吾輩はキャッスルである   作:さるかに太郎

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お姉ちゃんはつらいよ

□ギデオン 【高位操縦士】 レイン

 

 昇ったばかりの朝日が眩しいギデオンの街中。早朝ゆえに人気の少ない道を、私、レインはバイクに乗って全速力で駆け抜けていました。

 

 『了解!待っててねお姉ちゃん、すぐに行くから!』

 

 耳元の通信機から聞こえる、愛しい妹の声と通信を切る音。なごり惜しいけれど、今は事態が事態。じっくり話している訳にはいきません。

 

 常人では到底制御出来ない高速度のバイクを、ジョブの力で無理やり制御、幾度となく高速カーブを繰り返して、とにかく走る。

 

 時折、人を轢きそうになるものの、【操縦士】系統のスキル《歩行者回避》が発動して、華麗に回避、爆走を続けます。

 

 誓っていいますが、私は決して暴走族ではありません。こうして町中を危険極まりない速度で走っているのには、事情があるのです。

 

 ビュンと、背後から飛んできた何かが、私の頬を掠めました。恐らくは銃弾。

 

 背後を確認する為サイドミラーを覗くと、編隊を組んだ五人のバイク乗りが、私を追ってきています。

 

 赤、青、黄、緑、桃色の全身タイツとフルフェイスヘルメットを着込んだ5人組……極めてオーソドックスなカラー構成の戦隊ヒーロー。

 

 それぞれが、パーソナルカラーに塗り分けされた、玩具のようなデザインの銃を構えていました。

 

 彼らは、レギオン戦隊ムゲンジャーを名乗る〈エンブリオ〉。正式名称と正確なカテゴリーは知りませんが、レギオンって名乗ってる以上はレギオンは含まれているでしょう。

 

 赤いの、ムゲンレッドが

「絶対に逃がすな!あのアマはみんなの仇だ!殺れ!」

 

 青いの、ムゲンブルーが

「よくも純真なマスターを裏切ったな……!轢き殺してやる!」

 

 緑の、ムゲングリーンが

「晒し首にしてやる!」

 

 黄色いの、ムゲンイエローが

「油断しちゃダメだよ!あの外道は何をしてくるか分かんないから!」

 

 桃色の、ムゲンピンクが

「みなさん、もうちょっとオブラートに包んだ言葉遣いをしましょうよ!『殺る』じゃなくて、『退治する』『やっつける』って言いましょう!『轢き殺す』じゃなくて『バイクアタックでやっつける』です!ヒーロー、ヒーローですからね私達!イメージ大切ですよ!変なイメージ付いたら、マスターが泣きますよ!」

 

 そんな事を叫びながら、放たれる銃撃。5人同時の銃撃音は重なり合い、機関銃のような連射音となって響きます。

 

 スクラーム走行でもなんでも、《操縦》スキル頼りに曲芸のような動きで回避をしていますが、このままではじきに脳天を撃ち抜かれてしまうでしょう。

 

 時々、背後を振り返っては手にした拳銃をフルオートで打ち返すのですが、相手も華麗に回避します。これでは埒が明きません。

 

 なぜ、朝っぱらから戦隊ヒーローに追い回されるという、日曜朝の怪人の如き事態になっているのか。現実逃避を兼ねて、私の意識は現実時間の昨日に遡り、回想を始めるのでした。

 

 

□ 下宿先アパート 【姉】 日向 晴美

 

 大学生活一年目の終わり、春休みのある日。

 

 私、日向(ひなた) 晴美(はるみ)は、一人暮らしで注意する人がいないのをいいことに、一日中アパートの自室でデンドロ漬けという、非常に不健康な日々を送っていました。

 

 ゲームの世界は良いですね。人間として必要不可欠な良心を現実に置き去りにして、思うがままに生きられます。

 

 現実では他者への思いやりを捨てるなんてとんでもない事ですが、それだけではストレスが溜まる一方。ゲームの中でくらい、悪人を演じてストレス発散しても許されるでしょう。

 

 デンドロ内での私は、マジンギア乗りが集まるドライフの傭兵クラン【鴉の巣】にて仕事を請け負う、傭兵ロールプレイヤーです。

 

 特定〈マスター〉のPK、ライバル商店の企業機密奪取、輸送中の新製品の強奪。逃げ出した新型キメラモンスターの殲滅。楽しそうな依頼を見つけては請け負いこなす日々は、それはそれは充実したものでした。

 

 そんなある日のこと。ドライフ皇国から一部の〈マスター〉に、変わった依頼が出されたのです。

 

 【契約書】で秘密厳守を誓い、《真偽判定》によってドライフに忠実だと判断された〈マスター〉だけが請けることが出来るという、秘密の依頼。

 

 そんな条件が付される依頼は、大抵ヤバイ案件です。国家の闇とかが関わっています。そんな楽しそうな依頼があったら、請けてみたいのがゲーマーというもの。

 

 迷わず志願した結果、私が依頼者を裏切らない忠実な傭兵だったこともあり、人格審査は割とあっさり合格してしまいました。

 

 そうしてありついた依頼の内容は、

 

 「ギデオンテロの戦力確保。アルター王国内での、PKの勧誘。国家転覆レベルのテロの助力!ワクワクしますね!」

 

 何でも、アルターで採れたPKを利用してアルターでテロを起こすそうで、地産地消ってやつでしょうか。考えた人は性格悪いですね。多分フランクリンの発案でしょう。

 

 なんにせよ、国家侵略なんて大イベント、関わらない手はありません。

 

 喜んで依頼を請けた私は、ここのところギデオンに潜んで寝返りそうな〈マスター〉を勧誘する毎日なのでした。裏で暗躍する立場って楽しいですね。

 

 さて、デンドロ内で空腹の警告が表示されたので、現実に戻ってきたところ、時間はちょうど食事時。なにか、お腹に入れないといけません。

 

「何がいいですかねー。……カロリーを考えないと、大変な事になりますよね」

 

 デンドロばかりやっていて運動不足になりがちなので、食事は低カロリーでヘルシーな物を。美味しくて高カロリーな物はデンドロ内で十分です。油断してると体重が恐ろしい数値になりますから。

 

 献立を決める為に冷蔵庫の中身を確認しようとして、ふと、スマホにメッセージが入っている事に気づきました。

 

「お母さんからですね。また、天地でPKを手伝えとか、そんな内容でしょうか」

 

 私と同じデンドロプレイヤーである母は、親子のふれあいを大切にしたいということで、しょっちゅう私をPKに誘います。

 

 しかし、母の所属する国は、修羅の集まる天地。一対一の決闘が好まれる、正々堂々とした殺し合いの国。

 

 偽の依頼で罠に嵌めたり、騙し討ちや不意打ちなどの卑劣で知的なPKを好む私としては、あの正面から殺し合う修羅の国は肌に合わないのです。あまり、やりたくありません。

 

 もしPKのお誘いなら、どうやって断りましょうか。機嫌を損ねると仕送りが止まる可能性もあるので、失礼にあたらないお断りの言葉を考えながらメッセージを確認した所……

 

「……え、ホントですか!?」

 

 そこには、予想外の内容。妹の陽ちゃんがデンドロを始めたというのです。

 

 いや、無理でしょう。どうやったって開幕した瞬間に視線で心が折れる光景しか思い浮かびません。

 

 しかし、どうもメッセージの内容を確認する限り、ゲーム内で何日か過ごしている……というか、PKを二人も殺っているようで。

 

「もしかして、戦えるタイプの〈エンブリオ〉なんですかね。あの子から、そんな〈エンブリオ〉が生まれるとは思えませんが」

 

 何はともあれ、これは良いニュースです。あの子がデンドロを始めたなら、是非とも一緒に遊びたいところ。

 

 そう思った私は、さっそく陽ちゃんの電話番号を呼び出すのでした。

 

 ……ところで、メッセージにはあの子がどこの国の所属か書かれてませんでしたね。

 

 まあ、電話で聞けば問題ないでしょう。電話が繋がり、さあ、楽しい姉妹の会話の時間です。

 

 

 大変な事態になりました。

 

『それじゃあね、お姉ちゃん』

 

「ええ、また、ギデオンで」

 

 その言葉を最後に、震える手で通話を終了させます。不味い。不味いです。不味過ぎます。

 

 「よりによって、アルターですか……」

 

 なぜ、テロが行われようという、このタイミングで。しかも、会話内容からして、割とゲームに入れ込んでいる世界派寄りの受け答えでした。

 

 このまま私が参加しているテロが成功して、陽ちゃんの所属する国家が消滅すれば、私のお姉ちゃんとしての尊厳が地に堕ちてしまいます。あの子に嫌われるかもしれません。

 

 ……いや、いっそ私の尊厳なんてものは、どうでも良いのです。それよりも重要なのは、

 

 「お友達が出来たんですね、陽ちゃん」

 

 電話の中で出てきた、あるティアンの少女の話。よく思い出すと、あの子は別に『友達』という言葉を使っていなかった気がしますが、きっと気のせいでしょう。

 

 これは、間違いなく良い傾向です。もう長い間、家族と扉や電話越しの会話しかしていなかった陽ちゃんが、NPCとはいえ友達を作ったのですから。これをきっかけに、引きこもりを改善出来るかもしれません。

 

 ならば、その更生の芽は大事に、大事に育てなければ。もし、その芽を潰そうとする者……陽ちゃんのお友達が住むアルター王国を脅かす者がいるなら、戦わなければ。

 

 つまり、お姉ちゃんとして、私がやるべき事はただ一つ。

 

「極悪非道残虐国家のドライフを裏切って、テロを潰す。行くべき道は、それだけです」

 

 私の力で国家ぐるみのテロを潰すなんて、無理で、無茶で、無謀もいい所。ですが、それはやらない理由にはなりません。

 

 姉や兄というのは、妹や弟の為なら折れた足でハイキックを撃つぐらいの無茶をするものなのです。私も、昔見たあの格闘選手を見習わなければ。

 

 「だけど、現実的に考えて、何が出来るでしょうか」

 

 気合はあっても、大問題があります。それは、依頼を受ける際に書いた【契約書】。

 

 【契約書】で言動を縛られてる私には、テロ情報をアルターにたれこむ事もできません。ドライフに不利益な行為には、大抵デスペナルティとなる条件が付けられているのです。

 

 【契約書】が影響しないリアルの掲示板などにテロを垂れ込んだとしても、デマが吹き荒れる掲示板で本気にする人間はいないでしょう。

 

 この問題を突破しないと、抵抗すら許されません。抜け道を探るため、私を縛る【契約書】の内容をよく思い出します。

 

 「そういえば、監督権ってのがありましたね」

 

 たしか、寝返りPKの勧誘員には、自分で勧誘したPKについて、自由な監督権が与えられていた筈でした。適当な理由さえあれば、『反逆の疑いアリ』として、殺ってしまっていいのです。その場合、ドライフに対する反逆に当たらず、デスペナルティにもなりません。

 

 殺す理由なんて、いくらでもつけられます。その辺のティアンと話してる現場を押さえて、テロの情報漏洩の疑いでもかければいいのです。

 

「私が勧誘したPKを、難癖付けて自分で殺す。そこから手をつけましょう」

 

 酷い話ですが、PKをする〈マスター〉は、いつ、どこで、誰に殺されても文句は言えないという暗黙のルールがあります。

 

 まずは、自分が勧誘した戦力をしっかり潰す。それが、陽ちゃんに顔向け出来るように果たさないといけない、最低限の責任。

 

 「これやったら、もうドライフに居られませんね。亡命の準備もしておかないと」

 

 ドライフには購入した家もあるのですが、放棄せざるを得ませんね。それ以外のアイテムは持ち歩いてるので問題ありませんが。

 

 さて、覚悟は決まりました。ならば、さっそく、

 

 「気合を入れるために……カツ丼でも食べてきましょう!」

 

 腹が減っては戦はできぬ、これからの戦いを考えれば、まずは腹ごしらえです。今日は特別、ええ、今日くらいはカロリーの高いものを食べてもいい筈です。特盛にしましょう。

 

 外出して乙女にあるまじき超高カロリーの物体を完食した私は、再びデンドロにログインするのでした。

 

 ○

 

□ギデオン近郊の森 【高位操縦士】 レイン

 

 デンドロの中に入れば、私の姿は低身長で可愛らしい少女型アバター『レイン』に変化して、ログアウトした森に降り立ちます。

 

 ゲームとリアルを区別する為に、あえて「晴美」と真逆の、雨を意味する名前を付けた、小柄なアバター。

 

 雨の日にお出かけする少女のような、雨ガッパ(防弾防刃仕様)に長靴(仕込み毒針入り)、傘(ショットガン内蔵)を装備したゴキゲンな姿。

 

 周囲を警戒して、人の目が無いことを確認すると、〈マジンギア〉を《即時放出》付きのアイテムボックスから取り出しました。

 

 ズシン、と重厚な音を立てて現れるのは、従来の〈マジンギア〉より一回りほど大きな、黒い機体。

 

 MP燃費を犠牲にして性能を引き上げ、エンジンやパーツの一部には贅沢にも神話級金属ヒヒイロカネを使用。装甲は厚く、エンジンの出力は高く、各所に強化モーターが増設された改造機体。

 

 うふふふ、いつ見ても素敵な、最高の、私だけのマジンギア。デンドロを始めてからの儲けをほとんど全てつぎ込んだ私のデンドロ人生の結晶体。

 

 レイン専用カスタマイズ機、【マーシャルⅡ改】マジンベインです。

 

 マジンギア乗りは、ちょっと改造しただけの機体を『自分専用のカスタマイズ機』と表現して、名前を付けます。みんな、『専用』という響きが大好きなのです。

 

 このままでも美しい機体ではありますが、まだ完成ではありません。この子は、私の〈エンブリオ〉と一体になって完成形です。

 

「さあさあ、出てきてください、イッシュ。《機体装着》」

 

 〈エンブリオ〉を紋章から呼び出し、機体に取り付ける為のスキルを発動。

 

 現れるのは、2つの機械パーツ。マジンギアのエンジンと同程度の大きさのジェネレーターと、マジンギア本体よりも更に大きい、馬鹿げた長大さのロケットエンジンブースター。

 

 まず、マジンベインの胸元にジェネレーターが吸い込まれました。

 

 ドクン、と。まるで、心臓が脈打つような音がマジンベインから響きます。いつ聞いても心地良い、マジンベインの中で〈エンブリオ〉が動き出した音です。

 

 続いて、ロケットエンジンブースターが背面に合体。ボルトが何本も現れては接続部に打ち付けられ、機体とブースターを強固に繋ぎます。

 

 マジンギアにブースターが搭載されているというよりは、ブースターの先端にマジンギアがくっついていると言うべき歪なサイズ比の機体が完成しました。

 

 合体を終えたマジンベインのカメラアイが光り、明確な意思を持って、こちらを見つめます。

 

 『来たか、契約者(マスター)よ。良くぞ現世より舞い戻った』

 

 「ええ、ただいま、イッシュ」

 

 機体から響くのは、いかつい巨体に似合っていない、やたら大げさな言葉使いの少女の声。

 

 マジンギアを動かし、スピーカーを通して言葉を話す彼女は、私の〈エンブリオ〉に宿る意思。

 

 アドバンス・ルール【唯我独走(ゆいがどくそう) スカイフィッシュ】です。

 

 名前があまり可愛くないので、略してイッシュと呼んでいます。

 

 彼女は機体を操って器用に私をつまみ上げると、ひょいと操縦席に放り込みました。ふかふかの特注シートが私のとても軽い体重を受け止めます。

 

 さっそく機体のコンディション確認を始めると、通信用スピーカーを通して、イッシュが話しかけてきました。

 

 『どうした、浮かない顔ではないか。悩みがあるなら、話すがいい』

 

 「おや、悩み事が顔に出ていましたか」

 

 『うむ。UBM討伐集会に参加して、あと一歩のところでMVPを取り逃がした時みたいな顔をしている』

 

 「……あの時の私、そんな酷い顔をしてましたか?」

 

 私がどんな顔をしているかはともかく、気を遣われてしまいました。相変わらず、マスターをよく見ている優しい子です。

 

 これで、極めて重症なあの病気でさえなければ、完璧なんですが。

 

 『なに、この無限〈エンブリオ〉たる我の力があれば、恐れる物など何もない。話してみろ』

 

 無限〈エンブリオ〉というのは、彼女の脳内設定です。ステータス画面では第6形態と表示されているが、それは世を欺く為であり、本当は〈超級〉を超える〈無限〉なのだとは、本人の弁。

 

 彼女は、『第2病』と呼ばれる、〈エンブリオ〉の第2形態が掛かりやすい病気に掛かっています。

 

 自分の事を超級を超えた『超超級』『第八形態』『無限』と表現するのに始め、やたら闇属性に憧れたり、オンリーワンカテゴリーを欲しがったり、実は自分達〈エンブリオ〉は、この世界を牛耳る『管理者』達の末裔であるといった脳内設定を得意げに語ったり。

 

 人間で言うところの、中二病。普通は第3形態になるまでに治って黒歴史化しますが、彼女は第6形態になっても第2病のままです。

 

 多分、この子の性格は、中学生時代の私がモデルです。あの頃の、黒魔術にかぶれ、まだ小さい陽ちゃんの前で得意げにオリジナル呪文を詠唱していた私にそっくりです。Sランクを超えたSSSランク魔術師とか、そんな設定の黒歴史ノートを量産していた頃の。

 

 この子が話す度に、懐かしい気持ちと黒歴史を引きずり出されて魂を拷問器具に掛けられている気持ちが混ざって襲ってくるのですが、まあイッシュが楽しそうなのでいいでしょう。

 

 『どうした? もしや向こうの世界での悩みなのか?もし病気とかなら、ゲームなんかしてないでお医者様に掛かったほうが。……それとも、また太っ』

 

 機体のモニターにパンチを一発、黙らせます。その先は言わせません。

 

「私はすこぶる健康ですよ。イッシュ、貴方に力を貸して貰いたい案件です。ちょっと、予想外の事態になりまして、ドライフに反逆します」

 

 昨日まで喜んでドライフの為に働いていた私が突然こんな事を言い出すのですから、朝令暮改もいいところ。イッシュからすれば、文句の一つも言いたくなるところでしょう。しかし、

 

反逆(リベリオン)だと!急に反逆とか、一体何が……いや、言葉にせずともよい。我と契約者(マスター)は心で結ばれている。妹君が関係しているのだな。ならば、手を貸さぬ理由は無い!』

 

 さすが、心が読める〈エンブリオ〉。文句を言う前に事態を理解してくれました。

 

 「ありがとう、イッシュ。今度、欲しがってた新しいゲーム買ってあげますからね」

 

 『対戦にもみっちり付き合って貰うぞ』

 

 「ええ、もちろん。なんなら陽ちゃんとその〈エンブリオ〉も加えて、皆でゲーム大会しましょう。4人対戦出来るゲーム、仕入れておきますね」

 

 コクピット内のモニターをいじって、ギデオン周辺のマップを表示。そこには、いくつかの光点が映っています。

 

 それは、勧誘したPKを示す光点。全員に発信機を持たせているので、ログインさえしていれば位置が分かります。

 

 勧誘した数は、全部で10人。とても同時には相手にできません。だから、

 

 「孤立していてレベルの低いPKから、一人づつ殺りますよ」

 

 まずは、確実に数を減らします。最初に高レベルに挑んで返り討ちにあえば、目も当てられません。

 

 気持ちを、勧誘員からPKに切り替える。大丈夫、PK暗殺なんて何十回と依頼でこなしてきました。機体にペイントされたキルマークを、また増やしてやりましょう。

 

 シートベルトを締め、操縦桿を握り、大きく息を吸う。気持ちを昂ぶらせて、準備良し。

 

 「マジンベイン、発進です!」

 

 『了解!ミッション開始、システム、戦闘モードに移行する!』

 

 イッシュのアナウンスに合わせて、ジェネレーターから莫大な量のMPが機体全体に行き渡る。

 

 マジンベインは、性能を無理に引き上げた結果、燃費が酷く悪くなってしまいました。普通の〈マスター〉が使えば、MPが即座に枯渇する欠陥機扱いされるかもしれません。

 

 ですが、イッシュの主要機能の一つ、莫大なMPを生み出し、取り付けた対象に与える《MP供給》がそれを補ってくれます。

 

「一番近い目標は……三キロメテルも離れていませんね。ブースター、全っ開!!」

 

 背中の大型ロケットエンジンブースターが、大量のMPを消費して火を吹きます。マジンベインの巨体が、弾丸の如き勢いで移動を開始。

 

 ブースターから響く、大地を揺るがすような爆音。これが、私とドライフの間で起こる、戦いのゴングの音色です。

 

 「見ていなさい、ドライフ!貴方達の邪悪な野望は、私と、イッシュと、マジンベインが打ち砕きます!!」

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