やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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少し遅くなりました。
そして長くなりました(本編が
少々ボリュームがありますがおつきあい下さい。

そして少しだけ注意書きです。
魔法科高校のアニメのみ視聴の方は特になのですが、今回のメインで動くキャラが皆さんのイメージとかなり違うと感じる方がいらっしゃるかもしれません。
原作をわりと読んでいらっしゃる方はある程度納得頂けると思っていますが、アニメではそこそこに描写がカットされていた部分も無きにしもあらずだったので・・・。
後書きの方に少し何故こういった流れなのかの補足を入れますので、そちらも見た上で私なりのこのキャラの解釈を楽しんでいただければと思います。



九校戦編4

 神と仏は宗教的にはどちらも崇められる存在ではあるものの、比べてみると扱いが結構違う。

 細かい部分を言い始めるとキリがないが少なくとも言えるのは”間違いなく、神様の方が導火線が短い”ということだ。

 なにせ、仏さんは3回目にはキレるけど2回くらいなら鋼の自制心で見逃してくれるらしいのだ。これが神様なら1回目でキレて周りも巻き込んで連帯責任で吹き飛ばされることだってあり得る。連帯してなくても同じ人間だったら責任は取らされる。マジ理不尽。

 それに比べて仏さんはろくに怒らず、体力を無駄に消費しないエコロジー的生き様だし、修行中はかなりのぼっちと来ている。言わばぼっち界の先人ではなかろうか?マジ、リスペクトだわー。

 だが仏さんと俺では根本的にスペックが違う。

 あの温厚な仏さんですら3回でキレるのだ神でも仏でもないただのプロぼっちでしかない俺が、我慢できるものなどたかがしれている。ましてや神様ならいざ知らず、俺程度がカムチャッカファイヤーしたところで猫も死なない。

 訓練されたプロぼっちであり仏さんリスペクトな俺はそう簡単にキレたりはしない。だが、ムカつきはするのだ。

 要するに何が言いたいかっていうと。

 

「俺の夏休みを返せ。」

 

「それ、今言うべき事なの・・・!?」

 

 やっべ、口に出てた。

 

「八幡君?そんな事よりも達也君のフォローをしてあげてほしいのよ。

 愚痴は後で聞いてあげるから、ね?」

 

「自分で追い込んどいて何”下手に出ました”風装ってるんですか、会長。

 ・・・しっかし言いたい放題だな。」

 

 現在、ここでは達也のCAD調整講座(と言えるだけの価値がある)ならぬ達也のCAD調整のスキルの試験を行っていた。二科生である達也のCAD調整スキルに疑問視を投げかけた上級生のエンジニアチームが達也の参加に反対したため、十文字会頭の「なら実際にやらせてみればいい」という正論に従った結果である。

 だが、ここで問題が発生した。

 達也の技術力に周りが付いていけなかったのだ。

 七草会長の"魔工師関係の人材不足は危機的状況"というのは誇張でもなんでも無かった様で、プロの調整技術者が見たら背筋が凍るような達也のオペレーションを”出来上がりが平凡”や"一応の技術はある"などで片付けている辺りお察しだ。

 中条先輩と他数名は達也を迎え入れる事に肯定的(どころか頼み込んででも入って欲しそう)な空気で状況を追っているがいかんせん反発者が多すぎる。エンジニアチームの約半数(7名しか居ない為実質3名程だが)に加えて会議に参加している一科生が反対側に加わり、かつ半端な知識で混ぜ返す為、高度な話をしてる風なのにやっていることは因縁の付け合いという建設性の薄い”話し合いの様なもの”が構築されていた。

 達也は正直どう転ぼうがどうでも良いのもあって放置している。

 深雪も堪忍袋が爆発するのは秒読みに入ってきている。会議室が冷凍室になるのは時間の問題。

 反発内容も俺にすらツッコミどころだらけの素人発言のオンパレード。

 

 ・・・なんかもうどうでも良くなってきたわ。

 

 なぜ、請われて参加した奴がこうも否定されなければならない?

 達也は別に参加を望んでるわけでもなければ、参加を提案したわけでもない。どころか、エンジニアチームに”参加する事の問題点”まで指摘してまでいる。

 何より、手が足りないのに例え"平凡な腕にしか見えない"状態だったとしてもエンジニアチームとして参加を拒否するコイツらの頭には蛆でも住んでるようにしか見えない。

 

 お前らほんと、一回黙れよ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~達也side~

 

 

 俺は現在進行形で後悔していた。

 八幡をエンジニアチームに迎え入れるのは悪かったとは思っていない。だが、"この様な不快な空間"に来なければならない状態に追い込んでしまったことに多大な後悔をしていた。

 俺としても、反感はあれどここまでレベルが低い反論は予想していなかったのに加えて、八幡のフラストレーションがここまで溜まっているとは考えていなかった。

 ・・・いや、言い訳を並べてる場合じゃないな。止めないと。

 

「はぁーーーーーーぁ。

 もう帰ろうぜ達也。俺達が出る幕じゃねえだろ、これ。」

 

 遅かったか。

 いきなりのこの発言に会議室の時間が止まる。取りようによってどうとでも取れる言い方だけにどういう意図なのか判断に困っているのだろう。

 まぁだが、提案自体は比較的温和だったのが救いだな。こっちで上手く誘導すれば衝突は避けれるか・・・?

 

「確かにそうかもしれないな。

 どうでしょう会長。チームワークを崩してまで強行する事でも無いと思いますが?」

 

「待って下さい!!

 今この場で一番高い技術力を持つ司波くんを外してエンジニアチームを存続させるなんてありえません!!」

 

 ここで予想外な所から反論がきた。

 正直、中条先輩にここまで強い推薦を貰うとは思わなかったな。若干過剰評価気味だが。

 だが、この状況でその言い方はまずい。間接的に下に見られた他のエンジニアチームメンバーの標的が中条先輩に切り替わりかねない。

 

「あーちゃん、達也君の技術力が凄いのは分かるのだけど、どれくらいのレベルなの?」

 

 だが、七草会長が質問を挟んだ事で暴発は回避されたようだ。若干食い気味の発言だった事から、エンジニアチームの反撃を牽制する為だろう。実際数名は怒鳴りあげかねない状況だっただけにまさにファインプレーだった。

 

「今回の課題ではあくまでもCADを複製する調整的価値しか無いですが、最初から競技に適した調整を完全マニュアルで反映させれば、機械調整と比べものにならない物になるのは明白です。」

 

「さっきの調整の出来は平凡な物だったじゃないか、何故そこまで言えるんだ!」

「先程も言ったが変則的にやったところで結果が伴わなければ意味がないよ。」

「何故そこまで庇いたてるんだ?私情で判断するべき事じゃないだろ。」

 

 反論から人格攻撃にシフトし始めている。

 こうなると俺が辞退した所で収拾がつきそうにない。それに、このままだとエンジニアチームの不和を誘発しかねない。その恨みがこちらに向くならばまだしも中条先輩に向くのは気持ちの良い物ではないし、そういう兆候が見えてしまった以上。

 俺が何を言ったところで八幡は止まらないだろう。

 

「良いじゃないですか、達也の調整を平凡なものって言い切れる技術者ばっかりなんでしょう?

 なら俺達が入るまでもなく自力でどうにか出来るんじゃないですか?」

 

 中条先輩に投げかけられた八幡の補足に肯定的なのか驚いたのか、一時的に反論が止まる。

 

「ですが・・・。」

 

 これで終われば中条先輩が駄々をこねているかのような雰囲気を作り上げただけだ。これでもエンジニアチームの為に賢明に考えた結果意固地になってしまった、ともとれなくは無いため、今後中条先輩を責める人間は減るだろう。

 

「それに見た感じ7人は確保してるんですよね?規定数8人らしいですしもし俺も入るなら1人溢れます。

 なら面倒にならない様に人選した方がいいですよ。どうやら人数的に足りてないのにプライドの保持に忙しいみたいですからね。だったら全体の利益にならない行動より問題ある一部を切り離して世界を維持した方が効率がいい。

 一人は皆のために、って奴ですよ。」

 

 やはり、八幡の虫の居所は相当に悪い様だ

 おそらく八幡的にこんな針のむしろな環境ならば、俺を入れない方が良いだろうという判断も当然あるのだろう。それに加え、あまり技術を出し過ぎるとトーラス・シルバーの話が露見しかねない懸念もある。だが、その程度でバレるほどシルバーの情報封鎖はヌルくはない。となればここまで攻撃的に出ているのは中条先輩を助けることに加えて技術者としての潔癖性が出ている為だろう。

 八幡の理想は高い。

 あいつは汎用型のCADにすら特化型並の専用性を要求しようとする面がある。また、基準も世界のデバイスを基準としている為”高校生の物差しで考える”ということが出来ていない。それ故なのか先ほどの”能力が足りてないが故のズレた会話”は八幡を苛つかせるのに十分な働きをしたらしい。

 相変わらず、自分にヘイトを集める手法は変わらないものの今回はエンジニアチームの膿を叩き潰すつもりらしい。場合によってはエンジニアチームに入ることにもなるだろうが、その場合は実力で叩き潰すつもりなのだろう。搦め手に走りがちな八幡には珍しいやり方だ。

 この流れに乗じて上手く推移すれば自分のエンジニアチーム入りを回避出来る様にしてる辺りらしい狡猾さだが、八幡が完全にキレる前に冷静さを取り戻してくれたので十分としておこう。

 と、思っていた時期が俺にもあった。

 

 

「なら、私がエンジニアチームを抜けます!!

 司波くんと比企谷くんが代わりに入って下さい!!!」

 

 

 八幡が本気で介入してきている為、大筋で流れが変わる事はないと踏んでいただけに思考が一瞬停止した。

 いったい何がそこまで彼女を駆り立てるんだ・・・?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

~あずさside~

 

 

 

 

「なら、私がエンジニアチームを抜けます!!

 司波くんと比企谷くんが代わりに入って下さい!!!」

 

 あぁ・・・、言ってしまいました。

 私としても、ここまで言うつもりは無かったのでこの後のことは全く考えていません。おそらく、これを言われても比企谷くんにも司波くんにも迷惑にしかならないでしょう。

 でも、我慢できませんでした。何より、この二人を差し置いて私がエンジニアチームとして、第一高校の代表として参加するなんて恥曝しでしかないと思ってしまったのです。

 ですから・・・。

 

「調整スキルでは司波くんに、ハードでは比企谷くんに。

 少なくともこの2点においては確実に劣っている私よりもこの二人が出るべきです!」

 

「・・・ちょっと待って下さい。

 何故そこまでして俺達を推すんですか?」

 

 確かに少し過剰に推してる自覚はありますので司波くんの疑問も分かります。ですが、同じ技術者として譲るわけにはいかないんです。

 

「司波くんに関しては先ほどから説明したとおりです。私達エンジニアチームの中で間違いなく一番の技術者だと思っているからです。

 比企谷くんについては先程、深雪さんのCADを見せて貰ったときからエンジニアチームに引き入れるつもりでした。ハンドメイドで市販のCADを超えかねないスペック。同じ高校生である事に疑問を覚える程でした!」

 

 CADの自力制作。その価値を知らない魔法技術者はいません。これで比企谷くんへの目がかわるのが感じられます。

 先程の話し合いの後、どうしても我慢が出来ず恥を忍んでCADを見せてほしいと深雪さんに頼み込んだ私の感想は"このデバイスが欲しい"でした。

 比企谷くんの自作のデバイスであり、部品すらも自作であることを肯けるもの、目的が不明な機構や斬新な部品配置からその意味を推察し始めた段階で、比企谷くんのデバイスのファンになっていることに気が付きました。

 私はCADデバイスが好き。

 昔からCADのカタログを眺めたり、実物を見て分解した数も同年代の女子から見たら異常なほどになっているでしょう。

 だからこそ分かる高い本物の技術力。間違いなく市販されていないパーツがいくつも使われたそのデバイスはオーダーメイドである証拠であり、深雪さんがわざわざ比企谷くんが作っていると嘘をつく必要は無いことからも比企谷くんが作った一点物なのは明らかでしょう。

 だからこそ、これを作った比企谷くんは勿論、自分の作品のソフトを任せた司波くんもさぞ凄い技術があるに違いない、そう思って今日のテストを見ていました。

 結果は予想の斜め上、比企谷くんがソフトを任せているのが納得の本物の技術力でした。

 

 だからこそ、私の仕事はこの天才達が十全に、万全に仕事を出来る環境を用意することです。

 

 傲慢ですが、私の今までの頑張りがこの天才を見つける為にあったのだと思えば大きな価値があったと胸を張って言えます。現に理解出来たのは私も含めて数人だけ。

 だったらただ1年早く産まれ、生徒会に所属しているだけでしかない私でも、立場だけはあるのだから持てる全てでアシストしたい。

 それが私の使命だと思うから。

 

「会長、私は司波のエンジニアチーム入りを支持します。」

 

「えっ?・・・服部くん?」

 

 予想外でした。服部くんはあまり司波くん達に好意的ではなかったと思っていました。

 

「先程のテストではスペックの高いCADからロースペックなCADへ起動式の内容をフルコピーし、かつ、使用者に違いを一切感じさせなかった。起動式に触らないという条件を遵守した上での成果としては十二分どころか高く評価されるべきだと思います。」

 

 私とは違う、目に見える部分で確実な成果を並べていることで反論が出来ないのでしょう。静まり返る会議室に服部くんが畳み掛けます。

 

「九校戦は当校の威信を掛けた大会です。エンジニアチームのエースである中条が"エンジニアチームの中で間違いなく一番の技術者"と評価した事実は重く受け取られるべきものでしょう。

 当校は実力主義であり、魔法師を目指すものとして肩書きに捕らわれ目を曇らせる事はあってはならない。示した技術と最も評価に適した評価者が示す結果を無視してはいけません。」

 

「服部の指摘はもっともなものだと俺も思う。

 だが、エンジニアチームは8名なのもまた事実だ。

 七草、この場合の対応はどういう物を予定していた?」

 

「そこに関してはあーちゃん・・・、中条さんと話し合って人員の調整を行うつもりだったわ。

 何かしら良い方法があるならそれでも良いのだけれど・・・。」

 

 先程までの激論が嘘のように話が建設的に動き出しました。

 十文字先輩と会長が前向きな話し合いを始めていきます。

 ですが、比企谷くん達の参加が確定したなら話は終了ではないのでしょうか?

 

「あの、私が抜けて入る話ではなかったのですか・・・?」

 

「あーちゃん?さっきはんぞーくんが言った通りエンジニアチームのエースである貴女が抜けるのは有り得ないわ。」

 

 ・・・どうすればいいのでしょうか?この展開は考えていませんでした。

 ですが、このタイミングで他の方を外すのはちょっと・・・。

 

「なら、僕が抜けましょうか?」

 

「ちょっと啓!?」

 

 エンジニアチーム所属の五十里君に九校戦出場メンバーの千代田さんが止めに入る。お二人は家が決めた許嫁らしいので突然の辞退に驚いたのも無理はないでしょう。

 

「僕は元々調整が得意な方ではないので、司波くんや比企谷みたいな優秀な人が居るならそちらに任せるべきだと思いますよ?」

 

 この発言に千代田さんが止めに入って五十里君がなだめています。

 ですが、五十里くんは決してエンジニアチームを外れるほど腕は悪くありません。ど、どうしましょう・・・。

 

「司波。お前はどう考える。」

 

「どう・・・、と言われましても俺が入って良い物なんでしょうか?」

 

 十文字先輩が唐突に司波くんへ水を向けます。司波くんもまさか話が振られると思っては思っていなかったのでしょう、驚きつつ苦笑いしています。

 

「当たり前だ。

 中条の評価を受けて参加する権利を得たのだ。参加する道理は十二分にあると言って良いだろう。

 それは比企谷も同様だ。

 考えがあるなら遠慮する必要はない。」

 

 十文字先輩が話したことで騒がしかった会議室が静かになり、視線が司波くんに集まります。何故か聞かなければならない気になるのですよね、十文字先輩が話すと。

 

「考え、と言えるかどうかは怪しいところですが、少なくとも五十里先輩はエンジニアチームに必要な人材だと考えます。調整スキルについては分かりませんが、実用レベルのCAD制作を行っていると実際に作って貰った友人から聞いています。そういった面でも十二分な戦力になり得るかと。

 八幡はどうだ?」

 

「え、俺に振るのか?

 あー、なら外すのはあの人でしょ。達也の調整を”一応の技術がある”とか評価してた人。

 エンジニアチームの人の中では一番問題が多そうだ。」

 

 指を刺された三年生のチームメンバーに注目が集まります。

 司波くんの評価はまだしも何故彼なのでしょう・・・?

 

「失礼だぞ!!何故俺が名指しで外される!!」

 

「あの、比企谷くん?もう少し言い方・・・。

 あと、なんで彼を外すのか説明貰えるわよね?」

 

 会長が頭が痛そうな目で比企谷君に説明を求めます。相手の三年生も完全に怒ってますからね。当然の判断です。まぁ、あんな言い方だったら怒るのはわかりますが・・・。

 

「え、だって自分のCADの面倒すらみれない奴に調整任せるのとか嫌でしょう・・・?

 てか、なんであの人メンバーに入ってるんですか?数あわせだったとしても能力順で選んだんですよね?むしろ議論が始まったのに違和感を覚えたんですけど・・・。」

 

「はぁ!?何故そんなことが言えるんだ!!俺の調整を見たわけでもないのに因縁を付けるのも対外にしろよ一年!!」

 

 あわわわわ・・・。どどどどーしましょうか・・・。

 後ろで会長と司波くんが「八幡君っていつもこうなの?」「八幡は自分の実力に自覚が薄いですからね。」「・・・血のつながりを感じるわ。」とこそこそ会話しています。遊んでないで手伝って下さい会長!!

 ・・・確かにあの先輩はエンジニアチームの人員不足で急遽参加を求められた方ですが、ここまで容赦なく言われるほどスキルがないわけではない筈なのです。

 そもそも、自分のCADの面倒がみれないとはどういう意味なのでしょうか?

 

「比企谷くん、何故先輩がCADの面倒がみれていないと判断したんですか?」

 

「え、いや今先輩がつけてるCADが明らかに整備不足なんで普段からメンテナンスしてないのがよくわかるな、と。」

 

 先輩の腕にまかれたCADに視線が集まります。

 

「な、何故そう言いきれる!!」

 

「いや、だって中の回路の一部が明らかに整備不足が原因の回路破損や漏電が見られますし、感応石が明らかに劣化しているのに対策がとられた形跡がない・・・どころか一切触れてなさそうですね。

 これだけでも魔法発動に10%超えかねない影響が出ると思うんですけどほったらかしって感じで、このパターンだと古くなってきたから換え時かなとか思ってそうですが部品さえ修理すれば現役並の性能は保証できますよ。」

 

 え、比企谷くん先輩のCAD分解でもしたんですか?

 

「比企谷の言うことは本当か?」

 

 十文字先輩が先輩に問いかけます。

 

「・・・はい、ここのところ調子が悪かったので2年以上も使っているのでそろそろ換え時かな、と思っていました。」

 

 十文字先輩相手に嘘がつける人はなかなかいませんから間違い無いでしょう。しかし、どうやってわかったのでしょうか?

 

「比企谷、原因が分かったのは個人スキルによるものか?」

 

「あ、はい。

 八幡家特有のものって言ったら分かりますかね?」

 

「・・・なるほど。

 なら、発言の証明は可能か?」

 

 八幡家・・・。今学校に流れている噂のことですか・・・?

 いえ、そんな事より証明って流石にそれは難しいんじゃ・・・。

 

「実際に八幡がそのCADを修復すればいいのではないでしょうか?」

 

 この司波くんの一言にざわつく会議室。

 

「え、めんどくせー・・・。

 まぁ、応急処置程度なら良いか。」

 

 修理自体は簡単。かつ今この場でも終われる作業。

 言外のそう言われてしまった事から突っ込む気力も消失したのかふらふらした足取りでCADを手渡した先輩はなんというか哀れでした。

 

 その後、深雪さんに請われ、解説付きの修理が始まり実質公開処刑の様な有り様の三年生は、せめてもの矜持としてエンジニアチームを辞退を申し出てこの一件は決着いたしました。

 

 私が説得せずとも、最初から比企谷くんの実力を見せればあっさり終わっていたのではないか?という事実に気が付いたのは全てが終わった後のことでした。

 

 




 8000字弱です。
 概ねいつもの倍です。

 途中で切ったら絶対よくわからなくなるのでどっせーい致しました。

 こちらから前書きに書いたとおりの補足です。
 まず、深雪のCADですが八幡製の達也チューンの一点物。言わばトーラス・シルバーのオーダーメイド品です。
 原作で「憧れのシルバー様」とまで言っていたあずさがこれを目にし、かつ、制作者が目の前に居る。そして、その腕前を見せる機会を不当に奪われようとしている状況を技術者として我慢できないのではないでしょうか?と解釈した結果がこの流れになります。
 賛否両論あるかと思われますが、質問含めて感想にて悲嘆のない意見を頂けると作者がとても助かります。
勿論この件以外の質問ツッコミ指摘やらかしてんぞタコ作者!は常時受け付けておりますのでお気軽にお願いいたします。

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