寒さは佳境を迎えてますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?私はテスト用紙と命の削り合いをしておりました。(単位的意味で。
察しの良い読者様方は予想通りかと思われますが遅くなった理由はそのあたりです。何卒ご容赦を。
~ほのかside~
女が三人も集まれば姦しい。なんて使い古されたフレーズですが、事実2人しか集まってなくても十分に姦しい、どころか喧しいなんて事は珍しくないので、ある意味凄く秀逸な指摘なのかもしれません。
それが3人どころか九校戦参加予定の一年生女子のほぼ全員が同じ空間に居るのですから騒々しいのはある意味予定調和なのかな?
そう言ってお湯をすくって顔を濯いでいるここはお風呂。正確には温泉なのですが、軍の施設である九校戦会場の地下に温泉施設があり、入って良い許可まで出たのは驚きました。
そして許可を取り付けたエイミィに誘われる形で温泉を満喫しています。
「そう言えば三校に一条の跡取りが居たよね?」
「なんか深雪の事熱いまなざしで見てたよ?」
そう言って話を切りだしてきたのはエイミィ。みんながお湯に浸かって雑談に花を咲かせていた中での何気ない一言。
年頃の乙女がこんなにおいしいネタを出されれば瞬く間に妄想の花が広がるのは必然で以前から知り合いで、実は一条君が深雪の事が好きなのでは?なんてレベルで飛躍し始めました。
「深雪、どうなの?」
こういったときに雫は妄想を膨らませず冷静に事実を確認しようとします。今回も例に漏れず当事者に即質問。周りから見たらクールなんだけど、好奇心を抑えられずすぐに質問してるだけなんだけどね。
「真面目に答えさせてもらうけど、一条君の事は写真でしか見たこと無いわ。会場のどこにいたのかも気がつかなかった。」
この回答には乙女回路の介入する余地が無く妄想の投げつけ場所を失ってみんなは鼻白んでいました。
しかし、ここでブレーキをかけれるほど乙女の妄想力は伊達ではありません。
「じゃあ、深雪の好みってどんな人?やっぱりお兄さんみたいな人が好みかい?」
そう言って追撃を入れたのは里美スバル。ボーイッシュな見た目の子で口調も行動も男性的な部分も多くて、こういったときに思い切りの良い事をよく言うタイプの子。
スバルだからこそ容赦なく聞けてますが、私には聞きたい欲はあっても、聞く勇気が持てない質問でした。
「何を期待しているのか知らないけど・・・・・・私とお兄様は実の兄妹よ?」
深雪は冷静を通り越して呆れた顔をしつつ答えました。ですけどそれ、気持ちについては否定してないような・・・。
「いや、でも普段からあれだけイチャイチャしてるの見るとやっぱりさぁ?」
「イチャイチャって・・・。
まぁ、昔はお兄様が好きだった時期が無いではないけれど、少なくとも今は違うわよ。」
爆弾発言過ぎるよ!!
「え、えっ!!?どういうこと?深雪詳しく!!」
深雪が参戦したら敵いっこないよ!?
ただでさえ達也さんは深雪に甘いのに・・・。
この爆弾発言どころか核爆弾とも言うべき発言に色めき立ったみんなは深雪に詰め寄った。
「単純にお兄様以上の男性がこの世に存在すると全く思えなかったのよ。ほら、親戚のお兄さんが無性にカッコ良く見える時期ってあるじゃない?それと同じよ。
だけど、それはあくまで私の思いこみと我が儘。そう諭してくれた人が居て目が覚めたから、今は兄として敬愛してるだけよ?」
「そんなものかな・・・?実の兄妹だとハードルがちょっと高くない?」
エイミィのある意味もっともな指摘に再び集まる深雪への視線。
「だから、恋じゃなくて憧れとか親愛の延長線上にあるような想いなのよ。
恋を知らないが故の暴走って感じかしら?今思い出しても少し恥ずかしいわね。」
そう言ってはにかみながら笑う深雪の言葉を額面通り受け取れないのは私が疑り深いのかな。
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参加することに意義がある。
使い古されたイベント参加強要の謳い文句だ。
そもそもの学校行事は授業であり、基本的に参加する事が推奨されるのは学校という組織に所属している以上仕方がないことである。だが、それ自体に意義があるかは個々人によって様々であり”学校に所属する人間としての義務を全うする意義”はあっても、参加した内容に意義があるなどと、やる前から確定など出来るわけがない。
だが、この言葉の一番の問題は”参加することの意義”の存在は示しても、”参加しないことに意義がない事”は証明していないにも関わらず、そこに触れていないという点だろう。
さも「こっちは意義があるんで、こっちに意義無いです。」的な都合がいい印象操作を感じずにはいられない。参加するだけで意義があるなら参加しないというある種の貴重な体験にも意義はあると俺は説いたい。
だからこそ俺は今激しく後悔している。
国立魔法大学付属第一高校における体育祭、通称「九校戦」は参加人数に縛りがあり参加は任意。
公然と参加しない意義を唱え家で夏休みライフを満喫できた筈なのだ。
だが、結果はどうだ?
新人戦は出せる限界まで参加強要。
挙げ句にエンジニアまでこなす最もハードな参加者といっても過言ではないこの状況。
ブラックにも程があるだろう!?
だからこそ、本格的に忙しくなる新人戦開始までは断固としてホテルの部屋を出ないと・・・。
「八幡早くしないと席なくなっちゃう。」
あれ、俺なんで外にいるんだろう・・・。新人戦までは引きこもるつもりだったのに。
オカシイナー。
俺の籠城計画は朝食の誘いという搦め手を用いた謀略によって逃げ道を封鎖され、挙げ句準備を手伝いに来た世話焼き役(要するに深雪)に二度寝を封殺されあっけなく瓦解。
今は雫に手を引かれ(必死に手を離すように言ったが「逃げるからダメ」と離してくれなかった)深雪に背後を監視されつつバトルボードの予選会場にドナドナされている。
九校戦は毎年全国中継されるほどの人気なイベントで一般観覧券も毎年完売する程だ。
それ故に人が多い。
それも、今から見に行くのはバトルボードでも前回優勝のうちの風紀委員長様が出る試合。注目度に比例して人が多いのは仕方がない。
仕方がないのは、分かっているのだが・・・。
「・・・よし、人多いし席取れないのなら帰ろうそうしよう。」
「エリカ達が席取りしてくれてるみたいだからそこまで急がなくても大丈夫なのは間違い無いですが。
・・・八幡さん、流石に先輩方の競技を全く見ないのはどうかと思いますよ?」
席確保済み・・・だと・・・。
「・・・ごめん、ちょっと急ぎすぎたかも。
後八幡往生際が悪い。今日は八幡に解説してもらうつもりだったから来てもらわないと困る。」
何それ聞いてない。
「それ、達也の方が適任だろ。」
「達也さんにもお願いしてる。
けど、達也さんが戦術面とか魔法の有効性や判断とかは八幡に聞いた方が良いだろうって。」
達也め余計なことを・・・。
そんな最後の足掻きも虚しく開場近くに到着した。席の場所は予め聞いていたのだろう迷い無く進む雫を阻めるものは無いかに思われた。
「八幡遅い。」
唐突に現れた少女に抱きつかれるまでは。
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~??side~
私の中学校は進学校。
入試の難易度もさることながら中での勉強のレベルも高く、しかも中学受験になるのでハードルも高くて基本的に入るのが難しいです。
それと同時にこの学校はとても特殊な事を先進的に取り組んでいることで有名です。
それが『魔法』。
本来は高校生から本格的に学ぶ事が出来る技術で、それを中学生から学べる様にする試験校、らしい。
まぁ、細かいことはこの際どうでも良くて、重要なのは私はその学校に行きたくて、どうにか入学に漕ぎ着けられたってこと。
本来だったら中学受験までして行く学校の事を”細かいこと”で片付けたらいけないんだろうけど、私にとって重要なのは学校そのものじゃなくて会いたい人がいたから。
その人に会った時にはその人の事を多くは知れなかったけど、少なくとも通ってる学校は分かったから対等に話せるようになるためにどうしても同じ学校に行きたかった。
そして入学式と同日にその人に会いに行った時の顔は今でも忘れない私の初勝利の思い出。
だけど、そこはそう簡単な世界じゃなかった。
魔法関係者とそれ以外の確執、魔法関係者の中でも表立って大きな派閥がいくつかあって水面下の精神攻撃は数知れない。敵と味方の読み合いが横行し立ち位置を間違えると火の粉が飛んでくるのも時間の問題という始末。
しかもその攻撃対象の筆頭に私が会いたかった人が含まれていた。
最初こそ、恩返しのチャンスだと思ってた。私を孤立から救ってくれたみたいにどうにか力になれないか考えてみたけど、あまりにも私はその世界の事を知らなさすぎた。
悔しくて、でも諦めきれなくて。
がむしゃらに色々やって、色々な偶然や伝手を辿ったらそれが実り、私は魔法特進クラスの候補生になった。
元々入学段階で魔法資質を見られてて、資質あると判断されたのが入学に貢献していたと後から先生に聞かされた。
だから今、こうして九校戦見学の合宿に参加できてるのは私の頑張りの成果とも言える。
魔法特進クラス候補生の希望者は本来3年で行くはずのこの合宿を2年の時に参加できる特権がある。師匠も「ああいった魔法の資質を競う競技を見ることは一番良い勉強になるから参加してくると良いよ。」ってお墨付き貰ったし。
だが、一番の目的はあの人の競技を見ること。
そしてもしかしたら会えるかもしれない。そう思ってその人の学校の優勝候補が出る試合を同じ行動グループの先輩方と見にきたら探し求めていた人を発見。
だけど、おかしい。
あの恥ずかしがり屋で寄っていったら逃げる様な人がなんで女の人に手を引かれてるんだろう?
それに凄い美人も連れてかなり目立ちまくってる。
・・・・・・これは詳しい話を聞かなきゃいけない。
それに手を引いている人は間違いなく敵。なら、イニシアチブは取っとかないと・・・。
「八幡遅い。」
色々な鬱憤と牽制を込めて、私は八幡に抱き付いた。
よーし。やっと出せたー。
感想欄にてこの新キャラについて話が出る前からこの流れ自体は考えていたのですが、私としましても書きたかったネタなのでやっと、という思いがあります。
登場をお待ちの方にも楽しんで頂けたら幸いです。