はちまんエンペラー   作:Nokato

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入学式の日

 

 

 

起床。まず、名残惜しいが布団を自分から剥ぎ、断腸の思いで備え付けのベッドから身を起こす。寝惚け目を擦り、置時計で時間を確認…6時半か。

カーテンを開け、窓も開ける。涼しい風と穏やかな朝日が顔を見せ、如何にもという朝を演出。その光を浴びた俺は身体が錆びたのではという程までに硬直する。…あー学校ダルい。

 

寝室から出ればリビングだ。これまた備え付けのソファを一瞥し、キッチンへと向かう。冷蔵庫横のダンボールの山からMAXコーヒーを取り出し、開けて一口。目が冴えた。今なら俺は世界と戦える。

 

さて、こんなに早く起きた理由を思考する。

まぁ大方、ちょーーーっっっっっっとだけ入学が楽しみなのだろう、俺は。以前、というか三年前のこんなに日に、確か俺は事故に遭った。まぁ星脈世代ですし、余裕で助かったんですけどね?まぁ何分油断してまして?怪我したけどすぐ治りましたし別にいいじゃんそんな事忘れろよ。

 

けどまああの事故のおかげ…というのもおかしいがアレで今の生活がある訳だしあの時の俺も今考えればいい事をしたんだと褒めるべきだろうか。

 

「…くぁ」

 

欠伸をし、またその欠伸を飲み込むように口にMAXコーヒーを流し込む。ああ…美味…まじ今度リースフェルトにも飲ませよ。ドン引きしてた気がするけど飲ませよう。けど、リースフェルトの事が知れたら一色辺りアスタリスクに突撃してきそうで怖いな…嫌いじゃないし別にいいんだけど、騒がしいし、まぁ、うん。

 

何にせよまだ入学式まで時間がある。確か入場が9時だから…あー、ランニングでもするか。

俺はクローゼットからジャージを取り出し、寝巻きから着替え、端末とイヤホンを持って部屋を出た。

 

 

 

 

△▽△

 

 

朝の早いアスタリスクは、若干霧がかっている。視界不良とまではいかないが、中々に味のある光景だと思う。

とりあえず、軽くストレッチで体を動かしてから、ランキングを始めた。学園の敷地を出て、軽く商業エリアを目指す。ま、パンくらいは買って食っとこうかなと思った次第。イヤホンを装着し、テンションの上がるEDMをかける。これで調子が出るだろう。

 

暫く走り、探していたスーパーを発見。既に開店していた客は俺だけの様だ。寂しい空間でサンドウィッチを購入し、電子マネーで会計を済ませ帰路に着く。

 

スーパーの袋片手に走る男子高校生(腐り目)。朝からこんな光景を魅せる事の出来る俺はスペシャルな存在だと改めて感じ頬を濡らす。

 

と、そんな時、前方に人影が見えた。後ろ姿で女性だと分かり、キョロキョロしてんなぁ…と他人事の様にスルーする…予定だった。丁度彼女を追い越し背を見せたところで、

 

「…あっ、ちょ、すいません!」

 

声を掛けられたのだ。…あーイヤホン付け直すの忘れてら。恨むぜスーパーのおばちゃん…

周囲に俺以外居ないことは分かっていたので減速し、深く息を吐いてから振り返った。

 

「…な、なんでショッカー」

 

何でショッカー?最後だけ口が上手く動かなくて片言になっちゃったじゃないか働いて俺の口。

案の定女性はクスクスと、口元を隠しながら優雅に笑う。失礼だなお前…

 

「…あの、何か」

 

若干不機嫌になりながらも、逆に俺が問いかけた。すると女性ははっとした様子で俺に謝罪する。

 

「あぁすいません、笑っちゃって。ええと、聞きたい事があるんですけど」

 

そう言って髪を風に任せ靡かせる彼女は、初めて真正面から俺に顔を見せた。霧が薄れ、視界が晴れやかになり、より一層彼女の顔が伺える。

由比ヶ浜タイプの美人だな…

 

「…いやいやいやいや」

「…何か?」

「あ、すまん…すいません、こっちの事です」

「そうですか」

 

危ない危ない、胸はあるけど由比ヶ浜より無いなと思ったのバレかけた。んんっ。

 

「えーと…いいですか?」

「あぁ…はい、何でしょう」

「この辺に、金髪ロングの女の子が居ませんでしたか?」

「……いや、見てないな」

「あー、そうですか。ごめんなさい時間取っちゃって」

「いやいや」

 

いやいや、すまんな()()()()

だって、この女の子(多分年下と推定)の後ろに知り合いが見えたもんで…

 

金髪ロングの女の子、三浦優美子がね。

必死に建物の陰に隠れてこっちの様子を伺っていた様だが、俺とバッチリ目が合い、驚愕の表情と同時に喋んな!!と言う意味で唇n人差し指を立てていた。

何かしらの事情で逃げているのだろう、とりあえず知り合いなので庇ったが…

 

「その子、どうかしたのか?」

 

まず事情を聞いてみた。初対面の女子に話を振るのは、まだ緊張するが今度は普通に声を出せた。

すると少女は大きなため息をついて、その艶やかな唇から言葉を紡いだ。

 

「実はその子に、今日用事…というか、学校の入学式の余興で着せたい服があったんですけど、『あーしにこんなん似合う訳ないじゃん!』って逃げちゃって…あ、今のはその子の口調を真似たんです」

 

あっちゃーもうこれ三浦さん確定じゃないですかー…

 

「…えーと、失礼ですがその女の子の名前聞いてもいいですか?その子の口調に似た知り合いの連絡先知ってるんで、貴女の名前出して聞いても…」

「えっ、いいんですか?すいません…私は…えと、驚かないでくださいね?」

「?…ええ、はい」

「私がシルヴィア・リューネハイムで、その子が三浦優美子って言うんです」

「バッチリ知り合いです。連絡してみます」

 

えーとシルヴィア・リューネハイムさんね。んで、めちゃくちゃ面白そうな余興の為に三浦を使いたい、と…へへへへ、ここであの金髪の鬼を公開処け…もといアイドルにしてやるぜ!

 

「…えと、驚かないんですか?」

「あ?…あ、すいません今のナシ。えーと、まぁ特徴的な喋り方だし、知り合いが被ることもあるでしょう」

「…ああ、そうですね」

 

若干落ち込んだ様子の少女に、俺は首を傾げながら伝える。

 

「んじゃ今から連絡取ります。多分端末の電源までは切って…」

「ないと思います。コールは続くんですけど、私と私のマネージャーのには出なくて」

「ん。…因みにだが、俺のコールも出てくれないな」

「そうですか…」

 

少しシュンとする少女。しかし俺は続ける。

 

「でも、お探しの人物はもうすぐそこにいるぞ。…いますよ、顔は動かさないでください」

「あ、はい。…敬語苦手なら、タメ口でいいですよ。多分私の方が年下ですし」

「幾つ?」

「14です」

「マジか一個下だな」

「だから優美子さんと知り合いなんですね。…で、優美子さんはどこに?」

「お前の右斜め後ろのビルとマンションの間の路地。様子を伺ってる」

「ありがとうございますっ、このお礼は優美子さんからっ!!」

 

そう言うと少女は一気に身を反転させ、三浦の居る路地に駆けた。「ちょっ、ヒキオォォォォォ!?」とか聞こえるし「ぎゃあああああの服は着たくないいい」とか「観念してください優美子さんっ」「いやああああ助けて隼人ぉお!死んじゃう、あーしまだ生きたい!」「死にませんよ!死ぬ程恥ずかしいと思いますけど!」「にゃああああ!!」

 

…もう色々聞こえないけど、とりあえず。

 

「動画今度くれー!」

「はーいありがとうございます!」

「ヒキオォォォォォオオオ!!!!」

 

朝は静かにしましょうね、三浦たん。

 

 

 

 

△▽△

 

 

ーーーーー

三浦がクインヴェールの入学式余興でなんかするらしい。動画手に入れたらくれてやる

ーーーーー

ーーーーー

俺は素晴らしい友を持ったよ。言い値で買おう

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ーーーーー

気にすんな。値段は物の上がり次第だな

ーーーーー

ーーーーー

なんて奴だ君は…最高にクールだよ

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よせやい照れるぜ

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いいのか自分の彼女がどうなると思ってるんだ。多分キャピキャピの服着せられて公開処刑だぞ、本人的に。

まぁ、今俺もそれ所じゃないけど。

 

シルヴィア・リューネハイムってあのすげぇ歌の人じゃんよ。俺ですら知ってる歌手で、クインヴェールの生徒会長でもあり、序列一位。二つ名は忘れたが相当強かったはずだ。その能力は『万能』。

 

大方そこまで急を要する事じゃないから能力を使わなかったのだろうが、もっとそれ使って楽に生きようとは思わんのかね。俺は雪ノ下達がいない状況でそんな力持ってたら万能に頼りまくりだぞ。歌は…そこそこだ、上手くはない。

 

まぁ気にしてもまた会う訳じゃないし。とりあえず帰宅した俺はサンドウィッチを摘み汗を流す。制服に着替えればあら不思議、8時半ではないか。

 

丁度いい時間だ。俺は葉山とのメッセージを終え、部屋を出た。とりあえず今日は入学式で終了…の筈だ。

 

 

 

 

△▽△

 

 

三浦たんから『今度あったらただじゃおかない』という恐ろしいメッセージを貰い、それをキャピキャピな服で送信していると想像した俺は講堂で吹き出し周囲のヤベー奴らに睨まれた。サーセン。

三浦たん…ヤバい寒気したそろそろやめよう。三浦にはメッセージで『逃げちゃダメだ』って送ってやった。シンジくん…笑えばいいとか葉山みたいだな。

 

さてそろそろ入学式が始まる。が、マトモに席についてるのは俺含め少数派だ。大多数が席を立ち、中でも喧嘩をおっぱじめそうな者、友人らとギャーギャー騒ぐ者、後者が目立つが、前者も少なくはない。

 

そんな中、講堂の舞台に小さくてデカい…口汚く言えばチビでデブな奴が現れ、備えられていたマイクを擦りハウリングを起こし注目を集めた。そして…

 

「元気で結構だが、喧嘩は後にしろ。クソ面倒だが入学式を執り行う。…何、ここはレヴォルフだ、すぐに終わる。まずは俺、生徒会長であるディルク・エーベルヴァインの祝辞だが…んなもんねぇ。勝手に動き回るテメェらを一々祝ってられるかってんだ。ーーーこの学院は実力至上主義。闘るなら闘りゃいいが備品壊したら殺すからな。以上、入学式、並びに中等部からの進級式は終わりだ。各自解散、端末に送られた指示を元にこれからのクソッタレな学校生活を楽しめや」

 

そう言って生徒会長は退場した。…え、終わり?

 

「うおおおやるぜええええ!!」

「ぶっ殺す!」

「上等だ表出ろや!」

 

かと思えばあちこちで乱闘騒ぎだ。オイオイ、マジかよ。レヴォルフってこんなに適当なのかよ…

半ば呆れながら、そして逃げる様に講堂を去る。とりあえず、ベンチで休憩しよ…

 

 

 

 

△▽△

 

 

「おいてめぇ、何俺様の特等席に許可なく座ってんだ、あん?」

「…あ?」

 

校舎の影のあるベンチから空を見上げていると、そう遠くない場所から声が聞こえた。喉から勝手に出た言葉と同時に俺は首を正面に向けると、くっちゃくっちゃと音を立てながらガムを食う男がいた。その他に、四人ほど追加でいるが。

ガムの食い方汚ねぇな…

 

「あ?じゃねぇよ殺すぞ。…ってんだよ、新入生か、興醒めだな…オラさっさとそこどけや」

 

どうやら上級生の様だ。大方、俺の制服の新品度に目がいったのだろう、当たりです。

さて、どうしようか。俺の本来の目的はここで強くなる事だ。という事は何れ闘いの道を行かねばならない。ならば…

 

初日から、暴れて名を挙げた方がいいのか?

 

後々思えば、どうもテンションが上がって変な方向に思考が走っていたと思う。が、この時の俺はすぐさま行動に移した。

 

「…アンタ名前は?」

「あん?クソガキ、上級生には敬語だろォが」

「敬う理由が見つからねんだけど。何アンタ強いの?」

「……ほぉ、面白ぇ。新入生をビビらせてやろうと思ってわざわざ学校なんざに足を運べば、俺を知らねぇ奴がいたとはな…」

 

そう言って、上級生は改造制服らしい制服の内側から煌式武装を取り出した。細剣タイプか。

 

「俺はレヴォルフの在名祭祀書、冒頭の十二人。序列七位のリンダ・アッフェルデンだ。これで分かったか?」

「…いや知らねぇな」

「そうかい。…舐めやがってクソガキィ!!てめぇの名前は何だ!」

「…比企谷八幡」

 

そう言うと上級生は後ろの四人を下がらせ、胸元の校章に手を翳して高らかに宣言する。

 

「覇道の象徴たる双剣の名の元に、我リンダ・アッフェルデンは汝比企谷八幡への決闘を申請する!」

 

へぇ…レヴォルフなのに礼儀正しく決闘申請とは、これ珍しいんじゃねぇか?知らんけど。

 

「さっさと受けろ。てめぇの戦歴に入学早々黒星を付けてやるよ」

「ああそう言う…」

 

非公式の決闘では何とでも言えるから、という意味かね。まぁいい、どうせ受けるつもりだったし…

 

何より、序列持ち、中でも冒頭の十二人だ。初っ端からいい勝負が出来そうじゃないか。

 

「…我、比企谷八幡は汝リンダ・アッフェルデンの決闘申請を受諾する」

 

ベンチから立ち上がり、首を鳴らし、次いで拳も鳴らした。リンダは、既に構えている。…ギャラリーが増えてきたな。

 

「おいクソガキ、今なら土下座と有り金で許してやるぜ?」

 

…三下らしい台詞だ。

 

「お前なんなの?どうせそんな変わらんのに人の事年で見下してると…痛い目見るぞ」

「なら見せてみろよ!」

 

カウントダウンが始まる。俺は全身の星辰力を高め、戦闘準備に入る。

ーーーこっから先は、マジの闘いだ。昨日の違法薬物野郎とは、まるで違うだろう。冷静に、且つ目立つ様に。

 

数年前の俺が聞けば鼻で笑うやり方で。俺は新たな生活を始めよう。

 

カウントダウンが、終わる。

 

【スタート オブ ザ デュエル】

 

校章を通して機械音が決闘の開始を知らせた。

 

 

 




オリキャラタグつけとこ…

レヴォルフ序列七位リンダ・アッフェルデン
細剣型の煌式武装を主武装とし、遠距離用に小型銃の煌式武装も所持。魔術師では無いが、持ち前のスピードを活かし近接戦闘を得意としている
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