勝手に転生させられた挙句、転生した世界はダンまちでした!? ~主人公ハーレム物語~   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第三十一話 相談

ベルのナイフ喪失未遂事件(仮)から数日、ベルのナイフがなくなるような事態はなかった。 というのも、ベルはナイフのしまう場所を腰のベルトから腕のプロテクターに変更したからだ。 ・・・・・・後日、プロテクターについて話すと、どうやらエイナさんと装備を見に行った日に買ってもらったらしい。 やはりデートなのでは? と思ったが黙っておいた。 あの日、これでもかというぐらいシルさんたちに聞かれ顔を真っ赤にしてたし。 話題は脱線したが、あの日以来ナイフは盗られていない。 さて今日だが、ベルはこの場にはいない。 どうもヘスティア様がやけ酒をしたらしく、その看病のためだ。 理由は不明らしいがよくわからん。 アーデさんの方を聞くと、特に予定はないらしかったので二人でダンジョン探索に来ている

 

「それにしてもアーデさんさ」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

周囲を警戒しながら俺は魔石を拾っているアーデさんに話しかける。 このところ連日のようにアーデさんとはダンジョン探索をしているが、予定とかないのか気になったためだ

 

「予定とかないの?」

 

「予定、ですか?」

 

魔石を拾い終えたのか顔を上げるが、何を言っているかわからないような顔だった。 うーん、まぁいきなりすぎるか。 自分のストレートすぎる言葉に苦笑しつつ、補足して説明する

 

「そう、予定。 今回ベルは自分の神様の看病のために休んだじゃん? そういうふうな私用ってこと」

 

「あぁ、そういうことですね。 特にはないですよ? でもいきなりどうしたんですか?」

 

「いや、このところ連日付き合ってもらってるし、用事とかないのかなーって。 あるならあるで、そっち優先してもらっても構わないし。 契約はしてるけどさ、そこまで縛るつもりはないから。 確かにアーデさんいたほうが楽だけど、ダンジョン探索は一人でもできるし」

 

「・・・・・・もし急用が入るようなら一声かけますから、大丈夫です」

 

一瞬呆けた顔をしたアーデさんだったが、すぐに顔をそむけた。 その背けるとき、そむけて見えなくなるまでのわずかな時間だったが、何かをこらえているような顔に見えた。 またこれだ。 たまにアーデさんはこういうふうな表情をする。 俺とベルと喋っているとき、ふいにこんな顔をして顔をそむける。 理由までは分からないけど

 

「拾い終わりましたし次の場所に行きましょう、どちらですか?」

 

先に歩き始めたため前に居て表情は見えない。 ねぇアーデさん、君は今どんな表情をしながらあるってるのさ?

 

「了解。 次はこっちだ」

 

俺はその気持ちにふたをして、そのまま走り始めた。 結局ベルのナイフのことは聞けないままで、その日のダンジョン探索は終わりを告げた

 

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「ただいまですー......」

 

「お帰りリリィ」

 

ホームで晩飯を作っていると、どうやらリリィが帰ってきたようだった。 今日は豊穣の女主人ではなく、ホームで食べることにしたのだ。 俺がダンジョン帰りに食材を買っていけば、調理器具はあるので料理くらいはできる。 リリィに晩飯のことを聞いたら、今日はホームで食べたいとのことだったしな。 俺も考え事をしたかったからちょうどいい

 

「わあ!美味しそうですね!」

 

「そりゃよかった。 それじゃあ」

 

「「いただきます」」

 

手を合わせ、食べ始める。 食事中は静かに、なんてマナーであるけど、そんなものはとっくに捨てた。 だって酒場とかうるさいし。 話題は大体俺のダンジョン探索についてだ。 リリィのバイトの様子やどんな客が来たっていうのも話には上がるが、俺のダンジョンのほうが比率は多い

 

「今日はサポーターの子と二人で探索したんですよね?」

 

「そだよ。 ベルはなんかヘスティア様が二日酔いでグロッキー状態だから、それの看病のために休んだし」

 

「ヘスティアは......」

 

頭を抱えるリリィ。 同じ神としてーとか、神がだらしないとか思ってるのかな? 同じ神としてそこらへん許せないのかわからんけど。 頭を抱えること数分、諦めたのか思考することをやめたのか、顔を上げるリリィ。 なんか疲れてるけど大丈夫だろうか?

 

「大丈夫、リリィ?」

 

「大丈夫です...... それで、サポーターに変な動きとかはなかったですか?」

 

「いや、特には。 前回も言ったけど、ベルも用心して違う場所にナイフ収納するようになったから」

 

「それならいいんですけど......」

 

リリィには前回のナイフ喪失未遂事件(仮)のことは言ってある。 状況的にアーデさんしか取れる人がいない、ということからアーデさんを疑っているみたいだけど

 

「リリィはまだ心配?」

 

「当たり前ですよ、夕凪はデバイスですから盗られても念話がありますが、それでも心配は心配です。 もしダンジョン内で武器である夕凪を取られれば、バリアジャケットも展開できないんですよ?」

 

まぁ、リリィの心配ももっともなんだけど。 最悪、バリアジャケットは魔力を送っていれば維持は可能だし何とかなるが、流石にモンスターと素手ごろは勘弁願いたい。 いやまぁ、そっち系の道場も通っていたし、護身術程度は問題ないけど

 

「大丈夫ですリリィ、もし変な動きがあれば私からマスターに報告しますから」

 

「お願いしますね夕凪」

 

なんで持ち主である俺を介さずに、デバイスである夕凪に頼むんですかねぇ...... 俺ってそんなに信用ない? 少しへこみながら手を合わせる

 

「ごちそうさまでした」

 

自分の文の食器をかだし、水につけておく。 つけているときに、背中から声がかかる

 

「でも、どうしてそのサポーターはベルさんの武器を盗んだんでしょうか? 今日引退した常連の冒険者さんに聞いた話だと、サポーターは確かに儲からないらしいですが、そんなその日も食べるのもままならない、ということはないらしいのですが。 パーティーによってはお金を払わないパーティーなんかもいるらしいですが」

 

「ベルのナイフなぁ...... ヘファイストス様のロゴ入ってるし、それでか? でも、ヘファイストス様のロゴ入ったものなんか売ったら金は入るだろうけど、足が付くと思うんだよなぁ.....」

 

たぶんアーデさんのあの表情や言葉の節々から感じるものは、リリィの言ったろくでもない冒険者たちのせいのものなのだろうが、それにしても盗みまで働いて金を集める理由が分からない。 結局わからないことだらけなのだ

 

「セフィロスはどうしたいんですか?」

 

リリィのほうを向くと、俺の目を見て真剣に問うてきた。 俺はどうしたいか、俺は

 

「わからない。 アーデさんの状況は確かに可哀想だと思うけど、それに手を差し伸べられるかは別問題だと思う。 俺だけならまだいい、でもこの問題はリリィにも飛び火するかもしれない、そうなるのはごめんだから。 それに、アーデさんのことよく知らないしね。 アーデさんが悪いのか、それともその周りであるソーマファミリア全体が悪いのか。 それを見極めてからでも遅くはない」

 

「・・・・・・はぁ、やっぱりセフィロスは甘いですね」

 

「そうかな? そうかもな」

 

俺とリリィは苦笑する。 確かに俺は甘いのかもしれない


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