やはり俺の相棒が劣等生なのはまちがっている。   作:読多裏闇

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大変、長らく、お待たせ、致しました・・・。

タコ作者、一応生存しています。

大学院がね?あまりにもね?忙しくてね・・・?(逝く




九校戦編29

 

 

 人とは失敗をする生き物であり、失敗を知っている生き物である。

 世の人間は数々の失敗を繰り返しながら体験をし、学習をすることで成長を重ね、その自らの経験を元により良い成果を得るべく改善を繰り返していく。もちろん彼らの行動は洗練されていくが、同時に一切の失敗を排除することが出来ないことも、経験として身に着けていっているのだ。

 だが往々にして人間は失敗をただ認めることができない。

 敗北や失敗を誤魔化したいし、否定したいし、正当化だってしたい。

 失敗する事から恐れ、待避もするし。

 失敗を誤魔化すために無かったことにしようとし、もみ消すのは至極当然のことであり珍しい事などではない。

 これは人間が過去から現在にかけて、長い歴史によって証明し続けてきた真理だ。

 これは成功者にこそ顕著で失敗が世間的にも自分の価値観的にも許されない彼等はあらゆる力を使ってでも失敗を認めない。だが、それは彼等、成功者が数々の苦しみのすえに獲得したものがあるからこそ起こりえた主張。いささか暴力的であっても成功者故の正当な主張といえなくもない。

 見方を変えれば正しさを主張せざる得ない立場であり、主張出来る立場だからこそ許されたスタンス。

 だが弱者は違う。

 何故なら間違いを正しさで塗り替えるほどの力があるわけではないからだ。

 彼等なりの正義と矜持が実力を持って示されているものであっても、強者が振るう力という権利を受け止められるほど一般人は強くないし、持たざる自分に不平をどうしても受け入れられない。

 結果として”持つものは持たざる者に奉仕する義務も提供しなければならない”という法律はないが、持っている人間が力を保持することを力の独占や力を持つ人間の怠慢として批判するのが持たざる者の常套手段となるのが実情という勝ちすぎても負けすぎても罰ゲームなクソゲーな世界が完成するわけだ。

 だが現実を見れば、持たないものが一人で何かをほざいたところで、それはただの負け犬の遠吠えでしかなく、さしたる意味がないという事に変わりはない。

 目に見える格差は文句では埋まらないし、同じ言葉であれば強者の弁の方が強いのは明確だ。また、持たざる者は持たざる者故に失敗に対して取り得る手段も少ない。

 不平を叫び文句を並べても失敗が自力で取り繕える範囲を超えれば、もみ消せる権力もないし、失敗を受け止められるのは己のメンタルのみで、取り繕うにも実力ありきなのでどうしたって限界はある。ではどうするか?

 

 徒党を組んで分散し問題自体を曖昧にしてしまえばいい。 

 

 これは自分の責任ではなくみんなの責任だ。

 みんなも失敗しているから失敗して当然だ。

 みんなの代わりに先に失敗しておくことでみんなのために尽くした俺は英雄だ。

 そんな自己正当化で自分を守り失敗の責任を希薄化して、分散して、責任を取ることから逃げるのだ。出来る人間は一部の天才であって自分達は違う。そんな劣等意識を共有して自分達を正当化し集団という一つの世界で自尊心を保つ。

 だから、多少の失敗をしてもみんなが居れば大丈夫。

 助けてくれるし弱音も聞いてくれるし、場合によっては手伝ってくれる。

 そうやって弱い者が集まったり、強いものにくっついたりして集団に責任を添加して責任を曖昧にして問題を回避するのだ

 

 だからこそ、ぼっちは失敗に対して臆病だ。

 

 失敗すれば全部自分で受け止めるしかない。だって独りしか居ないから。

 失敗したことをどうにかするのも自力だ。だって独りしか居ないのだから。

 そんな全部自力になると分かってるからこそ、ぼっちは準備に余念がない。失敗しても誰も助けてくれないのだから当然の行動だ。失敗しない準備もするし、失敗のリカバリーも予め設定しておく。失敗しても・・・何ならば失敗前提の準備だってするのがプロのぼっちだ。

 だから、いやだからこそこの状況は困惑せざるを得ない。

 

「それにしても出来過ぎよね。八幡君の策が全部見事にハマってるし。」

 

 俺のピラーズブレイク2日目の待合室でそう呟いた会長の発言を聞いて感じる居心地の悪さが半端無さ過ぎはしないだろうか?

 現在のピラーズブレイクは男女ともに比較的順調。男子が勝ち上がってるのは俺だけだが女子は全員勝ち上がっているし、俺のこの試合で一校男子側は決勝進出者が決まる。3ブロックの優勝者が決勝ラウンドを戦う形になるが、このままいけばほぼ間違いなく今勝ち残っている全員が決勝に行くことになるだろう。

 解せぬ。

 

「結果から見ればそう映りますが、出来過ぎなのは相手側の自滅面ですね。昨日の試合は男子女子ともに一校とそれ以外の一部を除いてまともな試合になっていないものが多数見受けられました。

 観客としては派手で分かりやすい試合運びが多い様に映りますが、見る人間が見ればただの無鉄砲ですから昨日の試合は魔法師の地力を問われる物になった様に見えます。」

 

「そう考えると今残っているのは相当な猛者か、ラッキーに愛された奴と言うことか。

 どちらにしてもイニシアチブを労せずして握っているに等しい。いや主役じゃないか、比企谷?」

 

 そういって俺の競技前の待機室に出向いた先輩方(七草会長、渡辺委員長、市原先輩)は本人そっちのけで言いたい放題である。

 冷やかし通り越してあおりが始まってるな?

 

「新人戦ですし大方緊張かなんかでミスったんじゃないすか?ミスりすぎな気がしますけど。

 まぁ、魔法科高校の生徒とはいえ数か月前までは中坊なんですから、そんなものといえばそんなもんなんかもしれないっすね。」

 

 確かに騙し討ちとはいえここまで上手くいくもんかよ・・・。

 そもそもとして俺がやった初見殺し戦術は市原先輩の言うような自滅を目的としたものではなかったのだ。もちろん模倣犯を想定した対応法はチームに説明したがここまで蔓延することは考えていなかった。昨日の2回戦で俺の戦術にも対応してくるだろうし今日にいたっては手の内全部持ってかれて決勝に行けるか行けないか・・・くらいで負ける想定をしていたのに。

 現実はそこまで甘くなかった。

 

「またそんな言い方して・・・。

 とはいえ今日は昨日と違って相手が冷静でしょうから、気を引き締めないと・・・と言いたいところだけど、このまま行けば優勝間違いないでしょうし、リンちゃんが言う奥の手もまだ見てないしね?

 否が応でも今日の主役になるからそんな軽口叩けるのも今のうちよ?」

 

 へー、俺優勝するのか。そりゃ目立つし主役かの様な扱いになるだろうな・・・なぜに俺が優勝する前提になった?

 

「なぜそんなさも当然の事実かのように虚言を吐いてるんですか・・・。妄想も大概にしないと駄目っすよ。

 俺が優勝とか締まらないですよ。」

 

「ずいぶんな言い草だな。何か根拠があるのか?

 自分が負ける理由を説明させるというのも締まらないがな・・・。」

 

「単純な話ですよ。

 決勝にほぼ100%一条将輝が出てくるということ、そして次の対戦相手が三校で、おまけに達也から「一条が敵情視察に来たから気を抜くな」というメールがさっき来たので相手がこっちを舐めてかかる事が期待出来そうにない。

 これだけ揃えば根拠としては十分です。今年の男子ピラーズブレイク優勝は三校ですよ。」

 

 これだけ提示できれば現実を見てあらぬ期待や存在しない希望を、押し付けられたりしないだろう。それより問題は相手だ。さすがに想定よりもぐちゃぐちゃし過ぎで昨日は手の内を見せ損なってしまった。

 決勝ラウンドは行っちまいそうだなぁ・・・。面倒くさいなぁ・・・。

 

「そうやって負けを宣言されてしまうと作戦スタッフとしてはいろいろと物申したいところですが、相手が一条選手であることを加味すると楽観的な意見が出せないのも事実でしょう。

 逆に言えば不安要素はそこ以外無いので2位以上は確保してほしいですね。」

 

 決勝ラウンドには行けと暗に脅された件。

 

「まぁ、期待しないで見てて・・・いや時間の無駄ですし他の奴の応援でもしててください。」

 

 というか、主役とか勘弁してほしいわ。そういうのはあっち(一条将輝)の領分だろうよ。

 

「人生っていう俺が主役のはずの物語ですらろくに歩めて無い奴なんで人様に見せられるもんじゃないんですよ。」

 

 

 

 

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 人間は想定通りに物事が進みすぎるとそわそわする生き物である。

 それが十全に準備を重ねるぼっちともなれば行動は常に失敗前提。失敗に失敗を重ねつつもどうにかこうにか事前準備で乗り越えるのがぼっちというものだ。

 だが現状はどうなだろうか?事前準備の最初のタスクすら使われず思い描いた妄想が独り歩きしてしまっている。

 正確には現状は想定よりも上手くいきすぎな部分が多く一周回って想定外になりつつあったが、こういった競技に伴う作戦が相手に有効に働いたパターンだと作戦通り、又は想定通りと表現するべきか。

 だだ現実はどうだ?何故か徒党を組んで俺を攻略するような空気感で進行している上に、対戦相手のあの雰囲気は完全に勝負を捨てて俺を削りに来てる感じだし・・・。

 

 おい対戦相手一同。勘違いしてないか?

 俺は強者じゃなくてただのぼっちだぞ?

 

 まぁ、対戦相手の勘違いも遠からず俺の器が知れるだろうが、上手くいき過ぎている現状を一切の心配なく座視して見れるのは強者の心理で、一般人は何かしら見落としや失敗がないかかえって心配になるのが基本だ。負ける事において百戦錬磨。他の追随を許さない圧倒的なエリート敗者たるぼっちならばなおさら、というものだ。

 だからこそ試合開始と同時に自分の魔法が情報強化によって阻まれたとき自分の魔法が阻まれたにもかかわらずなぜか安心してしまった。

 

 よかった、やっとこの魔法をちゃんと終了条件を伴って最後まで完了できる・・・。

 

 

 

 

 

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~真由美side~

 

 

 

 ほぼほぼ捨て台詞のように自虐を言いながら競技に向かう八幡くんを見送り、暗い雰囲気と紋付き袴の後ろ姿から「任侠映画のヤクザ?」かと思いつつも控室のモニターから観戦を始めた。

 相手は八幡くんが言うように第三高校。昨日の対戦相手と違い過剰に警戒している風でもなく落ち着いている様に見える。・・・この感じは見覚えがあるわね。

 自分の勝利よりもチームでの勝利の為に捨て身で攻めに来る。後先考えない手段で相手の手の内を暴きに来る、そういうタイプの選手がああいった雰囲気をまとっていた。

 去年、私も似たような集団戦術をされた記憶があるので対戦する上で難しい相手になるのがよく分かる。勝つ気がないから隙が出来にくいし攻勢に出るのは削るためだからひたすら遠回りしながら勝たないといけなくなる場合が多くて・・・でいろいろな意味で消耗する相手。

 とはいえ気付いたところで既に後の祭り。もう八幡くんは競技場で対戦相手と向かい合い開始のブザーが鳴り響いていた。

 

「止められた!!」

 

 最初の攻防はいつも通りの八幡くんの早打ちに相手側相手側の選手が対応し、12本の内自陣側手前の4本(相手選手の目の前の2×2)に情報強化を間に合わせて浮遊から阻止する事に成功するとこからスタート。

 八幡くんの魔法発動速度と戦術に対応できる選手が予選段階では対戦相手として出てくるのか正直微妙だったところもあって、正直なところ決勝までは瞬殺だと思われていたからこそ、摩利の反応も理解できる。

 この時点でこの大会では八幡くんの初動に対して初めて対処できた対戦相手となる。当然ながら過去2回の対戦にはない変化から対戦相手にここからの巻き返しに期待する流れになったはずで、次のアクションを注視する流れになる・・・はずなのだけど。

 

 巻き返される未来が全く想像できないのよね。

 

 実際に八幡くんのキャストスピードに間に合わせる事を昨日の今日で現実化することはすごい事なのにも関わらず、見ている私たちが八幡くんが負けるビジョンが欠片たりとも浮かんでこない。

 魔法師だからこそ分かる。相手選手が守り切った4つを除いて浮き上がった”氷が未だに魔法の制御下から離れていない”という事実が。そしてその氷がもう既に新たな事象改変を受けつつあるという事実が、八幡くんの勝利を疑う余地を全て奪い去ってしまっている。

 

「比企谷君の魔法は一見すると初手の速攻によるギャンブル戦法ですが、速攻での勝利は本来の魔法式の前半部分でしかありません。」

 

 八幡くんのが浮き上がらせた氷は、浮き上がらせられなかった残りの氷の上に集合し一つの大きな塊となった。元が直方体の氷だからまるで大きな氷の塊が切り出す前の形に逆再生されていってるみたいに見える。

 

「前半の魔法で全ての氷を持ち上げた場合はその後の処理を行わず魔法式は終了しますが、全ての氷が浮き上がらない状態になった場合後半の魔法式が処理され、一定の高さまで浮き上がった氷を浮き上がらなかった氷の上に収束魔法によって一塊にまとめて・・・。」

 

 後はもう予想通り。巨大な氷の塊が重力の赴くままに残りの氷に落下し質量に任せて残りの氷を破壊した。

 

「魔法制御を手放すことによって起きる重力落下によって残りの氷を破壊します。」

 

「速度重視の情報強化は視認に頼りがちだ。だから自陣手前側に偏ったのは分かるが・・・まるで相手の行動の全てを先読みしたような魔法だな。あいつはいつから預言者になったんだ?」

 

「私も初めて見たときは私もそう感じました。同時にそんなに都合よく行かないのではないかと危惧を抱きましたが、何も知らない選手が適切に、かつ有効的に対処した場合に起きる事への対処な点。そもそもとして情報強化以外の対処を許していないからこそ本来ならば夢物語でしかないものが成り立ってしまう。

 新入生の戦い方ではありませんね。」

 

 実際、八幡くんが立てた予測に相手が合わせたように綺麗に策が嵌っている光景を見ればそういった意見が出るのはうなずける。

 やる事全て先回りして対策済みなんてやったらそう思われても仕方ないけれど、言ってしまえば予想と先読み。ただ内容が”先読みという点においては”些か高度なだけ。

 本当だったら対戦相手にはいろいろな選択肢があるはずなのに、その選択肢を1つに絞る手段があって、それを実践する実力があっただけ。

 それも、九校戦参加選手レベルならば基本的な部分は再現可能なレベルななもの。

 ただ思いついたから実践できている。

 ただ”誰も思いつかなかったから猛威を振るっている”。

 

 だからこそ、違う。

 ”八幡くんがただすごい”なんてことは絶対に違う。

 

 これは八幡くんがすごいんじゃない。いいえ、すごくはあるのでしょうけど、どちらかといえば対戦相手・・・いえ、こういった手法を”思いつけなかった”私たち全体が怠慢だったから、対応を考えてなくて後手後手になってしまったから、八幡くんの想像を超えられなかったから、彼が勝って・・・いえ、ただただ思惑通りに進んでしまっている。

 

「まぁ、とりあえず決勝ラウンドは確定だな。」

 

「予定通りに、ね。」

 

 




もう1話出来かけなんで遠からず・・・。

試合の"流れ"は説明したけど、魔法の処理とかの説明が中途半端なんでね?

書きます。(書いてます。


サボってた間にイベントだらけだったあたり、タコですがまた読んでやってください
(俺ガイル終わるし俺ガイル(アニメ)終わるしm、魔法科終わるし(始まったけど)アニメやってるし・・・

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