・・・バス下車編が始まるのだ。(震え声
やはりバスから降りるのも下手くそだったらしいです。
~達也side~
「魔法による自爆攻撃、ですか・・・。」
「これに関しては八幡も同意見だ。
移動中に少しだけ"話した"だけだがこれ以上露骨になってくると対処の必要が出てくるかもしれない。」
現在、目的地の九校戦会場にたどり着いた俺達は荷物の搬出をしつつ先程の事件についての考察を深雪に説明していた。今回に関しては事故そのものが起こされた事実よりも、何を目的に事件を起こされたかが不明な部分の方が厄介の為対処が難しい。
まぁ、黒幕の情報が多少あるだけでもマシな方か。
「にしてもさっきの八幡は何故あんな無茶をしたんだ?俺が対処を用意してるのは分かってた筈なんだが・・・。」
「・・・やはり少し無茶をしていたのですね。八幡さんが隠そうとしている感じだったので笑い話にしましたが。
その事については話さなかったのですか?」
笑い話?隠す?
無茶やったあげく、またなんかやらかしたのか、あいつは。
「サイオン消費のせいで寝てたんじゃないのか?もう起きているようだが。
流石にあれだけ消費したら周りの人間が黙ってないだろう?」
「はい。会長に指摘されて誤魔化すのを手伝いました。
あまり大事にしたくないみたいでしたので。実際の所八幡さんの病状は問題ないのですか?問題があればお兄様が飛んでくると思っていたので大丈夫だと思っていたのですが。」
大事にしたくない、か。
素直に俺が吹き飛ばしたら発生しなかった問題じゃないのか?どうせ、”使用に制限がある”から気にしたんだろうが、有事に使えない技術など無いも同然だろうに。
「八幡については問題ない。言ってしまえばちょっと全力疾走して疲れてるという状況だ。
あいつのサイオンコントロールならそれこそ"俺の半分程度の使用量”で同じ処理が出来るからな。
あいつに比べたら俺の魔法は力業だよ。無属性魔法は特に顕著にな。」
「お兄様で力業なら私の魔法は子供の癇癪か何かですか。
まぁ、八幡さんがご無事の様ですし、後は八幡さんにお任せしましょう。」
任せる・・・?
「そう言えば、八幡は何をしてるんだ?雫とほのかも乗っているみたいだな。
起きているならバスから降りた方が休めるだろうに。」
「雫とほのかには八幡さんがまだ寝てらしたので、見ていて欲しいとお願いしたんですよ。特に雫は八幡さんが目を覚ますまで梃子でも動かない感じでしたし。」
雫が・・・?・・・成る程。
「八幡が心配をかけて、世話を焼いていると言うことか。
あいつも隅に置けないな。」
「そういった面もありますが、今回はもっと重傷です。」
重傷ときたか。とは言っても雫は何も怪我はしていないし、今回の八幡の行動において雫は迷惑を一切かけてない。・・・読めないな。
「そんなに深刻になる事案はなかったと思うんだが・・・?」
「・・・お兄様、もう少し女心も勉強なさった方が良いと思いますよ?
それに、八幡さんのお身体に問題がないなら八幡さんが慰めて・・・いえ、完全に落として終わりでしょう。」
暗に八幡よりも女心が分かってないと言われてしまい、そこはかとないダメージを受けた達也はこれ以上の追求をしなかった。
~雫side~
『並の魔法師だったら魔法力の枯渇で魔法師生命に影響が出かねないレベルよ。』
『流石にあれだけサイオン使ったら疲れくらいするっての!』
頭の中でこの言葉が反響しっぱなし。
サイオンを消費しすぎた事によって魔法力を枯渇し、魔法師の能力を失った例は実際にあるし、そんな事は魔法に携わる人間の中では常識。
八幡の魔法は凄い。本気を出していない普段の魔法ですら私より洗練されてるのがありありと伝わってくる。
だから今回も凄い以上の感想がなかった。
反省こそしたけど、二度と失敗しないように頑張ろうと思ってた。八幡に追いつくんだって。
だからこそ会長の指摘に愕然とした。
八幡は凄い?失敗したら次に生かせばいい?
何をのんきな事言ってるの!!?
この交通事故は授業でもましてや遊びでもない。現実に起こった間違いなく危険な事故。
次があるなんて誰も保証してくれないし、そもそも魔法はそんな安易な気持ちで扱っていたらいつか大きな怪我をするような危険な技術。それを扱う人間だってどれだけ魔法に長けていても人間でしかない。
もちろん八幡だって例外なく人間。私と同い年の男の子。
たとえ魔法の天才でも万能の超人じゃない。
私の今日の失敗はそんな天才の道に影を落とすような事。いえ、もしかしたらもう、重大な何かを壊してしまったのかも・・・。
「んんー?あー?あー・・・寝てたのか。」
八幡が起きた。
見たところ元気そうだけど・・・。
「八幡さんおはようございます。
深雪に頼まれて見てたんですよ。
因みにバスはもう到着してますよ。といっても到着したのは10分前くらいですけど。」
「マジか。
悪いな迷惑かけたみたいで。」
迷惑って・・・。
「八幡は迷惑かけてない!
・・・迷惑かけたのは私だから。」
「は?迷惑?
かけられたか?」
多分八幡は本気で迷惑だと思ってない・・・。でも、私が失敗して八幡が割を食う事になってしまったのは事実だから。
「私のせいで八幡が無茶しなきゃいけなくなった・・・。」
「あれは連帯責任だろ。
たとえまったく関係無くても連帯責任押しつけられるんだ。こういうときに押しつけれなくてどうする。」
連帯責任って・・・。それでも私が迷惑をかけたことに変わりはないよ。
「でも、もしかしたら魔法力を失うかもしれないって・・・。」
「いや、ねえから。
そんなことまでして俺が頑張るわけねえだろ?俺だぞ俺。
それに雫のおかげで楽できたしな。」
「嘘。さっき疲れたって言ってた。普段あれだけ術式解体連発したり常駐型魔法使ってもケロッとしてる八幡がサイオンの使いすぎで疲れるのはよっぽどの事だと思う。
・・・。」
術式解体(グラムデモリッション)は一回撃つのに普通の魔法師が一日に使う量と同じレベルのサイオン消費が発生するって達也さんが言ってた。八幡はそれを基礎単一系の魔法でも撃つくらいの気軽さでポンポン撃ってる。あまりに気軽に撃つから会長さんが呆れてたとか深雪が言ってた。
それくらいサイオンに余裕がある八幡が今回は寝なきゃいけないくらい疲れてる。
それは無茶しなきゃいけない状態になったからだと思う。
「いや、俺の指示通り魔法をキャンセルしてくれたじゃねえか。
お陰で魔法が終了条件を伴って完了したおかげで、雫の分の残留するサイオン情報体はほぼなくなったし事象干渉力も無くなった。
雫の分も吹き飛ばそうとなるともう少し強度が必要になったから、明日の朝までぐっすりコースだったな。・・・いや、そっちの方が良かったんじゃね?今夜のパーティーとやらふけれるじゃねえか。」
無茶した方が良いとかしれっと・・・。でもほんとに無理してないみたい。
え、ということは。
「パーティーをサボるのは流石にまずいと思う。
・・・あの、じゃあ私は八幡に迷惑かけてないの?私のせいで競技に影響出たりとか・・・。」
「パーティーをふけれなかった事以外では全く何も問題ないな。むしろ適切に動いて二次災害を回避したまである。」
要するに・・・勘違いで心配して、慌てて詰め寄って、挙げ句に慰められてる・・・んだよね。
・・・・・・成る程これが八幡の言ってた黒歴史。これは死ぬほど恥ずかしい。
何より黒歴史になっていることが八幡にバレてるっぽいのが尚の事恥ずかしい。
「えっと、さっき失敗って言ってたのもあの状況じゃ別に珍しいミスじゃない。何よりその後ちゃんと対処してるからな。
・・・あーそれと、まぁなんだ、心配かけて悪かったわ。」
頭を撫でられてる・・・。・・・・・・・・・頭、撫でられてる。
恥ずかしいから止めてほし・・・・・・い、はずなんだけど、今恥ずかしくて顔が見れないから撫でられておいてあげる。
・・・いや、流石にこの理屈はおかしいよ。でも、他に言い訳思いつかな・・・言い訳じゃなくて・・・。
・・・・・・だめ、思考がまとまらない。
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~ほのかside~
恋に落ちるには唐突だ、とかある時恋に落ちる、みたいな話はよく聞きますが私は”恋はある時を切っ掛けに気がつくもの”だと思います。
一目惚れににしても、気がついたら好きになってたにしても何かのきっかけを区切りにその恋に気がつくのだと思います。
ですけど、人が恋に落ちる現場はなかなか遭遇出来ません。恐らくは自分が落ちるときくらいでしょう。
私の場合はきっとあの入試の時が切っ掛けなんじゃないかなって思ってます。あの無駄のないきれいな魔法に圧倒され、美しいと見惚れてしまったあの時。
私はそういう意味で恋に落ちる経験があります。
なので、見た瞬間はっきり分かりました。
雫が恋に落ちた瞬間を。
雫は頭を撫でられて、赤い顔を見られないように抵抗せず撫でられっぱなし。
雫、可愛い。何というか抱きしめたくなるっていうか・・・。もう、反則的に可愛いです。
にしても、この雫を引き出した八幡さんも凄いです。
少し気になってる八幡さんを、傷つけてしまったと思って落ち込む雫を慰めて、更には挽回した部分をほめて、失敗していないとフォローしたあげくお礼を言って頭を撫でるとか・・・。
端から見てたら恐ろしいほどのジゴロの手口ですね。
そもそも雫は八幡さんの事を好意対象としても目標としても見ていたから、ある意味憧れの人の才能を潰してしまったかもしれないって思ってもの凄い罪悪感だったんだと思う。
実際、八幡さんが寝てしまってから顔色も悪いし時折震えてた。私と深雪がフォローしてたけど効果は薄くって。
にも関わらず、八幡さんが励ましたら先程の悲壮感はどこかに行ってしまって、どころか恋する乙女をモノにしてますね・・・。
誰が人と話すの苦手なぼっちですか、詐欺ですよ。
でもこれで、いまいち自覚してなかった雫は気持ちを気付いたんじゃないかな・・・?
今まで何回か振ってみたけどいまいち釈然としてなかったからこれは良い切っ掛けだよね。
よし、これは雫の親友としてアシストしなくっちゃ。八幡さんの実家は結構ややこしい事があるみたいですけど、北山のおじ様なら多分なんとかしてくれそうだし、雫はこう見えて結構乙女な所があるから一途にアプローチするんだろうなぁ・・・。
なにより八幡さん自身がなかなか大変そうな性格だし・・・。
あと、北山のおじ様はかなりの親バカだから総出でアシストしてきそうな気がする・・・。
八幡さんも血筋だけなら一級品だから釣り合いは取れてるし、そう言う意味では結構障害は少ないのかな・・・って雫がそろそろ限界かな?
頭を撫でられてる雫が助けて欲しそうにこっちを見てる。
「八幡さん、そろそろ雫が恥ずかしさで死んじゃうので、頭を撫でるのは二人きりの所に行ってからにしてください。」
「あ、わりい。落ち込み方がうちの妹そっくりだったもんでな・・・。」
そう言って居座りが悪そうに視線を漂わせた後「じゃあ、先に行ってるわ。」とさっさとバスを降りてしまう。残された雫はまだ再起動に時間がかかりそう。
とりあえず、今夜の話は長くなりそうかな?
バスから降りれました。これは快挙です。(レベルの低い快挙もあったものです。
作者的には九校戦の本格的な部分はここからガツガツやっていくところです。
キャラが一気に増えますので分かりにくかったり描写が甘かったりしたら容赦なくつっこみや質問をお願いいたします。