やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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感想の優しいコメントに甘えて色々エピソード追加してたら予想外なことになったタコが通ります。別名読多裏闇でございます。

遅くなった原因ですが、本文を読んでいただけたら察していただけると思います。
一応あとがきに書かせていただきます。


九校戦編8

 

~真由美side~

 

 

 

 七草家。

 元々は三枝を名乗る魔法師の家系であり、第三研究所から第七研究所へ移ったものの発展を続けている魔法師社会の名門中の名門。

 現在も研究所に連なる魔法師の総称であるナンバーズの統括組織”十師族”に所属しており、その方面でも高い影響力を持つ魔法師社会において実質的実権を握ってる一派閥。

 これが私が生を受けた”七草家”の世間からの認識。

 

 まぁ、実際の所は大きく差はないのだけどね。

 

 十師族の中でも筆頭扱いにされがちな家ではあるし相応の影響力もある。ついでに言うならば、私の父親は狸だって言われるほど狡賢いと思われているけれど、私から見てもその通りだし。

 まぁ、父親の愚痴は置いておくとして、目下の問題は私の家がそういった意味で社会的に少しややこしい家だって事。

 ”家の用事”と名の付くものは影響範囲が広いためややこしかったり重要度が無駄に高かったりで何かと振り回されがち。しかも、事前に予定が聞かされてない場合もしばしば。今日もそういったゴタゴタのせいで足止めを食らってしまった。

 

「今から九校戦に向かうっていうのに・・・。」

 

 今日は九校戦の会場に向かう日。もちろん朝から準備をして予定通りならもう既に九校戦へ向かうバスは発車していなければいけない時間。現状、みんなを待たせているバスへ向かって移動中。

 待たせてしまってるのは申し訳ないけれど、今回の場合はある意味仕方ない・・・のかな。

 というのも家を出る直前に”老師”こと、九島烈が面会に来た。アポ無しで。

 魔法師社会の重鎮が来ていて挨拶も無しに行くわけにもいかず、家を出ようとしたところ父親に呼び戻され少しお茶会の様なものに巻き込まれた。来た名目は「九校戦に向かう途中、近くまで来たから少し話がしたい」らしいのだけど、話の内容が私の学校の近況を聞くことがメインでいまいち要領が掴めず仕舞い。

 狸親父にも何が目的でいらっしゃったのか聞いてみたけれど、真意は見抜けなかったみたい。

 おかげでよく分からない時間でみんなを待たせてしまったのは心苦しいけれど、こういう時の"十師族の家の都合”は便利な言葉なので体良く言い訳に使わせて貰う事にしましょう。

 ・・・にしても、老師は妙に達也君と八幡君の話に食いつきが良かったわね。八幡君はまぁ、家の都合もあるし老師も色々ご存知なのかもしれないけれど、達也君にも反応してたのが少し気になる・・・。

 

「お嬢様、到着いたしました。」

 

 首を捻ってる間に集合場所まで到着してたみたいね。

 

「ありがとう。じゃあ行ってくるわね。」

 

「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

 

 運転手さんに一言掛けて少し小走りでバスに向かった。

 

 

 

 

 

 バスの前には見覚えのある二人、八幡君と達也君。点呼の為に外で待っていてくれたみたいだけど、私が遅れたのは一時間強。それに真夏とくれば普通ならば遠慮したい仕事。

 事前に連絡していたのだからバスの中で待っていてくれればいいのに、律儀と言うか何というか。流石に申し訳なくなってくるわね。

 

「ごめんね達也君、八幡君も。私一人のせいで随分待たせちゃって。」

 

「いえ、事情はお聞きしてますので。急に家の用事が入ったとか」

 

 そう言って点呼に使ってるタブレットに出席の印を入れる達也君。そして、隣で欠伸をする八幡君。

 待っててくれたのは嬉しい気もするのだけど出会い頭に欠伸って・・・。

 ・・・というか、八幡君はなんで外にいるの?

 達也君は点呼の為だって分かるけど、八幡君まで外で待つ必要ないでしょうに。

 

「暑かったでしょう?中で持っててくれても良かったのに。」

 

「大丈夫です。まだ朝の内ですし、この程度の暑さは、何ともありません。」

 

 しれっと

 

「あら、そうなの?でも汗・・・はあんまりかいてないのね。」

 

「流石に汗を乾かす程度の魔法は俺でも使えますから。

 それに、途中からは八幡のお陰でその手間もありませんでしたからね。」

 

 八幡君のおかげ、ね。十中八九魔法でしょうね。

 

「それが八幡君が一緒に炎天下で待ってる理由?選手でもあるのだからあまり体力を消耗するのはおすすめしないけど?」

 

「なんというか、おいてこうとしたら追い出されたというか、自分で出てきたと言うか・・・。」

 

 いまいち要領を得ないわね・・・。

 

「まぁ、良いわ。それについては後で聞くとして・・・。

 ところで、これ、どうかな?」

 

 待たせてしまったのは悪いことしたと思うし、八幡君の件は後で詳しく聞く事にして・・・。せっかくサマードレスを着てきたんだから感想くらい欲しいのよね。

 実を言うと、この服は少し冒険気味・・・というかちょっと気合いを入れて着てきたから、感想でも貰わないと割に合わないのよね。

 いえ、別に誰かに感想が言って欲しかったとかじゃなくて、照れて慌てる顔が見たかったからで・・・って誰に言い訳してるのよ、私は。

 

「とても良くお似合いです。」

 

「そう・・・?アリガト、達也君。

 ・・・あら、八幡君は感想言ってくれないの?」

 

 ・・・達也君はストレートに来るから心臓に悪いわね。それより、一番反撃したい相手がノーリアクションってどういう事よ!?

 

 

「あ、俺にもきいてたんすか?」

 

「むしろこの流れでなんで聞かれてないと思ったのよ!?」

 

 

 あーもう!なんでこう毎回毎回・・・!

 

「話しかけられたら基本的に反応しないのはぼっちの本能です。

 てか、俺の感想とか誰得なんすか。

 ・・・後、俺以外に話しかけてたのに反応して”あ、君じゃなくて・・・”って言われたらいたたまれなくなっちゃうでしょ。」

 

 この子はなんでこう確率の一番低い地雷を確定で踏むと言ってのけるのかしら・・・。

 ・・・まぁ多分、今まで踏んできたのでしょうね。

 

「・・・このタイミングで話から除け者にする程、薄情者にしないで欲しいんだけど?

 で、どうなの?感想は?」

 

「え、いや・・・その。」

 

 ふふーん、慌てちゃって。こういうところは可愛いのだけどね。

 

「・・・ストレスが溜まってるのですね。

 八幡、会長はお疲れのようだ。十師族の用事ともなれば気疲れも多いのだろう。

 バスで休ませてやってくれ。」

 

 え?ちょっと待ってどういうこと!?

 

「ちょっと達也君!?

 何か勘違いしてない?

 ・・・って八幡君はどこに行こうとしているのよ」

 

 しれっと達也君の後追いをしようとした脱走者の首根っこを掴む。

 

「いや、俺エンジニアスタッフなんであっちの・・・。」

 

「選手でもあるでしょ?まだ感想も言って貰ってないし。

 それに追い出された理由、詳しく聞かせて貰いたいのよね?」

 

 逃がさないわよ?

 

 

~ほのかside~

 

 

 

 

 七草会長が遅れると連絡が来たのが、出発時間の約15分前です。

 達也さんが点呼確認、八幡さんが連絡関係の統括を行っていたようで、八幡さんの方からアナウンスがありました。

 ・・・ですので、これは不幸な事故だったとしか言えません。

 

「七草会長は家の都合で到着が遅れるとのことです。

 現地へは車で向かうので先に出発して欲しい、と連絡を受けています。

 というわけで直ぐに出発しますんで準備お願いします。」

 

「ちょっと、会長を置いていくの!?」

 

「え、いや会長が先に行っててくれって言ってるんですが・・・。」

 

「少し待てば良いだけでしょう?何を勝手に置いていこうとしているのよ!」

 

 おそらくは七草会長のファンの方だと思う先輩が、会長を置き去りにする悪者かのような言い回しで文句を言い始めたのが発端で会長を待つかどうかの話し合いが始まり、結果として待つことでまとまってしまった事から、ある意味置いていこうとした人でなしの様な空気が発生してしまいました。

 八幡さんも決まった件を伝えるために連絡するとバスを出てそのまま帰ってはこず、外で会長の到着を待っていたようです。

 この様な空気で居るのが嫌だったのでしょう・・・。

 その後も八幡さんは会長に連れられて(あれは連行な気もしますが)バスに乗ってきました。多分ですが達也さんと一緒にエンジニアスタッフ用のバスに乗りたかったのだと思いますが、会長に捕まったんでしょう。

 まぁ、八幡さんの事ですから私が心配しなくてもこういった事は自分でなんとかしてしまいそうですよね。それに八幡さんの事を思うのなら今の私の仕事は・・・。

 

「なんで八幡さんやお兄様がこの暑い中外で待たされなければならないのですか・・・。」

 

 この不機嫌オーラ全開の深雪を止めることだよね・・・。

 

「・・・ええと、深雪?お茶でもどう・・・?」

 

「ありがとう、ほのか。でも、ごめんなさい。まだそんなに喉が乾いてないの。

 私はお兄様達みたいにこの炎天下、わざわざ外に立たされていたわけではないから。」

 

 ・・・不可抗力にも程があるよ。

 この流れは何を言ってもあの話に直結しそう・・・。これは私では手に負えないよ!

 助けてしず・・・く・・・?

 

「・・・むぅ。」

 

 雫、まだむくれてたの・・・。

 

「さっきの件は今後の八幡さんの行動で見返せるって話になったじゃない?」

 

 というのも、この深雪の不機嫌オーラは本日2度目。

 一度目は八幡さんが出て行った後すぐ。車内の空調から一時は”暖気”が出る事態が発生するほどの不機嫌オーラがバスを包み雫と二人で宥める事になりました。

 ですが、途中から雫も毒舌モード全開になり、実質的には私がフォローする構図が完成。

 ・・・正直、生きた心地がしませんでした。

 最近の雫、八幡さんの事になるといつもの冷静さがどこかに飛んじゃうなぁ・・・。

 その、不平不満の応酬に最初にくってかかろうとした上級生がしびれを切らして反論するように立とうとした場面がありましたが、一言目を発する前に小さな悲鳴と共に着席。

 立とうとした先輩の方を見てたから角度的に見えなかったけど、私の後ろに女王様が居たのは間違い無いと思います。ちょっと寿命が縮んだよ!

 愚痴を言い合った末、八幡さんの実力ならば”文句を言えば言うほど後から後悔することになる”という結論でとりあえず平穏が戻りました。私、頑張りましたよ・・・達也さん、八幡さん。

 今、深雪が不機嫌なのはそれ以降のバスの外で一時間ほど締め出されてた件で蓋をしたはずの不満が再発したみたい。八幡さん、出来れば早めにこっちに帰ってきて欲しいのですが・・・。

 

「・・・八幡、会長にデレデレし過ぎ。」

 

「あ、そっちで怒ってたの?

 てっきりさっきの事で怒ってたのかと思ってた。」

 

 一通りうなった後に出てきた雫の文句は予想以上に可愛いものでした。

 ちょっとむくれてる、何これ可愛い。

 不満なオーラこそ出てるけど、どっちかというと拗ねてる感じ。

 

「あれに関しては怒ってはいるけど、何も出来なかった私も同罪だと思う。

 それに、結局ただのやっかみ。八幡の実力を目の当たりにして、後で恥ずかしい思いをすればいい。

 それよりも八幡はなんで会長の隣に座ってるの?八幡の席は私の隣のはず。」

 

 「・・・あら、八幡さん。帰ってきてないと思ったら会長と一緒に・・・。

  それにあのサマードレス・・・。」

 

 あれ、深雪の不機嫌オーラが収まってる・・・?

 八幡さんの恋人探しの方が優先度高いのかな・・・?

 何はともあれ、八幡さんファインプレーですよ!!

 

「深雪的には良いの?八幡さん大人気だけど。」

 

「八幡さんが認められてる証拠ですもの。まぁ、問題がある様な人は許さないけど、会長だからそこまで気にしなくて大丈夫よ。

 家柄もあるから急に話が進んだりもしないと思うし。」

 

 あぁ・・・、言われてみれば十師族だからその辺り大変そう・・・。

 そういう意味では雫は少しだけ有利・・・なのかな?雫の家も相当だけど。

 

「八幡年上好き・・・?でも、シスコンだったはず。八幡は妹しかいないって言ってたし・・・。

 ・・・やっぱり胸なのかな?・・・・・・八幡の馬鹿。」

 

 雫、迷走してない・・・?

 深雪は八幡さんの観察に忙しそうだし・・・。

 八幡さんは会長となんか楽しそうだし・・・。

 ・・・一人で処理しきれないよ。

 

 達也さん助けてー!!

 

 

 

 

 

 

 




バス編上、終了です。

バス編って分けて書かれるものなんですかね・・・?
どうにかまとめようとしたらむしろ増えるコレが読多裏闇クオリティ。(しろめ

感想色々頂いております。ありがたいです。
今後も色々ツッコんで頂けると、とてもとても助かります。(大事なことなので(ry

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