「いやぁ悪いね、勉強の邪魔しちゃって」
「いえいえ、私も休憩したいところでしたし」
図書館で資料を調べようとしたところ、夏休みで勉強しに来ていたことねちゃんに声を掛けられた。雑談がてら、この町の信仰やら伝説やら書かれた資料などを探しているといったら
すぐに資料を探してきてくれた。
「それにしてもすぐ持ってきてくれたけど、何処に何の本があるのか全部把握しているのかい?」
「いえ、勉強をしに図書館にはよく来ますけどさすがに全部わかりませんよ。私も気になって調べたことがあるので場所を知っていただけです。隣町じゃなくて、私たちが住んでる町のほうの事ですけど。あとは私も見たことありませんが、役に立ちそうなのを何冊か持ってきました!」
あんな出来事があったんだ。まぁ気になるよね。
「ところでなんでまた、調べようと思ったんですか?」
「いやぁ、隣町でバイトすることになって休みに暇だったから山に行った時にトンネルの奥にいたやつほどじゃないんだけど似たような嫌な感じを覚えたからね。新しいバイト先も慣れてきたし、念のため調べとこうと思ってね。」
「そうだったんですね。最近こともが隣町にも行こうかとポロに話しかけてたのを聞いたので山に行くのだけは絶対にやめなさいと言わないと……その、私も一緒に調べてもいいですか?」
「いいけど、勉強は大丈夫なのかい?」
「大丈夫です。今日の分は粗方終わったので!」
「そうか、じゃあ一緒に調べようか。」
ことねちゃんと一緒に調べたところ、この町には神様が2柱いるらしい。
一つは山に縁を結ぶ神
その神は随分と寂しがりやらしく、気に入った人を山に誘導し縁を結んで取り込み。取り込んだ人物(以後生贄)を元にして生贄の大事な人に縁を結び、取り込む。といった事を繰り返す神らしい。名前は調べたけどどこにも書いてなく分からなかった。
もう一つは理様と呼ばれる神
ハサミの付喪神が信仰を経て神格化したものだと書かれている。山に住む神と対極でこの神は縁切を司る神で山に住む神に縁を結ばれて連れていかれるのを阻止するほか、病気、災害、悪縁などを断ち切る神でこの町で信仰されていた神だったらしい。
この神はとても慈悲深い神様で、もういやだと呪文を唱えると助けてくれる
俺たちの住んでる町で例えると山の神がトンネルの奥にいたあれで。理様が百足様になるのかね。昔に信仰されてたなら神社とかあってもいいはずなのにコトワリ様を信仰している神社なんて聞いたこともないな。と、おっと次のページに書いてあった。ダム建設の際に旧市街が水没したため神社正面の入口が使えないため、山の参道の奥地に神社があるらしい。地図で確認したが結構遠いな。
「んーコトワリ様……どっかで見たような……」
ことねちゃんがしばらく考え込んでたが、急にハッとして週刊誌コーナーに向かい、一冊の週刊誌を持ってきた。
「これ読んで見てください。このオカルトコーナーのやつですがこれもコトワリ様って書いてあってこれってこの町の理様のことなんでしょうか?」
差し出された週刊誌にはコトワリ様という怪異は首と手足を持つモノの前に現れ、その手足を断ち切るまでひたすら追いかけてくるらしい。やり過ごすためにはコトワリ様に首と手足がついた人型の物を差しだすと人型の物の手足を切断したコトワリ様は満足して帰っていくらしい。と書いてある。
先週ぐらいに手が切断されている、死んでいるのにさらに殺されている地縛霊を見たばかりなので冷や汗がでる。
「もうちょっと調べないとはっきり分からないな、それでもコトワリ様の噂はシャレになってないからあまり外を出歩かないようにね。あと、どうしても夜、外に出なきゃいけないときは、人形を持っていくといいよ。まぁ用心しとくに越したことはないからね」
「人形ってことものおもちゃ箱に入っている人形ですか?」
「そそ、それ!まぁ使う機会がないことが一番だけどね。」
時計を見るとすでにもうすぐ夕方に差し掛かる時間だった。
「おっと、こんな時間か付き合わせちゃったし、家まで送っていくよ。」
「ありがとうございます。あとついでに八百屋とお肉屋によっていってもいいですか?」
「お肉屋かコロッケでも買って帰るかな」
「あ、もしよかったら送りついでにうちでご飯でも食べていきませんか?こともも喜ぶでしょうし、夜にあまり出歩かないように、こともの説得を手伝ってくれると助かります。」
「あー……分かった。じゃあご馳走になろうかな」
「はい!じゃあ行きましょうか!」
送り届けて家に帰ったら準備して理様の神社へ行ってみるかな。