深夜のコンビニバイトは割と暇です。   作:秋涼

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夜廻する子供保護システム

この地域のコンビニの夜勤の開始時間はかなり早い。

日が落ちる前に始まり、日が昇ったら朝勤の人が来るシフトになっている。

夜勤の売り上げが絶望的な為、夜に配送トラックすら来ないのがこのコンビニの特徴である。

店を閉めてもいいんじゃないかと思うが、突然の物入りや緊急時の逃げ込める場所もあったほうがいいとのことで、夜のコンビニは粛々と営業している。自分が休みの日は店長か、コンビニから家に近いバイトが担当してくれている。

店長とバイトが夜勤の時はなにかあったら自分に連絡する事と、絶対に店の電話は出ないようにと言ってある。百足様のお札や塩やらできる限りの防備は固めているものの、メリーさんのような条件を満たして出てくるようなのに対しては効果が薄い為、他の人が遭遇しないように、なるべく休まないようにしている。

自分の住んでいる町みたいに百足様の加護があればこのようなシフトじゃなくてもいいがそう上手くいかないものだなと感じる。

粗方の商品の発注、前だし、廃棄品の確認などが終わり、夕食を食べて腹ごなしに外にいるやつらをバットで念入りに吹き飛ばし(今日は鉈を持った物騒な小さい奴がいた)て汗をかいたので、ドリンクの補充のついでに涼んでいると店の電話が鳴り響いた。

 

時計を見るとまだ深夜でもなく、そろそろ子供が寝る時間かなというところ。

メリーさんかなと思ったが、彼女は深夜から丑三つ時にちょっかいを出してくることが多いので普通の電話と判断し電話に出ることにした。念のためバットを近くに用意し電話に出ると店内が一変し、店内の空間が赤く染まる。しかしそれは一瞬で、直ぐに元の店内の雰囲気に戻った。

 

これは夜廻さんが子供を連れて来たよということを百足様が教えてくれる時にこんな風になる。百足神社の片隅にはコンテナがあり、夜廻さんが子供を保護(ゆうかい)して来た時にここに入れていくのである。神社ができた当時はコンテナはなかったが、無いと夜廻りさんは結構広い元廃工場跡の土地の何処かに子供を置いていくので、探し回るよりは何処に居るか分かるほうがいいので、安全かつあまり目立たない所にコンテナを設置させてもらっている。

 

電話を受けた後、直ぐに店長へと連絡して少し店を離れる事を伝えた後、コンビニの制服を着たままバットと懐中電灯を持って店を出る。

働いている手前あまり褒められたものではないが、子供に万が一があるといけないのと、早く行かないと夜廻さんが連れてきた子供がコンテナから脱出し何処かに行ってしまうので、早急に駆けつける必要がある。コンビニの制服を着たままなのは、突然知らない所に連れて来られた子供が突然バットを持ったお兄ちゃんに声をかけられたらほぼ100%逃げられる為、少しでも警戒させないように見慣れてるであろうコンビニの制服を着ているのである。

 

コンビニから百足神社までの道筋をタイムアタックするかの如く、最短で駆け抜ける。

道先に白くて巨大なやつが立ち塞がっていたので周囲に音に寄ってくるやつがいないのを確認した後に、地面をバットで軽く叩いて俺の接近をやつに知らせる。急いでいるので素直に道を譲るならよし、退かなければそのままぶっ飛ばすだけなのだが、幸い素直に消えて道を譲ってくれたのでそのまま神社へスピードを維持したまま向かうことができた。

途中、道路で進行方向へ向かう上半身だけで疾走するやつが居たので分岐路まで乗り、降りるときにバットで消滅させて時間を短縮させる。

自己ベストを更新したことで満足感と共に神社へ到着した。

コンテナに向かう前に軽く百足様に参拝した後、コンテナに向かいつつ周囲を確認すると、まだ連れてこられた子供はコンテナの中で意識を取り戻していないらしい。意識があったら泣き喚いたり何とか脱出しようとしているからだ。すでに脱出しているのならば、町へ戻る道は自分が通って来た道しかない為、会っていないという事はまだコンテナの中にいるのだろう。

 

あまり大きな音を立てずに静かにコンテナを開けると、活発な印象のこともちゃんとは違った、赤いリボンが似合う女の子が眠っていた。

 


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