「悪い、遅れたな」
「ヒッキー!」
「あら、命に別状は…無さそうだけれど、目が穢れてしまったようね腐り目谷君」
「元々ですねそれは…」
まさかの罵倒に膝が挫けそうになるが、持ち前の鋼のメンタルで何とか持ち直す(血涙)
さて、少し遅れて到着したが二人は商業エリア、比較的レヴォルフ寄りの目立つ噴水近くで待っていてくれたのですぐ見つけられた。これからどこに行くのやら…
「んで?どこ行くんだよ、帰る?」
「さらっと帰宅の選択肢を出さないでくれるかしら帰省谷君。というかそれしか選択肢がないじゃないの…」
「当たり前だろ。俺は外に出ると灰になるんだ」
「吸血鬼だ!?」
「バッカ由比ヶ浜お前吸血鬼が外に出たら灰になると思ってんのか?陽の光とかその……ソレがあれになってアレがアレだから」
「どれがどうなのよ…」
呆れた様子の雪ノ下に、疑問符を頭の上に何個も幻視出来るのではという由比ヶ浜。対極の様子に僅かに笑が零れるが、すぐに引き締める。また俺の心を抉る罵倒が飛びかねないからな…セーフセーフ。
「…さて、この後の予定だけれど。今は11時20分だし…二人ともお腹は空いているかしら?」
「私はまだ平気かな〜」
「……ん、俺もまだ大丈夫だ」
「なら店を冷やかしましょうか。雑貨とか、色々見て回りましょう」
どうやら女性の長い買い物に付き合わされるようだ。が、しかし俺にそれは通用しない。何故ならららぽにどれだけデートに出掛けていると思っているんだ……いや小町だけどね。別に手を繋ぐ時に地味に避けられたりしてないけどね?思春期難しい…
まぁ雪ノ下達とも行ったけど、雪ノ下さんにからかわれるわめぐり先輩に騒がれるわで割と毎回誰か別の友人(?)が合流しデートではなくなる。自重して!ほんともう…二人がいいって言うからイイんだけど。
「ん〜部屋が真っ白でお洒落じゃなかったよね〜」
「まぁ、シンプルなデザインだったと言うべきかしらね」
「ほぉ…俺んとこもだ。校風だどうこうって訳じゃないのかね」
「レヴォルフは普通の寮なのね…良かったわ」
「まぁ俺の部屋が一番端で、それ以外の部屋の前とかは穴空いてるわ落書き塗れだわドン引きだったけどな」
「…心配よ」
なんて会話をしながら商業エリアを歩く。二人のすぐ後ろを歩いてるからこそ分かるが、凄く視線を集めている。ま、美人だしなぁ二人とも。…複雑だが嬉しい気持ちでもある。が、不躾な視線は俺が睨みで返しているのですぐ消える。はは、マジこの目便利。何時もは不便な目だが役に立つ時もあるってもんだ。
「比企谷君は…どんな部屋にするの?」
「ん…そうだな。私物が本と服位だから、それらを片せるモンがありゃ十分だ」
「であれば本棚とクローゼットでいいかしら」
「ああ。大体採寸は見りゃ分かるし必要なもんはそれくらい…あーっと、後はまぁ洗剤やら台所用品やらだが」
「私達と一緒ね。じゃあ、その店を探しましょうか」
「だねっ。いやーなんかこういう買い物ってワクワクするよね!」
否定はしない。何も買うものが無くても、買うお金がなくても家具や電化製品を見るのは楽しいからな。
そして俺達は家具や電化製品を見に行った。楽しかった(小並感)
△▽△
選んだ家具やらは俺の意思を尊重した上で二人が厳選した。少しお高いのでは…という値段も、まさかの雪ノ下家の援助で余裕で購入。お母さん、今度肩揉みます。
さて気が付けばもう14時だ。輸送先、時間を指定した時にレヴォルフと聞いた店員は少し顔を顰めたが俺が何とかすると言って安心してもらった。乙女のような顔をしていたがお前ムキムキマッチョマンじゃねぇか俺より強えだろ。多分…
「いい買い物だったわ」
「ねー!割と早く終わっちゃったし、ちょうどお昼過ぎて人少ないかな?」
「…だな。腹も減ってきた所だ、そこらで飯でも…」
と言ったその時。僅かだが遠くから星辰力の上昇を感じた。それは二人も同じようで、一斉にとある方向を見つめる。
「…今のは…」
「…喧嘩かなぁ?」
「決闘じゃねぇか?感じたのは多分普通に商業エリアだぞ」
そう言って二人を安心させようとしたのだが、星辰力は更に上昇する。幾人も気付いた様子だが、いつもの事だと言わんばかりに無視、或いはどこの学校の奴らが決闘しているのか、と話し合っている。
…これがアスタリスクなのか。まるで異世界の様だ。
「…ヒッキー、ゆきのん」
「心配?由比ヶ浜さん」
「うん…だって周りの人が…」
「所々に決闘用ステージがある。そこで行われてるならいいが」
「…二人とも、空腹はまだ我慢出来るかしら?」
…やれやれどうも、女性陣が我慢ならないようだ。仕方ない…
「…見るだけだぞ」
「ええ、分かっているわ。…行きましょう」
俺達は、決闘が行われているであろう場所に向かう。願わくば、到着する前に終わって欲しいが…
△▽△
甘かったらしい。決闘は行われていたが、ステージは周囲になく、花壇の花は腐り果て、コンクリートは焦げ、その場には二人の少女以外に人影はなかった。何してんだ星猟警備隊…
今は建物の陰に隠れて様子を伺っている俺達だが、少女の片方に見覚えがある。
その二人の少女の特徴。まず、薔薇色とでも言うべき明るい髪色を流し、膝を地面につき息絶えだえである片方。もう片方は純白の髪色で、レヴォルフの制服を着ている。…この春先暖かい季節に手袋?
「オーフェリア・ランドルーフェン…!」
ここに来るまでにスタミナをかなり消費したらしい雪ノ下は、息切れで苦しそうにしながら、そして恐怖に震えながら、自身の腕で体を抱き絞り出すように口にしたのは…何処かで聞いた人物名だ。
「う、そ…」
「…誰?」
由比ヶ浜は驚き、一歩下がる。…いやこれは驚愕だけじゃない、恐怖もあるのか。
俺の呟きが聞こえたのか、雪ノ下は掠れた小さな声でその人物の解説を始める。
「…オーフェリア・ランドルーフェン。レヴォルフの
「またの名を、
「…っ」
その名は、聞いたことがある。確か前
「…逃げろ」
「で、でもあの子がっ」
「悪いが他人の命とお前らの命は天秤にかけるまでもない。逃げろ」
「…逃げろ、ですって?」
俺の言葉に疑問を持った雪ノ下が怪訝な表情で聞き返す。
ああ、そうだ逃げてくれ。でないと
「アイツが心配なんだろ?…なんとかしてみる。でもお前らは離れとけ」
「ダメよ、許可出来ないわ。…危険よ、星猟警備隊を呼びましょう」
「悪いが聞けない。…エレンシュギーガルだったか?星辰力を少し高め始めた、もう片方が危ない」
「じゃ、じゃあ三人で…!」
「もし攻撃されてみろ、今のままじゃお前らを守り切れない…」
白髪の方が薔薇髪の方に向けて星辰力を高めだした。瘴気の様な不気味なナニカが白い方の周りに纏わり付く。…不味いかもしれん。
「兎に角、無茶はしないから大丈夫だ。俺も不味そうならすぐにアイツを連れて逃げる。…見ちまった以上見捨てるのは寝覚めが悪いだけだ」
「…すぐに戻るのよ」
「ゆきのん!?」
「…ああ」
「ヒッキー!?…ああもう、絶対怪我しないでよねっ」
「ああ」
そう言って俺は駆け出した。距離は30m程だったのですぐに詰める。俺は薔薇色の前に立ち、その存在を明かした。
「な、何者だ!?」
いや何者ってお前、そんな言葉普通に喋るヤツ初めてだよ…材木座?アレはキャラだろ(一刀両断)
とりあえず、先ずはこの薔薇髪を黙らせる。
「後で説明する。…何がどうなってこうなったのか知らんがやり過ぎだ」
「うっ…し、しかし私には引けぬ事情が…!」
…引けぬ事情?そんなもん知らん。というかそんな言い訳が通用する訳が無いだろう。若干振り返って睨むと、少女はしゅんと下を向いてしまった。よし、コレで後は…
「…誰?」
「…唯の通りすがりだ。とりあえず話がしたいんだが、その星辰力収めてはくれない?」
「…」
ん、意外と素直に収めてくれたな。ハッ…まさか俺に交渉術ならぬ女の子を黙らせる術が…!?無いわ自惚れんなカス。あ、ヤバい自分の心にダメージが…
「…もう一度聞くわ、誰?ユリスの知り合い?」
「わ、私はこんな奴知らないぞ!」
「ちょっとー?こんな奴呼ばわりは酷くない?」
ヤダもう八幡泣いちゃいそう…(吐血)
おっと気をしっかり持てよ俺。目の前にいるのは正真正銘のバケモノ…って、うん?
うんんー???
「…何?私の顔に何か……ぇ?」
俺はジーッとエレンシュギーガルを見つめる。レヴォルフ、手袋、白髪に、あの真っ赤な目。そして、常に人生辛いマジ無理もう悲しみ…とでも言いたげな憂いの表情、何処かで…テレビではない…
「「……あっ」」
そして俺とエレンシュギーガルは両方同時に驚きの声を漏らす。
あの時の…
「…レヴォルフでハンカチを探してた…」
「……まさか、また遭うなんて。運命も、偶には悪戯をするものなのね…」
そう言って表情を変えず、ただコチラを見る少女、オーフェリア・ランドルーフェン。
彼女は、俺がレヴォルフでトイレを探している時に出会った、どうでもいい、唯一度の出会いだと、これ以上の関わりは無いだろうと思っていた。そんな、ハンカチを探していた少女だった。
△▽△
「お、お前達は知り合いなのか?」
薔薇髪がそう聞いてくる。背後は振り返らず、一応肯定する。
「ああ…まぁ、話す程度でもないが」
「ええ、一度言葉を交わしたくらいね。…それで貴方は何をしにここに来たのかしら」
徐々に体内の星辰力をまたも高め始めた少女。俺はその星辰力の底知れなさに驚きながらも冷静に話を続ける。
「言ったろ、通りすがりだ。…買い物途中にたまたまここにな」
「嘘ね。…あの時と同じ、ヘタな嘘…」
「バッサリ言いますね…」
『…感謝するわ、大事な思い出のハンカチだから…』
『あー気にすんな。たまたまブラブラ歩いてたら見つけたハンカチがお前のだったってだけで』
『…』
『別にレヴォルフのトイレを探してたら偶然女子トイレの入口近くに落ちてただけで、元々探すつもりなんて無かったし…』
『…』
『ホントだよ?別にお前に声を掛けたのだって気まぐれだし別に何の意味もねぇし…』
『…』
『その目やめろめっちゃ怖いから。クッソ陽乃さん思い出した…』
「…半年ぶり位かしら」
「あーまぁ…そうなるな」
「…あの時はありがとう。助かったわ」
「じゃあそれに免じて、今は引いてくれねぇか?もうすぐ星猟警備隊が来る、ここはお互い引くって事で…」
「ちょ、ちょっと待て!勝手に話をーーー」
「構わないわ。…どうせもう終わりだったし」
「何を…ぐうっ!」
どうやら痛手を負っているのは薔薇髪だけの様だ。エレンシュギーガルは余裕綽々と言った様子で星辰力を再び収め、背を向け立ち去ろうとする。…その時、チラリと振り返り、こんな質問をしてきた。
「…学校」
「あん?」
「学校。結局何処にしたの?確か友人と来てた…わよね?」
「ああ…アイツらは星導館。俺はレヴォルフだ」
「そう。…じゃあ、また会うかもね」
「今度こそ普通の挨拶を交わしたいもんだ」
「嘘。絶対無視しそう」
「何故バレたし」
「…じゃあ、貴方はまたね。ユリス、貴女はもう私に関わらないで」
そう言って、今度こそエレンシュギーガルはこの場を立ち去った。後に残るのは、俺と座り込み、顔を俯かせるユリスと呼ばれた少女のみ。
「だ、大丈夫だった!?」
「はっはっ…何とかなったようね」
「…まぁな」
とりあえず話を聞くか。由比ヶ浜がユリスという少女に声をかける中、俺は先の走りからまだ体力が、息が落ち着いていない雪ノ下の背中を優しくさすりながら、そう考えた。
八幡達はユリス、綾斗達より一つ上です。なので綾斗の登場はかなり遅れます。