やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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思いの他かかりました。

〆に入りましょう。


入学編28

~深雪side~

 

 

 

 

「報告は以上です。」

 

 お兄様が今回のブランシュ関係について報告を終えた頃には夕御飯も終わり、水波ちゃんが食後のお茶を出してくれたため皆で一息ついていました。今回の流れ自体はブランシュの不手際を除いて、さした問題も発生していない為報告は非常に簡潔に終わりました。

 

「了解よ。真夜にも伝えておくわ。

 それ以外の方は大丈夫?」

 

「はい。雪ノ下家も今回は不自然なほど介入してきませんでしたからね。」

 

 正直、もう少ししゃしゃり出てくると踏んでいたのですが音沙汰がないと言っていいレベルです。ここまで何もないとむしろ違和感があります。まぁ、介入してきて当然というのも不快この上ない状態ですが。

 

「それだけど、単純に行動が遅かっただけみたい。

 どうにも、校内の残党殲滅には結構精を出してたみたいだけど、アジトの所在が分かった頃には八幡達が制圧に向かった後。準備が整って行動した頃には殲滅が終わってるって状況だったみたいよ。

 こちらの動きが速いにしても、手際が悪いとしか言えないわね。」

 

 成る程・・・。行動が後手後手で、私達の後を追いかける結果になったのなら遭遇しないのも納得です。お兄様と八幡さんが動いているのですからこれは当然の結果ですね。

 

 

「・・・え、あれって雪ノ下家のマッチポンプじゃなかったのか?」

 

 

 空気が凍りました。

 

「・・・八幡、その発想は何処から来た?」

 

「いや、普通に考えて入学早々のタイミングで都合良く事件が起きて、それが偶然にも生徒会が介入しにくい内容で、そういったしがらみの少ないとこならさっくり殲滅できるイージーな敵だぞ?

 キャスティングでもしないと存在しないだろ。」

 

 確かに出来すぎているのは分かりますけれどもこの推理は飛躍し過ぎではないでしょうか?

 

「確かに偶然と言うには出来過ぎていますが、誰かの差し金だとしてもそれが雪ノ下家だという確証は無いのでは?」

 

「それについてはそうなんだが、そうでも考えないと事件が起きたこと事態が不可解なんだよ。

 非公開文献盗むにしても何故この時期なんだ?後一年待てば十師族のあらかたが卒業って形で勝手に排除できるのにその1年を待てない理由はなんだ?ただの学生運動ならともかくテロリストがバックについてるにしてはリスク管理が杜撰すぎる。」

 

 確かに、わざわざ面倒事が多いタイミングで行動を起こしているのは不可解ですね。それに、それによって得られるリターンも少ないです。

 

「だから”雪ノ下家のマッチポンプ”という意見がでたのか。

 確かにこの件でブランシュを雪ノ下家が処理すれば十師族に対する嫌がらせになる。巧くリークすればプロパガンダとしても活用できるか。」

 

「ですが、雪ノ下雪乃は二科生差別に参加していました。テロリスト排除で信頼を勝ち取るなら被害者を差別するのはマイナスになるのでは?」

 

「いや、雪ノ下家がほしいのはテロリスト被害者の信頼じゃない。

 もしそうなら公開討論会でアシストする為に何らかの形で参加してくるハズだ。」

 

 確かに八幡さんの言うとおりです。ですが、尚更雪ノ下家の意図が解りません。

 

「おそらくだが、生徒会が出張って要求が通らないのは筋書き通りだったんじゃないか?そのまま無茶苦茶言ってる二科生を黙らせて、言わせてる元凶を雪ノ下が検挙すれば良い箔がつく。

 二科生もテロリストなんかに唆されるのは実力が無いからだ、などと吹聴すれば今の学校の風潮だと差別の悪化は避けられないだろう。十師族が実権を握る世の中に異を唱え、"実力主義"を主張したい雪ノ下家には良いプロパガンダになる。」

 

 お兄様は八幡さんの真意を理解できたみたいです。ですが、その説明では・・・。

 

「まるで雪ノ下家が家の宣伝と十師族への攻撃のためにテロリストを学校機関に潜り込ませた様に聞こえるのですが?」

 

 八幡さんとお兄様の苦笑いが、このあってはならない推測が現実なのだと告げていました。あの輩は何処まで墜ちれば・・・!

 

「確かに論理的な部分で筋は通っているけれど、その説明だと推測の域を出てないじゃない?」

 

 沙夜さんが八幡さんを試すような目で問いかけます。

 

「いや、単純な話。この件を解決して得をするのは被害者以外だと雪ノ下家くらいだろってだけだから、証拠云々はないぞ。だが雪ノ下家だと、こうも綺麗に侵略されている事実にも説明が付くんだよ。第一高校の内部を知っていて手引きが出来る存在、例えば卒業生とかな?」

 

「雪ノ下陽乃か。

 にしても宣伝の為にしては随分手間がかかっているな。数年がかりの計画だぞ。」

 

 雪ノ下陽乃・・・。雪ノ下家の長女でしたね。生憎とお会いしたことはありませんが八幡さんが”全力で警戒していた女性”だったはずです。

 

「それについては俺も思ったが、雪ノ下さんが関わってるのなら考え過ぎぐらいで丁度良い。

 と言うか、その辺りの説明してくれると思ってたんだが違うのか?お袋。」

 

「そうね。きょうは事情説明はするつもりで急遽帰ってきたのだけど、結論から言うなら八幡の出した答えが私と真夜の考えとほぼ同じって感じかしらね。」

 

「調査しきれなかったって事ですか?」

 

 四葉でも掴みきれないなんて・・・!

 

「だから、今分かっているのは雪ノ下家がここ最近ブランシュと連絡を取っていたと思われること、エガリテが第一高校に侵略していること、ブランシュが第一高校襲撃の直前に移動させる前の拠点を知っている風だったことまでは調べられたけれど、エガリテ侵略の手引きについてはまともな情報を引き出せ無かったわ。」

 

「まぁ、雪ノ下家が手段を選ばなくなってきてる辺り切羽詰まってるのは明らかだ。油断せずに対処すれば勝手に自滅する。

 面倒なのは間違い無いが実害は薄い。テロリスト巻き込むような無茶した後だ、しばらくはおとなしくしてるでしょ。」

 

 少し無理矢理気味にまとめられた気がしますが八幡さんが言うように、そんなに都合よく事件が起きるわけではないでしょうから大丈夫でしょう。

 

 

 

 

 

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~戸塚side~

 

 

 

『聞いたよ八幡。上手くいったみたいだね。』

 

「そっちも時間稼ぎとかありがとな。」

 

 僕のメインのお仕事は第一高校での情報収集と雪ノ下関係者のスパイ。

まぁ、今回はブランシュのアジトへ行くのを遠回しに邪魔する事だったけど。

 

『正直、邪魔するまでもなくたどり着けなかったっぽいよ?』

 

 現場ではよく分かってないフリをしていたけど、明らかにアジトの位置が分かっているからか、余裕綽々と動いてて達也がアジトに向かったって聞いて慌てて向かおうとしてたし。

 しかも、古い方のアジトに。

 ついでに途中でアジトの場所が変わってるって連絡があったみたいで悪態ついてたし。

 

「まぁ、今回は関わらせない様にしないと後々面倒だからな。イビルアイ使う奴もいたし。

 ああそだ。雪ノ下家が関わってる疑惑、実家に話してなかったのな?」

 

「言わなくても気がつくかな?と思って。それに、変に実家が介入して八幡の邪魔になる結果はあっちゃいけない事だし。

 伝えなきゃいけない場合は八幡は念押しするでしょう?』

 

「まぁそうだが。」

 

 八幡最優先は絶対だからね。雪ノ下関係は当主が敏感だから下手に言うと過剰アシストが来る場合があるし。

 あぁ、そうだった。質問があったんだ。

 

『今回、雪ノ下が原因だって分かったのは何が決め手だったの?』

 

「・・・雪ノ下の言動だよ。

 雪ノ下は理不尽なレッテルで人を貶めるのを嫌う。自分がそれで被害を受けてるからな。だが、今回はそれを意図してやってるどころかあいつらしくもない暴論まで投げていた。

 どうやってもやらされてる感が拭えない。」

 

『異様に早く事態を収束させようと動いてたのは雪ノ下さんたちがブランシュと対峙しないように?』

 

「あいつらが洗脳とかされたら後々面倒なことになるのは明白だろ?しかも、あの手の洗脳は悪意を恣意的に一部に向けさせるのがセオリーだ。そうなれば十中八九俺に向くじゃねえか。リスクマネジメントだ、インシデント処理だ。」

 

 ほんと、相変わらずだなぁ。

 こうやって肝心なところは誰にも頼ろうとしないのはきっと死んでも治らないんだろうな。にもかかわらず望むことは大きいから手が回らなくなって自分すらリソースに使うようになっちゃうし。八幡の言う”効率がいい”は”雁字搦めの中で少ない手筋から取りたくない手段を選択肢から消した上で、自分の能力だけで実行可能な手段”なんて無茶苦茶な物だから、実際に押し通そうとすると自分自身しかリソースが残ってない。だから八幡にとって”最も効率がいい手段”=(イコール)"取り得る唯一の手段"である事がほとんど。一択しかないのに一番もなにもないんだけどね。

 そんな八幡だから、手段や良い悪いにこだわらず動く駒じゃないと本当の意味で”八幡の戦力”にはなりえないんだ。

 だから僕は。

 

『とりあえず、上手く雪ノ下さんたちにとっての味方になるよ。場合によっては八幡の周りの人たちと”敵対的”になるけど、大丈夫かな?』

 

「むしろそうしてくれ。それくらいじゃないと取り入れないし、ボロが出る。

 全部終わったら全部俺のせいにしてくれれば理解も得やすいし、後のことの責任はこっちで受け持つ。」

 

『それこそ気にしなくていいよ。そういう方向ではプロなんだから。』

 

 四葉家直伝の人心掌握術は伊達じゃないんだよ?

 

「お、おう。

 ぼっちには絶対無理なスキルだな・・・。

 ・・・まぁ、なんだ。頼むわ。」

 

『任されたよ。

 僕は八幡の最後の砦なんだから。』

 

 




 とりあえず入学編はこれで終わりですが、微妙にストーリーを被せながら九校戦編へと推移するので九校戦の最初で微妙に入学編のネタを引きずります。
 九校戦のネタは結構暖めてるのでスパスパ書ける・・・はず・・・。(目そらし


それでは次回からは一応九校戦編として物語が進みます。
入学編を終わっての感想諸々ありましたら是非とも一言お願いします。

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