やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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多忙に圧殺される程度の雑魚で申し訳ないです。

とりあえず時間を見つけてじりじりと進めてはいたんですが、思いの外まとめるのに時間かかりました。

御託は良いからはよって声が聞こえますのでそれではどうぞ。


入学編22

 

~紗耶香side~

 

 

 

 図書館の特別閲覧室で私と共に突入したブランシュのメンバーが、魔法大学の非公開文献を閲覧するためハッキングを仕掛けている。

 講堂の集会の影響で人間はそっちに集まっており予定通り突入は拍子抜けする程簡単だった。

 

「よし、これで非公開文献にアクセスできるぞ。」

 

 差別を無くすために何故、非公開文献が必要なのか、私にはそれがいくら考えても分からなかった。

 私はただ、差別が無い世界が欲しくて、虐げられない世界が欲しくて、そんな現実から逃げないで済む世界が欲しかっただけなのに。

 この文献も、私が分からないだけできっと何か意味があるんだろう。

 そう結論づけたはずなのに、あの時一年生が言った「逃げなきゃ何でもして良いってことにはならないでしょうけどね。」という一言がやけに頭に残った。

 

 

「へぇ、そりゃすげえ。

 非公開文献盗むのが差別撤廃にどう繋がんのか知らんけど。」

 

 

 最初は幻聴かと思った。さっきまでの思考が見せるまやかしなんだって。だってそれ程までにあり得なかったから。どんなに気を抜いていたって誰かが入ってきたら気が付くし、間違いなく警戒していた。それにドアが開いた形跡もない。いったいどこから・・・。

 

「あ、あなた、比企谷君よね?どこから!?」

 

「一緒に中に入ったじゃないですか。

 俺影薄いから気付きませんでしたかね?」

 

 隠密系の魔法・・・。さっきまでの行動を全部見てたって事!?

 いきなりの乱入者でみんな動揺してる。時間を稼がないと・・・。

 

「・・・魔法で隠れてたのなら何故不意打ちしなかったのかしら?」

 

「あー・・・別にするまでも無さそうだったから考えてなかったわ。」

 

 完全に舐められてる・・・。すぐこうやって見下すんだから・・・!

 

「あぁ、そうだ。聞きたいことがあるんですよ。」

 

「・・・何かしら?」

 

「このテロ行為はどんな差別を撤廃するんですかね?」

 

 ・・・っ!

 

「このまま帰っても得られる称号はテロリストか産業スパイか。

 その日本の敵になるリスクを払ってまで得られるものって、なんなんですかね?」

 

「それは・・・!」

 

「まぁ単純な話テロリストにとって扱いやすい駒があったから、良い様に利用されている訳ですけど。

 どうですか?平等な世界とやらは見つかったんですか?」

 

 ・・・・・・私にはそれは分からない。分からないけど、でも!

 

「無いですよね。んな世界があってもそれはただのディストピア(管理社会)です。

 個人の能力を無視して平等化してならす。それが先輩の言う”平等な世界”なんですかね?」

 

 

「じゃあ、どうすれば良かったって言うのよ!」

 

 

 もう限界だった。

 分かっている。言ってることは分かってる。それでも叫ばずにはいられなかった。

 比企谷君の話はきっと正論なのだろう。正しくて強くて、そしてあくまでも上から目線。そんな”一科生の見下した意見”なんか納得できないし、したくない!

 

 でも、その回答は唐突に倒れるドアの音と無残に弾け飛んだ記録用キューブと共に訪れた。

 

「少なくとも、テロリストに荷担する事がその疑問の回答にはならないのは確かです。」

 

 その声は私に”夢の終わり”を突き付ける、そういった何かに感じた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

~達也side~

 

 

 

 

 俺達が図書館に突入しそのつゆ払いをエリカに委託した後、情報閲覧室にたどり着いた段階で何故八幡がわざわざ俺をここに来るように誘導したかがなんとなく分かった気がした。要するに彼女側の立場にいながらそれでもなお批判する事が出来る、そういった存在が欲しかったのだろう。

 部屋に突入した後即座に相手の目的を達成不可能にするため記録用キューブを破壊、これで最低限の体裁は整うだろう。

 

「壬生先輩、あなたは魔法大学の非公開技術を盗み出す為に利用されたんです。」

 

「差別をなくそうとしたのが間違いだったの!

 平等を目指したのが間違いだったというの!

 差別は確かにあるじゃない!

 司波君はそれで良いの!?」

 

 完全に冷静さを失っている。恐らく八幡にうまく誘導されたんだろう。

 

「貴方だって同じでしょう!

 そこにいる優等生の妹といつも比べられていたはずよ!

 そして不当な侮辱を受けてきたはず!

 誰からも馬鹿にされてきたはずよ!」

 

 感情に溜まった膿が怒涛の様に吐き出される。

 壬生先輩は同じ立場の人間に救いを求めているのだろう。だが、俺はそこまで優しくもなければそう言った意見に全面的に同意できるほど偏った平等思想に毒されてもいない。

 

「妹さんだけじゃない。そこの比企谷君ともそう。

 新入生歓迎会の時だって結局一番認められて、影で二つ名までつけられていたのはそこの比企谷君。

 どうせこの前の捕り物だって最終的に私達の事を確保した比企谷君が全て治めたかの様にまとめられてるんでしょう?」

 

 放送室のことか。自虐が過ぎるな。

 だがここまでの流れを見ても、して欲しいことは分かっても最終目標が見えてこない。こういうやり方をするときは往々にして深雪を怒らせる結果を招きがちだが・・・。

 

「認められるべき事が立場によって不当に奪われている。そんな差別を無くしたいって思って何がいけないのよ!」

 

 

「良かったですね。実力の認められる世界を歩いて来れて。」

 

 

 八幡、お前・・・。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 一口に”精神汚染”といっても内容は様々だ。

 なにより、汚染といっても池の水質のように汚れている汚れていないをはっきり示せる指針がある訳ではない。そもそも精神状態は千差万別であって汚染されてない状態すら人によって違うのだ。

 そうなるとどうやって調べるのか。それは色々なパターンを過去の患者と照らし合わせて調べる総当たりのような作業によって精神的な異常性が見あたらないか調べるしかない。だが、この方法は患者にも負担が大きくなにより時間がかかり、結果として非常に患者負担がかかる結果となる。その負担を減らすためにも異常部分を正確に、かつ早く発見しリハビリして修正するのが肝要だ。

 であるからこそ重要になってくるのは誘導された背景や、異常な反応を示した情報である。なにより利用され、過去の事件や出来事などは問題の根幹部分であるため速やかに発見できれば治療は飛躍的に進みやすい。

 

 ならば、俺のやるべき事は一つだけだ。

 

「どういう意味よ!?」

 

「はい?そのままの意味ですが?

 要するに今まで頑張ったら頑張った分だけちやほやして貰ってたのに、頑張っても頑張っても認めてもらえないから駄々こねてるんですよね?」

 

「な・・・!」

 

 今のこの状況では壬生先輩は徹底的に追い詰められて癇癪を起こすので精一杯。冷静さを欠いて直情的にならざるえない状況。というか現在進行形でほぼヒステリック状態だ。

 そう”とても理想的な状況”だ。

 

「頑張ったら頑張っただけ結果が出て、褒めて貰えなきゃ納得できない。だから平等なんていう”分かりやすい欺瞞”に縋り着いた。

 当たり散らす敵が欲しかっただけでしょう?」

 

 少しオーバーキル気味だが冷静さは完全に奪えた上にヘイトもこっちがかっさらった。

 あとは・・・。

 

「貴方達一科生が私達を差別するのがいけないんじゃない!そうやって上から言いたい放題!」

 

「さも文句を言うのが正当かのようにですが、どれ程のことがあったんですか?どうせたかが陰口がどうのって程度じゃないんですか?」

 

「違う!あの時渡辺先輩は私のことを二科生だから差別した!間違いないわ!」

 

 

「ならば、そうやって渡辺先輩に直接おっしゃれば良かったのではないですか?」

 

 

 予想外のところで深雪が介入してきた。しかも拳を握りすぎて手が震えていらっしゃる・・・。

 俺の予定ではこの壬生先輩の精神汚染の肝の部分を上手く掘り出して会長達に伝えることで公的に精神汚染除去の治療を受けて貰う口実にする事以外はついでであり、残りはブランシュ潰して残業なしで直帰の予定だったんだがどうやらそうも行かないらしい。

 

「壬生先輩。何故、其処まで自分を否定するのですか?

 今の先輩は一つの物差しでもたらされた結果だけで劣等感に溺れ、それによって良い部分すらも自ら埋もれさせてしまっています。」

 

「なんですってっ!?」

 

 深雪が壬生先輩を容赦なく諭す。先輩も声だけは大きいが言葉に力がない。

 そもそも、現状ではもう目的達成。後は適当に話切り上げて終わるつもりだったし、それは恐らく深雪分かっているだろう。だが、このやり方は妹様にはご納得いただけなかったようだ。

 

「結局、誰よりも貴女のことを劣等生と、雑草(ウィード)と蔑んでいたのは、貴女自身です」

 

 まぁ、ここで深雪の演説が入ってしまった事でいらん事を考えてしまったのが仇になったのだろう。要するに油断した。

 

「壬生、指輪を使え!」

 

吹き荒れるサイオンのノイズ。達也の使う疑似的なものとは違う本物のキャストジャミングだ。

 本来キャストジャミングはアンティナイトと言う軍事物資にサイオンを流し込むことで発生するノイズが魔法の発生を阻害することを利用した技術である。このジャミング波は概ねの魔法を発動阻害出来るため魔法師をただの木偶の坊に出来る魔法師の天敵のようなものである。

 それにコンボのように投げつけられた物からは煙が広がり視界と魔法が完全に封鎖される。それとともに脱出する足音と鈍い殴打音。

 どうやら達也が壬生先輩以外を制圧し、壬生先輩は逃がしたようだ。

 

「悪い、油断した。

 てか、壬生先輩逃がして良かったのか?」

 

「下でエリカが構えてる。確保してくれるだろう。」

 

 エリカか。あいつ結構やり過ぎる印象があるのは気のせいか?

 

「そんな事よりさっきのあれはなんですか?

 明らかに壬生先輩を怒らせて煽っていました。」

 

「い、今はそんな話をしてる場合じゃないだろ・・・?」

 

 妹様の眼差しで背筋が凍りそうなんだが。

 

「・・・分かりました。今日は八幡さんの家に伺います。詳しい話は後で詳しくお聞きします。」

 

 oh・・・。

 深雪は色々気にしすぎだろ・・・。

 たかが先輩一人に睨まれるくらい大したこと無いってのに・・・。

 




終わらない入学編に呆れ顔が見えるようですが後数話で終われるはずなんだ・・・。(フラグ・・・?大丈夫、物理的に問題ないはず・・・。


と言うわけで多忙ながらじりじり書きますので、意見ツッコミ指摘批判をお待ちしております!

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