蒼茫英雄都市 東京   作:枯葉坂

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数ある作品の中でこの小説をお読みいただき誠にありがとございます。
これからも読者の皆様のご支援の元、より一層の努力で完結へ向け邁進して参りますのでこれからもご贔屓の程よろしくお願いいたします。
ご指摘、ご感想もお待ちしています!


覚悟

 —どういうことなの・・・

 

 車は車でもファーストクラスのリムジンの車中。

 フカフカのシートに座り、正面の長机のジュースに手を伸ばしながら藤丸は考える。

 彼の左右はアルトリア、メドゥーサ、エミヤの3騎が固め、机の正面向こうでふんぞり返っている英雄王に敵意を剥き出しにしている。

 一応令呪の契約はヘラクレス共々完了しており、互いに臨戦態勢を取る理由は・・・ありすぎてどれか分からない。

 

「英雄王、今度は何を企んでいるのですか?」

 

 先頭を切ってアルトリアが問いかけた。

 

「愚問だな。俺は雄介を迎えついでに民草の様子を見に来ただけだ。その程度の考えにも至らんとは全く話にならん」

 

「今のは侮辱ととるぞ・・・」

 

 英雄王の煽りに聖剣を抜き去ろうとする騎士王。

 彼らが争えばここら一帯は焦土と化すだろう。

 

「まあまあ、二人とも落ち着いて。帰ったらユウスケブレンド淹れますから。遅めのコーヒーブレイクにしましょう」

 

「ふん、下卑た泥水など誰が飲むか。だが、飲める泥水ならば我がいくらでも飲んでやる。他にはやらん、十杯は淹れておけ」

 

「ははは、わかりました」

 

「それと、今しがた貴様の欲しがっていたバイクが届いたらしい。帰って見るとよい」

 

「ホントですか! いや、何から何まですみません。せっかく免許取り直したから乗りたくって!」

 

 五代のにこやかな対応に理解りづらいデレを見せる英雄王。

 はっきり言って真逆の性格の彼らが仲良くしているのは英雄王の普段を知るこの場の人間全員を驚愕させた。

 

 ―仲が良いんですね

 ―いつ知り合ったんですか?

 

「半年ほど前だね。最初にヘラクレス君に会って、一緒に散歩してたら金ぴかの鎧の人が開口一番、『貴様を我の蔵に入れる!!』って言ってきたときは驚いたよ」

 

 英雄王の難解さは今更だが、あのバーサーカーが懐くのは驚きである。彼には特別な魅力があるのか。

 

『そんな突拍子もない発言をしたのはなぜだい? ギルガメッシュ』

 

 ダ・ヴィンチが聞いた。

 

「理解らぬか、理解らないだろうな。良い。ヒントをやろう。この世界と我らの世界の違いを今一度考えよ」

 

 ―神秘がない?

 

「そうだ! この世界には魔術を含めた神秘そのものがない。正真正銘、人の技のみで創り上げた世界だ。ここまで我を興奮させたものは久しく、その最先端の科学を持つ此奴は俺の宝物庫に入れるに相応しい!!」

 

 なるほど――と、藤丸は納得する。

 英雄王、ギルガメッシュは神と人の世を別った人物である。彼の3分の2は神の血が流れており、最大級の神性を持ちながら神への嫌悪でそのランクを落とすほどの徹底ぶりだ。人一倍科学への関心がつよいのだろう。普段は小難しい言葉を使う彼の語彙力が低下するほどに。

 ・・・人を蔵に囲おうとするのはどうかと思うが。

 

「我の考えは今も変わらんぞ。どうだ?」

 

「遠慮しときますよ、前に入ったら呼びかけても出してくれなかったし。やっと外に出られたら一月経ってたし」

 

『「一月!?」』

 

 英雄王の常識の埒外の行動を聞いて皆悲鳴に似た声をあげる。

 

「蔵の中は時間の概念がなかったから気づかなかったけど、あの時は驚いたな~」

 

 —それは驚くでしょう・・・

 —よく説得しましたね

 

「此奴がなかなかしぶとくてな。我が友に落書きすると言い出した時はさすがに我も肝を冷やしたぞ」

 

それは英雄王にとってかなり効いたようで、平静を装いつつも彼の持つティーカップはカタカタ震えている。

 

「あの時はホントにごめんなさい。でも、俺はまだ冒険をつづけたいから」

 

「・・・良い。冒険とは未知への好奇であり探求。我をも惹いて止まない愉悦である。存分に図らうがよい。だが、冒す者は得てして帰る場があると心せよ」

 

「・・・」

 

 英雄王の憐れむような、哀しむような珍しい表情に五代は少し苦笑いをした。

 

「・・・数日中には知人に会ってきます」

 

「それが良かろう」

 

「・・・驚きました。あなたがまともに人と付き合い、あろうことかまともなことを言うなんて」

 

 アルトリアが皆の意見を代弁した。

 

「戯け。我は気に入った物には優しいぞ。気にすることすら稀だがな」

 

 "モノ"のニュアンスがおかしかったが、五代のことは相当気に入っているようだ。

 

『あの・・・、ヘラクレスさんはおいてきてもよろしかったのですか?』

 

「当り前だろう、あの筋肉ダルマを気にしながらこの世界を満喫なぞできん!」

 

『す、すみません!』

 

『あんまりウチのサポーターをいじめないでくれよ。ところでギルガメッシュ、君の現在の住まいは何処なんだい? かなり車を走らせていると思うが』

 

「着いたぞ、此処だ」

 

 窓から正面に見えるのは一軒の教会だけだった。

 

 —王よ・・・

 —何の罪を懺悔しに?

 

「馬鹿者!! 神に祓える罪など持ち合わせておらんわ! 此処は13年前に神父が死んで以来、様々な噂が飛び交い取り壊されずにいたのだ。全く、完全な科学の世界で無いものを仰ぎ、怖れるとは! ・・・いや、だからこそ怖れるのかもな。ともかく此処がしっくり来たのだ、異論は認めん」

 

「・・・不思議です。なぜだか英雄王とはあり得ない組み合わせにも関わらず、教会がしっくり来ている私がいます」

「奇遇だな、私もだ」

「私もです」

 

 3騎が何か言っていたが他はそれをスルーして降車する。

 

「見かけは教会だが地下は大改造の果てに劇的なビフォーアフターを遂げている。貴様ら一人一人に客間を与えても余りがあるくらいだ、今日は特別に宿泊を許すから中の使用人の案内に着いていけ。飯時は久々に皆で卓を囲むとするか、今日はビュッフェの気分だ」

 

「罠の可能性がありますが、食材に罪はありません。行きましょう、マスター!」

 

「じゃあ俺はバイクを見た後、ちょっと出かけてきます。夕飯までには戻るんで!」

 

「どちらへ?」

 

「知り合いの入院してる病院です。顔だけ出してきますんで、じゃ!」

 

 五代はそれだけ言うと教会の裏手へ走っていった。

 

「おい、待て! ユウスケブレンドは・・・彼奴め、帰ったら説教だ」

 

 割と落ち込み佇む英雄王を置いて、藤丸たちは教会の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —・・・眠れない

 

 現在時刻は朝の1時。あの後五代含め皆で夕飯の一級グルメの数々に舌鼓をうち、五代や英雄たちの冒険譚に酔いしれながら藤丸は自室へと戻った(3騎たちは当然のようについて来ようとしたが、英雄王の金に物を言わせた完璧なセキュリティを建前に帰ってもらった)。早めに寝床に入るも、皆の話に興奮してからかなかなか寝付けないでいる。

 

 —外の空気を吸おう

 

 なるべく音を立てないように、廊下を抜け重い扉を開ける。

 夜の心地良い空気が肌を濡らし、上を見れば東京の空にしては綺麗な星空があった。

 

「あ、藤丸君! 起きてたんだ」

 

 そこへ声がかかり、藤丸は向いた。

 そこにはベンチに腰掛け手を振る五代の姿があった。

 

「良い星空だね。一緒に星を見ながら話さないかい?」

 

 いわれるままに藤丸は五代の隣に座り、二人で空を見上げる。

 

「・・・この教会はね、俺がクウガとして初めての変身した場所なんだ」

 

 ゆっくりと、遥か遠い昔に想いを馳せるように、五代はその時のことを語りだした。

 

「正確には2回目なんだけど、ちゃんとした覚悟を持って変身したのはここ」

 

「君が見たクウガは白かったでしょ? ホントは赤じゃなきゃだめで、戦う覚悟があって初めての変身出来るんだ」

 

「今は戦いたくないのかだって? ・・・そうだね。戦いたくないって思ってたから白なんだろうね」

 

「・・・でも、覚悟は決めたよ。俺は、俺の出来る範囲で努力する。もう、あんな顔は見たくないから。人の笑顔が見れるように頑張るよ」

 

五代は上着のポケットから小さな紙の束を取り出した。

 

「これ? これは昔、クウガとして戦い始めたときにあの保育園の園児たちから貰った御守り! とっても大事なものなんだ」

 

それを空に掲げながら、慈しむように微笑んだ。

多少くたびれてはいるが、13年前の物とは思えないほど綺麗な御守りだった。

 

「今度は君の話が聞きたいな。君が目にして、守った、冒険の話を」

 

 

 

 

 

 

 

「君は悩んでるんだね」

 

 

 いくらか経った時、突然五代がそんなことを切り出した。

 

 —え?

 

「君の話を聞いているとそんな気がして。俺は君と初めて会った時からなぜだか他人とも思えなくてね。君の立場は理解してるし、役に立つかはわからないけど、俺で良ければ話を聞くよ」

 

 —・・・

 

 最初は戸惑っていた藤丸も、彼の笑顔を前にポツリ、ポツリと悩みを吐露し始めた・・・

 

 

 

 

 

「そっか、君はいくら世界を救った英雄になっても、君自身はただの一般人だもんね。そんな悩みがいくつあっても全然おかしくないよ。だけど・・・」

 

 最後まで黙って話を聞き終えた五代は、ゆっくりと声を口にしだした。

 

「君の悩みはきっと誰にも解決できないだろうね」

 

 思わず藤丸は下を見る。

 まるで、何かに怯えた子供のように。

 

「普通、人は居場所を作ってから自分の価値を見出だすんだ、だけど君は先に自分自身に価値をつけてしまった。それがさらに君を悩ませている原因かな」

 

 どうしようもない、と、自分でもわかっていることを再度突き付けられたようで、藤丸はさらに顔を沈めた。

 

 

「でも、大丈夫! きっとうまく行くよ!!」ぐっ!!

 

 

 その声に藤丸は顔を上げる。

 そこには突き出された右手のサムズアップ、そして澄み切った青空のような笑顔があった。

 

「君が手にした繋がりは、この世界の誰よりも低い確率で繋いだものだもん。君たちと俺との出会いも、ホントは絶対にあり得ないと言われてたものだったってダ・ヴィンチ先生から聞いた。どんなに低い確率や無理難題でも、それを超えて繋いだ絆が吹っ飛ばしてくれるよ」

 

 そう言うと五代はゆっくりと立ち上がった。

 

「ねえ、俺がこのベンチを叩いてさ。俺の手がすり抜けると思う?」

 

 —・・・え?

 

 五代の言っている意味が理解らず、藤丸は思わず聞き返してしまった。

 

「昔、先生から教わったんだけど、人間の手が一つの細胞も引っかからず木の板をすり抜ける確率は70兆分の一の確率なんだって。それはこの宇宙のこの星で、一つの命として生まれるのと同じぐらいの天文学的確率らしいよ。君の悩みが今後解決するか、これで判断しよう」

 

 藤丸は言っている意味は分かったが、彼の謎理論のスケールの大きさに軽々しく頷けなかった。

自分が座っているのは厚さ5センチの板の上。勿論彼はベンチに座った時に手がすり抜けたことは一度もない。

 

「俺、昔から空が好きでね。特に青空が好きで、子供の頃から星じゃなくて空に願いをかけてたんだ。手がすり抜けますように!」

 

 五代は空を見上げながら願掛けをした。

 

「じゃあ行くよ、せーの!」

 

 手は勢いよくベンチめがけて振り下ろされ、

 

 

 

 

ベンチの存在など忘れたようにすり抜けた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 —・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?

 

「ハァ、ハァ・・・・。やったね、解決するって!」

 

 息を切らし、ニコニコしながら自分の手を見つめる五代。

 

 藤丸は自分の脳の許容範囲を超えてしまい、動けないでいる。

 

 人類史始まって以来の重大事件は、呆気なく終わった。

 

 —いやいやいやいやいや

 —ちょ、ちょっと待ってください!

 

 思考が再起動した藤丸は、持ち前の観察眼で冷静に、努めて冷静に可能性を模索した。

 天文学的確率とは人間が到達し得ない絶対的な確率であって、本当にあり得ない。

 魔術的要素は感じられない。手品でも断じてない。ならば・・・

 

 —まさか、聖杯?

 

「え、これが聖杯の力なの? そっか・・・」

 

 —なんでそんなに落ち着いてるんですか!!

 

 藤丸はそう叫ばずにはいられなかった。

 聖杯とは願望器、つまりどんな願いも叶えうる存在だ。

 ホームズたちの考察では、クウガやグロンギの石は勝ち上がった時点で装着者の願いを無差別に叶えるものと考えていた。しかし、その回数上限までは分からない。貴重な一回を不意にしたことになる。

 

「お、本調子に戻ったかな? 君が元気になるなら儲けものだね」

 

 —え?

 

そんなことのために――、

と藤丸は言いかけて止めた。星空よりも眩しい、素敵な笑顔が目の前にあったからだ。

この五代という人物は自分に欲が無いのではなく、ただ、単純に他人が幸せであることに喜びを感じる、そういう人だと認識した。

あまりに嬉しそうな顔に、先程の事など忘れて藤丸自身も笑ってしまう。

 

「うん、良い笑顔だ!」

 

 言われて藤丸は自分でも気付かないうちに笑っていたのかと自身も顔を触って触って確かめる。つねったり、ひっぱったり・・・

 

「あはは、面白い顔になってるよ」

 

 藤丸はその自分に気づいて赤面し、手を引っ込ませた。

 

 

 

「・・・ねえ、君に俺は笑って見える?」

 

 

 唐突に五代がそんなことを言った。

 藤丸はその言葉のままに答えようとよく観察する。

 疑い様のない、文句なしの笑顔がそこにあった。

 

 —とっても良い笑顔です

 

「よし、じゃあ君はもう大丈夫だ! 他人が笑顔に見えるってことは、自分も笑顔になれるってことだからね!」 

 

―そうなんですか?

 

「他人の笑顔は自分よりも世界が輝いている証拠! 見えてるものに希望があるからそう見えるんだよ!」

 

藤丸はその言葉に妙に納得してしまった。

自分を太陽と例えるなら、自身の光で他の星など見えないだろうから。

 

「こんな時間まで引き留めてごめん、もう戻ろうか!」

 

 —はい

 

「おやすみ!」ぐっ!!

 

― ぐっ!!

 

 五代に促されて藤丸は駆け足で教会へ戻っていく。

 

 —(昼に感じた違和感は、杞憂だったのかな?)

 

 藤丸は笑顔の奥に感じた何かを忘れることにした。

 

 

 

「・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・これが聖杯なのか」

 

 誰かが腹をさすり、伸びた前髪の間から今一度空を見上げた。

 

 

「・・・こんなモノを求めても、

誰も得しないのにね」

 

 

 それを聞いたのは星か、空か。

 誰とも知れぬ声だけが、星空に溶けて無くなった。

 

 

 

「・・・ふん」

 

 それと共に、壁の影で傍観していた者は赤い外套を翻し、闇の中へと消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

「貴様らに寛大な我からこれを授けよう!」

 

皆で朝食をとっていると英雄王が突然そんなことを言い出した。

手には何らかのチケットらしき物が握られている。

 

「へいううおう。もぐもぐ、ほんでょははひをはふはんでいふのへふは!(英雄王。今度は何を企んでいるのですか)」

 

アルトリアは睨み付けながら何か言っている。

騎士王の威厳とは一体・・・。

 

「良くぞ聞いてくれたな、セイバー。その齧歯類のような膨れた顔もチャーミングだぞ! ここにあるのは俺が筆頭株主の複合テーマパークのチケットだ。プールの再建に際し、遊園地も建てられたが人口再集中で予想外に賑わっている。優待チケットなぞ貰ったが俺は生憎用事がある。仕方ない貴様らにこのチケットをやろう」

 

―一緒に行きたかったんですね

 

「当然だ! この世あの世全ての悦楽は我に享受されるためにあるのだからな!」

 

渡されたチケットには・・・

 

 

複合型レジャーランド

東京マリン

わくわくざぶーん特別優待チケット




感動的だな(^U^)
↑これを流行らしたディケイドーーー!!!はやはり世界の破壊者。
ユウスケと戦うのは当然の帰結だった!
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