やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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ブランクが開いた影響で周辺情報の整理に時間がかかってる奴がおるな?(要するに雑魚でございます。




九校戦編28

 

 

 

~森崎side~

 

 

 

 気に入らない。

 本当に気に入らない。

 今年の新人戦の成績は好調この上ない。だが、そのほとんどは女子の成績が反映された結果であり、男子はほぼ貢献していないに等しい。

 現在それでも、首位の座を保っていられているのは女子の成績のおかげであり、足を引っ張っているのは俺達だ。女子の成績は現状1競技以外全て優勝、もしくは現在進行形で勝ち進んでいる。対して俺達男子は唯一俺が早打ちで準優勝だったがそれでも三校に負けているし、ピラーズブレイクの比企谷が勝ち進んでいるものの、他はほぼ予選落ちで表彰台争いにすら参加できていない。

 今年は三校に一条将輝が居るのもあって新人戦は三校注意なのは新人戦開始前から分かっていたことだが、一条将輝が出場していない競技ですら優勝をかっさらわれている。

 いや、そもそも優勝争いすら出来ていない段階で三校以前の大問題なんだが。

 ここまで女子の成績が好調だと、その立役者が目立つのは至極当然。それがどのような立場だったとしても些細な問題だ。

 

「司波君、雫のあれって共振破壊のバリエーションだよね。起動式は司波君がアレンジしたって聞いたよ。」

「雫がスピードシューティングで使った魔法も司波君のオリジナルだったんでしょ?」

「氷炎地獄(インフェルノ)をプログラム出来たのも司波君だからですよね!」

 

 結果として夕食時に女子メンバーに囲まれ、ちやほやされる司波達也が完成するわけだ。

 この流れ自体は気に入らないが・・・気に入らないのは間違いないとしても間違った流れではない。事実として司波達也が女子を好成績へ導いたのは事実なのだろう。だが、それを「はいそうですか」と認めることは絶対にあってはならない。

 

「いいなぁ・・・・・・あたしも司波君に担当して貰えれば優勝できたかも・・・」

 

 気に入らない。あぁ、気に入らないとも。

 女子が好成績なのは良い。同じチームとして誇らしいし、祝福すべき事だ。

 俺達が不甲斐ないのも一万歩・・・いや十万歩譲って良いとしよう。今後挽回していけばいいし、ポイントの配分の大きいモノリスコードも残っている。

 だが、それを"司波達也の功績"と思考停止で言い切るのは違うだろう。

 これは司波達也を二科生と見下した上での発言じゃない。

 実際にブルームとウィードなんてものは、ただの名札の一部でしかないのは入学して数日で身に染みて理解している。事実として司波達也は今日に至るまで実績を積み上げ続けており、下手な一科生よりも有能であることを生徒会をはじめとした第一高校に証明し続けている。

 そんな奴と俺がやってきた事を見比べれば出てくるのは失笑でも上等な部類だろう。

 

 教員推薦枠での風紀委員に選ばれて数日で所属する前に取り消される奴。

 

 これが俺の現在の評価であり、俺の失敗と阿呆さが招いた結果だ。

 あの取り消しは比企谷との交代と書類上は示されているが、司波達也を風紀委員に所属させるための方便なのはいうまでもない。

 そしてその選択は実績を持って証明された以上、俺が何をいったところで負け犬の遠吠えだ。

 それでも・・・いやだからこそか。

 

 "司波達也が担当すれば勝てる"なんて考えは断じて。絶対に認めるわけにはいかない。

 

 俺の入学したての無様は誇りと驕りを取り違えた馬鹿の所業だ。

 これは擁護のしようがないし、する必要もないだろう。だが、それは、誇りあるべき存在がのうのうと生きて良い免罪符にはなり得ないし、なってはいけない。

 ブルームとウィードの差は実力だ。

 それ故にブルームにはそれ相応の実力を証明する義務がある。

 現在、その義務を男子メンバーは一切果たせていない上、ウィードである司波達也は文句のつけようがない成果を示し続けている。

 そしてその優勝に全て貢献し、現状の競技で担当者全員が事実上無敗である担当エンジニア”司波達也”への評価が大きく見直されるのも仕方がないことだろう。

 だからこそ気に入らない。あぁ、気に入らないとも。

 

 ウィードに自分達の不甲斐なさの尻拭いをさせている俺達の不甲斐なさが血反吐が出るほど気に入らない。

 

 ”司波達也が担当すれば勝てる”とは"実力では勝てない"と公言しているも同義だ。

 それをただただ受け入れる事に疑問すら抱いていないなど論外だ。

 ブルームだのウィードだのは名札に過ぎなくとも、結果として学校側に優等生として学校に認められた”権利者”である事実は変わらない。恵まれた授業を受ける権利を与えられた存在であることは紛れもない事実だ。

 立場には責任があり、権利者には相応に行使しなければならない義務がある。

 

 それ故に俺達は怠惰に状況を甘受する資格はないし、座して食い下がりもしない無能に成り下がる権利などあるわけがない。

 

 例え入学時の実力を測っただけの結果だとしても、この胸のエンブレムは軽くはない。

 ブルームである俺達にはブルームであるが故の実力を示さないといけないんだ。

 だからこそ結果を出さなければいけない。いや、意地でも実力を示めしてやる。

 そう・・・。

 

「ブルームがウィードより優れた存在であることを証明してやる・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~達也side~

 

 

 

 

 

「第三高校1年、一条将輝だ。」

 

「同じく第三高校1年の、吉祥寺真紅郎です。」

 

 この”招かれざる客”が現れたのは深雪のピラーズブレイクへの会場へ向かう通路。

 こちらが存在を認めた所での挨拶から察するに待ち構えていたのだろう。視線も些か挑発的で友好的とはかけ離れている。

 まぁ、学校行事に近いイベントとは言え敵同士なのだから、これが普通とも言えなくはないか。

 

「第一高校1年、司波達也だ。

 それで、『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』が試合前に何の用だ?」

 

 害意は感じない。

 敵意ともとれかねないが、どちらかというと闘争心をもってこちらと相対している印象だ。

 これが深雪へのものだったなら排除しにかかるところだが・・・何故かその視線は俺に向いている。

 ・・・理由には皆目心当たりがないが。

 

「ほう・・・俺のことだけでなく、ジョージのことも知っているとは話が早いな。」

 

「しば・たつや・・・聞いたことが無い名です。ですが、もう忘れることはありません。おそらくは九校戦始まって以来の天才技術者。

 試合前に失礼かとも思いましたが、僕たちは君の顔を見に来ました。」

 

 案の定、俺の客のようだがやはりわざわざ俺の顔を見に来る意味が分からない。

 無名でただのエンジニア相手にするには”破格”の対応といわざる得ない。

 いや、”破格”ではなく”過剰”の部類か。

 

「若干十三歳にして基本コード(カーディナルコード)の一つを発見した天才少年に『天才』と評価されるとは恐縮だが・・・確かに非常識だ。

 深雪、先に準備しておいで。」

 

「分かりました。」

 

 現状の最優先事項は深雪の次の試合だが、もう少し相手が必要そうでもあるし、何故か深雪の機嫌が良い。

 お互いに自分勝手この上ない会話をしているものの、明確な敵としてと互いを見定めている。

 好敵手には力不足ではあるがそう言ったものと相対する心境を感じられた。

 まぁ、プリンスの方はどうやら深雪にアテられたらしく無意識に目で追っていたのがたまに傷だが。

 

「・・・『プリンス』、そっちもそろそろ試合じゃないのか?」

 

 どうやら一条将輝は深雪にも用があったみたいだがこのタイミングで、しかも兄の前で目移りするのはどうなんだ?

 などと胸中突っ込みを入れているともう一人が話の軌道を修正した。

 

「僕たちは明日のモノリスコードに出場します。

 君はどうなんですか?」

 

「そっちは担当しない。」

 

 時間が惜しいし、何より懇切丁寧に返してやる必要も感じない。結果的に端的な会話となる。

 

「そうですか・・・残念です。いずれ、君の選手と戦ってみたいですね。無論、勝つのは僕たちですが。」

 

 どう解釈しても喧嘩を売っているとしか解釈出来ないが・・・そもそも喧嘩を売りに来ていたのを思い出した。

 

「時間を取らせたな。次の機会を楽しみにしている。」

 

 喧嘩を売って一方的に立ち去るあいつ等を無言で見送る・・・予定だった、が言われっぱなしは癪だと感じる様になったのは誰の影響だろうか。

 

「ずいぶんと過分な評価を受けているが、警戒する相手を間違えているぞ。」

 

 おそらくは親友を遠まわしに侮られた、と感じたからなのだろう。

 気がついたら口をついて出ていた。

 

「・・・比企谷八幡の事ですね。もちろん彼も君と同様に警戒していますよ。

 ですが、私的な意見としては貴方の方が脅威だと感じています。

 比企谷八幡と違いエンジニアを専任する君の調整にミスはないでしょう。

 それに、彼が出場する競技は将輝とぴったり被っていますからね。」

 

 足を止めて振り向きながらの研究者らしい細かな説明。

 額面通りしっかりとした警戒をしているのだろう。

 どうやら”脅威度”の観点を見誤っているようだが。

 

「一条将輝ならば勝てる、か。

 傲慢だな。」

 

「ジョージの言葉を傲慢にさせないのは俺の責務だ。

 だが、他ならぬお前の忠告だ。心に留め置くことにしよう。」

 

 そう言い残し去っていった。

 

 

 

 

 

~真紅郎side~

 

 

 

「ジョージ、司波達也はああ言ってたが、どう思う?」

 

「むしろこの忠告をする余裕があること自体が脅威と言えるよ。しなくて良い忠告をわざわざする無価値さを分からない彼じゃないだろう。

 だけどそれが比企谷八幡を侮って良い事にはならないのは間違いない。至極当然の指摘をされて乱される事自体、彼の術中だ。

 方針は変えなくて良いと思う。」

 

「とは言え司波達也の件で俺が介入できる部分はほぼないからな。

 急遽モノリスコードのエンジニア担当に抜擢でもされれば話は変わってくるが・・・。」

 

「それは、おいおい考えるとして、少なくとも本題を見失わないようにはしようか、将輝。」

 

 既に微妙な目つきでこっちを見ている人間がいることを遠回しに将輝に伝える。

 

「そうだぜ将輝。俺の応援に来たんじゃないのかよ?」

 

 そう、あの司波達也への宣戦布告は試合を見に行くついでで、本来の目的は同級生のピラーズブレイクの試合を応援に来たのだ。それもこの試合は第三高校にとても大きな意味を持つ。

 相手は第一高校で、あの”比企谷八幡”だ。

 

「悪い悪い。だが、これは信用の裏返しだと思ってくれ。

 お前ならアイツに目にもの見せられると思っているからこその態度だ。」

 

 将輝の言う言葉に嘘はない。

 彼は第三高校の中でも魔法の発動スピードに定評があり、移動系統が得意な魔法師でもある。第三高校全体で比企谷八幡を相手にピラーズブレイクを挑み、あのスピードについてこれる魔法師で、中でも対応以外も出来る余裕のある数少ない人間だ。

 十分に勝機はあるだろう。

 

「いや、スピードにはついていけるが、おそらく勝てないだろうな。

 意地でも瞬殺は避けるつもりだが、あいつにはそこから先がある。

 俺の読みは外れてそうか?」

 

 そう言って僕へ補足を願う目を向ける。

 

「・・・確かに、ただの早打ちギャンブルが一校のエースを張れるわけがありません。

 ですが、それはまだ手の内が見えていないに過ぎないだけ。

 十分対応出来る可能性はあると思うし、勝負を捨てるのには時期尚早だと思いますよ?」

 

「だからこそ、だ。

 三校が優勝するにはピラーズブレイク優勝は必須だろ?

 なら将輝が確実に勝てるように俺はあいつの手の内を暴きにいく。」

 

 確かに、その意見は正しい。

 手の内さえ知っていれば対応できる精度が格段に違う。有名故にある程度の手の内が予想される将輝と状況が並ぶならば将輝に負けはない。

 

「分かった。君が暴いた手の内から将輝が勝てる手段を絶対に提示してみせるよ。

 だから安心して全力を出してきてくれ。

 別に僕の仕事を減らしてくれてもいっこうに構わないからね?」

 

 そして我が意を得たと言わんばかりに試合会場に向かい、試合が始まる。

 

 結果は善戦するも敗退。

 今までの比企谷八幡の瞬殺記録に抵抗し一歩先を見るに至った。

 そして、意地で見せた足掻きを見ていなければ、将輝でも”もしかしたら”があり得たと言える程の情報を勝ち得てきた。

 「なんとか仕事はしてきたつもりだぜ、後は任せるわ。」と試合後に告げた彼こそが今日のMVPだろう。

 

 見ててくれよ、絶対に将輝は勝たせてみせる・・・!!

 

 

 

 




細かい試合内容は次回になります。
こっからは試合ラッシュになりそうですが、ちょこちょこ本筋を挟めたらと思います。

時系列がややこし気味になる予想が立つので質問ツッコミお待ちしてます。
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