やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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平成の間に投稿したかったのですが叶わぬ夢だったようです。

安定の読多裏闇クオリティーですので察していただけると。


九校戦編17

 

 

~いろはside~

 

 

 

 

 先輩が卒業した影響で先輩を取り巻く複雑な状況が落ち着き、学校に残っている魔法師関係のややこしい人間はほぼ卒業して居ないので学校も平和ですし、先輩周りのゴタゴタも沈静化。

 とは言ってもそれは学内に限っての話。

 先輩と関わるのを目的にしている私や留美ちゃんとかは、私達が居ない間に何かしらあるんじゃないかと気が気じゃありません。

 先輩トラブルに愛されていますし、そういうときは誰かしら助けてるし、すぐに無自覚で誑し込むし・・・。

 まぁ、そういう意味で何かしら起きるだろうなって思ってたら案の定。学校に反魔法政治団体が紛れ込んでたりした時は心配通り越して呆れました。

 そして、九校戦でも何かしら巻き込まれているみたいです。

 これは昨日競技を見ている時に雫先輩から聞いた話なのですが、なんでも会場に向かう途中で交通事故に巻き込まれたとか。

 先輩が適切な対処をしなかったら怪我人が出てもおかしくなかったそうで・・・。今度は何に巻き込まれてるんですか・・・先輩・・・。

 雫先輩とは実質ほぼ初対面でしたが、お互いの状況はすぐに察したので特に大きな問題もなく話せました。一応、昔会ったことがあるのも効いている気がします。・・・朧気にしか覚えてないですけど。多分会った当時小学生になったかなってないか位だったし。

 その時に聞いた内容がこれです。最近先輩の話で穏やかなの記憶にないですね・・・。

 この時期、このタイミング、この場所で起こる偶発的な交通事故。

 しかも反対車線から中央分離帯を乗り越えてのってなると偶然で片づけられるレベルを普通に越えてるでしょう。一応パパには連絡入れておいたけど、この辺は軍の管轄だから深入りはまず無理みたい・・・。

 まぁ、流石にこの警備厳重な会場内で何かしでかせるとは思えないし、多分大丈夫だと思うんだけど・・・。

 まぁ、心配だよね。だって先輩こういうときほぼ確実に巻き込まれ主要メンバーに入ってるし・・・。

 

「いろは、来たみたいだよ?」

 

 水波の視線の先を追うとこっちに手を振っている深雪先輩達が歩いてくるのが見える。 

 私が何故物思いに耽ってたかと言えば、単純に暇だったのが大きい。昨日、九校戦を一緒に観戦する話が持ち上がって待ち合わせをしていたのが実状。

 先輩達を待たせるわけにはいかないので少し早めに待ち合わせ場所に来たものの、手持ち無沙汰になっちゃいましたし。

 というかあれ?

 

「あの、先輩が居ないみたいなんですが?」

 

「八幡さんは今日、臨時でエンジニアを担当することになってもう会場入りしてます。

 女子クラウドボールなので出来れば観戦しようと思ってるけど、問題ない?」

 

 凄い。あの先輩がまともにお仕事してるよ。

 

「あ、はい。大丈夫です、深雪先輩。元々クラウドボールは行きたいって話になってたので。

 というか臨時エンジニア・・・ですか。

 エンジニアってそんな簡単に交代できるものなんですか・・・?」

 

「それは私も聞いてみたんだけど、サブだから何かあったときのフォローがメインでそこまでの仕事はないって言ってた。」

 

「会長はご自分で調整なさってますからサブとはいえ八幡さんの調整が実質メインになるでしょうし、普通に出突っ張りになるんじゃないかしら?

 多分優勝は確実だと思うからクラウドボール女子本戦優勝のメインエンジニア扱いでしょうね。」

 

 うわ・・・、先輩を独占する気満々じゃないですか・・・。

 というか優勝確実ってそんなに凄い人が会長なの・・・?あれ、何か見落としてる気がする・・・。

 まぁ、そうやって談笑に花を咲かせていても仕方ないので会場に向かうことに。

 行き先は勿論先輩がエンジニア担当することになっている女子クラウドボール。一校優勝確実って言われている七草真由美先輩の試合。

 あ、そうだった。真由美さん出るんじゃん。そりゃあ優勝確実も納得・・・ん?

 

「ねぇ水波。去年のクラウドボール優勝って確か・・・。」

 

「七草真由美さんだよ、七草家の。

 ・・・それがどうかしたの?」

 

「だよね・・・。真由美さんだよね・・・。それで、一校で優勝確実な会長って事は・・・。」

 

「・・・・・・いろは、まさか。今の今まで第一高校の会長と七草先輩が繋がってなかったの?

 いろは、七草先輩と面識あったんじゃなかったっけ?」

 

 そうだよ!!真由美さんとは家の都合もあって普通に何度も顔を合わせたことがある超顔見知り。というかほとんどタメ口で話せるから、普通に友達と言っていいレベル。

 そういえば前にあったとき会長なるかもって言ってた気がする・・・。

 ・・・え、じゃあ・・・あ。・・・・・・ちょっと待って・・・!?

 

 

「え、先輩、真由美さんにまで手を出したんですか!?

 てか、真由美さん参戦って・・・!?」

 

 

 まずい。まずいまずいまずいまずいまずい。

 とーーーってもヤバい。と言うか洒落になってない。

 そこそこに長いつきあいもある真由美さんの人となりはある程度知ってる。あの小悪魔めいた微笑みの下にどれほどヤバい修羅場馴れした顔が潜んでるのか、私はよくよく知っています。

 真由美さんは自分の価値というものがどれほど武器になるか、とてもよく分かってる人。それに、その武器の振るい方も。そんな人が敵に回ればどうなるか・・・。

 ・・・何かしら対策をしないと手遅れになる。

 どうにか・・・しないと・・・。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~真由美side~

 

 

 

 私の八幡君への印象は一言で言うと”油断ならない男の子”。

 高い能力を保持しているにも関わらず、表向きにはそれを示さず、誇りもしなければ誇示もしない。

 およそ持つべきものが持つ驕りや、持っていてしかるべきプライドは欠片もないのに、弱者然としたプライドだけは一丁前。

 嘘はつくし、誤魔化すし、自信もやる気も感じられないのに、口だけはくるくると回る。

 

 でも、必要だと判断した時には持てる力を惜しみなく使うのよね。

 

 バス事故の時が一番印象に残ってるものの、ブランシュ事件では裏で一番動いたのは八幡君だったみたいだし、要所要所での動きはプロ顔負け。

 さらに言えば労働することは惜しむけど、能力は惜しまない。事実、風紀委員の仕事では術式解体(グラムデモリッション)も得意の重力魔法も惜しみなく使って違反者を一人も逃してない。

 仕事からは逃げようと全力になるけど、する事が確定してしまったらむしろきっちりとやるし、その仕事の出来は文句の付けようがない。

 にも関わらず、その功績を誇らない。

 ただの面倒臭がりならば、自分のやった行動から利益を主張してサボるのが常套手段だし、能力が高ければそれを振りかざして楽をするための環境を作ってしまう。出来ない人間が居れば忌避したり、それによって何らかの問題が降りかかれば相応の悪感情が出たっておかしくない。

 けど、バス事故では一番の被害者なのに被害を増やした人間に文句も言わなければ、貧乏くじを引いたことにも文句を言わない。

 正直ここまでチグハグな人間は私も見たことがないし、アイデンティティの所在がよく分からない。

 何より彼の目的がまず意味不明。

 彼が求めていると公言している内容と、行動と、資質が全部あさっての方向を向いているし、矛盾を指摘しても真面目に聞いてるのか怪しい。

 なのにやることに決まった事には真摯な対応で真面目に取り組むし・・・あーもう!!

 八幡君が何考えてるかほんっっっっっっとうに分からない!!

 

 いっそのこと問い詰めてやろうかしら?とまでは言わなくても、なんとなく面白くなくて呼び出してしまったんだけど・・・、よくよく考えたら仕事を回して良いほど彼は暇じゃないわよね。

 新人戦は過密スケジュールで、不可能を八幡君個人の能力頼みでまかなってるとか・・・。

 自分の準備とかで忙しかったから詳細は聞いてないのだけど、りんちゃんが自信ありげに八幡君の2種目優勝を確実視していたから無茶を可能にする何かがあるんでしょうね。

 それならピンチヒッターとして少しくらいお手伝いお願いしても良いかなって思ってたんだけど・・・。

 今、結構なレベルで後悔してる。

 

「は、八幡君!?その顔・・・っていうかその目どうしたの!?」

 

「はい?あー、ちょっと寝てなくて。

 流石に全員分の競技用のCADデータをまともに理解しようと思ったら一晩かかりました。」

 

 忙しい所に仕事投げちゃったのも有るけど、まさか徹夜までするなんて思ってなかった・・・。

 

「ちょっと待って、全部見たの?クラウドボール出場選手のCADデータを3人分も?」

 

「見ないと本人にあった調整とか無理でしょう?」

 

「いえ、確かにそうだけど・・・。」

 

 本来、CADの調整といってもレベルはあるし段階もある。

 とりあえず魔法が打てるプログラムを本人が魔法を撃てる程度に調整するのと、本人が魔法を使うのに不都合がないレベルで調整するのとでは天と地ほどの差がある。

 それ加えて今から行うのは魔法師同士がその魔法力の差を競い合う九校戦ともなれば魔法発動のコンマ1秒を争う世界になってくる。そこにエンジニアが与える影響が大きいのは考えるまでもない。

 だけれどこれは九校戦開催前の数ヶ月を使って準備されるもので、直前にどうのこうの言う様な物じゃない。

 表向き魔法がとりあえず使える程度の調整なら学生レベルの技術を持つエンジニアには普通に出来るし、今回八幡君にもピンチヒッターとしてメインエンジニアに何かあった場合の為に最低限のそれが出来る人間に一応居て貰うべき、という考えの下白羽の矢が立っている。

 あーちゃんの言だとそのレベルであっても他のエンジニアの完成品に勝りかねない仕上がりになるらしいから、これだけでも役割としては十二分過ぎる。

 お願いしたのも所謂サブエンジニアという立場で、そもそも木下くん自体がサブエンジニアなのだからピンチヒッターとは言え本当に保険でしかないのだけど・・・。

 八幡君の口振りではCADの調整の方針から内容まで全部理解した、と言ってるみたいなんだけど・・・まさかね?

 それだと九校戦準備で数ヶ月分の内容を一晩で把握したっていうことなのだから、出来たのなら驚き通り越して正直呆れるんだけど・・・。はぁ・・・、同じ高校生なのか正直自信がなくなるわね。それに後輩だし。

 だけれど。

 

「八幡君あなたね・・・。自分の体の事も少しは考えて行動してくれない?

 サブなんだし、昨日の今日なら最悪調整さえできれば十分以上の仕事って言うのは察せると思うんだけど・・・。

 ・・・とは言え、今回ばかりはいきなり任せて説明不十分だった私の責任か。」

 

 八幡君としても予定外の仕事だから無理せざる得なかったわけで、それを依頼してしまった私の責任、なんだけど。

 でも流石にエンジニアの数ヶ月分の作業を結果だけを見るとはいえ、一晩で把握しきるなんて暴挙をする想像なんてできるわけ無いじゃない!?

 言葉だけで見れば完成品のデータからどういった起動式か読みとるだけだけれど、十全な調整をしようと思ったら生データからその人間の癖からどう入った経緯でそこに至ったかの足跡も読みとっていく必要があるし、これは解釈の部分もあるから元のエンジニアから”直接引継を行っても”異なった結果を出すことだってある。

 そもそも基礎単一系でも3万字を超える代物をCAD全体とか読みとるだけで何時間かかるやら・・・。

 普通に考えたらそんな物理的に不可能な作業だし、やらなくて良いと考えそうなもの・・・・・・あー成る程。やれそうだったからやる必要があると思っちゃったんだ。

 そうよね、この自称ぼっち君は妙なところで真面目だものねー。

 

 こ の 歩 く 非 常 識 め ! !

 

「いや、説明なら深雪から受けましたよ。

 まぁ、仕事がサブだけなら俺も朝まで快眠するんですけど、サブだけじゃないでしょう?

 昨日の今日で会長のメインエンジニア代行ってなると流石に手が抜けないでしょ。まぁ、徹夜したのは俺の要領の問題なんでアレですけど。

 一応、全員分の調整はできるようにはしましたが、流石にそれだけじゃ徹夜はしねえっすよ。」

 

 ・・・あれ?私の想像した回答と違うのだけど・・・?

 とりあえずこの口振りだったら3人分の内容をメインで出来る程把握した訳じゃないみたいだし、そこまで超人じゃなかったのはちょっと安心、というかほっとした感じだけど・・・って。

 なんかそれ以上に聞き捨てならない内容が無かった?

 

「・・・ちょっと待って。私のメインエンジニア?

 聞いてないのだけど・・・?」

 

「深雪が

 『七草会長は自分で調整なさってるので、ちゃんとしたエンジニアの補助が出来るのは八幡さんだけなので実質的にメインエンジニアになると思います』

 って言ってたんですけど違うんですか?

 ・・・マジかよ、俺寝れたじゃん。」

 

 確かに私は素人と大差がない程度の技能だし、エンジニアがメインの人に見て貰うべきなのは間違いないけれど、実質メインエンジニアは言い過ぎでしょう!?

 ・・・いや、大会規定での扱いはそうなるんだったかしら?いえ、そうじゃなくて・・・。

 

「えっと、いきなりメインエンジニアって言われても全部見て改善して貰うわけにはいかない・・・というか、物理的に無理でしょう?

 普通に補助ってことで良いかしら?今から起動式とか触っても対応できないだろうし。」

 

「あー、ならそういう感じで良いんじゃないですかね?まぁ、多分出来なくはないですけど。

 さっき和泉先輩から七草会長全般任せるって言われたんで、俺的にも仕事少なくなって大助かりです。

 後、眠いですし。」

 

 ・・・確かに私の落ち度で無為な労働を強いてしまったのはなんかこうもしれっとサボれる宣言されるとなんか癪ね・・・。

 とは言え今から大きく弄られても競技に支障が出るだろうし・・・。

 むぅ・・・。

 

「・・・ねぇ、さっきの出来るって私の調整が出来るって事よね?

 それって競技に支障がでないってこと?」

 

「はい?

 いや、一通り見たんで普通に調整は出来るってだけですけど・・・てか、別に仕事無いんですよね?

 それならいっそのこと寝てても良いんじゃ?」

 

「あら、サブとはいえ調整はして貰うわよ?

 それに競技に支障は出ないんでしょう?」

 

 また面倒そうな顔してるわね。せっかく準備したんだから、普通は無駄にしたくないと思うでしょうに。ここまでやる気がないのもどうなのかしら・・・?

 まぁそれは良いとして、元々見て貰っちゃう事も考えてたからちょっと楽しみではあるし、調整って言っても競技に支障は出ないって”言い切った”し。

 ならお仕事とまでは言わなくても、ちょっとだけ私の優勝するところを特等席で見る時間を取ってくれても良いんじゃないかな?

 

「まぁせっかく頑張ってくれたんだし、お姉さんが連覇するのをちょっとだけ手伝ってくれない?」

 

「・・・まぁ仕事なんでやりますよ。」

 

 もう、ほんと素直じゃないんだから。

 




七草会長が暴走するので描写しきるのに手間取る程度の能力。

次話は今回のわちゃわちゃを書いた際に発生した残骸を再構成してますのでややこしかったら質問投げてください。概ね私がやらかしてるのでしっかり補完していきたいと思います。

評価ボタン押してくださる素晴らしい方が驚くほど多く、3桁に乗りました。(ありがたやありがたや

UAとかお気に入りとかも現実なのかにわかに信じがたいほど多くなっており正直驚きで言葉にならないです。
これからもノリと勢いと言う感じではありますが妄想を叩きつけますので、お付き合い下さい。

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