やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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実習が終わっても忙しいことに変わりがない、そんな現実から目をそらさんと毎日邁進しております。読多裏闇です。

もう少しちょこちょこ更新したいのですが、体がついて行ってません。1日、72時間ならないですかね?(それ、増えてるように見えて寿命変わらないから結果的に差はないって事実には触れてはいけない。

そんなこんなでぐだぐだですが本編どうぞ。


九校戦編3

 定期試験という高校生特有のデスマーチを乗り越えた魔法科高校の生徒は解放された奴隷が如く清々しい顔をして夏休みに向けての計画や、夏休み中にある大型イベントである九校戦の話題で盛り上がっている。

 そして、俺の気分は盛り下がっている。

 いや、定期試験は問題なかったですよ?予定通り深雪の後塵を拝してるし、ペーパーはいつも通り手は抜いてないしな?もちろんの事ながら実技も呼び出されるようなヤバい点数は出していない。

 だから俺の過失が今回の定期テストにおいて一切無かったのは疑う事がなく、俺の無罪は決定的に明らかであることは誰の目から見ても明らかな筈なのだ。

 ・・・なのに何故、俺は呼び出し食らってんすかね?

 

「どうやら手を抜いていないのは本当のようだ。にわかには信じがたい、と言いたくなるがね。」

 

 認めたくない現実から目を背けていると、どうやら達也にかかった嫌疑が晴れたようだ。

 俺達というか俺と達也だけだが、テストの採点結果が出ると同時に呼び出し食らっていた。

 内容を詳しく聞いてみれば俺達の手抜き疑惑が浮上しているらしい。

 確かに、達也のテストは理論だけ見るとずば抜けている。一般的な学生がこれを見れば運動が苦手ながり勉タイプなだけ、と見られるのだが、魔法知識を用いた魔法科高校ではこういった結果は異常だと言われてしまうだろう。

 何故なら、こういった理論も魔法的感覚や経験があって初めてイメージに結び付くようなものが多く、魔法的な素養が薄ければ理解しにくいものが多い。結果として今回の定期テストの理論分野だけでランキングを並べれば下位50%に二科生が多く見られるだろう。

 そんな中、達也がはじき出した点数が一科生を差し置いて2位に5点、3位に至っては10点以上引き離したダントツのトップ。

 これを見た教師陣が実技の手抜きを疑うのも無理はないだろう。

 そう、達也に関しては別に呼ばれても理由は納得できるのだ。

 

 なんで、俺、呼び出されてんだよ!

 

「あの、俺手抜きしてないんで帰って良いっすか?」

 

「あーすまない。比企谷に関しては少し訂正だ。

 司波と違ってお前は手抜き”疑惑”じゃなくて手抜き”するな”って言う警告だ。」

 

 断定かよ。

 

「いやいやいやいや、手抜きして次席とか普通に考えて取れないでしょう?」

 

「私もな、手抜きして失敗してたら呼び出さないんだがな・・・。明らかに手を抜いているのに次席なんて叩き出されると呼び出さざるを得ないんだよ。

 分かるかい?」

 

 分からないです。分かりたくないです。

 え、俺試験の時何かやったか?

 

「すみません、私と違って明らかな手抜きがあったような話なのですが、比企谷はどの様な手抜きをしたんですか?」

 

 達也が俺の助け船を出してくれた。

 

「・・・まぁ実際に横で見ている生徒も居たから構わないか。

 容赦なく言うと試験に対して真剣味が全くなかった。

 私が担当した処理能力を見るテストでは順番が回ってきた事にも呼ばれるまで気が付かず、緊張しているのかと思えば怠そうにCAD動かして結果も見ずに欠伸をしながら去っていったな。」

 

 あーあの日、夜中までCAD弄ってたから眠かったんだよな。いや、別にテスト項目に態度とか無いからよくね?

 

「それでそれ相応の数値ならば納得なのだが、計測器の故障を疑うレベルの司波深雪さんの点数に微かに届かない程の高点数をはじき出している。

 それが私のテストの部分だけならばまだ偶々の出来事だとも思えなくもないが、実技担当全員が共通意見だと、な?」

 

 な?じゃねーよ。

 

「・・・八幡、流石に擁護できる点が見つからなかった。

 断定出来るかはさておいて、呼び出されるのは仕方がない。」

 

「・・・えっと、再試っすか?もっかい実技やればいいんですかね?」

 

「そうするのが妥当ではあるのだが、こと、今回に関しては能力というよりは生徒指導の分野が強い気がしてな。それも含めて色々な方々と相談したんだが、丁度良い案件を生徒会から聞いたんだが、なんでも九校戦の出場を渋っているらしいね?」

 

 ・・・え、ここでこの話出てくんの?それ職権乱用じゃないすか?

 

「え、いや、それはですね?」

 

「教師陣としても君の九校戦出場はお願いしたいところだ。これは学校としての意義ももちろんあるが、君の経験として価値のあるものだと思っている。

 試験を適当に受けた罰だと思って参加しては貰えないか?」

 

 主犯はあの会長か?深雪も一枚噛んでそうだな・・・。

 とりあえず今は、どうにか出ないですむ手段は・・・。

 

「出られないならば夏の課題を大幅に増やす方向になるが・・・。」

 

 

「出場させていただきます!!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

~達也side~

 

 

 お昼休みの生徒会室、昼食をつつきつつの会話は自然と今話題の九校戦の話になった。

 生徒会では、出場選手の選抜から練習のスケジュール、作戦会議の統括に移動の手配も含めて当日までは準備にバタバタし通しになるのだからある種の必然的に出てきた話題であろう。

 

「そう、じゃあ八幡君は参加する事になったのね!

 知恵を絞った甲斐があったわ。」

 

 そう言って八幡へ一泡吹かせられたことを隠すそぶりもなく喜ぶ七草会長。一体何がそこまで駆り立てるのか分からないがあの八幡の事だ、何かやらかしたのだろう。

 

「喜ぶのは勝手ですが犯人が会長なのはバレてます。

 練習などの説得は自力でがんばって下さい。」

 

「それについては深雪さんに手伝って貰いましょう。

 となると、残りは出場選手の微調整と・・・エンジニアよね・・・。」

 

 ストレスの権化かのような深いため息をはく会長。

 

「まだ数が揃わないのか?」

 

「うちは魔法師の志望者が多いから実技方面に戦力が偏っちゃって・・・。

 三年生は特にそうだし、はっきり言って魔工師関係の人材不足は危機的状況よ。」

 

 先程からエンジニア、と呼んでいるのが要するにCADの調整する競技参加ではなく補助をメインとしたスタッフのことだ。

 CADは使う魔法の起動式をただ入れておきそのまま使うだけでは十全使用できない機械である。CADはその機械を当人が使いこなすための専用機器となるように微調整して使うことが推奨されている。

 特に、こういった競技などの少しの差が勝敗に直結するような使用方法となると、CADの調整の誤差がそのまま結果に繋がってしまうことも少なくない。

 

「・・・せめて摩利が、自分のCADくらい調整出来るようになってくれたら楽なのだけど。」

 

「・・・いや、本当に深刻な問題だな。」

 

 悩んだところでエンジニアスタッフが湧き出るわけでは無いため議論というよりは愚痴合戦になりつつあるが、この話題の終着点が非常に雲行きが怪しい。

 早々に撤退・・・。

 

「あの、だったら司波くんが良いんじゃ無いでしょうか?」

 

 ・・・に失敗した。

 

「盲点だったわ!」

 

 そのまま見失っていて欲しかった。

 

「そうか・・・わたしとした事が、うっかりしていた。」

 

 改善してほしいうっかりさはここではない。

 など、思うところは色々とあったが、委員長が参加した段階でもうチェックメイトといってもいいだろう。

 だが、無条件降伏は主義に反する。

 

「エンジニアチームに1年生が加わるのは過去に例がないのでは?」

 

「何でも最初は初めてよ。」

 

「前例は覆す為にあるんだ。」

 

 こうして無駄ながら反論を繰り出すも生徒会内では達也のエンジニアチーム入りに反対意見どころか肯定的な意見しか出てくることはなく、最後には深雪の「九校戦でもお兄様に調整してほしい。」という申し出が決め手となり完全に退路を完全に断たれ、俺は反撃は諦めた。

 だが、タダで倒れてやるのは癪だ。

 

「そもそもなのですが、最初に頼む人間を間違えていませんか?」

 

 そもそも人間が居ないから白羽の矢が立っている状況の為、敗色濃厚な達也が苦し紛れに放った内容とでも思われてる感じだが事実、俺より適任な奴は居るのだ。

 

「八幡ですよ。

 俺と同じで悪目立ちはしてますが、相応の実力を”学内の物差し”で示しているのは大きいと思いますよ?」

 

 深雪は俺が参加する以上、八幡が参加する事を信じて疑っていなかったようだ。

 

「確かに成績の上では十分なのは分かるが、あいつは調整もできるのか?」

 

 そう疑問を浮かべた摩利を見て、そう言えば”深雪のCADは俺が面倒見ている”としか情報が伝わっていない事に気が付いた。確かにこれでは誤解が生まれても不思議ではない。

 事実を知ればいかにとんでもない勘違いだったかに慄く事になるがそれは今”伝えられることではない”ので放置するとしよう。

 

「渡辺先輩、私のこのCADは八幡さんのハンドメイドの物なんです。」

 

「「「なっ!?(えっ!?)」」」

 

「なるほど!カタログで見たことのない機種だと思っていたのですが、やはりオーダーメイドだったんですね!」

 

 約一名を除いてこの場が驚愕に染まる。(別に中条先輩が驚いていないわけでないが、驚くの性質が違った。)

 

「あーちゃん気が付いてたの・・・?」

 

「市販のものではないのは分かってました。ですが、まさか比企谷君が作ったものだとは思いませんでした・・・。」

 

 実際のところ会長達の驚きは当然のものだ。確かにCADの調整が出来るのは十二分に認められるべきスキルだが、CAD自体の制作が出来るのと比べると最低限求められる能力の敷居が差があるからだ。

 突き詰めていけば確かにどちらも重要な技術であり、極めるのは高校生程度では難しいものの、最低限以上で少なくとも"深雪が普段使いとして使用して問題がないレベル"の物ともなれば市販されているものに匹敵する証明でもある。

 言わば"ここにプロの技術者と大差がないレベルの魔工師が居ますよ"と言われた様なものだ。驚くのは無理もないだろう。

 

「お分かりいただけたと思いますが、八幡の”方が”適任です。」

 

「そうね。八幡君”も”適任みたい。

 じゃあ、放課後にミーティングがあるから来て貰えるかしら?

 深雪さん、八幡君も呼んで貰える?」

 

 会長はそう言って俺の退路を断った。

 回避には失敗したが被害は減らせそうだな。それにあの無自覚な天才はこうでもしないと実力を使おうともしない。たまには良い薬だろう。

 

「そう言えば、司波くんは深雪さんと違って比企谷君の作ったCADを使ってないんですね?」

 

「・・・シルバーホーンは八幡に勧められて使ってるデバイスなんです。俺にはこれが向いている、と。

 事実、俺の資質には一番向いている物だったのでそのまま使っているというわけです。」

 

「なるほど!高い技術を持ちながらも、より良い物を勧められるのは同じ技術者志望としては尊敬できますね!」

 

 勘違いを誘発するような言い回しをしたが、予想通り誘導されてくれた。

 俺が八幡が作ったCADを使ってないことを"否定していない”事に誰も気が付いていないようだ。

 




やっと伏線を少し拾い始めました。
九校戦本体が長くなりそうなのでそれまでのわちゃわちゃはスピーディーにやりたい(願い)ですが、どうなるかは状況次第になります。


気が付くとお気に入りが2000人超えてたり栞挟んで下さってる方が500超えてたりで大変驚いております。ありがたいです。

更新速度もですが、内容も可能な限りうまく作っていきたいので、疑問やわかりにくい点など御座いましたら指摘や質問をお願いします。

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