やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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遅くなりました。(土 下 座 。


言い訳につきましてはあとがきにて。
お待たせ致しましたので、とりあえず本編をば。


九校戦編6

~ほのかside~

 

 

 

 

 今は九校戦の発足式が終わった放課後。九校戦に向けての練習はその日のうちに始まりました。

 まず行われたのは九校戦の新人戦参加メンバーの顔合わせと、エンジニアチームの担当割り振りです。これについてはほぼ混乱もなく当然の様に達也さんと八幡さんが新人戦女子メインエンジニアチームとなりました。

 とはいっても、達也さんと八幡さんだけでは物理的に手が回りません。特に八幡さんは自分も選手として出場するので、そのための練習や試合準備の時間を考えると当日の調整にも限界があります。そういった部分も考慮して一部の選手は上級生の方が担当して下さるそうです。

 九校戦では本戦と新人戦の2種類の大会が行われますが、その日程は完全に別日です。そのため、本戦出場選手の調整を行う上級生のエンジニアは新人戦期間中は比較的時間の自由が利くので日程上達也さんの参加が難しい部分を肩代わりして貰う、ということなのだそうです。

 そして今はその割り振りから更にもう一歩話を進めた"誰が誰の担当エンジニアとなるのか"の話し合い兼自己紹介の為に女子新人戦参加チームメンバーとエンジニアである達也さんと八幡さんが会議室に集まっています。

 

「技術スタッフの司波です。CADの調整の他、訓練メニューの作成や作戦立案をサポートします。」

 

「同じく比企谷だ。隣の達也のおまけと思ってくれて良い。

 俺が担当する人は少ないと思うが、まぁ当たった人は運が悪かったと思って諦めてくれ。」

 

 隣で達也さんが白い目で見ているのを全力で目を反らそうとする八幡さん。

 開幕からの容赦ない自虐で反応に困り一瞬静まり返る会議室。

 

「あら、自分の立場が分かっているなんて少しは成長したのかしら?貧乏谷君。」

 

 それを見越していたかのように静寂を貫いたのは雪ノ下さん。案の定というか現実になって欲しくないから目を背けていた事態といいますか、八幡さんに暴言を投げつけ始めました。

 現在、女子新人戦の参加メンバーは深雪、雫、私に加えて別のクラスの明智英美さん、里美スバルさん、そして雪ノ下雪乃さん。

 一年生の中では雪ノ下さんと八幡さんがあんまり仲が良くないのはそこそこ有名で、噂のせいで八幡さんが責められている風潮もあってか比企谷アンチ筆頭の様な扱いになっているみたいです。

 

「ぼっちなんだから比べるまでもなく最低辺だっての。てかなに?貧乏くじと掛けてんの?確かに俺にあたった奴は貧乏くじかもしれないが、その言い方だと俺が貧乏みたいになっちゃうでしょ・・・。」

 

「あら、脳みそが貧相なのは事実でしょう?

 正直、中学の頃の数学の成績から鑑みても調整を任せる気には欠片もならないのだけど。」

 

 ・・・数学の成績。そこまで言われる程悪かったんでしょうか・・・?

 

「いや、あれはいちいち途中式だの公式使えだの言ってくる教師が悪いんであってな・・・。

 答えあってるってのに、カンニング扱いとかしやがるし・・・。」

 

「式も何もなく答えだけ書いてたらカンニング扱いされて当然という事実が予想できないから脳みそが劣悪と言われるのよ。」

 

「うっせ。てかおい、今しれっと秀でてないから悪いに変えやがったな・・・。」

 

「あら、貴方がそんなに目敏いとは思わなかったわね。」

 

「なに?遠回しに目が腐っているって揶揄してんの?」

 

 ・・・・・・何ででしょうか。この二人凄く仲がいいんじゃないかと思ったのは私だけでしょうか?

 

「話し合いが進まないから、痴話喧嘩は後にしてくれないかな?」

 

 良かった・・・。私だけじゃなかった・・・。

 ・・・じゃなくて。今まであんなに敵対的だったのにどうしてこんなに仲が良さそうなんだろう?

 

「たしか里見さん・・・だったわね。

 その不愉快な勘違いを撤回してくれないかしら?

 この男なんかと、こっ恋人?寒気が走るわね。」

 

「・・・明らかに釣り合いが取れてねえだろ。ギャグならもう少し現実味のある物にしてくれ。」

 

 息もぴったり・・・。昔は同じ部活動をしてたからっていってもここまで示し合わせたように動けるのかな・・・。ここまで来たら逆にどうして仲違いしちゃったのか理由が気になるかも。

 そういえば八幡さんが身の上話してくれたときに詳しくは深雪にって言ってたっけ?場合によっては聞いてみようかな・・・。雫のためにも。

 

「八幡の言うとおり。事ある毎に誹謗中傷を投げかける様な人は八幡には釣り合ってない。」

 

 ・・・だめ、場合によってとか言ってられない。

 本来雫はあんまり揚げ足を取ったり恣意的に言葉を取り違える様な事はあんまり好きじゃないのに、今のは明らかに八幡さんの発言の言葉が足りない事を逆手に取って雪ノ下さんに攻撃してる。何より、後ろに座っている雪ノ下さんに前を向いたままで、目を合わせず話してる時の雫はもの凄く不機嫌なのを私はよく知っています。(お家のパーティーとかで身に着けた感情をコントロールするための知恵で、顔を見なければ少しくらいは怒りを我慢も出来るらしい。)

 そして大きな問題はパーティーならば明らかな不快感を示す相手に油を注いで事を大きくする人間は少ないかもしれませんが、ここは学校のただの一室で相手は雪ノ下さんだって事かな・・・。

 

「・・・それはどういう意味かしら?」

 

「言葉通りの意味。

 さっきから聞いてれば、不必要に人を貶める暴言ばっかり。しかも格上から見下すならまだしも実力の伴わない立場からではやっかみも良いところ。負け犬の遠吠えももう少し上品に映ると思う。」

 

「私は事実を指摘しただけよ。先程言った比企谷君への発言は全て事実に基づいたものだけよ。さも私が間違った事を言っているかの様な扱いを受ける謂われはないわ。」

 

 この段階で雫が雪ノ下さんの方へ向く。お互いに完全に臨戦態勢で敵意というよりも殺気の域だよ・・・。

 スバルが踏んではいけない何かを踏み抜いたと思ったのだろう。申し訳無さそうに手を合わせてくるのが見える。エイミィ(明智英美本人がそう呼ぶように触れ回っているあだ名)もどうにか仲裁しようとしているものの状況が読みとりきれていないため動くに動けない感じ。

 これはどうにかしないと、と達也さんの方を見ると隣の八幡さんが深雪に向かって拝んでいます。確かにこの状況をどうにか出来るとしたら深雪しかいないので流石の人選なのですが、深雪が凄く不服そう・・・。あ、そっか深雪的には雫側について参戦するつもりだったんだ!成る程!

 

 ・・・・・・ってダメだよそれ、まったく収拾がつかなくなるよ。

 

 どうやら達也さんも同じ考えのようで、深雪を諫めるような目線を送り深雪自身も溜め息を付いて状況解決に乗り出します。

 

 

「二人とも、お兄様が話せないでしょう?」

 

 

 同時にお互いに食ってかかろうとした2人を容赦なく停止させる圧倒的なオーラで緊張感が霧散しました。

 

「では、エンジニアの担当決めをしてしまおう。」

 

 その隙を見逃さず達也さんが話し合いを本筋に引き戻します。

 この後は滞りなく決まり、担当毎に分かれてミーティングを行いました。

 その間も色々な事を考えたもののやっぱり結論は変わらない。

 

 やっぱり近いうちに深雪に話を聞きに行こう

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 担当毎に分かれてのミーティングとは各競技毎に分かれての話し合いがメインだ。一人一人の担当、今後の方針や得意魔法の確認などやることはいくらでもあるが今日の所は担当の割り振りや簡単な方針決めがメイン。

 俺が調整担当する競技は俺の出場タイミングの都合上、一競技を全て担当とはいかず競技は複数にわたって担当する形となった。

 競技全体の種類は6種類。

 

・バトル・ボード

・スピード・シューティング

・クラウド・ボール

・アイス・ピラーズ・ブレイク

 

女子のみ・ミラージバッド

男子のみ・モノリスコード

 

 

 

 その中にバトルボードの担当があって、雪ノ下はバトルボードの選手だった。

 最初は雪ノ下を俺が担当にする話も出かかったが”エンジニアとの信頼関係に疑問がある”事を強固に主張した雪ノ下は別の担当となった。(達也はその時間、別競技を担当中)

 そんな一悶着を終えて一息付いた俺は雪ノ下の担当になった中条先輩とバトルボードの作戦会議中。もちろん雪ノ下はもう既に帰宅し、他の選手は達也とミラージバッドのミーティング中だ。

 

「では、私は雪ノ下さんを担当すれば良いのですね?」

 

「それでよろしくお願いします。」

 

 バトルボードは出場選手が2人で、雪ノ下とほのかだ。本来ならば俺がバトルボードの両方の選手をみれるので仕事を押しつけているみたいでいたたまれない。

 

「すいません。俺達の都合で仕事増やしてしまって。」

 

「気にしないでください。比企谷君のせいでは無いですし、雪ノ下さんの言い分も必ずしも間違ってる訳ではありませんし・・・。」

 

 CADの調整はされる側のメンタルの影響を大きく受ける。そもそも本人の資質で魔法というのは発動される。その補助器具であるCADは魔法師に合わせて調整するため、その調整者は精神を深く見せることに近い。

 結論としてその調整者への信頼関係が重要ではある。

 ・・・まぁ、その信頼は技術面での心配がメインであるため、拒否されるというのは腕に問題があると言ったようなものなのだが。

 そんなこんなで苦笑いをしつつ今後の方針について話し合っていると自分の部屋の上空に異常に湿度が高い空間があることに気が付いた。

 加湿器・・・?ではないな。それに人間が一人居る。

 

「中条先輩、この上って何の教室でしたっけ?」

 

「この上ですか?たしか空き教室だったはずですが・・・?」

 

 となるとなんらかの湿度が増える何かを行っている。見た限り湿度が増える要因は見当たらない。となると魔法か。

 隣で首を傾げる中条先輩。唐突に意味の分からない質問をしたあげく、天井を見上げていればそういう反応にもなるか。

 

「いえ、上の部屋の湿度が異様に高くなってるみたいで。」

 

「湿度、ですか?・・・私には分からないですね。」

 

 何故わかるのか気になってるが聞いて良いのか迷ってる感じの空気をまとう中条先輩。まぁ、少しくらいは良いか。

 

「うちの家系の八幡家は魔力的な読み取りに長けた一族で、まぁ所謂サイコメトリーに似た読み取りスキルがあるんですよ。」

 

「なるほど!それでCADの不調を見抜いたりしていたのですね!

 もしかしてそれをハードに生かしてるんですか?

 深雪さんのCADでは普通とは違う回路配置や回路の組み方もかなり手が加えられている印象でした。

 そういったスキルの観点からハードを見た故の配置なのだとしたら納得です!」

 

 お、おう、積極的だな。てか、テンションが上がりすぎでsy・・・・・・って近い近い近い!

 

「あにょ、すいません。少し離れて貰えると・・・。」

 

「・・・・・・・・・はゃぁ!!?

 す、すみませんお見苦しい所を・・・!」

 

「い、いえ。俺に実害はないんで。」

 

 いや、ここの女子ガード甘すぎませんかね?お父さん将来が心配よ?

 俺の様な訓練されたぼっちじゃなかったら勘違い誘発するんだからな?そして黒歴史を生成したあげく、そのギリギリなスタイルが犯罪者(ロリコン)予備軍のレッテルを貼り、学園生活に終止符を打つことになる。

 ほんと、理不尽だ。

 小さめの体型の人間を忌避すれば巨乳主義者と罵られ、手を出せば捕まる。もう何も信じられねえ。

 

「それで、上の部屋の湿度が多いというのは大丈夫なのでしょうか?」

 

 あ、やべ。忘れてた。

 ん・・・?あれは・・・達也か?それに柴田も居るな。それに湿気もかなり霧散してる。あの様子なら大丈夫そうだな。

 

「現地に達也が居るみたいなんで多分大丈夫っぽいですね。」

 

「司波君ですか?なら大丈夫ですか。風紀委員ですし適切に対応してくださると思いますし。」

 

 達也ならなんとかなる、そう思われている。

 こういう人間が増えてくれりゃ、少しは生活しやすくなるんだろうがな。

 

 

 

 

 

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~??side~

 

 

 

 今から思えば始まりは、些細な勘違いと意地の張り合い。

 彼にしかできない手段を肯定しきることが出来なかった狭量さと、知ることを怠った怠惰。

 散った花は枝に戻らないし、こぼれた水は盆に戻ることもない。

 それでも手を伸ばせば届くと思っていた。

 届かせて、もう一度。その願いが芽生えたときには全てにおいて取り返しが付かなかった。

 ただただ、それに気が付くのが遅かったから。

 そしてその遅さは致命的で、その怠惰さが彼に牙を剥いて襲いかかろうとしている。

 だから・・・。

 

「たとえ全てを壊してでも、私は・・・!」

 

 




 そろそろ九校戦前のわちゃわちゃはあらかた終わりです。そろそろ九校戦会場に向かえるかと。

 遅くなった理由ですが、書いてる途中でこれは今書く内容じゃなくね?を繰り返し、9割完成したものを投げ飛ばす愚考を繰り返したタコ作者がここにいるからです。←

 計画性の無さがここで発揮されております。やはりタコか。

 と言うわけで遅くなりました。筆遅すぎるわ展開遅いわの私ですが楽しんでいただければ幸いです。

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