やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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書けるうちに書いとけ精神で書き上げました。

よろしければ参考などよろしくお願いします。


入学編2

 差別とは何だろうか?

 

 入学式の開場を待つ1時間少々の長いとも短いともとれる空き時間において比企谷八幡が考えていた議題である。単純に差別と言っても人種、宗教に趣味趣向など多岐にわたるが目下、目の前で起きているのは“学力格差”と表現するのが妥当だろうか?

 

ーーあの子ウィードじゃない?

ーーこんなに早くから・・・・・・補欠なのに張り切っちゃって

ーー所詮スペアなのにな

 

 ここ魔法科高校は一学年の定員が200名。だが、その全員を十全に教えることが出来るキャパシティをこの学校は持ち合わせていない。

 その理由は単純。講師が足りないからだ。そもそも魔法と言う技術自体が才能に大きく作用される分、全体数が多いわけではない事もさることながらそれを会得するのは長い修練が必要となっている。

今の状態では増やしていくので手一杯で教育を行き届かせる人員は明確に足りていない。

 また、残念なことに事故や怪我で魔法力を喪失すると言うことも魔法教育では起こりうるのが実情だ。

 ただでさえ足りていない講師を遊ばせる選択はなくそう言った無駄は国益としても看過できない。ならばどうすればよいのか?その結論は簡単だ。

 

 スペアを用意すればいい。

 

 単純明快かつとても分かりやすい解決法である。

 ここ第一高校ではその“スペア”にあたる人員は入学時の半数であり、合計100名がそれに当たる。また、それをわかりやすく示すため、この魔法大学付属第一高校には2種類の制服が存在する。

 

 一つは左胸に花柄のエンブレムが刺繍されているもの。

 そしてされていないもの。

 

 大方予想がつくだろうが刺繍付きの方が講師に教えてもらえる権利を持つ一科生徒であり、それが無いのが二科生徒である。

 この割り振りは入学試験の成績で割り振られ上位半数が一科、残りが二科という完全実力主義の構図だ。

 一科と二科に制服という分かりやすい分類指標を設け、なおかつ実力主義とくればエリート意識と劣等感が生まれるのにさして時間はかからなかっただろう。誰が言い出したか胸の花柄のエンブレムを持つものを“ブルーム”、ついていない物を雑草に例え“ウィード”と呼び始めそれが定着した。

 

 ちなみにだが俺と深雪は一科、達也が二科で、先ほど深雪が不満たらたらだったのも達也が二科だったからである。あの超が頭につくブラコンは兄が蔑まれる事態が我慢ならなかったのだ。

などとつらつらと長くこの学校の差別問題を考えてきたわけだが、要するに何が言いたいのかと言うと、

 

「ここに深雪が居なくてよかった。居たら人型の氷像が量産されてる・・・」

 

「八幡、そのつぶやきは物騒にもほどがあるから、やめろ。」

 

否定が返ってこないあたりがお察しである。

 

 

 

 

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 そんなこんなで入学式開園まで30分を切ろうとするタイミングで達也は八幡に一声かけようと眺めていた愛用の書籍サイトからログアウトしたのと頭から声が降ってくるのが同時だった。

 

「新入生ですね?開場の時間ですよ。」

 

 見上げると声の主は小柄な女生徒で左手首にはCADが見えた。

 

『おそらく生徒会関係者、か』

 

「ありがとうございます。すぐに向かいます。

八幡、行くぞ。」

 

「ほいほい。・・・それでは失礼します。

遅れたら深雪に何言われるかわからんさっさと行くか達也」

 

 達也と八幡はさらっと従い講堂に向かおうとするがどうやらそうは問屋が卸さなかったらしい。

 

「八幡・・・・・・もしかして貴方、比企谷八幡君かしら?今年次席入学の。」

 

「え、あ、はいしょうですが。」

 

 時が止まった。比企谷八幡の黒歴史に新たな1ページが刻まれた瞬間である。

 

『・・・・・・さっきちゃんと対応できたから油断したんだよこっちみんな。いや見ないでください死にたくなるので』

 

「・・・・・・あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています。七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさと読みます。

よろしくね。」

 

 八幡の戦闘不能を悟ってか自己紹介をすることでさっきのことをなかったことにしてくれているようだ。

 

「ひ、比企谷八幡です。」

 

「自分は、司波達也です」

 

「入学試験トップ2の二人がお友達だったのね」

 

 名を聞いて目を丸くして驚いた真由美は意味ありげに頷く。

 

「先生方の中では、貴方たちのうわさでもちきりよ?

7教科平均90点越えで、司波君に至っては96点。圧巻なのは魔法理論と魔法工学は二人そろって満点ですもの。先生方が前代未聞だって騒いでたわ」

 

「あくまでペーパーテストの結果ですよ。八幡のように実力が伴ってない情報システム上の話です。」

 

 そう言ってしれっと矛先を八幡に向け、睨んでくる八幡の視線を華麗にスルーする。

 

「そんな事は無いわ。少なくとも私は同じ真似は出来ないもの。比企谷君ももう少し実技の成績が高かったら今年の総代は貴方だったみたいで、理論の成績も鑑みて手を抜いてないか疑ってたわよ?」

 

 手抜きの疑惑は司波君の方が強いみたいだけれどね?と困り顔で捕捉した。

 

「会長~~!!何してるんですか?」

 

「あら、ごめんなさい。あーちゃんすぐ行くわ」

 

「だから、あーちゃんはやめてください!!」

 

 などと漫才染みたトークが始まった。この隙を逃す二人ではない。

 

「それでは時間ですので、失礼します」

 

「ごめんなさいね?引き留めてしまって。」

 

 二人は頭を下げ講堂へ向かった。

 

 

 

 

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 七草生徒会長との立ち話の代償は半分以上埋まった講堂の席で支払われる結果となった。座る席を探そうと見渡すとやはりその奇妙さが伝わってくる。

 

「見事なまでに分かれているな」

 

 そう。前半分にブルームである一科生、後ろ半分に二科生と初めからそう決まってるがごとく並んでいるのである。もちろん座席に指定はない。だが、先入観なのか明確な線引きが感じられた。

 

「最も差別意識が強いのは、差別を受けている者である、か」

 

「エリート意識からバカやってる奴がいないなら、な。

・・・まぁ、そこまで行ってたら末期だが。」

 

 前側は一科生の席だ、などと前側に座ってた二科生を押しのけるような事案を指しているのだがそれが起こってこうなっているならば腐敗ここに極まれりと言わざるを得ないだろう。

 

 新入生の腐敗度はさておき、ここで問題なのが座り方である。

 

「後方の目立たないベストポジションに座れねえじゃねえか。」

 

「もれなく注目の的になるな。まぁ、入学初日から無駄なもめごとは避けるべきだと思うぞ?」

 

 最もな意見である。実際エリート意識がどうのなど欠片たりとも興味がない八幡にとって座る席などどうでも良いが、多数派に逆らえばつるし上げるのが人間と言う生き物である。無駄にヘイトを稼ぐ必要はない。

 ならば問題はあと一つ。

 

「妹様のご機嫌取りは自分でやってくれ。この状況を見れば小言は確実だろうからな。」

 

 前半分に向かいつつ捨て台詞を吐く八幡を見つつため息をつく達也だった。

 

 

 

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「とりあえず適当に座るか。」

 

 空いてる席(なんとなく端っこ)を確保しとりあえずの居場所を確保する。時計を見るに開始まで後15分といったところである。

 

「となり、空いてますか?」

 

 髪を二つにくくった女生徒と黒髪の小柄な女生徒がこっちを見ていた。

 

「ひ、ひゃいどうぞ」

 

 二度目である。だがそんな八幡を気にすることなく二人は席に着いた。

 

「私は光井ほのかです。」

 

「北山雫。よろしく。」

 

「ひ、比企谷八幡だ。」

 

 噛まずに言えてほっとするもつかの間先ほど北山と名乗った女生徒が反応した。

 

「比企谷八幡・・・確か次席の成績の人だよね?」

 

どうやら既に知られていたらしい。

 

「なんかそうらしいな。まぐれだよまぐれ。」

 

「・・・例えまぐれでも抜かれたのは事実。」

 

 少しむくれているように見えなくない表情の北山を理由に内心首をかしげていると。

 

「雫は入試3位なんです。」

 

 と言う光井の説明で疑問が氷解した。だが俺なんかにライバル意識を向けるのは生産性に欠ける事だろう。

 

「俺なんかより深雪を目標にした方が良いと思うぞ?」

 

「新入生総代とお知り合いなんですか?」

 

「従妹だ。」

 

 再度驚きが伝わると同時に入学式開始のアナウンスが鳴り響いた。

 




入学式やっと終わったよ。

入学編終わるのにいつまでかかるやら・・・。

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