蒼茫英雄都市 東京   作:枯葉坂

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ここから暫く戦闘描写はありません。

1月5日22時現在:UA1000達成
ありがとうございます。これからも枯葉坂の精進と作品の成長を温かく見守りいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。


呼応

 それから、藤丸たちは一般人の手前魔術の行使ができない中辛くもドームからの脱出を果たした。

 外にはすでに多くの警察や消防、野次馬たちが取り囲んでいた。

 藤丸たちは助けた女性が逃げる途中で少し膝を擦りむいたので取り合えず救急隊員の元まで送り届けることにした。

 

「助けていただきありがとうございました」

 

 隊員の手当てを受けて落ち着いた女性は二人に礼の言葉を述べた。

 

「私は夏目美加と言います。名のるのが遅くなり申し訳ありません」

 

 ―いえいえ

 —藤丸立香と言います

 

「私の名はアルトリアと。ところで質問をさせていただきますが、あの怪物たちは何者なのでしょうか?白い方については何か知っていられる様子でしたが」

 

「知らないのですか? そうですよね、あれからもう13年ですからね・・・。あれは今から13年前に世間を騒がせ、悪虐の限りを尽くした未確認生命体・・・のコスプレをした人たちです。今回の催しでヒーローショーの一貫としてアイドルの伽部凛さんを人質にとるクラゲの未確認生命体を白い未確認生命体第2号が救うという夢のコラボを予定してたんですよ。2号の名前を呼んだのはスーツアクターが私の知り合いだったからです。気が動転していて叫んだことなので忘れてください」

 

 嘘だ、と藤丸たちは内心思った。彼女は知らないだろうが彼らはその未確認生命体とやらと戦ったのだ。あれは人が持っている力では断じてないと。だがそれを声に出すことはできない。神秘の秘匿もあるが、こちらも若干一名コスプレ紛いの格好をしたブリテンの王がいるからだ。

 

「私には付き添いの人がいたんですが、スタジアムで一緒に気を失って。わたしは運良く無傷でしたが、彼は、きっと・・・」

 

 夏目が言葉を発するたびに声が震え始め顔が沈んでいく。

 その目の前を救急隊員に運ばれる一本の担架が通った。

 

「い、一条さん!」

 

 その担架に乗せられた一人の男性を見て夏目は驚きの声をあげた。

 

「この男性のお知合いの方ですか? ある男性が連れてこられたのですがその方はすぐに姿が見えなくなってしまって。できれば付き添いをお願い致します」

 

「わかりました! お二人とも、あちらが私の付き添いの人です。すみませんがここで失礼します。何もお礼はできませんが困ったことがあればこちらにお電話ください!」

 

 夏目はポケットから取り出した手帳に何か書き込むと、それをちぎって渡してきた。

 

 

〈捜査一課 特殊犯捜査第四係 夏目美加 □□□‐□□□□‐□□□□〉

 

 夏目は右手を頭にかざし、綺麗な敬礼をするとメイド服のフリルを踊らせながら嬉しそうに担架が運ばれた救急車の元へ走って行った。

 

『あの方は日本警察の方だったのですか? 日本の女性警官はあのようなメイド服も着用しなければならないのですね。主従という意味でも国家への忠誠が伺えます』

 

 ―いやいやいや

 ―只のコスプレイヤーだよきっと

 

『いや、彼女は警察職員で合っているよ』

 

通信機からスタッフのものとも違う落ち着いた男性の声が聞こえてきた。

 

『ホームズ、君か。引きこもるのに飽きたのかい?』

 

その正体は彼の有名な推理小説の題名にもなっている名探偵。

今なお世界が愛してやまない、レンズとローブの似合う英国が誇る紳士。

謎の東方格闘術家、シャーロック・ホームズである。

 

『どんな推理にも紅茶の時間は必要さ。話を戻すがモニターで確認した限り彼女は先程の戦闘で白色の『彼』を『五代』と言った。本当にスーツアクターならば確かに瓦礫の雨とダンスする彼を心配するのも無理はないが、クラゲの怪物の爆発は周囲への被害からどお言い繕ってもヒーローショーでないのは明らか。未確認生命体とやらが13年前に活動を停止しているのは、彼女の言動からその世界の一般常識として成り立っているのだろう。それが活動を再開したという事実と未確認生命体の一部が協力関係にあったこと、もしくは第2号の本名自体を世間に隠匿したい組織といえば政府かもしくはその直属の機関、つまり警察関係者というわけだ。まあ彼女の被服に関しては平行世界で警察界隈のfashion(流行り)として確立しているかもしれないがね』

 

 ―そんな制服の警察は

 ―やだなー

 

『雑談はそこまでにして、我々の今後について話し合おうじゃないか』

 

『そうですね。貴重な情報源かもしれない夏目さんには今お電話するわけにもいきませんし、何より活動拠点が欲しいところです。ですが、建物や周りの方の服装から一部を除いてこちらの世界とほぼ同じ生活様式と推測されます。魔術と戸籍情報を秘匿しながらの拠点確保は難しいのでは?』

 

 ―イケルイケル!

 ―いざとなれば高架下で・・・

 

『アメリカの広大な荒野で野宿ならまだしも、現代日本の発展した都市部でホームレスになる先輩の姿は見たくありません!住むなら先輩に合った、格式高い庭付き二階建てのベランダが広いお家で、フォウさんの鳴き声と共に帰ってきた先輩を私がお出迎えして『お帰りなさい、あなた』と・・・』

 

『そこ、時代を越えたお花畑を展開するんじゃない。と、そういえば先程の混乱で重要なことを言い忘れていた。君たちのレイシフト中に此方では大変なことが起きていてね。此方で待機中のサーヴァントが数騎居なくなった。どうやらそちらの時代に召喚されたようだが真名は・・・』

 

「あら? 坊やにセイバーじゃない。こんなところで会うなんて奇遇ね。もしかしてさっきの爆発はあなたたちの仕業?」

 

 面々が声の方を向くと、そこには尖った耳に髪と同じ水色の目、黒のシャツに布を巻いたようなデザインのスカート、丈の短いジャンパーを着た周りから一際美しく浮いた女性、カルデアで一、二を争う古代魔術の使い手。

 ギリシャ神話の魔女ことメディアがいた。

 

 

 

 

 結論から言えば藤丸たちは拠点の確保ができた。

 メディアが道具作成スキルで作った特殊な香で市役所の役員を洗脳し戸籍を獲得、サーヴァント同士は同じ場所には居られない関係からメディアの住まいとは別に貸家を手に入れた。カルデアスタッフの何人かは「神秘の秘匿~」と頭を抱えたが。セイバーは20メートルほど離れてメディアを睨み付けている。

 

「この程度の秘術は今更よ。それとこの世界で魔術行使は極力控えなさい。魔術礼装によるサポートも駄目よ」

 

『それは何故だい?』

 

「そちらも薄々気づいているんじゃないかしら? 魔力計がレイシフト後から一切反応しないのを。それは土地柄でも魔力計の故障でもないわ。そもそもこの世界は神話体系も魔術体系も存在しない。魔力の概念がそもそもないのよ(・・・・・・・・・・・・・・)。土地の恩恵を一切受けられないから、あなたたちの聞いた限りではセイバーがそんな怪異に遅れを取ったのもそれが原因ね」

 

「・・・確かに計器の故障と判断して早々に直させていたが、本当にそうならばそこは・・・」

 

「ええ、抑止力が産み出した純粋な科学力だけで発展したifの世界。私達英霊がただの夢物語の世界ね。この世界の全てが等しく魔力への耐性を持たないから、カルデアから送られてくる魔力をそのまま放出すれば高濃度の放射能汚染と変わらない劇薬になるわ。ちなみに私が召喚されて間もない時に、それを知らずに一般人を洗脳をしようとしたら通り越して廃人になりかけたわ」

 

『その一般人はどうされたのですか?』

 

「すぐに呪いを解いたわよ。ずっと居座る気もない世界で人形を作る趣味はないの。わかったらこれからは私ほど魔力のコントロールができる人でもない限り魔術の仕様は禁止よ。さっきの香だって極限まで薄めて効果があるのだから、魔力の出力が固定された魔術礼装なんてもっての他よ、良いわね?」

 

 藤丸は大半のことは理解らなかったが、一つだけ確かに分かったことがあった。

 

 ―メディアは優しいんだね

 

「なっ、あ、貴方は私の話の中のどこでその結論に至ったのかしら!?」

 

 顔を耳まで真っ赤にしながら腕をぶんぶん振り回すメディア。

 基本魔術師は利己的な人種だ。自身の魔術の研鑽や研究の為ならば多少の犠牲など苦にも思わない。だが、彼女はわざわざする必要のない筈の解呪を行った。元一国のお姫様である彼女は、内面より滲み出る優しさを隠しきれていないのである。

 

「ふ、ふん! 私はもう行くわ! 練馬とかいうところで見つけたいい感じの廃寺のリフォームがまだ済んでないんですからね! この世界の情報集めならここに行きなさい、あのヘビメガネがいるから。あと、勝手にマスターの令呪を弄って私と契約し直しておいたから本当に困ったら呼びなさい」

 

 日本語の書かれた紙と、最後に爆弾発言を残してメディアは去って行った。

 藤丸の手元の紙には・・・

 

 

城南大学 考古学研究室 沢渡桜子准教授部屋

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