チノの旅   作:ウボァ(ヽ´ω')
<< 前の話 次の話 >>

2 / 10
第2話

 「はぁ?!……旅に出る?」

 

 私は父、御屋城エンに旅に出たいことを告げた。その反応は予想していたものだった。十五歳の忍はこの世界では一人前の年齢だ。彼が驚くのはきっと私が血継限界だからだろう。

 

 「ダメダメ!チノはまだ子供なんだから」

 

 前言撤回……違ったようだ。どうもこの三年間で彼の親バカには磨きがかかった。というより、彼は私を実年齢より低く見ているのではないか?そう思えるほど子供扱いしてくる。

 

 「もう私も成長したんだよ?やりたいこともあるしさ」

 「と言ってもね〜……ほら、僕達は少々特殊だからさ」

 「血継限界だから危ないって?」

 「そうそう。どうせ護衛も付けずに一人で行くつもりでしょ〜?」

 「護衛ならいるよ。『口寄せの術』」

 

 私は親指の皮に歯で小さな傷を付け、少し血で汚れた手で印を結ぶ。すると私の頭の上で小さな煙がポンっと爆ぜた。

 

 自身の血で契約した動物や道具を呼び出すことのできる忍術、それが『口寄せの術』だ。チャクラ量は呼び出すものの質量や大きさに依存する。ちなみに私にとって得意な術の一つである。

 

 呼び出されたのは一匹の鼠。鼠は小さい忍装束を纏い、背中には小さな巻物を掛けている。野生の鼠よりも少しデフォルメされている鼠だ。夢の国程じゃないけどね……ハハッ。

 

 

 「お呼びでしょうか?ご主人」

 

 頭の上に現れ、後ろ足二足で立つ鼠が私に尋ねる。名前は(のり)、愛称はノリさん。由来はもちろんチューである。ノリさんを見て父はサングラスの奥の目を細める。

 

 「……護衛?」

 「そう、護衛」

 

 彼は渋い顔をしているがノリさんは結構有能である。人語を話せるし、小さい体で偵察潜入も出来る。さらに鼠たちの大将のような立場らしく、周囲の鼠の協力を得ることができる。私がこれからしようとしていることにはうってつけの口寄せなのだ。

 

 「はぁ〜、どうせ言っても聞かないんだろう?……それに僕にはチノを止める権利は無いからね〜。僕も好きなことしてるし…………気をつけなよ」

 「うん」

 「ところでどこに向かうんだい?」

 「色々な所に行くつもりだけど、最初は火の国に行くよ」

 

 その後、父から武具や食料、路銀などをねだってふんだくった。さすが親バカ、なんだかんだで甘い。

 

 さて、目指せ木ノ葉隠れの里。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 道中は特に何事も無い。確かに私は血継限界持ちだが、それが世間に知れ渡ってるなんてことは無いからだ。父の元で隠されたように育てられたのもあるが、一番は血之池一族の知名度だろう。血之池一族を知る者は、一族を追い詰めた雷の国の一部の人間。うちはや日向とは違い今を生きている一族ではない。故に、知っている者の中でも既に滅亡したことになっている。

 

 だが目立ってなかったかと言われればそれも違う。フード付きのコートを着ているとはいえ、この身長と顔だ。度々子供の一人旅は危ないよと、窘められるのだ。恐らく齢十歳未満だと見られているのだろう。その度に説明するのは疲れた。

 

 

 ただその疲れを忘れるように私は道中感動していた。思い返してみれば、今私は『NARUTO』の世界を旅しているのだ。ファンとしてはこれほど感動を覚えることも無いだろう。

 

 転生してもう十五年。今更かと思うが、私はその間ずっと父の屋敷で、半ば軟禁状態だった。護衛の際に少し出ることはあっても、自由ではなく常に緊張感を持っていた。こんな気楽に『NARUTO』の世界観を味わえたのは今回の旅が初めてだ。

 

 

 そんなわけで私は今木ノ葉隠れに続く道を歩いている。あともう少しで木ノ葉隠れを守る感知結界があるのかな。……全くもって見えないけど。

 

 木ノ葉の里を常に覆っている感知結界は空中、地下含めて球状をしている。木ノ葉の上忍や暗部が結界をすり抜ける暗号を持っていたはずだ。

 

 私は暗号を持っていないが案ずることは無い。暗号を持っていない者が入れないというものではないからだ。明確な理由と証明があれば里には比較的安全に入れる。木ノ葉は他の国や他の里からも依頼を受けるし、観光客も受け入れている。

 

 堂々と感知結界を越え、木ノ葉の里へ近付く。原作で見たことが何度もある『あ』『ん』の大きな門が見えてきた。デカっと門を見上げて口を開けていると、門の近くから声をかけられた。

 

 「お嬢ちゃん、木ノ葉の里に何か用かな?」

 

 話しかけてきた人は、なんと言うかあまり特徴が無い人だった。原作でも記憶に無い。

 

 門番といえば髪はぼさぼさで目の下あたりを包帯で隠しているのが特徴の人だったような。えーっと、あの人顔は覚えているんだけどな〜。誰だったかな〜?まぁ、ここにいない人の名前は置いといて……。

 

 私はフードを捲った。門番には顔を見せる必要がある。ぶっちゃけ変化の術とかでなんとでもなりそうだけどね。

 

 「私、お嬢ちゃんって歳でもないよ。それより貴方が門番さん?」

 「あぁ、そうだが。親御さんやお連れの人は?」

 「だからぁ、私はそんな子供じゃないって……はいコレ」

 

 私がポーチから取り出し渡したのは里に入る許可証。本来はここから手続きをする必要があるのだが、よく里を訪れる商人や、依頼におけるいわゆるお得意様には、里に入るのがスムーズになる様にこの様な許可証が与えられる。もちろん里との一定の信頼関係と利害関係は必要だ。

 

 私の父は商人だ。ただしその前に、死の、がつく武器商人だが。小さい組織を初めとして、五大国にも武器を売っている。そのコネで私は木ノ葉の里へ入ることにした。ねだったらすぐ作ってくれたしね。

 

 何を取り扱っているかは伏せているが、私は商人の部下として、里での市場調査を名目に許可を得る手筈だ。

 

 「…まさか十五とはな」

 

 門番のボソッとした声に私の耳は反応した。人の耳は聞きたくない言葉ほど敏感に反応してしまうものである。私のほっぺたは無意識に膨らんだ。許可書には偽名を書いているが年齢は変えなかった。

 

 「何か文句ある?」

 「ははは……」

 

 門番は苦笑いを浮かべてその場を流そうとする。私も里に入る前に揉めるのもあれなので、怒りを収めることにした。

 

 「よし、通っていいぞ」

 

 

 祝、木ノ葉隠れの里!やっぱ心躍るね〜っと、浮かれている場合じゃなかった。私はポーチから木ノ葉の簡易的な地図を取り出し、それを広げながら声を出した。

 

 「ノリさん」

 

 私が呼ぶと、コートの隙間から私の頼れる愛鼠こと、ノリさんが出てきた。するすると右肩にたどり着いたノリさんが尋ねる。

 

 「御命令ですか?」

 「うん」

 

 私は声を潜めて伝える。

 

 「木ノ葉のうちは一族の居住区、それと南賀ノ川付近の鼠を掌握するのにどのくらいかかる?」

 

 地図を見ながらノリさんは思案する。少しして答えを出した。

 

 「この広さなら、一日あれば充分かと。この場所で何を調べたら良いでしょうか?」

 「うちは一族の会合について」

 「かしこまりました」

 

 要件を聞くとノリさんは肩から飛び降り、空中で四回ほど回転しながら地面にスタッと着地した。……かっこいい。その後、とっとこと建物の隙間へ走っていった。……可愛い。

 

 

 さて、私はどうするかな〜。情報が無いと動けないし、情報はノリさんが集めに行ったし……従者が優秀だと主はすることが無いのよね〜。

 

 あてもなく目的も無く、ぶらぶらと木ノ葉を巡ることにした。火影の顔岩を見て、ちょっと早めの昼ご飯として一楽の美味しいラーメンを食べて、食後に美味しい団子を食べた。

 

 それだけでもファンとして満足なのだが、どこか物足りない。理由はわかっていた。せっかく木ノ葉に来ているのに原作キャラに会わないのだ。まぁ、原作スタート前だから主要なキャラが少ないのはしょうがない。……あっ、そっかこの頃はアカデミーにいるのか。そりゃあ会わないわ。そうなれば急げ、火影の顔岩。

 

 

 火影の顔岩のすぐ下に忍者養成学校こと、アカデミーが存在する。アカデミーの目的は、本来忍者を作ることではなく「身の丈に合った任務を受けられる審査機関を作る」という考えの元、二代目火影の頃に設立された。忍者の階級制度及び任務ランク制度として確立され、そうした任務を遂行できる下忍を擁立するためのシステムの一つである。

 

 入学条件は1.里を愛し、その平和と繁栄に尽力する者であること。2.不撓不屈の精神を有し、たゆまぬ努力と鍛錬を行う者であること。3.心身ともに健全であること。以上三つである。

 

 「むぅ……誰もいない」

 

 アカデミーに近い建物の屋上から、校庭を見つめるが授業中なのか人っ子一人いない。つまらないなぁ。今はお昼過ぎ、もうちょっと待ってみようか。

 

 

 しばらくすると校舎からたくさんの忍者の卵が出てきた。その中には原作キャラもいる。私が見ておきたかった二人もその中に。未来の英雄二人。うずまきナルトとうちはサスケだ。ナルトがサスケに突っかかっている。サスケの周りにはファンであろう取り巻きの少女たちが。その中には春野サクラと山中いの、その集団に隠れるようにしてナルトを見つめる日向ヒナタの姿もそこにはあった。

 

 「平和だな~」

 

 子供たちが遊んでいるのを見るとやはり和む。この身はまだ十五だが、前世での記憶が少し残っている私は少し精神年齢が高いのだろうか。……中身だけ大人、どこかの名探偵かな。それにしても今の主人公たちはかわいいな~。それが数年後には殺伐とした世界に生きていくことになるのか。サスケなんて何があったってくらい変わっていくから。……強く生きてね。……まぁ、ほっといても勝手に強くなっちゃうんだけど。

 

 「さてっと」

 

 いつまでも子供たちを見ている訳にはいかない。そろそろノリさんに頼んだことも終わるだろう。私の本来の目的に切り替えなくては。

 

 

 「『口寄せの術』」

 

 日が暮れた後、適当に借りた宿屋の部屋のベットに座りながら、私はノリさんを口寄せした。ポンッという小さな音と共に、私の膝の上にノリさんが現れた。

 

 「首尾はどう?」

 

 ノリさんは私の顔を見上げながら成果を教えてくれた。まず、うちは一族の居住区と南賀ノ川付近の鼠の掌握は完了。今鼠たちはうちは一族の言動に目を光らせているようだ。壁に耳あり障子に目ありというが、こうなれば何処にも鼠あり状態。しかも、本人たちは気にも留めない小さな監視者たちだ。

 

 「それと会合の件ですが、近日中に開かれるとのこと。それも最近は頻繁に開かれているそうです。南賀ノ神社の敷地を住処にしている鼠の確かな情報です」

 

 まだ数週間、長くて数ヵ月間程余裕があるかと思えば違った。うちは滅亡の明確な日付がわからない以上ここだけは運の要素だったが、私はぎりぎりのところで木ノ葉に到着したようだ。間に合って良かった。

 

 「それから居住区でクーデターや革命といった不穏な会話が交わされているようです」

 

 うん、流石私の愛鼠。有能すぎる。なんで忍の皆さん諜報に鼠使わないのだろう。主要なキャラが使ってなかっただけかな。

 

 「ありがとうノリさん。はい、ご褒美」

 

 私はポーチから今日買っておいた小さいチーズを取り出した。ノリさんの今までのきりっとした目が急に輝きだし、細い尻尾をぶんぶんと振っている。

 

 「いえ、拙者はそんな大したことは……」

 「はいはい我慢しなくていいから。全然隠せてないし」

 

 犬も顔負けの様に尻尾を振るノリさんに、掌に乗せたチーズを近づけた。何度か私の顔とチーズを見比べた後、小さい口でそれを頬張る姿はとても愛らしい。

 

 

 ノリさんとは一年前に出会った。父のお屋敷の調理場でこっそりと食料を食べていたところを私が発見。その姿が可愛くて最初見逃し、次に会った時に私がチーズをあげると懐いた。珍しく人語を話せたので契約して口寄せ動物に。まさかここまで有能になるとは思いもしなかった。

 

 ノリさんのおかげで私の目標に筋道ができたと言っても過言ではない。その為にまずは……うちはシスイを救出する。

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。