この映画、WW2の戦争映画カラー作品でも大作で結構好きでしたね。レオパルド戦車対PIATと言う、世にも不思議な戦闘シーンはさておいて(笑)。
ベイリーブリッジってのは仮設の戦車橋で、現場で設営する簡易橋の事です。
ドイツ軍に正規の橋を落とされて行軍がストップした連合軍が、延々後方から組み立て式のベイリーブリッジを取り寄せて、徹夜で構築するシーンに使われていました。
輸送途中で渋滞に巻き込まれたり、ドイツ軍の妨害もあって時間がどんどん消費され、着いたら着いたで突貫で組み立てる工兵隊の姿が印象的。
そして、ようやく完成後、「行けぇ!」とばかりに遠すぎた橋のメインテーマが鳴り響いて、朝日の中を満を期してM4戦車とかが渡河して行くんですよ。戦闘シーンじゃないけど、あの描写は感動的だったですねぇ。
◆ ◆ ◆
やはり暗い空間である。
多分、高次空間とか言っていた奴だ。
「ブラックミスト。居るんだろ?」
声を荒げて叫ぶ。
この訳の分からぬ場所には大抵、あのバニーガールが現れるからだ。
だから。俺は確信を持って奴の名前を呼んだのだった。
「……高次空間に慣れて来ましたネ」
「お陰様でな」
暗闇と言っても、何故か目に映る物は明確に見える場所で、お目当ての少女が現れた。
相変わらずの際どい、ハイレグのバニースーツ姿である。
「ラミアとの一件の事を知りたいんだが……」
「ミーが、それを知っていると思うのは何故ネ?」
「知ってそうだからな」
俺は断言し、「お前もワルガスダーに敵対している勢力の一つだった筈だ」と指摘する。
彼女は微妙に顔を歪める(雰囲気からそう思えた)と、「あの資料を届けたのは失策デース」と呟いた。
ワルガスダー関係の資料をバレンドスに届けた者の名がブラックミストだった事から、こいつがその本人であると俺は確信しているからだったが、どうやら本当に当事者であった様だ。
「で、答えは」
「知っていない言えば、嘘になりマース」
「では、とっとと白状しろ。ワルガスダーがどうしてマルクを狙ったのか、それに関係してラミア……もどきだったが、俺に何を要求する気だったのか」
ブラックミストは腰のロゼッタ(花輪型の名札)を弄りながら、「主観で良いなら……」と呟いた。
主観と言う事は、もしかしたら全体的な事を捉え間違えた事も話の内に入っている事を意味したが、それでも構わないと計算して、俺は大きく顎を縦に振った。
「ワルガスダーとは、この世界の外から派遣されている組織ネ」
「ラミア曰く、ゲルマの手先、だな?」
「そう。奴らは本来、この世界に存在しないイレギュラーデース」
ちなみに〝ゲルマ〟と言うのは、マルクの創世神話世界で登場する敵、ゲルマ帝国の事である。
帝国はゲルマ魔王と言う奴に率いられ、この宇宙を征服しようとした強大な軍事組織であるが、その出自は不明であり、今でも奴らが何処から来たのかは判明していない。
ただ、ゲルマ帝国自体の軍事力を支える構成員は、下っ端の戦闘員が人工生命体であった事を除けば、幹部を含めて、一応、この宇宙で集められ人員であったらしい。
「でも、ゲルマ魔王は正体不明か」
「恐らく異世界から直接、派遣されていたのデース」
ゲルマ魔王の姿は巨人であったと言う。
ちなみに、この世界では極端な身長の知的生命体は存在しないと言う事になっている。
小さくても数十センチ。大きくても身長3メートルを越える様な、大柄の知的生命体は発見されていない。
だが、ラミアが戦ったとされるゲルマ魔王の身長は、全高が数十メートルもあった。
「人間ではありまセーン」
「でも、サイボーグかも知れないだろ?」
この前戦ったブーチン獣や、ミケーネ帝国の戦闘獣みたいな例もダイナミック・プロ系にはあるんだよな。そんな存在だとすれば、ゲルマ魔王みたいのだってあり得ない訳じゃない。
「ゲルマ魔王は生身デース」
ブラックミストは断言した。
「本当(まじ)かよ」
素手で円盤獣と戦える程の人間なんて、最早、常識外の存在でしかない。
続いて、「だからこそ、この世界の外から来た存在だと言えるのデス」と答え、「ワルガスダーもその系列の敵だと言えマース」と告げる。
「但し、ワルガスダーの目的はゲルマと違い、この世界の直接支配ではないネ」
「ん?」
「そこら辺が、私とアステカイザーとの見解の相違デース」
アステカイザーはこの世界から、異世界の影響を排除せんとしている。
だから、アステカイザーの行動は直接的で過激だ。
ゲルマ、今のワルガスダーの影響下にある物だと判断すれば、相手が何者だろうが関係なく情け容赦なく殺傷し、破壊して行く。
「その根拠は?」
「観察していましたが、もしワルガスダーの目的が宇宙支配であったなら、とっくのとうに直接的な攻勢に映っている筈デース。かつてのゲルマ帝国軍の様に」
しかし、ワルガスダーのやり方は裏での妨害工作がメインである。武力を用いて大攻勢に映る気配は、今の所はない(但し、彼女曰く「将来的にはあるかも知れない」との忠告はあった)。
「古代アズテク文明。それがワルガスダーにとっては邪魔らしいから、今回の事件になったと見てイマース」
「何が邪魔なんだ」
しかし、バニーガールは肩をすくめただけでそれには答えなかった。
理由を知らないのか、それとも知っているのに答えないのかは判然としない。
俺は少し腹が立って、距離にして数歩離れていたであろうブラックミストへつかつかと歩み寄る。
「知ってるなら答えて欲しいな」
「ぼ、暴力はいけまセーン!」
握り拳を見た彼女は、慌てた口調で声を上げた。
基本的に俺は紳士のつもりだが、ふざけた相手には鉄拳制裁だって辞さない所はある。目の前のバニーガールを殴りたくはないけど、それも時と場合による。
「……分かーりマシタ。でも、これは私の私観ネ」
「構わん」
俺が本気なのを感じ取ったのだろう。ブラックミストはようやく口を開いた。
ぶつぶつと「何で私が……」とか文句を言っていたが、手を挙げるとびくんと身体を竦ませて、「ラミアやアステカイザーの例から見ても、彼らとアズテク文明の間の相性が悪いと分析してイマース」との言を述べる。
つまり、アズテク文明とはこの世界に属さない異物を排除しようとする傾向が強いらしいのだ。
「ほぉ」
「ラミアは先のゲルマとの戦いでそれを証明していますし、アステカイザーは最近の行動を見ると、それが顕著だから、ミーはそう判断してマース」
「つまり、アステカイザーの事は君も判らないんだな」
それに頷くバニーガール。
同じ番組出身のブラックミストと言う名の割りに、情報を掴んでいないとは情けない。
それを指摘すると、彼女は「まぁ、ミーのネーミングは洒落デース」とあっさりと認める。
着ているバニースーツが黒色だから、そんな名前にしただけだと言う。
実際、部下としてテロル闘人とか飼っていたら、洒落にもならんから、それはそれで構わないんだけどな。
「で、ラミアのことだけど、あそこで滅んだ彼女は……」
「ゴーマン・フソン曰く、滅んでないという話ネ?」
奴は任務は失敗だと言っていた。
それはあそこに居たラミア、実際は贋者だと言う話だが、それが完全に排除出来ていないとの結論に繋がりそうだ。
でも、それならあそこに居たラミアとは何者で、俺に何をさせようと画策していたのだろう?
俺はブラックミストにそれを問い質す気でいた。
少なくとも、このバニーガールの少女は正体不明だけど、俺よりは何らかの情報を掴んでいるだろうと確信していたからである。
〈続く〉
今回は約2,700文字。やっぱり短く纏められない。
ベガ王子、脅迫編(笑)。
ここで情報を集めようと逼迫していますな。本来、ブラックミストは敵でも味方でもない傍観者なんだけど、なりふり構っていられなくなったのかも知れません。
まぁ、殴るフリだけで、実際は手を下すことは無いと思うけどね。
彼、これでもフェミニストだから。