はちまんエンペラー   作:Nokato

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第14話

 

 

 

「…あんさぁ雪乃」

「…何かしら三浦さん」

「ヒキオってさぁ……ヤバくない?」

「意味が分からないのだけれど…でも多分、ヤバいのでしょうね」

「あの重りって一個100キロだよね。ヒッキー両手両足に付けてるんだけど」

「ノンストップでもう30分…誰と闘ってんのアイツ」

 

トレーニング場、ルームと呼ばれるクイーンヴェールの施設の一つ。今日も体力作り、または体重管理或いは体型維持…それぞれ色んな理由を持ってこの場所を利用している。が、ココ最近、週に4回ほど今まででは考えられない光景が、今広がっていた。

 

「ふっ、はっ、はっ」

 

自身の動きをよく見れるようにと設置された鏡の前で、半袖をわざわざ丸めてタンクトップの様にし、半ズボンという運動しやすい服装でシャドウをする男。しかしながら、その人物には異常な点があった。

 

まず、この学園は女子しか入学を許されておらず教員すら女性のみという徹底っぷり。しかもこの学園の入学基準は、その容姿すら含まれる故選りすぐりの美少女、美女しかいないのだ。

それなのに、男がいる。まずそこが異常な点。

 

それともう一つは、その人物が両手両足()()()()()100キロの重りを付けている事。なんて事ないようにシャドウで架空の相手とイメージ戦闘を繰り広げている様だが、彼の体には実に400キロ分の重さが加わっている。なのに、苦しそうな表情は見えない。

 

大量の汗で床を濡らし、男の匂いで男慣れしていない女子を惹き付けるイケない男が、ココ最近クイーンヴェールで見られる異常だ。

 

「ふっ、しっ!…は!!」

 

上段蹴りで締めたのか、ゆっくりと体勢を直し、息を吐いた。疲労が見える。彼の目の前の鏡は、熱気ゆえか曇り始めていた。流れる汗を服を捲り拭う。チラリと見えるその腹はバキバキに割れていた。上腕二頭筋も細いながら力こぶがあるのが分かる。

 

「…隼人がいなかったら、あーしも分かんないわ」

「……葉山君がいてくれて良かったわ」

「ヒッキーカッコいい…」

 

まぁ早い話、今日も比企谷八幡は着実にファンを増やしているという事だ。

 

 

 

 

△▽△

 

 

チッ…どんなイメージでもヘルガに勝てねぇ。途中で技をかけられるか、ぶっ飛ばされてる。イメージシャドウを終え、汗を拭いつつ俺は舌打ちをする。

 

〝カッカしてんなぁ八〟

エンペラーか…分かんのか?

〝まぁな。オレ様にかかりゃ宿主の状態くらい訳ねぇよ。…そんなにあの女に負け続けてんのが悔しいのか〟

 

当たり前だ。あの日、初対面アイツを拘束できたのは本当に運だったのだと思う。アレ以降は能力を使おうが使わまいが、一撃足りともアイツに決められていない。

隊員には勝てるんだが…畜生、どこまで高みにいやがるんだあの女は。

 

〝まぁでも、間違いなくお前は成長してる。ヘルガだけを見つめるな。たまにゃ休憩しろ。…お前、2週間ほぼ毎日ハードな鍛錬してるんだぞ〟

…MAXコーヒーとアイツらの声聞けりゃ大丈夫だ。

〝くっさ〟

 

今のは俺もそう思った。エンペラーは満足したようで、もう声をかけては来なかったが…ふと、視線が気になり、未だに鏡の方を向いていた体を反転させる。当然顔も反転…つまり、視線の主達と目を合わせる訳で。

 

「…あの、何か」

 

めっちゃ見てた女子達と目が合いまくった。それにしても皆不満はないのかね…生徒会長や理事長が認めてるとはいえ、一応俺も男なんだけど。

その短パンやタンクトップ着るの本当に自重して欲しい。いや、来てる身で悪いんだけどね?その…何分エッチな事になっている訳でして。俺も思春期男子、女子の汗と香水の匂い、露出の高い服装に囲まれるとヤバい。意味が分からないと思うけどヤバいんだよ。

 

女子ははっとした感じで全員目を逸らしたが、やっぱり何か文句があるんじゃ…と思いながら重りを外し、元の場所に戻す。そしてモップ自分の汗が落ちた床を掃除し、別鏡の前で本日のトレーニングを終えた雪ノ下達が体操していたので、そこに向かった。

 

「おう、終わったぞ」

「お疲れ様ヒッキー。どこか痛い所とかない?」

「余裕。お前らは?」

「大丈夫だし。雪乃と結衣が見てくれてるしね」

「私もよ。…それよりも比企谷君、三浦さんのアレ、今日はいいらしいわ」

 

え、マジで?じゃあ俺ただ単に女子校に運動しに来ただけじゃん。何故?という意味を込めた視線を三浦に送る。

 

「…や、今日の雪乃のメニューがキツくて。シャワー浴びてご飯でも行こうって…ごめん」

「い、いや別にいいけど。どうせここに来てなくてもヘルガの仕事手伝うかレヴォルフ戻ってただけだし」

「今度何か奢るわ」

「気にすんな。お前はお前でリューネハイムに色々やらされてんだろうし、休むのもトレーニングだ。今のうちに休んどかねぇと、来週アイツツアーから帰ってくんだろ?」

「……そーする」

 

リューネハイムは今確かロシアに居るはずだ。一昨日電話が来たからそん時にそんな感じで言ってた気がする。

疲れたように返事をする三浦を二人に任せ、荷物と着替えを持ち俺はルームを出た。

 

ルーム横のシャワー借りたいけど絶対誰かいるしな…クソだるいけど光速で帰るか。制御が難しいし疲れんだよな…まぁ汗臭いままよりイイか。

 

 

 

 

△▽△

 

 

帰宅後すぐにシャワーを浴び、MAXコーヒーで渇いた喉を潤す。あぁ^〜生き返るわ^〜

 

さて、ラーメンに戸塚達を誘うか…っと。メッセージ来てら。

……………なにィ!?葉山と戸塚が純星煌式武装(オーガルクス)の適合検査を受けるだと!?あーんじゃラーメンは一人で行くか。材木座にはちょうど小型銃の煌式武装(ルークス)の調整とそれとは別にナイフも調達してもらってるしな。

 

うーむ…まだ夕方か……

歓楽街(ロートリヒト)にでも行くかね。ちょっと落ち着いて考えると、俺もレヴォルフに少し染まってきているかもしれない。別に故意に物壊したり他校の生徒に喧嘩売ってる訳じゃないが、売られた喧嘩は買うし、夜中に出かけるなんて普通だ。

 

違法行為だけはしないと誓いながら、改めて出掛けた。

 

 

 

 

△▽△

 

 

夜中になるまで歓楽街で遊び、いつものように二人と話して今は日付を超えた大人の時間。って言うとエロいよね。

 

「う……うが…ぁ…」

「イデェ…イデェよぉ…」

「う、腕がぁっ」

 

ま、そんな時間に今日も今日とて襲撃を受けた訳ですが。ちょっと小腹が空いたもんで今日くらいはと思い夜ラーメンに出掛けた俺は、ヤベぇ2食続けてラーメンだぜとか一人テンション上げてた帰りに寮前でレヴォルフの生徒に襲われた。幸いあのヘルガとの戦いで俺の能力がバレたかと思いきや、あの光やら電力やらは他の隊員の能力ということになった。故にバレてないのだが…

 

ついカッとなって電力で肉体強化して体術で闘い、ボコボコにしちまった。今は何人か数えてねぇけど数十人が夜の草の上に寝転がっている。

 

「破壊神…ば、バケモノめ…」

「お前らの学習しねぇよなぁ」

 

伊達にレヴォルフ序列二位張ってねぇんだけど。

とりあえず、大体こんな日常を過ごしていた。

 

流石に部屋に襲撃してきた奴には地獄を見せた。今では彼は丸刈りで品行方正な生徒だ、はっはっはっはっは。

 

 

 

 

△▽△

 

 

『…八幡よ』

「あーー??」

 

材木座に頼んでいた新煌式武装の調整中、レヴォルフの施設を貸してもらって試験運用をしている時に、スタジアムの上の方に居る材木座の声がイヤホンを通して聞こえてくる。

 

『感触はどうだ?』

「切り替え動作に若干タイムラグを感じるな。それ以外は俺好みだが」

『やはりか。そこは我も見抜いておったのだが…うーむ解決策を新たに会議するとしよう』

 

材木座は、入学当初煌式武装の開発をする『獅子派(フェロヴィアス)』という派閥に属していたのだが、そこのリーダーさんと思想の違いが見え、新派閥『自由派(ロマン)』を立ち上げ、着々と大きな派閥と化しているロマンのリーダー、つまり筆頭だ。

一応、他校との協力なのでディルクにも協力してもらい、六花園会議でアルルカントとの共同制作、そして俺がそのモニターをする旨を話してもらった。聖ガラードワース、星導館の生徒会長は本気で驚いていたらしい。アルルカントの生徒会長には俺から話に行ったし、リューネハイムも俺の名が出た途端賛成してくれたそうだ。

界龍の生徒会長は面白そうという理由で賛成派に。しかし条件として『新型』煌式武装の試験運用風景を全学園生徒会長が見学出来るようにと言ってきた。まぁ許可したらしく……だからこそ今俺がこれ使えてんだけどね。

 

材木座は入口の東側で煌式武装の動きを見ている。…その後ろでは、材木座の部下と言える人達が仮想ディスプレイやモニタをズラリと並べ何かを計測、計算、及び調節を行っているらしい。いやマジで何その大出世。

驚く事に、材木座はこの手の話になれば俺達総武勢で右に出る者はいない。あの雪ノ下さんでさえ認めた知識と発想の持ち主だ。今俺は動作確認と、俺自身が動いて素振りなんかをしている中、アルルカントの生徒に指示を送ったりしてる。

 

何せ二つ名まで付いたからな。戦闘クラスじゃないのに。

大砲渇望(ロマ二スト)』。お似合いだぜちくしょう。

 

『八幡、そろそろ』

「あいよ」

 

モニター終了。俺はスタジアム内を移動し、材木座の元へ向かう。

 

「最終感想はどうだ?」

「さっきも言ったが『剣型(ソード=モード)』と『銃型(ガン=モード)』の切り替えくらいだな。あと個人的にショートソードよりバスター派だ」

「そこは許せ。アルルカントには試作バスターが在るのだが、今日はその動作について一度お主のモニターをしたくてな」

「人で変わるようなモンなのか?」

「当たり前だろう!現に、我らロマン最高記録より遥かに早く切り替えていたぞお主は。…まぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだが」

 

つまりこの煌式武装には普通ない電力機構がほんの少しだけ存在するという事だ。他のモニターは一々スイッチを切り替えてソードorガンと切り替えているので切り替え時間に約一秒掛かるのだが、俺は0.29秒でいける。

切り替えに必要な電力を自分で演算して効率化させ、切り替え速度も早めてるからな。それでもタイムラグを感じるから、もう少しだけ違和感を直してくれたら文句なしだ。

 

「今後の課題ってヤツか」

「ああ。これもまたデカい壁よ…しかし我らロマンを追い求める者!すぐに問題解決を行い、新たなロマンを追うのよ!ハーハハハハ!!」

 

後ろでその言葉を聞いていたアルルカントの生徒が割れんばかりの拍手をする。ど、同志がいてよかったな材木座…俺にはまだ友達ほとんど居ねぇのに…負けた気分だぜ。

 

その後は荷物を纏め撤収していった。今は六月、モニターを務め始めてはや半月ではあるが、始めてから二日に一回の試験運用でよくあんなにすぐ解決してくるよなアイツら…

 

と、外まで見送った所で、材木座達とは真逆の西側にいた客人達も外に出てきた。

 

「やぁ、今日も見事なお手前だったね破壊神君」

「かーっかっか!動きに無駄が少なくなってきておる…お主は一体この短期間でどれ程強くなれば気が済むのじゃ?」

「ええ、全くドン引きです」

「…今日も爽やかっすね『聖騎士』さん。『万有天羅』も、機嫌が良さそうで何よりだ。問題は『千見の盟主(パルカ・モルタ)』」

「うふふ…あら、何でございましょう」

「この流れは俺を褒める所だろ。この二人を見習え」

「褒め…?」

「まだまだじゃがな」

「あっ、これ俺キレていいやつだ」

 

上げてから落とすのが一番タチ悪いんだからな。マジで。期待させて裏切るとかマジもう無理。許すまじ。まじまじうるっせぇな。

スタジアムからほんの少し遅れて出てきたのは、聖ガラードワースの生徒会長、アーネスト・フェアクロフ。界龍第七学院の生徒会長、范星露。星導館学園のクローディア・エンフィールドだ。ディルクと樫丸はランドルーフェンの件で出掛けているので今日はいない。

 

初対面から、人間の腹黒さ的に俺よりも圧倒的だったこの三人は俺の天敵だ。毎度毎度俺を弄び楽しんでいる。聖騎士あたりはそろそろ純星煌式武装に見限られて欲しい。

 

「まぁまぁ。今日もお疲れ様。あの新型面白いね」

「…ま、ゲームの武器のパクリっすけどね」

「何でも良いわ!面白ければのう!」

「あらあら」

 

口を開けば面白いだのなんだのしか言わねぇな。

そういえば、初対面の時。聖騎士はオーラが凄い好青年で、パルカ・モルタは薄気味悪い女だったがこの万有天羅だけはマジ頭おかしい。

 

『比企谷八幡ーー!儂と手合わせしようぞーー!!』

『え?ちょ、ほぁーーー!?』

 

スタジアムでいきなり飛び蹴りよ?何とか防いだけどその後も聖騎士が止めてくれなかったら普通に暴れてたと思う。昔の葉山みたいな仮面着けてていけ好かないけどあん時ばかりはナイスだったぜ。

 

「それじゃあ僕らはこの辺でお暇するよ」

「気をつけてください。…万有天羅は特になァ」

「ほほう、儂を襲うのかえ?怖いのう怖いのう!」

「いや、お前が次に足出したらガム踏むからだけど」

「ほぁ!?あ、危なかったのじゃ…!」

「今の動画撮って雪ノ下さんに送っといたから」

「バカモノーーー!?わ、儂の師匠としての尊厳がーー!?」

「嘘だよ(大嘘)」

「なんじゃい…」

 

ホッとする万有天羅。しかし両隣の会長達は顔を背けて肩を震わせて笑っている。隠し切れてねぇぞ。

 

「じゃ、またね」

「それでは、失礼します」

「またのう!」

 

そう言って三人は門前に止めてあった車に乗り込み、姿を消す。

 

夜、雪ノ下さんからマジギレしてクッションをボコボコ殴る万有天羅の動画が送られてきた。

師匠としての万有天羅は尊厳があっても、普段の万有天羅は雪ノ下さんの新しいオモチャと化していた。哀れ。

 

 

 




原作…?知らない子ですねw
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