はちまんエンペラー   作:Nokato

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第13話

 

 

 

〝順調だな。俺様も目を見張るスピードだぜ?〟

今喋りかけんな…!

〝んだよ連れねぇなァ…〟

 

五月に入り、入学から怒涛の三日間と自分で読んでいるあの出来事やらからから一ヶ月が過ぎた今日この頃。春の陽射しはなりを潜め、桜が散り切った、特にイベント行事がない月に、俺は今日も今日とて星猟警備隊(シャーナガルム)本部に足を運んでいる。

 

「ほら、足元が疎かだぞ。目だけを見るのではない、全体を見つめ、その中で目から軌道を読み動作を予測するんだ」

「ちっくしょ…!」

「今度は上か。……これで詰みだ」

 

目的は、星猟警備隊の訓練に参加するためだ。現に、今もヘルガと組手をしていて、負けた。組み伏せられ、今は腕の関節を決められている。

 

「いてぇいてぇ!いてぇッて!」

「はっはっは。そぉーれ」

「ぎゃあああ!?人の腕関節はそっちに動かねえよってばんぎぎ…」

「よし、そろそろ飯にしよう。八幡は何を食べるんだ?」

「腕は離してくれないのね……カレーで」

「うむ、私はラーメンにしよう。一口交換しないか?」

「いつも無断で食うじゃん。いいよ別に」

「そうか」

 

ようやく解放された…起き上がり、腕を回して肩が外れてない事に安堵し、歩き始めたヘルガに付いていく。

 

「お前達!私は先に上がる、程々にして飯にしたまえよ」

「「「了解!」」」

 

こういう所を見ると、改めて彼女が上に立つ人間なんだと認識する。普段は俺に肩揉ませたりマッサージさせて涎垂らして寝る癖に…その度にバックレてアスタリスク中を鬼ごっこするハメになるんだけど。

もう逃げる俺と追う星猟警備隊見ても皆驚かないもんね。むしろ笑いながら動画撮りやがるもんね。初めは何事かと言われたがもう慣れたようだ。

 

隊員の訓練の一環にしやがって…毎度俺がなんかしたみたいになってんじゃねぇか…ったく。

 

さて食堂に着いた。この本部の食堂マジでヤバイ。何でも揃ってるし、レヴォルフに行ってない時は昼は用事なくてもここに来る。何かもう隊員さんや清掃員の人となんかも普通に話せるようになった。それくらい馴染んじまった。

 

「うん…美味いな」

「あぁ」

「じゃあ貰うぞ」

「ん」

 

スプーンと箸を交換して一口交換。…夜はラーメンだな。戸塚達誘うか。最近はもうヘルガに振り回されるのにも慣れ、そんな俺を見に雪ノ下達はここを訪れて、訓練の手伝いやその他雑用をしている。

雪ノ下がそもそも星猟警備隊(シャーナガルム)に憧れを持っていて、ヘルガと会った時なんて嬉しすぎてドン引きしてた。

入隊希望を話した所、試験の事を教えてくれたりもしたのは感謝してるが、俺は入隊希望してないぞ。

 

「…君と出会ってもう一月(ひとつき)が経つか」

 

突然言い出すので何事かと思ったが、何でもない、ただ口に出した独り言でもなさそうなので応答する。

 

「…だな」

「アレからも君は色々やってくれたものだ。当時は大笑いをしたな」

「あーもういいだろソレは」

「いーやよくないさ。まさか序列二位にまでなって、挙句野外ステージで星導館の生徒や界龍の生徒と決闘を行って。ステージ破壊まで毎度お馴染みじゃないか」

 

いやそれ俺じゃないからね?元はと言えばリースフェルトが『比企谷先輩、私と手合わせしてください!』何て出会い頭に言うもんだからちょうど近くにあったステージに上がっただけで、後はアイツの技で大半ぶっ壊してたから。俺は防いで彼女の星辰力切れ(プラーナ・アウト)ギリギリまで好きにやらせて、最後は降参って言わせただけだから。

在名祭祀書(ネームド・カルツ)入りして、自身で自覚した伸びた鼻を折ってもらおうとしたらしい。今では彼女も冒頭の十二人(ページ・ワン)序列九位にまで登り詰める大躍進だ。

 

界龍(ジェロン)の件に至っては、まさかの弟子入りの話が入り込んでくる。俺の星辰力の扱いを見た奴が公衆の面前で土下座してくるもんだから、とりあえず戦ってみたのだ。そいつは魔術師としての力と界龍特有の星仙術を巧みに使い、俺と健闘した。魔術師の能力としては、彼は自身の体の一部を巨大化させる能力だそうで、星仙術と合わせて放つパンチは中々の威力だった。思わず神風で相殺してしまうほど。まぁ勝ったけど。その後は自分が弟子入りを志願出来る立場にすらいないとの事でまた修行に戻る…と言ったきり姿を見せない。

 

まぁ他にも色々やらかしたが、今の所懲罰房は回避出来ている。器としての成長も順調で、何か大きなキッカケが欲しい…と言われた。だがそれはベルフェゴールでは無い炎の目覚めだそうだ。クソが。

 

「この後の予定は?」

「あー、クイーンヴェールに」

「ん?…君は女の園で一体何をするつもりだ?」

「バッカ俺にそんな度胸あると思う?知り合いに『依頼』されてた事があんだよ。雪ノ下達も一緒だ」

「む、なら安心だ」

 

まぁ三浦なんだけど。

三浦は本確定にリューネハイムのブランドのモデルになったらしいのだが、その件で雪ノ下に相談していたのだ。早い話、ヨガや運動に付き合うだけなのだが…何故かそのメニューの中にストレス発散、つまり気が済むまで俺の空壁をサンドバッグ代わりにするという狂気が組み込まれていた。

俺は痛くも痒くもないし、三浦は三浦でスッキリ出来てるらしいが何とも……ねぇ?ちなみにこの時は葉山もたまに来るのだが、すぐにフラッと消える。三浦との交際は順調なようで彼女から惚気話は聞かされるが、度々ボロボロで現れるらしい。

 

アイツもアイツで鍛錬してるってことか。

 

「んじゃそろそろ行くわ…」

「お疲れ様。明日はどうする?」

「レヴォルフに顔出してくる。…部屋に果たし状が何枚も来ててな」

「人気者は大変だな。気を付けるんだぞ『破壊神』君」

「それやめろ」

 

そう、アレから変化したのは何も生活だけではない。

…早くも、二つ名が『嵐神』から『破壊神』に変わったのだ。どちらでも呼ばれるが、ヘルガは破壊神が気に入ってるらしい。

雪ノ下は嵐神、由比ヶ浜は破壊神。小町はごみぃちゃん。

 

泣いた。

 

 

 

 

△▽△

 

 

「あ、キタキタ」

「ヒッキー!」

「おう」

「こんにちは、比企谷君」

 

クイーンヴェールの入口で待ってくれてたようだ。まぁ一応部外者だし許可証いるしな。他の施設でやりゃいんだろうけど、なんせ生徒会長が許可してくれてしかもかなり整ったトレーニング場とかあるからいつもここでしてる。

 

「じゃあ早速行くよ」

「優美子、今日はどーするの?」

「ん。雪乃と結衣に体伸ばしてもらってから汗流して…ヒキオ」

「おーらい」

「じゃあそれで行きましょう。比企谷君はトレーニングウェアは…」

 

俺は制服のボタンを、上から二つ開けている。ネクタイもだるんとさせ、いかにもレヴォルフ感が出ている格好から、中にウェアを着ているのを見せた。さっきまで訓練してたからな、中に着たままなんだよ。出る時忘れてて慌てて戻ったわ恥ずかしい。

 

「そ、なら一緒にする?」

「ああ。マシン借りようと思ってる」

「ヒッキーだけいつも別次元トレーニングだけどね…」

 

ま、他の利用者がジョギングレベルなら俺は全力疾走レベルでずっとだからな。トレーニング場は薄着の女性ばかりで、初めて入場した時はそれはもう避けられまくるわ男性恐怖症の人もいるわ遂には理事長出動するわで大変だったが、今ではそこら辺の石ころの様に存在がスルーされている。…ふっ、未だにステルスヒッキーは健在か……(血涙)

 

「……行こ。何かヒキオキモいし」

「………そうね」

「ちょ、二人ともそんな事言ったら可哀想だよー」

 

もうやめて!八幡のライフはもうゼロよ!?

 

 

 

 

△▽△

 

 

いつもながら理事長に挨拶しに行き、許可証を首にぶら下げて校舎内を移動する。すれ違う生徒は皆女子だが、だからなのかなんなのか、見事に避けられている。しかし、たまにではあるがーーー

 

「あ、あのっ、レヴォルフの比企谷八幡さん…ですよね?」

「………」

 

危ねぇ声出してたら裏返ってた。頼むから離れてほしい。

ーーーそう、たまにではあるが、こうして声をかけられる時もある。そういう子は大体距離が近い。リア充故のこの距離感は未だに慣れないが…そして凍えるような視線の慣れたら死ぬと思っているが、一応見逃してはくれているので遅れて返事をする。

 

「…あぁ」

「わたし、あの、動画みてファンになりました!リンドブルス頑張ってくださいねっ」

「ん、サンキュー」

「あ、握手とか…出来ればサインも…」

「あーサインは、すまん。握手くらいなら…」

「ありがとうございます!」

 

そうして差し出した手にうっとりした顔で触れ、握る少女。…そろそろマジで凍えそう。

まぁ、俺も一応六花の有名人として名を挙げた。…主に悪い意味で。

 

「じゃ、俺ら行くから」

「はい、頑張ってください!」

 

トレーニング場に到着するまで、俺の体には二つの冷たい視線が突き刺さったままであった。

 

 

 




レヴォルフの冒頭の十二人、星導館の冒頭の十二人らですが、原作公開中のキャラは今後序列入りを果たすオリ展開です。

今後絡ませるかは分からず…ちょっと原作読み直してきますので今日の更新は終了です
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