聞きたい事が……」
「ラミアの件なら、オストマルクの連中に尋ねてみろ。俺は一旦、去る。
ああ、それとサービスだ。あの偽ラミアはまだ滅んでおらん」
「何だって!」
それには答えずにゴーマンはランダムを伴って、エアロックの方へと駆けて行くのが見えた。
彼らがそれに辿り着いたと同時に、ゴリの太い手が抜かれ、今までその腕によって占められていた巨大な穴から空気が大量に流出する。
たまたま近くに居た、ダビスタのサイボーグ兵が吸い込まれて外へ放り出される。
『サイボーグなら生きていけるんだろうけどな』
こっちは生身だから、外へ放り出されたら一巻のお仕舞いだ。
アステカイザーが「ちっ」と舌打ちすると、マッハビートルがやって来る。
「王子よ。生きていろよ」
無責任な言い草だが、アステカイザーはそれだけ口走ると俺の方を見ずに愛車に跨がって、ゴリの開けた大穴へ向けて飛翔した。
ウォールフィルムの風船が作動しているが、流石に出来た破孔のサイズが特大で穴が塞がずに、俺達は何か物に捕まって身体を固定するしかない。
チラリと一瞥すると、開けた大穴から一瞬、ワルガスダー揚陸艇の青い船体が見えた。
ゴーマン達が脱出したんだろう。
マッハビートルが向かっていたが、不意に横合いから伸びたゴリの腕がそれをはたき落とした。
「殿下!」
気を失いそうになりながら、必死に耐えていると女性の声が不意に耳朶を打つ。
気流の動きが緩慢になる。
「殿下!」
再び俺を呼ぶ声。
閉じた目を開くと、そこにはスリングショット状の衣装に身を包んだシャーマンがいた。
いや、正確には透明素材のボディスーツに、スリングショット状の黒いサスペンダー模様の入ってるスペーススーツだ。
某ゲームの戦術機と言う巨大ロボの衛士が着る、透明素材がふんだんに使われてエロい訓練兵用衛士強化装備に似ている代物で、シャーマン部隊の正式な宇宙装備である。
「君は……シャーマンか」
「リンメと申します」
こんなスタイルであるが仕様は立派なパイロットスーツで、耐衝撃や耐G、耐熱やら耐真空に関する生命維持にも配慮されている。
「着帽のまま、失礼します」
「構わないよ」
着帽のままと言っていたが、この状態でヘルメットを脱げというのは流石に言えないだろう。
俺は「ご苦労」と彼女を労った。
「マザーバーンが、テイル様が動いております。収容を急がせます」
「済まないが、そろそろ限界だ……」
味方が到着した事によって、張り詰めていた緊張の糸が一気に解ける。
超能力の使いすぎやら、ラミアの悲鳴を浴びて身体が限界を迎えていたからね。
本当ならば、とっくのとうにダウンしてなきゃ身が持たなかった所である。
「後は頼むよ」
「でっ、殿下っ! イチメ、サンメっ、こっちに早く!」
シャーマンが仲間を呼んでいる声を耳にしながら、俺の意識はぼうっと遠くなっていった。
〈続く〉
今回は約2,800文字。短く纏められないなぁ。
イチメ、サンメ、リンメの元ネタは『花右京侍女部隊』のお側御用大隊。
他にマロメ、レモメ、メロメと言うLa Veriteバージョンもあり、一応、この六人に上司(テイル)とおまけ(ハツメ)が加わって、ベガ直属の護衛侍女隊になります。
元ネタよりも有能です。多分、それなりに(笑)。
全然関係ありませんが、短編で仮想戦記『藤色の魔女』を公開中です。
もしかしたら、いつか『藤色の魔女2』とかも出るかも知れません。