はちまんエンペラー   作:Nokato

12 / 15
神砂嵐は出ません(断じて)

ちょっと懐かしく感じちゃったよw


第12話

 

「『神嵐』」

 

偽りの空間を、地面を破壊する事無く暴虐の嵐は突き進む。警備隊長に向けた一撃は、今の俺の『空』の中でも最大級の技、そして全力で放ったモノだ。出来れば効いて欲しいが…!

 

「凄いな少年、これなら即戦力だぞ!」

「…星辰力(プラーナ)だけで防ぎながら言うことじゃねぇよ絶対」

 

聞こえないだろう呟きは、神嵐に呑まれる。さて、まさか星辰力を集中させただけで受け止めるとは思ってなかった。少しは後退させた様だが…チッ。これ以上は押し切れねぇ。なんつーパワーだよったく!

 

「『空裂』」

「ほほうっ」

 

今度は全方位の風を操り空裂を放った。未だに神嵐を受け止めている今なら、少しは喰らうだろう。

 

「…かァッッ!!!」

 

なんて思っていた時が僕にもありました。あろう事か警備隊長は俺の空裂を気合で吹き飛ばしたやがった。ついでに言うと神嵐が押し戻され始めてる。

 

「どうした!?この程度じゃ体は温まらんぞ!?」

「バケモンかよ畜生!」

 

神嵐を操り、警備隊長に纏わせその身を切り刻もうとする。が、今度は完璧に消し飛ばされた。どうやら星辰力を暴発させて勢いで対消滅させたみたいだな…

 

「さぁ来なさい。このままだと秘書にするだけじゃなく椅子にもなってもらうかもしれんぞ」

「そりゃ…嫌だな」

「ならば見せてみろ。…本気で全力であっても、()は温存かね?」

 

…平塚先生みたいな事言うな。まるで見透かされている。たった数分のやり取りで俺の実力を測りきったと言わんばかりだ。流石に、ド底辺人間を突き進んできた俺の、些細なプライドが吼え始める。

 

〝使え八。…俺様、今すげぇムカついてる〟

「…奇遇だな、俺もだ」

 

もうなりふり構わず行く。俺は更に星辰力を高めた限界まで引き上げた。

 

「ほう…まだいくか…!」

「こっからが本番だ!」

 

俺は指を鳴らす。同時に光を全力で放ち、目を潰す。

 

「むっ…!?」

 

明らかに動揺が見て取れた。光は既に収まっているが、目を瞑っていなかったからか、目を擦り、若干下がった。俺は大丈夫だ。暗闇でも光の中でも視界が良好。ただし、霧みたいな水態は無理だ。光が反射して見える。普通の人と同じようにしか見えない。

 

「今ッ…」

 

光鎖(こうさ)』を幾つも生成し、俺は警備隊長の体を縛り上げた。これで身動きは…

 

「はっ!!」

 

しかしすぐさま引きちぎった警備隊長。予想よりも早いな…しかしまだだ。今度は巻き付けじゃなく、力が入らないように関節を変な方向にして縛り上げる。

この隙に、俺は『電力』を使用する。…帯電網を張り、警備隊長が拘束を解いても動けないように。

 

「……っ、ふう。中々どうして、まさか私がしてやられるとはね」

「余裕なクセしやがって…だが、もう動けんだろ」

「本当に凄いな。…まさか複数なのか?」

「否定はしない。…が、出来れば明かしたくない情報だ」

「王竜星武祭かい?」

「ああ」

 

…随分余裕を保ってられるな。帯電網を張ってるんだ、身動きは取れないはず。何どうしてーーー

 

「懐かしいな。…もう随分前だ」

「王竜星武祭二連覇。偉業だな」

「褒めてくれているのかい?ありがとう、君にも難しい事ではないと思うよ」

「ランドルーフェン何かがいなけりゃな」

「歌姫も強敵だぞ?アレは厄介だ」

「治療以外は大体出来んだっけか…ズルいよな」

「そういう君は狡いようだが?」

「…気付いてたか」

 

今こうして会話している中でも、攻撃の手は止めない。既に、帯電網の上から光の槍を何十も生成し、その穂先を警備隊長に向けている。一度も上を見てないのに、本当バケモノだな。

 

「さて、どうしようか」

「どうにか出来るんだろ?」

「いやいや、本当に悩んでいるさ」

「嘘下手過ぎんだろ」

「ポーカーフェイスは得意なのだが…」

「声色にも注意しろ。俺みたいに人間観察が趣味な奴にはすぐ分かるぞ」

「寂しい趣味だな…」

 

やかましいわ。

 

「…まぁいいさ。さて、そろそろ君を組み伏せて参った、を言わせようかな。制限時間も迫っている」

「抵抗するぜ」

「やってみるがいい」

 

警備隊長は、そう言うと星辰力を集中させた。何事か…と思ってみれば、普通に俺に近付くために歩いてるだけだ。

そう、()()()

 

「ーーーーッ!!?」

「何も驚くことは無い。私のストレガとしての能力は、『自分の周囲の時間を操る』事だぞ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()1()0()()()()()()()()()()…ただそれだけさ」

 

つまり、帯電網を張ったのは精々3分前。…それを10分巻き戻せば、帯電網が無かった状態になるってことか…!いよいよ適う気がしないな。

 

「名を『時間異常(タイムトラベル)』。私に遠距離攻撃、または設置型の攻撃は効かない」

「そんでもって近接戦闘は出来るなんて…チートかよ」

「何だ、それは?……それよりも、もう終わりだ」

「まだだッ!」

 

帯電網はまだ生きてる部分の方が多い!

 

「『空中放電(フラッシュ・オーバー)』!!」

 

雷並の放電を行うが、まるで効いてない。…ま、遠距離攻撃だしな。

 

「『高熱電流(アーク・テンション)』!!」

「…ほう、だが効かん」

 

マジかよ…!鉄も溶けるんだぞこれ。それにしても…まだ余裕あるけど、これ以上は流石に星辰力が持たねぇぞ……

クソッタレが。まだ参ったは言わねぇからなぁ!

 

「ちっくしょうがァ!『青い炎(サタン=ブレイズ)』!!」

 

青い炎は、俺の左腕と共に警備隊長に伸びる。…が、ある一定距離から先は能力が消える。

 

「能力だけに絞ることも出来るのさ」

 

伸ばした左腕を捕まれ、そのエリア内に引きずり込まれる。凄まじい膂力で引っ張られた俺は体勢を崩し、そこを逃さず警備隊長は俺を地面に叩きつけた。背負い投げかよ!?

 

「がはァッ…!」

「もう動けまい?」

 

そう言って、仰向けに咳き込む俺の腹に座り込み、両腕の肘の部分を踵で踏みつける。

その顔は、ドヤ率8割、賞賛2割、と言ったところか。見た目通りの表情で笑う警備隊長に、俺は適わないと確信した。目を伏せ、息を吐く。

 

そして、いつか越えると誓った。この人を倒せた時、俺はーーー

 

 

「…参った、俺の負けだ」

「私の勝ち、だな」

 

ちょうど、部下さんの能力が切れたらしい。ゼーゼー言ってるのが横目で見えるが大丈夫だろうか。

 

何はともあれ、俺は敗北した。清々しいまでの実力差で、圧倒的に。

 

これは負け惜しみに聞こえるかもしれないが、歳食ってるとは思えないほど大人気なく喜びやがるなこの人…

あ、コラいい加減腹から降りろ!肘グリグリすんな、いってぇ!?

 

 

 

 

△▽△

 

 

あの後、すぐに俺は喧嘩連中を引き渡し、逆に拘束される側となった。手錠ではないものの、ずっと服の裾を警備隊長に掴まれているのだ。

 

「うむ、捕縛完了だな。連れて行け」

「はっ」

 

部下総勢五人のうち、一人だけを残して全員が連中を連れ移動する。少し離れた所に輸送車があるらしい。まぁ星猟警備隊の中にサイコキネシス使いいるみたいだし、何より連中腰抜かしてたから逃げようとも思わんだろうけど。

 

まぁこっちはこっちで腰抜かすどころか意識が別の世界に飛んでる奴もいるんだが。

 

「おい東城。…とうじょーう?」

「は………ほぁっ、比企谷!?おま、大丈夫だったのか!?」

「ウソお前気絶してたのん…?」

 

目を開けながら気絶とは器用な真似しますね…

 

「…あー、まぁ、負けた。惜しかったんだがな」

「いやいや、私の圧勝だろう」

「ちょっと危なかったろ?」

「わざとだよ」

 

嘘つけ結構本気で驚いてたろ。何て言いたかったが尻を抓られ、それは変な声として口から漏れる。…こんクソガキャ燃え散らすぞ…!あ、中身ワイの数倍歳上でsイデデデデデ!!!すいません許してくださいもう言いません思いません考えませんっ。

 

「ひ、比企谷…?」

「いってぇ…何でもねぇよ」

「そ、そうか…それよりお前すげぇな!あんなに闘えるなんて…決闘じゃ本気じゃなかったのか?」

「あー…それなんだが。俺の能力は『空』だけって事で。見なかった事にしてくれないか?」

「あん?…別にいいけど何で……あーそうか情報か」

 

お、話が早いな。

東城はそれで納得してくれた様で、絶対に口外しないと約束してくれた。さて本当かどうかは分からないが、東城の人柄を信じるばかりだ。

 

「じゃあ、俺もうそろそろレヴォルフ帰るけど……」

「残念ながら、君だけ一人で気を付けて帰ってくれるか?…彼にはたーっぷりとお話があるのでね」

「いえっ分かってますってHAHAHAHA!じゃあな比企谷死ぬなよっ、生きて会えたら今度飯奢ってやる!」

「え、何俺今からヤバい目に遭うの?待って東城超待って!やめて、おいてかないでぇ!?」

「ほら君はこっちだ」

「嫌だァァァァァ!?!!」

 

この後、『空』で星猟警備隊の本部まで警備隊長殿をお連れして、中に入れられました。

現在、隊長室に連行されてる途中です。

 

……死なないよね俺。

 

 

 

 

△▽△

 

 

ディルクの会長室より広く、壁には本棚がぎっしり、椅子と机…執務用であろう物と来客用だろうの椅子と机、大量の資料に、執務机の奥に別室へと繋がる扉。豪奢では無いが、割と整った部屋がヘルガ・リンドヴァル警備隊長の執務室だった。奥は自室らしい。

 

「さぁ掛けたまえ」

「嫌だ」

「何だじゃあ私の椅子になるか?なぁにさぞ気持ちいいだろうよ」

「喜んで座ります!」

 

小さな反抗を見せるも、余裕で返されて俺氏もう心の中で涙が止まらない。

椅子に掛けると、対面に警備隊長が座った。ちょうど部屋の扉がノックされ、警備隊長が入室を許可すると、一人の女性が飲み物を運んで来たようだ。警備隊長と俺の前に…また紅茶か。紅茶を置き、そのまま退室する。

警備隊長が一口つけてから、俺も頂くが…お、これは美味い。だがやはり雪ノ下には適わんなフハハハ。

 

「…さて、喉も潤った所で君の処罰を下そうか」

「……なるべく優しめで」

「ん?被害はないし、何よりアレは私と君だけのお遊びだろう?誰も巻き込んでいないし、何も壊していない。ちょうどあの時私が先頭にいたからか、皆逃げたしな。目撃者もいまい」

「いや、分かんねぇぞ。ニュース見りゃほら、記事になってるかも…………なってる………」

 

端末を取り出して何故かまた溜まってるメッセージを放置して確認すると、もう特大ニュースばりの記事になってる。被害なし、しかしその様子は動画では捉えられず、けれども目撃者は一応いたようだ。

 

「何?見せてくれ……ああ本当だな」

「どうすんだよ」

「さぁ?被害は無いしホログラムとでも言えばいいんじゃないかな…と思っているが」

「…んな無茶な」

「部隊員の能力で作り出した空間での戦闘を、現実(リアル)に用いた時の被害推定実験(割と本気)と言えばいいだろう」

 

この人、もしかして天然入ってんのか?それとも、わざと落ち着かせようとしてくれてるのか。…アホの子が入ってるのか。

ここに来る間もすげぇ挨拶されてたし、マジで仕事とかも出来るのかな…と思ってたけど。まさか。

 

「まぁ聞かれたらそう答えるレベルでいいのではないか?歓楽街(ロートリヒト)での事なら、周囲の人々に協力してもらって実験したとか」

「アンタ警備隊長だろうが。罪悪感とかねぇのか?」

「私は警察ではないよ。それに、これで問題は丸く解決では無いが解消は出来たろう」

「むちゃくちゃだ…」

「それが私だよ。……さて、いい加減君の処罰を言い渡そう」

 

そう言うと、一瞬真面目な顔をする。腕を組み、足を組みのふんぞりポーズだが、見た目少女でもやはりオーラがすごい。

…なんかテンション振り切っちゃって喧嘩売ったの今更ながら後悔してるわ。何言われんだろ…

 

「比企谷八幡。君には更生プログラムと称して私の秘書になってもらおう。学業に差し支えないレベルで構わん。既に悪辣の王(タイラント)には部下から連絡させている」

「……それマジだったの?」

「ああ。実験は、更生プログラム中にちょうど実験の話を聞いた君が挑んできた…という設定にしよう」

 

…この人、マジでアホの子かもしれない。俺は真剣な顔でそう言う警備隊長を見て、嘆息せずにはいられなかった。

 

 

 

 

△▽△

 

 

【比企谷八幡、三日連続乱闘騒ぎ!冒頭の十二人との戦闘はないものの、総数31人を新たに治療院へ】

【嵐神、あのヘルガ・リンドヴァル警備隊長と戦闘か。歓楽街(ロートリヒト)で目撃者多数も、被害はゼロ…?】

歓楽街(ロートリヒト)の戦闘は星猟警備隊の実験?実際の戦闘を被害が出ない空間で行い、ホログラムで被害推定を検証。比企谷八幡は協力者】

【実験協力は更生プログラムの一環。嵐神、警備隊長の元へくだる】

 

 

あの激闘が昨日となった今日。色々話をしてから寮に戻った時は日付が変わっていた。泊まっていけと言われたが断じて無理☆と断った俺は脱走。光速で帰ってきたけどこれ疲れるんだわ…

んで、メッセージで一斉送信。『疲れた無理寝る連絡は明日』。今現在の時刻午前10時。…授業はいいか、もう。また今度雪ノ下達に教えてもらおう…

 

いつも通りMAXコーヒーで覚醒し、昨日浴び忘れたシャワーで汚れを流しサッパリした所で朝飯を作る。といっても食パンを焼いてスクランブルエッグを作ってそれを上に乗せてソースをかけるだけだが。

朝食を終えた所で、一応制服に着替え、ソファに身を預けながらメッセージを見る。…あー、一斉送信したからか。一色とかからも来てるわ。

 

ーーーーー

お前な…どうせ授業出ないんだろうし、起きたら俺ん所来い。マスコミや報道系クラブにゃあのうるせぇ警備隊長殿の言う通りに証言しておいた、感謝しやがれ

ーーーーー

 

おぉディルクありがとう。だから既にあんな記事があったんだな。

とりあえず、雪ノ下達はもうマジギレレベルだったので普通に謝罪。今度はもう一発ぶん殴られてもおかしくない。珍しく雪ノ下さんですらマジの心配文だった。そんな中、新たに追加されたアドレスからメッセージが届いていた。

 

ーーーーー

タイラントは仕事が早いな。これで君も罪には問われんだろう。何、いつもああなのではない。こんなのは稀中の稀だ。というか君のような存在が稀なのだがね。

さて、更生プログラムその1だ。お昼までに私の所へ来るように遅れたら隊員と同じメニューで訓練してもらおう

ーーーーー

ーーーーー

俺授業あるんだけど

ーーーーー

ーーーーー

出てないことは知っている。早くタイラントとの話を済ませて来なさい。罰は特別になしにしてやるから

ーーーーー

 

何で知ってんだよ!?兎に角俺はディルクの元へ急いだ。いつまた気が変わるか分からない、年齢不詳の魔女の元に早く向かうために。

 

 

 

 

△▽△

 

 

もう散々に小言を言われ、あのランドルーフェンやころなさん(苗字知らない)にすら呆れられ、もう入室と同時に正座させられるレベルだったがようやく開放され、今現在は星猟警備隊の本部の隊長室…執務室だ。

 

「うまく誤魔化せていて良かった」

「あんな嘘を世間は信じるんですかね…」

「歓楽街にいた目撃者より私の言うことの方が正しいと思ってしまう心理。利用させてもらった」

「悪人が」

「策士と言いたまえ。元はと言えば君が悪いんだぞ」

「こんなのが警備隊長とか心配だぁ…」

「バカ者!先にも言ったがこんな事は今までで片手で数える程しかないぞ?」

 

今までにもあるんじゃねぇか。

…まぁ本当にそれ以外は普通…というか、あのアスタリスクで起こった最悪のテロ『翡翠の黄昏』を一人で解決しただけあって、評判は凄い。

 

ディルクは嫌っていたが。何でも昔から色々と厄介なんだと。まぁアイツ自身ちょっと人に言えないことしてそうだしな…

 

「それで、何の用だよ」

「ん?…今日の仕事は既に終わっていてな。出動まで世間話の相手が欲しくてな。それか勉強でも見てやろう」

「遠慮する」

「照れるな。ほらテキストがこんな所に」

「なんであんの!?」

「私の部屋だからな。さ、やるぞー」

「もうヤダ……」

 

結局、この日は日が暮れるまで勉強していた。珍しく闘わなかった事が逆に記事になるという事もあったが、寮に戻ってからは電話で雪ノ下達に小一時間は説教されるわ飯食いそびれたのを思い出してインスタントラーメン作ってたら米炊いてないわシャワーは温水じゃなくて冷水被っちまうわ散々だった。

 

光速でふて寝したのは、嫌な思い出になるだろう。

 

 

 




警備隊長めちゃくちゃやな…

次回少しだけキングクリムゾン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。