蒼茫英雄都市 東京   作:枯葉坂

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再会

「ここ、ですか?」

 

 アルトリアが訝しげに尋ねる。

 

 藤丸達の眼前には超常的な能力を持つ怪人でも、それを屠る戦士でもなく、笑顔の幼児達が元気よく遊ぶ光景が広がっていた。

 表札には「わかば保育園」と書かれている。

 弱体化しているとはいえ、アルトリアを苦戦させた怪人を倒した戦士がいる場所には到底見えない。

 

『聖杯、とは厳密には違うけど確かにそれとよく似た反応がある。そして、その反応は神霊の霊基パターンにかなり近い濃密なものの中だ。覚悟しておいた方がいい・・・ん? その近くに登録済みの霊基反応がある?』

 

「皆さん・・・あれは・・・」

 

 驚愕と恐怖に混ぜたように顔を引き攣らせたメドゥーサの震える指の先を見て、

 

「なっ」

『ひっ!』

『はぁ!?』

『ふむ・・・』

 ―げぇっ!?

 

 各々悲鳴をあげてしまう。いや、実際は驚愕に声すらでていない。

 それもそのはず。

 園児たちの走る微笑ましい光景の中にある、明らかな場違い。

 一瞬銅像とも見える不動の巨体。黒く怪しく光る隆々とした筋肉(破壊の権化)

 その正体はギリシャ神話の大英雄、バーサーカー『ヘラクレス』である。

 クラススキルにより加減の効かない彼が身体をよじるだけで幼児などたちまち跡形もなくなるだろう。

 その頑強な目線がギョロリとこちらを向いた。

 

『ど、どどどどうしましょう! このままでは園児達が!』

「ここで戦闘は出来ません、どうにか隔離しなければ!」

「それならばアーチャーの固有結界で」

「なかなか名案だ。『I am the bone of my sword・・・」

 ―ちょっと待って考える!

 ―素数を数えろ。1、3、5・・・

 

 あまりの窮地に先ほどまで険呑を極めていた英霊たちは一転、結託して開戦待ったなし、止めるべき側も思考を停止させている。つまりは最悪の状況だった。

 

「◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️ーーー!!」

 

『「ヒィッ!!」』

 

 その豪腕が塀を越え一行を襲う・・・

 ことはなかった。

 

 ―・・・?

 

 藤丸が目を開けるとそこには金剛力士像真っ青な筋肉質の手。

 その手が握られ親指だけ立てている・・・つまり、サムズアップの形をしていた。

 

「◻️◻️◻️◻️・・・」ぐっ!!

 

 ―・・・

 

 何がナニやらわからないままとりあえずお返しのサムズアップをする藤丸。

 ヘラクレスはそれがお気に召したのかさらに返す。

 恐怖のバーサーカーと非力な一般人との、奇妙なやり取りが続いた。

 

「と、とりあえず敵意はないようですね」

 

 張りつめていた空気は少し解かれる。

 

「あの、どうされましたか?」

 

 そこに門から現れた短髪の女性から声がかかった。

 おそらく園の関係者の方だろう。

 

「あ、門前で騒がしくして申し訳ありません。こちらに五代雄介さんという方がいらっしゃるとうかがったもので。そっ、それとなぜ彼がここにいるのでしょうか?」

 

「ヘラクレスさんのお知り合いなんですか? この方は最近いらした出資者の方が出資の代わりに警備員として雇って欲しいと。日本語が分からない方でしたが子ども達にも人気でよく遊び相手になっていただいてるんですよ」

 

「出資者・・・」

 

「雄介さんでしたね。あの人ならあちらに・・・」

 

 指の先には子供のたまり場。

 その中心には一人の青年が立っていた。

 

 

 

「まずは~、ジャグリング~! ほい! ほい! ほい!」

 

 

 大小様々な物を計3つ綺麗に回している。

 なかなかの見物に子供たちから歓声が沸き立った。

 

「じゃあ次は・・・あれ?」

 

 青年はこちらに気づき、続きが見たい子供たちをなだめながら駆け足で寄ってきた。

 

「君たちはこの間助けてくれた・・・」

 

 —あなたが・・・

 —五代さんですか?

 

「そうそう! 一応名刺渡しとくね! どうぞ、あ、そちらの方にも!」

 

 きらびやかな笑顔と共に渡された綺麗な紙の名刺には・・・

 

 

 

夢を追う男 2000!の技を持つ男

 五代雄介

 

 

 

 

「いやー、あの時は助かったよ! 俺戦うの久しぶりで!」

 

 話をするため今は保育園の一室を借りている。

 外からはわからなかったがこの保育園はかなり広いようだ。

 

『あの・・・そのことは隠されなくてもよろしいのですか?』

 

「え? あ、うん! 君たちがこの世界の人じゃないのは知ってたし、ここに来たってことは俺の正体は今更だしね!」

 

『なんだか、お話に聞いていた通りの方でしたね。元気そうで安心しました』

 

 マシュが小声で藤丸に話しかけ、それに彼もそれに同意しようとして言葉が詰まる。

 メドゥーサの話の中では心優しい好青年であった。

 目の前の人物はおおよそ皆のイメージ通りの人物だったわけだが・・・

 

 —(なんだか・・・)

 —(違和感が・・・?)

 

 目の前には文句のつけようのない屈託のない笑顔がある。

 手を伸ばしたくなるほど魅力的で、そして、妙に不安になる・・・

 

『先輩?』

 

『ところで、君たち。随分落ち着いているけどいつからそんなに仲良くなったんだい? 最初は剣呑極まるって感じだったのに』

 

「む・・・」

「そういえば」

「なぜですかね?」

 

 3人とも首をかしげる。

 

『まぁ、それは一旦置いておこうか。とりあえず自己紹介から。私は天才にして崇高な美の探求者、レオナルド・ダ・ヴィンチ、だ!』

 

「えっ!? 本物!? ダ・ヴィンチって女性だったんだ!」

 

『うん、うん! その反応はとても新鮮味があって大変よろしい! 最近は誰も彼も希薄で退屈してたんだ! 』

 

『ダ・ヴィンチちゃん、少し抑えてください。改めまして、Mr.五代。私はマシュ・キリエライトと申します。先輩――向い側に座っている藤丸立香のサポートを担当しています。向かって右がアルトリアさん、左がメドゥーサさん、壁で腕を組んでおられるのがエミヤさんです。アルトリアさんたちは英霊と呼ばれる存在で・・・』

 

 

 

 

「いや~、俺も今まで色んなとこをまわってきたけど、魔術の世界か、行ってみたいな~」

 

『それは——』

 

「あ、ごめんね。そんなに悩ますつもりはなかったんだ。俺、冒険が好きで見たことがない所の話を聞くと血が騒ぐっていうか」

 

『その気持ちわかります!』

 

「ところで、お話を切るようで申し訳ないのですが」

 

 そこでメドゥーサが口を開いた。

 

「私は城南大学の沢渡桜子准教授の知人です。彼女からよく貴方のお話を聞いていました。彼女、口には出しませんが貴方に会いたがっていましたよ。せっかく帰っていらしたのなら会っていただけませんか?」

 

「あ~、うん、そうだね。お土産増やしすぎてもよくないからね。数日中に会いに行こうかな」

 

「何かご用事が?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど帰ろう帰ろうと思ってたらいつの間にか13年経っちゃったからね。ここ、妹の元職場で、もう妹はいないって知ってたのに知り合いに会うだけで恥ずかしくって。久しぶりに会ったときは俺どんな顔してたかな~、きっとひどい顔してたな~。あ、だから桜子さんには内緒ね。驚かせて自分の変顔ごまかすから」

 

「それは良いですが窓からの侵入は駄目ですよ」

 

「あらら、バレてたか。さすが桜子さんだ」

 

 五代は少し照れたように頭をかいた。

 

「それで、俺が今知ってることはまた未確認達のゲームが始まってたことと、近くにいる未確認の場所がわかるってことかな。未確認を封印されている遺跡がまだあったのは知っていたんだけど、何で蘇ったかはわからないんだ・・・」

 

「近くとはどれくらいですか?」

 

「う~ん。その未確認一体一体によってまちまちかな。昔はどこにいてもわかったんだけど最近は特に見通せなくてね。この間の一件も、知り合いに会おうとして偶然居合わせただけなんだ。あまり力になれなくてごめん」

 

『いえ、ありがとございます』

 

 

 

「以前はグロンギの場所の特定ができていたのか? ならばなぜそこで始末しなかった」

 

 

 突然、いままで寡黙を保っていたエミヤが怒ったような口調で口を出した。

 

 

『え、エミヤさん? どうされたのですか?』

 

「・・・すまない。理由が知りたかっただけだ、忘れてくれ」

 

 無線から流れる怯える少女の声に我に帰って彼は肩をすくめた。

 

「・・・いや、大丈夫ですよ。実は一回封印されてた遺跡に行ってみたんですよ。でも封印は完璧だったし、俺も昔みたいに戦えなくって。あの時放置してなければ・・・」

「「「ユウスケーー!!」」」

 

「こら! みんな!」

 

 そこに話を割るかたちで園児たちが部屋に突撃してきた。それを追いかけて先生も入ってくる。

 

「ユウスケ! 技見せて、ワ・ザ!」

 

「良いよ。 じゃあ外に行こうか!」

 

「お話し中にすみません・・・」

 

「いやいや、俺も技の途中で切っちゃったし。みんなごめんね、ちょっと行ってくる!」

 

 —お構いなく

 

 子供たちを連れて、五代は外へ出ていった。

 

「・・・」

 

 —(エミヤ・・・?)

 

「五代さん、以前から子供に人気だったんですか?」

 

 メドゥーサが先生に問いかけた。

 

「ええ。彼の妹さんが働いていたころから何度もお世話になって。だから久ぶりにあの笑顔が見れてホントに良かったです。あ、さっき言った出資者の方、五代さんが連れてきたんですよ」

 

「そうなんですか?」

 

「この保育園、人手不足でたたむことになってたんです。13年前の事件以来、狙われた都市部の人口集中に懸念した政府が地方分業を促進したんですけど、2年前の東北震災で避難した人が大勢こっちに再集中しちゃって。ただでさえ人手不足だった養護施設がウチを含めてパンクしちゃったんです。それで、もう限界って時に五代さんが来て。その出資者さんが従業員の補充や施設の拡張まで全て行ってくれたんですよ」

 

「なぜだか私・・・嫌な予感が・・・」

 

 —奇遇だね

 —とてもいいひとなんだろうなー(棒)

 

 余りにもできすぎた話にアルトリア含め、面々は嫌な汗を流す。

 

「出資者さんはそろそろ五代さんを迎えに・・・あ、来ましたよ!」

 

 窓の向こう、門から見える道路に一台の金色のリムジン(・・・・・・・)が停まった。

 黒服の運転手が降車して後部ドアを開ける。

 

 

 ゆっくりとその革靴が地に着く。

 

「・・・ほう?」

 

 その人物はこちらを見つけて口が愉快そうに吊り上がる。

 

「奴を迎えにわざわざ足を運んだが、なかなか面白そうな顔がいくつもあるではないか。本来ならば我を前に坐さぬことは死罪だが」

 

「良い、許そう! 愚民どもの愚行を許容するのも王の務め。その失敗を糧にこれからも励めよ?」

 

 

 現れたのは長身の男。

 ブラックパンツに胸がはだけるように着たワイシャツ。黒の上着を着用している。

 綺麗な金髪に冷酷な紅い目は怪しく光り、全てを見通しているような。

 

 彼は自他ともに認める原初にして最強の英霊。

 古代メソポタミアにてこの世すべての贅の限りを尽くし、その冷徹さとカリスマ性で君臨し続けた王の中の王。

 英雄王、ギルガメッシュである。

 

 

 

「「「あ! 金色のおじさんだ!!!」」」

 

「お兄さんと呼べ!」

 

 




とうとう・・・、
とうとうあの人を書いてしまった・・・。
あの人の言葉使いを気にして幾ら書いても理想に辿り着かないです(泣)。もう後戻りできない・・・(汗)。
表情や息づかいまで演じきる役者さんはとても偉大なんだと改めてわかりました。
私が暴走しないよう、今度より一層の監視をお願いします。
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