爆破の音と同時に飛んでくる爆豪の手を思いっきり、木を蹴って回避し、着地と同時に走り出す。
もちろん、爆豪がいる位置と反対に。
素の身体能力で、個性を使った爆豪に勝てるなんて、自惚れてもいない。
なので、すぐ個性を使って、先ほどと同じように木の間を滑っていく。
ただし今回は、氷を消さずに。
爆豪の妨害を、少しでもしてくれたら嬉しい。
お守りみたいなものだ。効果は期待していない。
現に、激しい爆発音を響かせ、氷を壊しながら、どんどん迫って来ている。
俺は、出来るだけ自然を壊さないように気を遣っているが、爆豪にそんな考えないようで、普通に草木を吹き飛ばしていた。
やっぱり派手でかっこいいな、なんて思いつつ、次の行動を考える。
今のまま滑っていても、だんだん近づいてくる爆豪を見れば、そのうち捕まるのは、明らかだ。
それに火を使っていないので少し寒い。
一度止まって、俺の下にある氷を思いっきり上に伸ばしていく。
そうすることで、高度が急速に上がっていくのを感じつつ、爆豪のようすを見る。
やはりというべきか、現在氷に乗って上に上がっていっている俺を追って、爆破の衝撃で飛んで来ている。
もしかして、俺だけを狙ってるんじゃないだろうな。
もしそうなら、他のクラスメイトが可哀想にもほどがある。
それと結構、高い位置まで来ていたようで下を見たとか、木がバレーボール玉ぐらいの大きさにしか見えなくなっていた。
酸素の濃度が薄くなって来て、息苦しくなってきた。
これぐらいでいいか。
俺は氷を高くするのをやめ、足に力を入れて。
跳ん、いや飛んだ。
気分は、フライダイビング。
手と足を大の字に広げ、急降下していく。
途中でちょっとずつ、火の個性を使い、ロケットとかと同じ要領で目的の場所に落ちるように修正。
他にも火の個性を使って、体温を上げる。
森の中でやって、引火したらまずいし。
もしかしたら体温上げるためだけの使用で引火なんてしないかもしれないが、試したことがないので一応。
降りる俺と登る爆豪とですれ違ったとき、触られそうになったが、身体を捻って回避。
後ろでクソがぁ、なんて声が聞こえるが無視。
爆豪の手を回避したせいで、体勢を崩してしまったので、またロケットと同じ要領で自分の体を浮かして、体勢を整えた。
そして、ついに目的の場所である真ん中の上まで到着。
地面にあたるぎりぎり、火の個性の最大火力で下にぶっ放し、落下による衝撃を相殺。
生えていた草は、全部黒焦げになってしまった。
若干罪悪感に蝕まれるが、できるだけ気を使ったほうだ。
ここで目的の場所がどのような場所か、説明しよう。
簡単に言えば”木のない土地”である。
まあそんなに広くはないが。
俺の、今使っていい個性、つまりもう誰かにバレてしまった個性は、火と氷の二つだけ。
どちらも、大規模な個性で狭い場所には、あまり向いていない、というか周りへの被害が大きくなってしまう。
なので木のない、つまり周りに気にすることがない場所に来た。
BOMB!
その音とともに俺と離れた位置に落ちて来た爆豪。
恐らく空中で移動するよりも、地面についてから移動した方がいいと考えて、早くに地面に降りたのだろう。
だが残念。
俺は右手を爆豪に向かって掲げながら、笑みを浮かべ、こう叫んだ。
「大氷壁!」
瞬間、俺の手から大量の氷が出現し、爆豪と俺の間に、まさしく”大氷壁”を作り上げた。
爆豪と俺が遊びといって、戦闘訓練をしている、と言ったのを覚えているだろうか。
戦闘訓練。
何回もやってきて、その数、今にはもう3桁にも登っている。
相手は、あの爆豪 勝乙。
雄英の入試の実技で敵ポイントだけで一位を取った男。
そんな相手との勝率。
約8割。
その半分をこの大氷壁で終わらせてる
ただ氷を出すだけ。
だがまさしく俺にとって”必殺技”なのだ。
これを食らわすために、わざわざ空を飛んで目的の場所まで軌道修正した。
今までこれを完璧に食らわせて、負けたことなどないし、今も完璧に食らわせた。
これで勝ち、他のクラスメイトには悪いが、凍傷しない程度の時間は、そこにいてもらおう。
その間に、出来るだけ遠くに行けば、爆豪も諦めるだろう。
そう考え、火の個性で身体を温めながら歩き出した俺の耳に聞こえたのは、くぐもった爆発音だった。
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爆豪 勝己。
大雑把だと思われがちだが、自分の個性を繊細に使いこなす、天賦の才の持ち主。
みんなからは、天才と称えられ、だからこそ大きくなりすぎた自尊心が問題だった。
それほどの才能の持ち主が負けてしまった原因をそのままにしておくだろうか。
何十、何百も同じ負け方をしたのだ。
それほどの屈辱を、この男は気にしないだろうか。
いいや。
そのままにしておくわけがない。
気にしないわけがない。
自分には一歩及ばないライバル、凍焼がいた。
それを越えよう、越えようと常日頃、努力してきた勝己は、”原作”を越える。
本来、雄英の体育祭のときに出来たことを今、約二年ほど早く出来るようになる、という事実をもって。
手の汗腺から出るニトロのようなものを爆発させながら爆豪は、思う。
絶対に捕まえる、と。
はい。
轟の大氷壁が好きだったのでそれを出すためと、爆豪が原作より強いぞってのをアピールするための鬼ごっこでした。
原作で中二の爆豪なら轟の大氷壁を破れない、と思ったのでそれを破れるということで原作より強い、という安直な考えです。
若干後悔。だいぶ反省。