あの番組からのスピンオフ曲。いやー、何も考えないで聞き流す曲としては最高ですね。タイトルも何となく本作と似てるし(笑)。
いつか、ゴルヒのあれにも「ばかチューブっですが、何か?」ってのも登場しそうだ。
デューク・フリードの顔は見物だった。
嬉しいと言った喜びの顔半分と言った所であるが、困惑気味な感じでもあった。
「本当なのか?」
「ええ、驚いた」
姉の言葉に頷くデューク。
「ああ……。俺が父親、か」
父上からは当然、祝いの言葉を貰い、俺も弟も「おめでとうございます」と述べる。
ただブーチンの馬鹿は、「これでフリード星にも我がヤーバンの血が入るか。結構な事だ」と露骨に阿呆と言うべき発言があった。
向こうにとってはデリケートな事実だろうに、あの馬鹿はフリード星の置かれている立場を下に見て、威圧目的を兼ねて言い放ったとしか思えない。
デュークの顔が引きつったのを見て、俺は「姉上、向こうに別室を用意させました。義兄上もどうぞ」とその場から、彼らを引き離す。
「テイル。別室にお茶を用意してくれ」
「畏まりました。レモメ、マロメ、メロメ!」
侍女を呼んで、てきぱきと用意させる侍女長。
姉とデュークが別室に去った後、俺は弟をきっと睨め付けた。
「なんだい、兄上?」
「わざわざ波風を起こすな」
ブーチンは漆黒のマントをバサリと翻しながら、デューク達の消えていった扉へ首を向ける。
明らかに侮蔑の色を浮かべた表情だ。
「事実だろう。これで男子が誕生したら、フリード星は我がヤーバン王家の物となる」
「ああ、だが今、それを言うのはタイミングが悪い」
俺は「誕生前だから」と言い含める。
一部、血気にはやったフリード星の過激派が姉上を狙う可能性もあるのだ。
「それはそれで、良いきっかけになりそうだけどな」
「何だと」
「いや、失礼。独り言だよ。ただ……」
ブーチンは言葉を切って、にやりと邪悪そうな笑みを浮かべる。
「僕の第8師団の戦力だけでも、この星を制圧するのは容易いよな」
「お前……」
「確かにな。ただ、それは最後の手段である」
大王の声。
父は「姫に危害を加えられぬようにせねばならん」と、重々しく宣言する。
その場にいる者達は、一斉に「御意」と返答する。
「ふん。僕にルビー星を譲らない姉など、少しは危ない目に遭った方がいいんだ!」
弟はそう言い捨てると、足早に部屋を去って行く。
手に入る物として計算していた惑星の所有権が、自分では無く、兄である俺に委譲されてしまった事に恨みを持っているのか。
姉に関しての悪感情を、思わぬ形で把握する事になったけど、頭の痛い問題だな、これは。
俺と違って異母姉弟で、半分しか血が繋がってないのも問題なのかも知れない。
「父上、ぼくも失礼させて頂きます」
家族の殆どが居ない場じゃ、俺だけ残っても話題が無い。
俺も退出しようとするが、父に呼び止められる。
「身体の具合はどうか?」
「かなり順調です。寝込む事も少なくなりました」
大王は「結構な事だ」と呟くと、腕を組んでじろじろと俺を上から下まで舐め回すように観察したが、いつもの通り、俺の姿はドレス姿で女装と言って良い。
白を基調にしたノースリーブで肩出しの、シルクのミニスカキトン。
胴体にはフェイクレザーで赤いビスチェ風のコルセットベルトを巻いているが、実はこれは耐レーザー加工された防具である。背中の短ケープと合わせて前後をこいつで護っている。
脚にはライン入りの七分タイツ。
一応、外見からは絶対領域だけは見えているが、こいつも他の所は透明素材で覆われており、素肌は露出しておらず、ヘルメットを被ればこのまま宇宙空間にも行ける仕様である。
靴はコルセットと同色の赤いパンプスで、頭には王家の印として銀のティアラが載っている。
「王妃に似てきたな……」
「はぁ」
と言われても、母は生まれて直ぐに死亡したので俺には記憶が無い。
大王は「ふむ……。もし、ベガの体調が回復すれば……」と言いかけて、沈黙する。
「えーと……」
「もう、行って良いぞ」
次の言葉を探している矢先、大王の声が響いたので俺は一礼して退出した。
廊下へ出ると、侍女、シャーマン達が前後に付き添って俺を囲む。
護衛なんだけど、やけに物々しくなったのは、先日の拉致事件の反省からである。
「テイルは?」
「侍女長なら、まだテロンナ様のお部屋です」
答えるのはハツメ。
侍女の中でも見習い扱いなのであるが、俺の影武者も務める関係上、テイルに続いてNo2的なポジにある。
「姉の部屋に行ってみるか」
「しかし、テロンナ様が暫くは誰も近付かないようにと……」
何か密談でもやっているのか?
それを尋ねると「さぁ。でも、誰かを迎入れてましたね」との返答があった。
デュークでは無いらしいが男だそうであり、こいつとデュークを交えて何かを話し合っているらしい。
「まぁ、姉上だって色々と人脈があるんだろうな」
「あら、騒がしいですね」
ハツメの言の通り、騒がしい叫びが響いていた。
言い合いなのか、とも思ったが鈍いレーザーの放つ電磁音と物が壊れる音が耳に入った時、ただ事では無いと俺は事態を理解した。
「今のは!」
「サンメ、イチメは殿下を! リンメは確認を!」
ハツメを含む三名ががっちりと俺の周囲を固め、残る一人、リンメが騒ぎのあった方へと駆けて行く。
メイド服を着ていながら、シャーマンらしい機敏な身のこなしだ。
「ブーチン殿下が!」
「くっそぉぉぉぉ、許さない、許さないぞぉ!」
その声に驚きつつも、俺達は現場へと急行した。
ハツメは当然、「リンメが戻るまで殿下はお控え下さい」と俺を押し留め様としたが、俺は構わずに現場、姉上達の控え室だ。に一目散に駆けた。
「どうした?」
「あっ、ベガ殿下」
そこに居たのは弟と姉上、そしてデューク・フリードだ。テイル達は見当たらない。
他はどっかの仏蘭西革命に出て来そうな、ブーチンの側近らしき奴。そしてリンメである。
「報告を頼む、ええと……」
「ブーチン閣下の配下、メスカルと申します」
リンメの前にずいっとの乗り出したのは、 男装の麗人っぽい弟の部下だった。
弟は片膝を着いて唸っているが、どうやら賊に襲われたらしい。
「にしては元気だな」
「峰打ちで殴られただけですから」
大声で呪詛の言葉を吐いている光景を目にして、俺は感想を述べたが、メスカル曰く「突っかかった相手に軽くいなされ、手にした拳銃を叩き落とされて、剣の腹で殴打された」らしい。
が、聞く限り、そいつは凄い腕だ。
銃を向けられて物ともしない奴なんて、まるで剣豪並じゃないか。
「余計な事を言うな」
ぱしっとメスカルの頬を叩くブーチン。
俺はリンメにどんな奴だったかを問いかける。
「私が到着した時には後ろ姿しか。かなりがっしりした大男でした」
「姉上、デューク」
尋ねると、デューク・フリードは「正当防衛だよ」と、襲撃者の方を擁護する。
元々、乱入したのはブーチンの方で銃を突き付けられたから、大男が反射的に薙ぎ払ってしまったらしい。
「彼はお客でした。いきなり不審者め、そこを退けと礼を失したのはブーチンの方ですよ」
「あ、あんな客が姉上の部屋に居てたまるものか!」
「ブーチンは控えなさい。大体、貴方に入室を許可した覚えはありません」
姉がそれを指摘すると、弟は顔を真っ赤にして「行くぞ!」と吐き捨ててその場を去った。
メスカルが慌てて追う。
「……誰だったのです?」
「ベガ、貴方に言う必要も有りません」
「失礼しました」
プライベートな話だったんだろう。
俺は居心地の悪さを感じて、弟に続いてこの場所から退出した。
思えば、この時、何で追求しなかったのかと昔の俺に怒鳴りつけたくなるんだけど、この時はこれがデュークの失踪に繋がる重大事とは、その時、俺は全く思っていなかったのだった。
◆ ◆ ◆
〈続く〉
やっぱり3,000文字とオーバーしてるなぁ。
連載97回目です。
97式と聞くと、艦攻、大艇、車載機銃とか付けたくなるなぁ。
戦車と戦闘機? うん…それは。
ノモンハンなら何とかだけど、大戦が始まってからは…なぁ(笑)。