深夜のコンビニバイトは割と暇です。   作:秋涼

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黄昏

先輩のおばあさんが遠くに仕事に行くため、申し訳ないけど孫に餌をやっといてくれないかと言われ、普段より多めに夕飯の材料を買って家に着いた時、ポロの散歩に行っていたこともが帰ってきた。こともがポロの散歩に行く時間は先輩の帰宅時間と被っているため、大抵帰ってくる際はこともをからかう先輩の声やポロの元気な声が聞こえてくるが今回は妙に静かに帰ってきたので、不思議に思って振り向くと、青ざめた表情のこともがポロの首輪だけがついたリールをもって立ち尽くしていた。

 

ポロの首輪は何か強い力で引っ張られて千切れており、何があったか想像できるがその想像をしたくなくて、こともにポロはどうしたの?と聞くと

お兄さんとポロがいなくなっちゃったとこともがいい、こういう緊急事態に限って頼りになる先輩もポロと一緒にいなくなっており、頼りになるお婆さんも

いないと頭を抱えたくなるが、心ここに在らずのこともを安心させる為にお姉ちゃんが探してくるからお家で待っててねと伝え、昔先輩にもらった懐中電灯を手に黄昏の町にポロと先輩を探しに出かける。せめて自分の目で確認をするまで諦めないと心に誓った。

 

懐中電灯の明かりをつけて黄昏が終わり、夜になった道を先輩とポロを探して歩く。

夜の街を歩くのは母がいなくなり、いてもたってもいられずに夜の街に飛び出した時以来だ。あの時は町の正義の味方、百足マンとデフォルメされた百足のお面を被った先輩が近くにいてくれたお陰で不思議と恐怖が和らいでいたのだろう。

もうあの頃と違い体も大きくなったのに、家から出て少ししか歩いてないのにもう家に帰ろうかと思い浮かんできて、弱い自分に嫌気がさす。

 

電柱の近くには昔のようにうめき声をあげて近づいてくるお化けが出てきたが、小さい時は走って逃げていたお化けも早歩きでかわせる。近づいてきたお化けには先輩から貰った懐中電灯を向ける。見た目はただの懐中電灯だが百足様の神社で清められた水晶をもとに作られたため、その光には退魔効果があり先輩のお婆さんや先輩が使うと光を収束させて光でできた剣を作り、霊をも倒せるらしい。が先輩は殴ったほうが早いと私にくれた。

使う機会は停電した時ぐらいしかないと思っていたが、こんな機会があるとは大切に保管しといた甲斐があったというものだ。

一匹目の黒いお化けを避けた後、道を塞ぐ大きなお化けの目に向かって懐中電灯の光を当てる。

しばらく当て続けると大きなお化けは身悶え、逃げるように姿を消した。

こともとポロがよく行く散歩コースを見回りながら進んで行くと、時々こともとポロが遊んでいる空き地にたどり着いた。

いつもは歩いてすぐの場所なのに思ったより時間がかかるようだ。

人や犬がいるようには見えないが、念の為にと空き地を探していると後ろに人が立つ音が聞こえた。

咄嗟に懐中電灯の光を当てるように振り向くとそこには懐中電灯の光で眩しそうにしていることもがいた。

一人で家にいるのは不安だったのかついてきちゃったようだ。

ポロと先輩がまだ見つかってないけどすぐ見つかるから待っててねとこともに言うとこともは一緒にお家に帰ろうと私に言った。

ここまでくるのに色々怖い思いをしたのだろう。時間のロスは痛いけどこともを家に送り届けたあと探すのを継続しようと決めた時、こともの後ろに先輩が言っていた夜廻さんがいた。

子供を攫って仕舞ってしまう怪異だといってそこまで危険なやつではないといっていたが、先輩の基準での危険の為イマイチ本当かどうかわからない。

危険かどうかはともかくこともには刺激が強すぎる為、こともを後ろを見ないように茂みに隠れるように言い、こともが茂みに隠れたのを見届けたあと夜廻さんと対峙する。

夜廻さんに懐中電灯の光を当てるが何も反応も示さないまま、夜廻さんに掴まれ袋に入れられる。せめて無事にこともが家に帰れるように袋に入れられる瞬間に外に懐中電灯を放り投げた。




お化けの脅威度の説明に信頼度がない可哀想なコンビニ店員

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