深夜のコンビニバイトは割と暇です。   作:秋涼

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幼少期

物心がついた時から不思議なものが見えた。

最初から見えているものだから他の人が見えていないのが分からずに伝え、嘘や冗談と受け取られることが多かった。見ていて気持ちがいいものでもないし、大人達は見て見ぬ振りをしているんだなと思っていた。

 

近づくのは怖かったので遠目に観察していると気付いたことがあった。

普段日中は電柱の影や暗いところでぼーっと立って歩いている人を半笑いで眺めているだけの黒い人影が、人が怪我をする等、何か不幸なことが起きる前に起きる人に纏わり付いていた。

 

何気なく見てた時は、あんなに頬ずりするみたいに半笑いの顔をこすり付けられ、抱きつかれているのに平気な顔で歩いているのですごい人だなと思っていた。

そのまま抱きつかれている人が歩いて赤信号の交差点に差し迫った際、纏わりついていた黒い影が急に離れたかと思うとその人の背中を押して、その人は交差点を通過しようとしたトラックに轢かれてしまった。

幼いながらあれはあまり良くないものだとは感じていたが、やっぱりそうだったと確信した。

そのあとも時々見かけたが、纏わりついていたやつの大きさはまちまちで、影が大きいやつのほうがよりひどいことを起こすことが分かった。

 

 

ある日小学校のクラスメイトの一人に黒い影が纏わりついていた。

そいつは教室中央の一番後ろに座っている俺の目の前の席に座っており、黒い影が背中に乗っているため後ろの席の俺には黒板が見えなかった。その背中に乗せてるものをどかせよと前の席の奴に言うと、何言ってんだこいつみたいな目をされ、余計に腹が立った。

授業内容に興味はなかったが、その時なぜか黒板に書かれる文字をいかに早く綺麗に書けるかという遊びにはまってた俺は横から体を乗り出さないと黒板が見えないため、イライラしていた。

一、二時間目は我慢していたが、3時間目で遂に切れた俺は目の前の席の背中に乗ってる

黒い影をおもいっきり殴りぬいた。

黒い影が横に吹っ飛び隣の席の子供机を倒しながら転がる。

見かける黒い影は車や人が当たってもすり抜けていた為、まさか殴れると思っていなかった俺は驚きで止まっていた。

その間に黒い影は起き上がっていたらしく、半笑いの顔を満面の笑みにしてこちらに飛びかかってきた。

そいつを迎撃する為に椅子を投げたが、椅子は黒い影を通り越し、後ろに消える。投げた椅子には誰も当たらなかったようで少し安堵した。

黒い影はすり抜けた椅子の方に気を取られていた俺に体当たりをして、吹き飛んだ俺はそのまま教室から廊下に繋がる扉に叩きつけられる。叩きつけられた衝撃で扉がはずれ廊下側に倒れる音が聞こえたが気にしている余裕はなかった。

 

次飛びかかってくる前になんとかしなくちゃいけないと思った俺は、近くにある掃除用具箱からモップを取り出し武器にして黒い影を迎え撃つ。モップを武器にして黒い影を叩くと、モップはすり抜けず叩くことができ、黒い影が怯んだのを確認したのち、めったうちにした。しばらく続けていると黒い影が消滅した。

 

倒せた達成感に浸っていると騒ぎを聞き駆けつけてきた教師につかまった。

俺はつかまった後に丁寧に説明したが、頭がおかしくなったと思われそのまま病院につれていかれた。

 

病院でカウンセリングを受けていると、道行く人は見て見ぬふりをしているのではなく本当に見えていないということを皮肉にも理解することができた。

迎えに来た両親が何も言わずによく頑張ったなと言ってくれたことだけが救いだった。

 

病院から復帰して登校してみると、クラスメイトの対応が一変していた。

聞こえるヒソヒソ声に、目を合わせると目をそらしたり、馬鹿にした顔をされる。

それも目の前の席のやつにもされて、曲がりなりにも助けてやったのになんでそんな顔をされなければいけないのかとイライラしたのを覚えている。

 

そのままクラスメイトの対応はよくなるどころかだんだんといじめに発展し、運動をそれなりにできる俺には直接危害が加えられることはなかったが、その分陰湿な方向へ発展していった。

 

俺が精神的に大分弱っていたのを見かねた両親が、不思議なものが見えるのなら祖母に対処を教えてもらってきなさいとおばあちゃんがいる田舎の町へ引っ越すことになった。

 

 

 

 

 

 

犬の鳴き声が聞こえ、顔を舐められる感触がした。

目を覚ますとあたりはすでに真っ暗で崖の上にある道路の街頭から届く光で目の前にいる犬がポロだということが分かった。

 

ポロの無事を確かめて、自分の状態を確認することにした。

ポロをかばって車と接触する瞬間に衝撃を後ろに流したつもりだったのだが、足りなかったらしく、肩が外れていたのと落ちる際に木の枝とかで切ったのだろう傷があちこちにできていた。

 

肩を嵌めなおし、動くのを確認した後、こともちゃんにポロの安全を伝える為、俺はポロと一緒に夜の街へ歩き出した。

車に乗っていた薬物中毒者のようなやつれた顔をした男はぼっこぼこにすると心に誓いながら。

 




両親「対処法は自分たちでも教えられるが、仕事で移動できないため、婆様に頼もう!」

深夜廻の時の彼ならポロを担いでそのまま運転席へダイナミックエントリーで車にのっている男は終了していました。

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