「そいつは…」
なんつー話だ。確かエレンシュキーガルはアルルカントのクソ女のせいで無理やり星脈世代になったらしい話はリースフェルトから聞いていた。だが、その力が抑えきれてないなんて…
いや待てよ…!確か、リースフェルトを庇ったあの場所は、花壇の花が全て…!
「…気付いたようね」
「お前っ…」
「…ええ。花を枯らせたのは私。……ダメね、まだ無理だと思っていても、花が好きで、どうしても近くで見たくなるの」
そう言った彼女の表情は、あの何処か諦めた表情で、そして泣きそうで。静かな声は凍てついているかのように冷たさを帯びていて、虚ろ気だった。紅玉の瞳は不吉な赤い月を連想させた。
そしてそれら全ては、俺が最高に嫌う。過去を思い出させる、昔の誰かさんの様な様子だった。
容姿は違えど、性別、環境全てが違えど。一瞬、彼女を『本物』が知りたいと告白した時の俺と重ね合わせてしまう。あの時は、雪ノ下に逃げられ、もうどうにでもなれーーとも思ったが、それは一瞬だった。だがその一瞬を、それ以上の時を、重いモノをずっと背負っているのであろう目の前の少女の境遇が許せなかった。
「…花が好きなのか」
「えぇ。…ユリスが居たでしょう?昔、リーゼルタニアの孤児院にいた私は、シスターやユリス達と温室で植物や花を沢山育てていたわ…」
「そう、か」
だったら、そう俺に願うなら、協力して欲しいと言うのなら。何故リースフェルトを突き放すのだろうか。それを問うと…
「…あの子は、私の事を気にしすぎるあまり、周りが見えていないわ。だから、もう私と関わってはいけないの。……それに、私はもう運命に逆らえない事を知ったわ。覆る事は無い、動き出した運命は誰にも止められない」
「オーフェリア!」
「…ディルク、貴方には感謝しているわ。こんな私を買ってくれて、花には近づけられないけれど、それでも生活出来るようにしてくれて。…王竜星武祭。アレも、いい体験だったわ」
人生で、星脈世代になった今を最大限楽しんだ結果らしい。ただ一度の我儘を漏らしたエレンシュキーガルと呼ばれる、触れれば折れてしまいそうな少女の為にこの男は必死こいているようだ。何でもレヴォルフの会長は序列一位の指名制で、色々と既に、星脈世代では無いながらも頭脳で勝ち上がってきた会長はオーフェリア・ランドルーフェンを買い、救う手立てを見つける為、生徒会長になったという。
「…ダメ元なんだよ、元々。その様子じゃ、お前にも宛はない、か」
会長が項垂れる。俺は必死に頭を回転させ…とりあえず、一人では無理だと思い、一旦話を切る。
「…悪いな」
「いや、いい。さっきも言ったがダメ元なんだよ」
「だが、その話聞いたからには協力させてもらおう」
俺がそう言うと、会長の細い目が見開かれる。宛はない。が、方法を探すくらい手伝ってやるさ。
飢えた人に魚を与えるのではなく、取り方を教えて自立を促す…この場合、流石に自立を促す事はしないでもいいと思うが。
まぁ要するに、手伝ってやるということだ。方法位、探す程度協力出来る。
ただまぁ、俺だけじゃあないけどな。
「依頼しろ。『奉仕部』に」
「奉仕部…なんだそりゃ」
「俺が中学ん時に所属してた部活だ。部長が言うには、救われぬ者に救いの手を、という訳だ」
「…それなら、テメェも協力してくれる、という事だな」
「俺以外の部員やら、関係者も含めて、だがな」
そう言うと、会長は姿勢を直し、
「幾らだ」
「…はい?」
「いくら支払えばいい。100万か、1000万か、それ以上か」
「ま、待て待て!金は受け取れんぞ、あくまで俺達は奉仕部…ボランティアなんだ」
もし金なんて受け取ってみろ、あの二人の軽蔑の目の被害に遭うのは俺なんだぞ!それで別れるとか言われたら…あ、死ぬわ。余裕で死ねる。
「だが…」
「あーじゃあアレだ。エレン…ランドルーフェンに聞きたいことがある」
「…何?」
「運命って信じてるか?」
「何を…ええ。そしてそれに抗えないこともね」
ほう、言うじゃねぇか。15の俺が言うべきじゃないかもしれんが、よく14でそんな事言えたもんだ。
まだまだだぜ人生は。今が最底辺だってんなら、いいじゃねぇか。これより先はずっとそれが続くか上がるかしかねぇんだから。
何諦めてんだよ。根性論は好きじゃないが、諦めない精神は大事だぞ。
運命には抗えない、覆らない?バカめ、運命何て最初っから決まってねぇよ。
ハッピーエンドに向かいたいなら自分で動け。勝手に諦めるくらいなら初めから巻き込まねぇだろ。…諦めきれてねえから、今お前はここにいる。だったら。
「そのお前のくだらない運命論、燃え散らしてやる。この依頼、確かに奉仕部として受けたぞ会長。…ランドルーフェン、お前は今日も前もそうだが、いつも下向いてるな」
立ち上がり、俺は彼女にそう言い放つ。
「会長、これ俺の連絡先。とりあえず新しい部屋教えてくれ」
「あ、ああ。……送ったぞ」
「助かる。…っと、ころなさん、紅茶あざした」
「ぴぃっ!?……あ、はいぃ…」
部屋のドアに手をかけ、呆然とする会長とランドルーフェンに向けて、俺は振り返らずに言葉を口にする。まさか、俺がこんなこという時が来るなんてなぁ。
「人は変わる生き物だ。でも別に、変わらない事が罪って訳じゃない、変わる事が悪い事だって、勿論その逆もありうるけど。ランドルーフェン、お前のそれは現状から逃げてるだけだ。……それじゃあ誰も助からないし、誰も救えないぞ」
何時だったか、初対面でこう言われた時はまだ今より幼く、早めの中二病と高二病を患っていた俺は無駄に達観していた故、二の句が継げずぐうの音も出なかったと思う。
でも、俺達は変わった、変われた。恐らく良い方向に。
ならお前でも変われるさ。ちょっと辛いかもしれんが。誰かと喧嘩して、いがみ合って、胸ぐら掴まれたり色々罵倒を受けたりするかもしれんが。
変わろうとしたなら、多分大丈夫だろ。
△▽△
という訳で依頼を受けた俺ですが。一度新しい部屋に戻り改めて端末を開くとメッセージが山のように届いていた。な、なんだなんだ!?このフロアが全部俺のモノっていう驚きよりも驚いちゃったんだけど!?
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比企谷君、決闘の件ニュースになっていたけれど
貴方、初日から何をしているのかしら、メッセージを見たならすぐに折り返し連絡なさい、いいわね?
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ーーーーー
早く
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ーーーーー
由比ヶ浜さんも心配しているわ
ーーーーー
ーーーーー
早く
ーーーーー
その由比ヶ浜さんから『早く』っていう二文字だけのメッセージめちゃくちゃ届いてて若干チビりそうなんですが。えーと、後は葉山と川崎と戸塚か…
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君初日から何してるの?
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アンタ、大丈夫だったの?ニュースで見たけど…
連絡ちょうだい
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八幡っ無事なの!?僕、暫く八幡に会えてなくて寂しくて、なのにニュースで八幡が決闘したって聞いて!葉山君と一緒に居るから、どっちかに連絡返してくれればいいから。僕、待ってるからね?
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戸塚は天使でした。とりあえず全員に『無事だ。その件も含めて話した事があるからレヴォルフに来てくれ』とメッセージを送る。あ、ちなみに雪ノ下さんからは
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お腹よじ切れそうなくらい笑いが止まらない(´^ω^`)ブフォw
大丈夫っぽいけど、何かあればお姉さんに連絡するんだぞー
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と来ていたので『雪ノ下さんは来なくていいです』って追加で送った。一瞬で謝罪の旨とレヴォルフに高速で向かう旨が書かれているメッセージは誤字しまくりでした。
とりあえず、目の前の空間を見渡す。ヤベぇどうしよう、本棚とかだけじゃめちゃくちゃ寂しく感じるぞこの部屋…!
まぁこれまた備え付けのソファやらあるしまだいいか。兎に角俺は会長に頼んで名を挙げた人がレヴォルフを尋ねてきたら俺の部屋に通す様に伝えてもらった。
さて、まずは俺だけでも考えてみようかねぇ。
〝………〟
△▽△
「…そう、そういう事だったの」
「ヒッキーもうマジで心配したし!」
「まぁ無事で良かったじゃないか」
「まぁ、そうだけど…アンタがまさかねぇ」
「八幡、ホントに大丈夫?」
ころなさんを通して全員を部屋に呼んだ俺は、言葉の嵐を受け止め、まずは決闘に至った経緯を話した。この場に居ないのは、戸部と海老名さん位で、材木座は呼ぼうとしたら勝手に来てレヴォルフの生徒にシバかれかけていたらしい所を葉山と戸塚が止めてくれたらしい。そしてころなさんに連れて来てもらった、と。
「ま、そこは大丈夫だ。見ての通りピンピンしてるしな」
「うむ、我も見たぞ八幡よ!あの見事な戦士の生き様と、お主の力を!」
「あーはいはい。あの人はリンダな」
「レヴォルフ内でも有数の戦闘狂だったかしらねー。前回の王竜星武祭ベスト8、今私と同い歳」
「マジすか」
雪ノ下さんと同い歳って事は…リンダさんって大学部一年なのか。というか雪ノ下さんもベストじゃないですか。マジで。
「それで〜?他にも何かお話があるって顔してるね、比企谷君?」
そして、そんな他愛ない話からいきなり切り込んできた。もう心臓に悪いから勘弁して…
だが見れば、全員が俺を見ていた。何となく察してくれていたようなので、素直に吐いてしまう事にした。
△▽△
言えば言うほど、皆の表情が暗くなっていく。事情を大体知っていた雪ノ下達でさえ、ランドルーフェン自身の体がそこまでの状態であるとは思ってなかったんだろう。
言い終えて暫くは静寂が場を支配した。初めに口を開いたのは、年長者である雪ノ下さんだ。
「…厄介な依頼を引き受けたね」
「すいません」
「悪い事じゃないよ。…大方、運命論で自分に諦めをつけてている風の彼女を見かねたとかそんな感じでしょ?」
……なんで分かるんだよ。エスパーか何か?
「私も、前回の王竜星武祭で彼女に負けてるから。試合前に、界龍らしく挨拶した時に見た顔がね」
ずっと気に食わなかったらしい。勝負は本気で来て、負けたのにも悔しさはあっても悔いは無かったらしいが、それでも彼女はランドルーフェンの何処かを気にかけ、声を掛けたらしい。するとリースフェルトに言ったように、これが運命だとか言ってきたらしく、激昂する前に退散したのだそう。
「あの子がねぇ…」
そう言う雪ノ下さんの表情は、既に仮面は外され、身内モードに切り替わっているのか素の感情が現れている。
「常に瘴気を…星辰力を放出してしまっているのなら、何処かでガス欠するんじゃないのかい?」
「そんな事は聞いてないな…だが服や手袋に仕掛けがあって、ある程度は抑えられているらしい」
「…君の『空』で瘴気を押さえつけたりは」
「俺がガス欠すんぞ」
「だよね」
一か八かを葉山が提案するが、それじゃ俺が倒れちまう。あーもう畜生、都合よくランドルーフェンの星辰力だけを抑える力とか降って湧いてこないかなー…
〝……ヨウヤク、願ッタナ?〟
「へ?」
「どうかした八幡?」
「…い、いやすまんなんでも…」
〝オイ、早ク俺様ヲオコセ!〟
「!?」
やっぱりこれが幻聴じゃない。何処からか声が聞こえる。キョロキョロと辺りを探すが、誰もいない。居るのはコイツらだけだし…
〝ダー、モウ出ルゾ!我慢ナラネェ!!〟
「は!?ちょ……ぐァッ!」
「比企谷君!?」
「比企谷!」
そんな声と共に、俺の左腕が激痛を報せる。めちゃくちゃ痛い、まるで燃やされているかのような、熱を持った痛さだ。ダメだ、この感じは…炎が暴走ーーー!?
「っぷあーーー!バーカ、暴走なんざ俺様がいるんだからする訳ねぇだろうが」
ーーーするかと思ったら、炎じゃなくて火の玉が俺の左腕から現れた。同時に痛みは引き、意識は腕から、俺の混乱から一斉に宙に浮かぶ火の玉に移る。
手袋喋る火の玉って何だよ!
「お前…」
「おう宿主よ。七つの大罪を燃え散らす七つの炎の持ち主よ。ただいまエンペラー様のご登場ってな」
「「「はぁ!?」」」
その場に居た全員の声が重なった。態度が驚く程でかい火の玉は、そんな俺達の声に続いて「うおっ、なんだなんだぁ!!」と驚いていた。
いや原因全部お前なんだけど?
エンペラーはずっと火の玉の姿で行きます。左手は移植ではなく、八幡は能力その物と化したエンペラーに気に入られて『空』『光』『電力』の他に『青い炎』があるのだと思ってください
ちなみに12月32日はありませんでしたし、当然エデンもありません。エンペラーは七つの炎の意識みたいなものです。
能力事態に多少の改変を加えていくので苦手な方は申し訳ないです。
この話題を引っ張りつつ、日常や闘いを入れていきたいけど難しいな…