深夜のコンビニバイトは割と暇です。   作:秋涼

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山にて

気配的には山の頂上のほうかなとお兄さんは言うと私の手をひいて山を登り始めました。

頂上までの道は町の中では出なかったでかいお化けが沢山出てきました。

お兄さんは遠くに出てきた大きなお化けに向かって刀を振りました。

すると遠くにいたお化けがお兄さんが刀を振った形に切れて消えていきました。

 

今までお化けを避けて通って来たけど、こうもあっさり消えていくのは私でもおかしいと思うので、どうしてこんなことが出来るのかとお兄さんに聞いてみることにしました。

するとコンビニバイトは色々な事が出来ないと務まらないからねとのことでした。

コンビニバイトってすごい、そう思いました。

 

お兄さんが刀を持っているので懐中電灯が使えない為、明かりを照らしてお化けを見つけたりするのは私の役割です。お化けを見つけたり、道を見やすいように照らすとお兄さんが胡散臭い笑顔を浮かべて褒めてくれます。

夜の山でお化けも出てくるのに、なぜかお兄さんがいると昔にいった遊園地のアトラクションのようだと感じました。

 

お兄さんに手を引かれて順調に進んでいくと山頂にたどり着きました。

そこでお兄さんは困った顔をして気配が強すぎて詳しい場所がよく分からないらしく辺りを探し始めました。

 

お兄さんが探しているのをクロと眺めていると突然声が聞こえてきました。

ソイツハキケン、ソイツガ ワタシヲ サラッタ キケン ハヤクコッチニオイデとハルでいてハルの声じゃないような声が聞こえてきました。さすがに一緒にきてお兄さんは危険じゃないと思うがなんでそんなことを突然いうのだろうか。声は奥のほうから聞こえてきており。お兄さんに声を掛けようとしたが声が出ず、体が勝手に奥へと進んでいきました。

 

道の先には崖になっていて崖の近くに大きな木が生えており、木の幹に紐がぶら下がっていました。

体は紐目掛けてゆっくりと動いていきます。

体が勝手に動き始めてから頭の中に常にオイデ、オイデと声が響いていて、山に入った時のお兄さんの言葉を思い出しました。お兄さんの言ってたことはこういう事なんだなと感じました。

木へもうすぐ到着しそうな時に頭に痛みが走りました。

 

気づくと体も自由になっていて、声も聞こえてきませんでした。

振り向くとお兄さんが困った顔で立っていました。

離れるなといっただろうと怒られたあと、お兄さんをクロが呼んでくれたらしく、クロにお礼を言いなさいといわれました。クロにお礼を言い終わるのを待っていたお兄さんが緊急時だったとしても頭を叩いたのは悪かったと謝ってくれました。いつもより痛くなかったから平気だと答えると、にこにこして目が閉じているようにみえる顔なのに一瞬目が薄く開いたあとすぐ元の胡散臭い笑顔に戻りました。

 

お兄さんから先ほどの聞こえた声はハルを攫った犯人だということと、私にちょっかいを出したことで居場所が分かったと言いました。おにいさんは少し道を引き返して道の半ばにあるお地蔵さんを横にずらすと地下へ進む道が現れました。

道から漂う嫌な雰囲気にお兄さんはすこし顔を顰めたあと、ここからは神域だから気を付けていくよとゆっくりと私の手を引いて中に入りました。

中はとても広い洞窟のようで入口からは奥まで見えませんでした。

さすがに暗いなとお兄さんはカバンの中から発炎筒というものを取り出し道を進みながら一定間隔で地面に突き刺していきました。ハルを連れて戻るときにはこの光を目印に帰るようにとお兄さんは言いました。

突き刺した発炎筒の筒の部分は簡易の結界になっていて、私とハルが戻るときにはここを通ると先ほどからお兄さんに飛び掛かっては刀の結界に触れて消えていく黒い蜘蛛も襲ってこないらしいです。

 

さらに奥に進んでいくと、最奥へ続く入口に神社にかかっている縄のようなものが掛かっていました。それを見たお兄さんは、逆注連縄かと呟きました。

 

逆注連縄とはなにかとお兄さんに聞くと、百足神社などにある普通の注連縄は穢れた人間等が神域へ入ってこれないよう、つまり外から内へ入れないように張るもので、この入り口にはるような逆注連縄は中にいるやつが外にでないようにと張られるものだと教えてくれました。

簡単に言うと中にいるのはろくでもないやつだよと苦笑しながら言うと、私の手を引いて奥へと進みます。

 

道なりに進んでいくとすごく大きな空間へ出ました。お兄さんが指を差したさきにはハルが倒れていました。

すぐに近づいてお兄さんが様子をみるとケガもなく無事で安心しました。

ハルは多少意識があるようで私が支えれば歩けることが分かりました。

 

ハルを連れて帰ろうとした時奥から、骨と手に目玉がたくさんついた大きなお化けが出てきました。

お兄さんは思ったよりでかいなといい、私にハルを連れて早く逃げるように言い、カバンの中から銃のようなものを取り出し、上に向けて撃つと洞窟の中がすごく明るくなり足元もよく見えるようになりました。

 

 

私はハルを支えながら外に目指してなるべく早く移動しました。途中でお化けの悲鳴のようなものが聞こえて少し振り向くと大きなお化けの腕が切り離されて飛んでいるのが見えました。

 

色々な音や悲鳴やらが奥から響いているのを聞きながら洞窟の外へ目指します。

途中からオイデ オイデ タスケテと声が頭に響いていますが、ハルを救うのに惑わされてはいられないので一生懸命足を進めます。道はお兄さんが設置してくれていた発炎筒に加え、クロが先導してくれるので安心して通ることができました。

 

無事洞窟を出ることができたあと、私はハルを連れて急いで山を下ろうとしました。道を下っていると洞窟があったほうから巨大なお化けが私たちを追ってきていました。速度はそこまで早くない為逃げられると思いハルを支えながら来た道を戻ります。行きがけに置いた木箱を渡り、ハルの負担にならないように道を急ぐと谷間に差し掛かりました。クロが先行して木の板を渡った瞬間板がはずれ、下に落ちてしまいました。

 

自分ならぎりぎり飛び越えられる距離だけど、今の状態のハルじゃ飛び越えられない。

後ろから大きなお化けが迫ってくる。しかし道がない、頭の中の声もモウムリ ニゲラレナイ アキラメロと私にむけて馬鹿にした風に声が聞こえた瞬間に悲鳴が聞こえて聞こえなくなった。どうしようと思考を巡らせているとかさかさと音が聞こえました。

 

振り向くともうすぐ近くに大きなおばけが迫っていた。私はせめてハルだけでも守れるようにハルに覆いかぶさりました。

 

 

 

 

 

 

 


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