「なんだなんだぁ!!そんなに俺様に驚いたってのか!」
火の玉の癖にゲラゲラと笑う火の玉。もうこれ分かんねぇな…なんて少し投げやりになりつつ、怪奇現象の様な火の玉に話しかける。
「なぁ、お前…何なの?」
「あ?さっきから話し掛けてたじゃねぇか」
「…何て?」
「変な奴。漸く願ったな?」
あーーー!!お前があの声の正体かよ!マジ焦るわあの会長黙って俺に事故物件でも押し付けてきたのかと思っちゃう所っていうか半分そうだと思ってたーー!会長ごめん。
「お前か…」
「ったくよォ。折角俺が目覚めて話し掛けてやってるってのに無視しやがって」
「怪奇現象かと」
「お前…」
なんかすまん。…いやなんで俺が謝ってんだよ驚かせたお前が悪いだろお前が謝れよ謝るんだよ!(責任転嫁)
とまぁ脳内漫才は始める前に終わらせて、未だ固まっている皆を呼び戻す。手を鳴らし、はっと気付いた所で説明を求める。
「んで、結局お前は何なんだよ」
「あん?俺はお前の七つの炎の意識…みたいなもんだ」
「七つの炎?」
「……お前、あーもういいわ。気付いてないのも無理ねぇか」
何がだよ、という前に火の玉は言葉を紡ぐ。どうでもいいけどなんで火の玉が喋るわ目は付いてるわなの?不気味通り越してヤバイよ?(語彙力)
「なんせ
「…封印だと?」
「おう」
「何を」
「だからお前の七つの炎をだよ。…あぁ後それにまつわる記憶やらその辺諸々な」
何を言っているのか一切理解出来ない俺含めた一同は火の玉の言葉を待つばかりだ。
「生まれた時に自分の親に星辰力多すぎて危ないって抑えられて、挙句俺すら封印しちまって。与えたはずの七つの炎の力と記憶までほぼ全部諸々封印と来た」
「はっ…?」
手袋思えば、違和感があったかもしれない。星辰力が器に大して少ない様な、そんな感じはしていた。欠落した力で、満足ではない力だと思う事もあった。
冷静さを欠いた俺は端末ですぐに母に連絡をとる。三コール程度で繋がった。
『はい、どうかした八幡』
「母さん、聞きたいことがある」
『何?』
「…俺の星辰力、封印したのか?」
そう聞くと、少し母さんは口を閉ざした。そして…
『…ええ。私の魔女の力でね』
肯定したのだった。
△▽△
「なんでだ?」
『幼い貴方が、力を持つと周りに避けられると思ったから。生まれた時には既に私の星辰力を遥かに超える星辰力が溢れていたわ』
「だから…」
『…そうね。貴方自身に危害が及ぶと思ったからよ。でも、どうして今?封印が解けたの?』
「…そんな気がしただけだ」
『…そう。いつか解除しなければとは思っていたけど。…今の貴方ならいいのかしら』
「…かけ直していいか」
『ええ。今日は休みだから何時でもいいわ』
「切るぞ」
そう言って通話を終えた。少し考える時間が欲しかったが、今は時間が惜しい。俺は火の玉に話し掛けた。
「なんで今現れた」
「そりゃ…お前が願っただろうが。力が欲しいーって」
「確かに似た事は考えたがな…」
そんなんで封印って解けるものなのかよ。なら俺が家で決意表明した時にでも目覚めろよ。
「と言っても目覚めたと自覚したのはついさっきだ。んで俺様がさてどうしたもんかと思ってるとお前が願うもんだから、しゃーなし教えてやろうと思ったんだよ」
「何を…ああいやちょっと待て」
「あん?」
俺だけじゃない。この場にいる全員が混乱していた。珍しく雪ノ下姉妹が頭を抱え、由比ヶ浜と材木座は既に思考を放棄。いやお前が好きそうなネタなのになんでショートしてんだよ。葉山と川崎も雪ノ下姉妹には及ばずとも一応思考をまとめていると言ったところで、戸塚は何か問題が?って感じに俺を見つめている。可愛い。
「あー…つまりだ」
「おう」
「この現状を打破する力を持ってんのか、お前が」
「正確には俺様を所持してるお前がだがな」
ここで一度嘆息し、おもむろに立ち上がってブツを探した。
ダンボールに入っているソレを見つけ取り出し、開ける。喉を潤し、糖分を多めに摂取して完了だ。MAXコーヒー、最高だぜ。
「…飲む?」
頷いたのは、戸塚と由比ヶ浜と材木座以外の四人だった。
△▽△
糖分を摂取した後、火の玉講座が開始された。何でも俺の力は既に封印解除可能ではあるが、それを解除した所で扱える力ではないらしい。
青い炎はサタンブレイズといい、俺の認識している能力に違いはないらしい。が、封印を解けばそれが全身から出せるようになるようだ。だが、他の六の炎はまだ扱えないとの事。
「器の成長がねぇとパンクしちまうからな。俺様がいいって認めた時に解放してやるよ」
とは火の玉先生の有難いお言葉である。
そして何よりの情報といえば、その炎の中に俺の求めている力があるらしい。
能力を消す、もしくは抑える、或いは呑み込む…そんな力があるとの事。しかしそれもまだ認めてないのでダメだと言われた。なんとかして欲しいと言ったがお前が呑まれて死ぬぞと言われ、俺以外の全員がまず火の玉先生にやめてくれと言ったのでその場は収まった。はええよ言うのが…つか俺もそんな無茶はしないっつの。
「兎に角、ソレがあればランドルーフェンを救えるのか」
「誰だか知らんが、聞いた限りじゃあ俺様にかかれば余裕だな。後はお前次第だ」
そう言われ、少しプレッシャーを感じる。
「…その力の名を教えてやろう。そして闘え。器の成長は死闘の中に生まれる。お前さんが、今日は器が割と成長してから本気出したんだろうから俺様が目覚めたんだろォよ。しっかし…能力の複数持ちたぁなぁ…ま、いい」
「ベルフェ・・ゴォォ・・ル」
その瞬間、俺の体を黒い炎が包み込み…俺の意識は闇に落ちた。
△▽△
「起きろ、八」
「…っ」
目が覚めれば、言葉を失う光景の上にいた。見渡す限りの骸骨、暗闇の中、俺は骸骨を踏み締めてその場に居た。
吐き気が襲うが、口を抑えた途端に目の前に青い炎が現れる。それはドンドン形を…人型をとった。
「チッ…まだこれが限界か」
「おい八。ちゃんと目ぇ覚めてんだろうな」
「…ああ」
「ならいい」
その少年は、俺の名を八、と略した様で、どうからこれからコイツの話を聞けばいいらしい。
「まずは紹介しよう。お前の下にいる骸骨どもは、全て俺様が殺した人間だ」
「俺様は大昔、この力を使って
「何故かは知らんが、俺は炎の…七つの炎全ての意識として目が覚めた。それがお前の中だったって事だ」
「俺様はまず、またこれでクズどもを燃え散らす事が出来ると喜んだ。しかしだ、いきなり封印されて意識はまた闇の中だ。…まーその中でも、お前に起こった出来事やお前の記憶は読めたりするから、寝たままずっと目覚めを待ってたんだが……漸く今日念願の復活を遂げたァ」
……つまりこの少年は俺の能力の…炎の異能の前使用者という事だ。そして、この幾つあるか数え切れない程の屍を築き上げた張本人…!
「…まァ、途中からクズを燃え散らすのは諦めたがな」
「…なんでだよ」
「お前がそういう奴だからだよ。自己犠牲、或いは他人を慮るその精神…反吐が出る。偽善者ぶるだけじゃ飽き足らず、まさか悪に落ちず平和を騙る本物の『バカ』だとは思ってなかったぜ」
そんなにバカを強調しなくても…というか、俺が偽善者だと?
ハッ、なんだそれは。善を語った事が俺にあるか。そんなもん葉山に喰わせとけ。俺は自分のせいで女を泣かせた悪だ。何処ぞの誰かさんみたいに殺しはしてないが、人を傷付ける事くらいはしてきた。
「それだよ。お前は何で傷付けた事しか考えてねぇんだ?お前が傷付けられた事の方が倍…それ以上だろうが。無意識なんだろうが、その自分だけを卑下するのはやめろ。殺しをしてようがしてまいが、悪は存在する。ーーーだからこそ、俺はここに居る」
「…だからなんだよ?こんな所…つーかここどこだよ。こんな所に連れてきて、俺に殺しをしろとでも言いたいのか?」
「んな事言わねぇよ。ただ、お前の考えが聞きたい」
「お前は、もしも愛する人が危機に瀕すれば、人を殺す事を厭わないか?」
なんつー質問だ。イエスともノーとも言いたくはない。クソみたいな質問。
だが決まっている。こんなモン…多分正解はないし、絶対選んでも後悔する。というか後悔しないなんて人間無理だし。つまり俺はゾンビ谷君でもなければ比企谷菌でもなく、ましてやヒキガエルでもない人間である。証明終了。
「助けてみせる。アイツらは死なせない。…だから俺はレヴォルフに行ったんだ」
「…合格だ。その傲慢さ、気に入ったぜ」
そう言うと少年の上に七色の炎が現れる。その内の六つには鎖が巻き付いていて、解放されているのは青色の炎だけだ。
まさか、あれが…
「そう、これが七つの炎…大罪を燃え散らす、七色の炎だ」
「お前が欲しがってるのはこの闇色の炎。名を
つまり…
「ランドルーフェン?だったかの力を抑えたいなら鎖を掛けるしかねぇ。それで無駄な力は抑えられるはずだ、枷の条件はテメェで決めろ」
「…その為には闘うしかないってか」
「あァそうだ。精々俺を楽しませて見せろ」
上等だ。
「なら早くここから戻してくれ。準備がいる」
「…あー言っとくが、ここはお前の、お前の中の俺の精神世界だ。時間も進んでなけりゃ誰もお前がここに来たことなんざ知らねぇし、ベルフェゴールでお前を包んだ時から時は動く。上手く合わせろよ?」
「へぁ?」
「じゃあ戻るぞ。…あぁそうそう。その青い炎の名前も教えといてやる。
サタン=ブレイズ…
「またあっちで会おう。さっさと強くなれよ、八」
「…元々そのつもりだ」
「可愛くねぇ奴」
そしてまた、意識は闇に落とされた。
最後まであのクソガキふんぞり返って偉そうだったな…
△▽△
「…比企谷?」
「あ?なんだよ葉山」
「今、君を黒い炎が呑み込んだ気がしたんだけど…」
「気の所為だろ」
マジであの時からのようだ。俺は適当に話をはぐらかし、火の玉と少しだけ目を合わせ、全員に告げる。
「…どうやらランドルーフェンを救えはするらしい。だが、その力は今の俺には相応しくないらしくてな」
「じ、じゃあどうすれば…」
由比ヶ浜が焦った様に身を乗り出す。それを片手で静止させ、MAXコーヒーでまた喉を潤してから言葉を発した。
「闘う。俺自身の器を成長させるために、俺はこれから闘う」
「…ダメよ比企谷君。それで貴方が傷付く意味は」
「あるさ雪ノ下。元々闘いを求めてレヴォルフに行ったんだ。もうちょい落ち着いて強くなるつもりだったが…火急になっただけだ」
「納得しろと言うの?」
「理解して欲しい。納得は心の問題だ、お前の好きにすればいい」
「……本気なの?」
「ああ」
一応言っておくが、別にランドルーフェンの為に危険を冒そうって訳じゃない。これは、ひいては俺の為になる事であって、当初の目的と何ら変わりはない。
ただ少しはランドルーフェンの為になる事であって、確かに今は彼女の為に急いでいるがどうせ必要な事なのだ…と心の中で言い訳をする。
俺の言葉を聞き、男子陣は呆れた顔を、女性陣は苦い顔をしていた。そんな中、材木座が口を開く。
「…八幡よ。であれば我も協力しよう」
「材木座…」
「我はその渦中のランド何某の原因を作ったアルルカントに属しているが、だからこそお主に役立つ事も出来よう。煌式武装はどうだ」
「小型銃で頼む」
「心得た」
やはり材木座はコチラ側だった。多分コイツは『やべー!我の友達凄いカッコイイ事しようとしてるし我も乗っかろー!』とか大体7割ちょいはそう考えているのだろうが有難い。精々アルルカントの技術を活かしてほしい。
「…はぁ、八幡ってば、もう」
「悪いな戸塚」
「んーん、いいよ。男の子だもんね、分かるよ」
戸塚ってば男だったの…?君は天使でしょ?あれ、でも俺を惑わせる小悪魔でもあり、それはつまり堕天使足り得るのではないか?戸塚…恐ろしい子っ。
「僕も協力するよ」
「俺は出来ない。比企谷」
葉山が強く言い放つ。全員が驚いた顔をしているが、何となくコイツはそういうと思っていた。
「…そうか」
「ああ。俺には煌式武装の提供も、戸塚みたいに、そして彼女らの様に君を支えることは出来ない」
「だよな」
「君の体調ばかりを心配してキョドる俺が見たいならするけど」
「断じて死ね」
「手厳しいなぁ」
そう言ってカラカラとひとしきり笑った後、葉山は俺に近付いてきて、そのままいきなり拳を振り上げた。
打ち出された拳は俺の眼前で止まり、唖然とする皆を放って続ける。
「だから俺は君のライバルになろう。相手が欲しいんだろう?」
「…ああ」
「今年度。ちょうど王竜星武祭があったね?」
「……てめぇ」
「そこの決勝だ。俺は君を叩き潰そう」
「抜かせイケメン。勝つのは俺だ」
「冗談はよせよつまらないぞヒキタニ。いつかのマラソン大会でも言ったろ?…勝つのが
「「君に負けたくない」」
そう言うと二人同時に吹き出した。ああやっべぇ、俺今青春してるかもしれん。
とあるクソガキの言葉だ。ーーー青春とは悪であり嘘である。つまり今の俺は嘘つきの悪だ。おうおう火の玉と同じじゃね?やめてくれよあんな小僧にはなりたくねぇよ…
「首洗って待っててくれ。君を斃すのは俺だ」
「なんか少年漫画みたいだな」
「お、いいね。じゃあ今君は俺の親の仇になった」
「敵役かよ」
「ははっ、…雪ノ下さん、結衣」
そう言って葉山は二人を呼んだ。
「辛いかもしれないけど、これが君達の選んだ男だよ。しっかり支えてやってくれ」
葉山は、それ以降背を向けて、この部屋を出た。
大方星導館に戻って色々何かやらかすつもりなんだろうが…アイツの勝手だ、俺は知らん。
暫くして、今度は火の玉が口火を切った。
「おい女。八は強えよ。それに俺様がいるんだ、死にたくても死ねねぇよ」
「なにそれ怖い」
「…まったく、もう。ヒキョーだよヒッキーは」
「…ええ、完全に同意よ。バカね、男って」
どこか痛みを患った様な悲痛な笑顔で二人は漏らす。
「…ええ、上等よ。どこまでも支えましょう貴方を。覚悟なさい」
「応援は任せてね!声には自信あるから!」
「お前ら…すまん」
「そう思うなら、誰にも負けないで。絶対にその力を手に入れてランドルーフェンさんを救い、王竜星武祭で優勝して私達を誇らせて頂戴」
「…おう、任せろ」
どうやら許可が出たようだ。彼女らがこうなっては、もう雪ノ下さんも川崎も無理やり納得したようで。
川崎は鍛錬に付き合ってくれるそうだ。しかし雪ノ下さんは…
「私も王竜星武祭出るから。雪乃ちゃんに誇られるのは姉である私なの!」
と言って出て行った。
その後は雪ノ下達も星導館に戻り、部屋には俺と火の玉だけが残る。
「…おい」
そういえば。
「あ?んだよ」
「…お前の名前、何?」
お前の名前を聞いてなかった気がする。
「…
「ご大層な名前だな」
「あぁん!?」
とりあえず、今後は精々頑張って見せよう。俺は端末を取り出し、母さんに封印解除を頼んだ。エンペラーに、封印解除で器が…と聞いたのだが。
封印されたのは多分お前の器が暴発しそうだったからだと言われ、封印解除は星辰力だけにしようとしたのだが。炎の封印はそもそもエンペラー自身が重ねてしているので母さんに解除してもらったところで意味は無いらしい。一応解除してもらったが確かに星辰力がとんでもなく増えた事しか分からなかった。
いやそもそも俺様を封印できる女何者だよ…とエンペラーが呟いていたが、マジで俺の母さん何者だろうか。
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二人の話題がアスタリスクを占めた。
七つの炎は後々出します。
とりあえずシリアスもどきの話は終わりで、これからは八幡君に戦ってもらいます。
八幡の二つ名が皇帝になるのは王竜星武祭の時です。