「だから、悪かったって言ってるだろ」
「貴方のそれは信用ならないの。本当にそう思って言っているのかしら、嘘つき谷君?」
「思ってるって…」
「ま、まーまーゆきのんっ、ヒッキーにこれ以上言うのは可哀想だし、ね?ヒッキーにも、何か考えがあるんだろうし…」
「…由比ヶ浜さん」
千葉、比企谷宅。四月が始まり、既に二日が過ぎた今日。リビングで机を挟み、二人の女子と一人の男子が話し合っていた。
紆余曲折、艱難辛苦を越えた彼らはこれ以上ない絆、そして言葉にしがたい、けれど確かに存在した『本物』。ソレを手に入れた彼らは、何故かまた争っていた。
「……今は由比ヶ浜さんに免じて許してあげる。でも、ちゃんと説明して頂戴。…何故、貴方が
黒艶のある長髪を撫で、目の前の少年を咎める視線で射抜いたのは、雪ノ下雪乃。総武中学、奉仕部元部長だ。そして彼女の隣に座り、同じく少し咎める視線で見、しかし心配と疑問が多く表情に浮かぶ明るい髪に、右側のお団子が特徴の少女は由比ヶ浜結衣。奉仕部の部員である。
「…」
対して、その視線を一身に受け、若干背筋に嫌な汗が流れ始めた三白眼で濁った瞳、ボサボサの髪に猫背という姿勢と目付きの悪さが目立つ少年、比企谷八幡は目の前の激甘コーヒーに手をつけた。
それが彼なりの言いたいことを纏める時の仕草だと知っている少女らは言葉を発さず、ただ彼の言葉を待つ。
ほんの数十秒間ではあるが間を改めた少年は、少女達の視線から逃げずに正面から見据え、漸く口を開いた。
「…まずは、本当にすまなかったと思ってる。三人で、また奉仕部を…って張り切ってた由比ヶ浜には特に」
「…ヒッキー」
「雪ノ下も、すまなかった。お前が一応ではあるが、三人でいる事が幸せであると口にしてくれた時は俺も嬉しかった。これからの期待を裏切って、すまない」
「…」
謝罪を聞き、少女らは少年の意図を探る。
何せレヴォルフ黒学院とは、強者が絶対である校風で、争いが耐えないのだ。実力さえあれば悪党でも入学出来るという、凄まじいまでの実力至上主義。
いくら星脈世代とはいえ、全員が全員争いが好きな訳では無い。というかお正月争いが好きな者は少数だろう。
争うかではなく競い合う、を求めるものが大多数だからだ。そしてその上で勝ち抜き、願いを叶えんとする為の手段が戦闘という訳で。血を流すのが趣味だというものはまずいない。
そして、彼ら三人は揃って強力な星脈世代であった。アスタリスクの高校体験に参加した彼らは、ほぼ全ての高校に歓迎される程であった。最も、そこでも少しトラブルはあったのだが…そして彼らはその実力を発揮し、且つ自由な学風、そして三人が問題なく入学出来る星導館学園に入学しようと決めていたのだ。
しかしそこで、思わぬ展開が起きた。なんと、入学の時期になり、荷物を纏めている最中に、少年がとんでもない事を言い始めたのだ。
『…悪い、俺はレヴォルフに行く』
少女らは、思えば…と振り返る。ずっと挙動不審な彼が更に自分達に対しても挙動不審であった事を。しかし彼女らは問わなかった。彼が多分、自分達のために何かをするであろうという淡い期待が、彼女らを押し止めたのだ。そして結果が、入学先が一人違う高校。失望はしないまでも、少女らは揃って捨てられるのでは…と小動物のような気持ちになっているのである。
「でも聞いてくれ。俺がレヴォルフに行こうと思ったのには無論理由がある。そして、それをお前らに言わなかった理由も」
「まず、俺達は優れた星辰力を持ち、俺はクインヴェールを除く、そしてお前らはそれすら含めた全ての学園、学院に入学出来ると言われたな」
「そしてその上で、星導館を選んだ。三人で居られるから…ずっと、この関係が続くから」
「でも、俺は疑問に思ったんだ。折角持ってる力を腐らせるのかって…いや別にお前らと居るから腐るって訳じゃなくてな、ええと」
「ああアレだ、つまり、その…お前らと一緒に居られるのはいいんだが、守れるようになりたくてな…だから、嫌でも実力が身につくレヴォルフを選んだ」
「…黙っていた、理由は?」
「…お前達が付いてくると言い出しそうだったからだ。あんな危ない所に、お前らを連れて行けるか」
実際彼女らは、レヴォルフの体験にも赴いていた。そして在校生によるナンパが行われ、一悶着あったのだ。
「…それで全部?」
「……最後に、俺はお前達が誇れる『本物』でありたいと思った。だから、それを実力で示せるようになるまで、お前達には甘えず闘おうと思ったんだ」
少年の言葉に、少女らは黙り込む。その様子を見て、一度喉を潤そうとして手を伸ばし掴んだコーヒーは既にカラ。顔を顰め、気まずそうにその手を後頭部においやった。
少しして、黒髪の少女が口を開いた。
「…馬鹿ね」
「…突然の罵倒にしてはキレがないな雪ノ下」
「仕方ないじゃない、今のは呆れから出た溜息と同様のモノよ」
「器用だな」
「私を誰だと思っているのかしら」
そう言って、諦めた様に、しかし清々しい笑顔に表情を変えた少女は、もう一度口を開く。
「…本当に、馬鹿ね」
「すまない」
「いいの、もう。…謝らないで頂戴、貴方が本気なのは理解したから。今貴方が謝ると、私達の為って言う言葉の価値が薄れてしまう気がするの」
溜息すら美しい。微笑み、次の言葉をお団子の少女に任せた少女は、珍しく姿勢を崩し、椅子の背もたれにもたれ掛かる。
言葉を受け継いだお団子少女は、泣きそうになりながらも必死に口を動かした。
「ヒッキーが…そんな事を考えてくれてたのは正直、嬉しいな。…でもね、やっぱり酷いよ。私、ずっと楽しみにしてたんだよ?星導館で奉仕部、創ろうって」
「ああ」
「…私達が心配でって言ったけど、それは私達も同じ。あんな怖い所にヒッキーが一人で行くなんて心臓が止まるかと思っちゃった」
「すまん」
「でも、強くなりたいって言うのかな。…ヒッキーには、それがあるんだと思う。どれだけ陽乃さんに理性の化け物なんて言われてても、やっぱり男の子なんだなーって。イイね、そういうの」
「だから、余計に強く言えないや。おかしいって思ってるの。言葉にしなくても分からない、でも今回は言えば分かったこと…でも、多分ヒッキーについてっちゃうんだろうな!あーもう私達ヒッキー居ないとダメだもん」
力なく笑う少女に、少年は心を痛めた。しかしもう後には引けない少年は、その顔から目を逸らす事は無い。
「守って欲しいことがあるの」
「聞こう」
「私達に、毎日電話してきて。寮が同じ部屋だから、どっちかに掛けたら二人とも出れると思うから」
「ま、毎日?」
思わぬ要求に、少年は言葉を繰り返した。しかしそんな少年に黒髪の少女はニッコリの微笑みかけ…
「何か問題が?」
「いいえ、ナンデモアリマセン」
有無を言わさず。お団子少女はそんな二人を見て笑い、次の言葉を紡ぐ。
「…後、偶にでいいから週末は三人で遊びに行こ?」
「……週末に出掛けんの?」
「貴方って人は……」
この少年の言葉には、分かっていても呆れた様子の二人。しかし少年の満更でもない表情を見る限り、これも約束として取り付けられるだろう。
「私からは最後。…絶対無茶しないで。怪我しそうになったら諦めて。ヒッキーがもし重傷とかになったら…私、分かんないよ?」
「そんな無茶な…」
しかしこれが少女らの願いである。想いを告げ、そして
「…まだあるわよ」
「まだあるのん…?」
今度は自分の番といい、黒髪の少女は続けた。
「と言っても、殆ど由比ヶ浜さんが言ってくれたのだけれど。…追加ね」
「そこまで言うのなら、必ず強くなって見せなさい。無茶はしないでほしい、出来ればずっと一緒に居たいけれど…それでも、待ってるから。貴方が貴方を認めて、戻って来てくれるのをずっと、待っているから」
「だから頑張って。誰にも負けない位になって、私達を迎えに来て頂戴」
少女らは、少年を見つめる。少年は参ったという風に両手をあげ、降参の意を示した。
「…ああ、全部約束だ、守ろう」
「…えへへ」
「ふふっ」
少女らは立ち上がり、少年の後ろに周り、左右から抱き締めた。受け入れた少年はされるがまま。ここに、甘い空気が出来上がりーーー
ピピピピピピピンポーン!
「せせせせせ、せんぱ〜い!?こまっ、小町ちゃんから聞きましたよぉ、レヴォルフ行くってぇ!?説明してくださ〜〜いっ!!」
ーーーけたたましいインターホンと、慌てふためいてるであろう後輩の少女の大声に、三人して笑った。
霧散した甘い空気。しかしそれは確かに、見えないけれど存在する本物として、彼らを繋ぎ合わせていた。
あ、まだこんな感じですけど八幡と雪乃と結衣付き合ってます
まぁ受け入れたって書いてますし察しはついてると思いますが
オリ設定がいくつか登場しますがクロスオーバーな時点でお察し。こんな感じで進みますどうぞよろしく
初投稿なのでルビとかこれから出した時おかしくなるかも知れませんが気をつけていきたいと思います