9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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こんばんは、黒雨です。
お金は無いけど欲しいものが増え続ける一方ですw
それではどうぞ!


体験入部

「ダイヤさんはね、昔はスクールアイドルが大好きだったんだよ」

 

 

僕は花丸ちゃんにそう伝えた。(ダイヤさんは今でもスクールアイドル大好きだけど)

 

 

「でも、この前の放送を聞いてたらそんなふうには見えなかったずら」

 

 

「祐さんの言ってる事は本当だよ花丸ちゃん。お姉ちゃんはルビィよりも大好きだったんだけど、高校に入ってから暫く経つと急にスクールアイドルを嫌うようになってそれ以来、家ではほとんどスクールアイドルの話をしなくなったの」

 

 

ルビィちゃんは暗い表情で話を続ける。

 

 

「本当はね、ルビィも嫌いにならなきゃいけないんだけど・・・」

 

 

「どうして?」

 

 

「お姉ちゃんが嫌いって言うものを好きでいられないよ!それに・・・」

 

 

「それに?」

 

 

「花丸ちゃんはスクールアイドルに興味は無いの?」

 

 

ルビィちゃんは花丸ちゃんに尋ねた。

 

 

「マルが?ない!ない!運動苦手だし、オラとか言ってしまう時もあるし」

 

 

「じゃあルビィも平気!」

 

 

花丸ちゃんの答えを聞いてルビィちゃんは笑顔になった。でも、僕と花丸ちゃんはルビィちゃんが笑顔を作っているようにも見えた。

 

ルビィちゃんが図書室を出ると、花丸ちゃんが、

 

 

「祐さん。マルはルビィちゃんをスクールアイドル部に入れたいずら」

 

 

と何かを決心したかのように言った。

 

 

「それはまたどうして?」

 

 

「ルビィちゃんは自分に嘘をついて無理にダイヤさんやマルに合わせようとしてるずら。だから、ルビィちゃんには自分の意思で前へ進んで欲しいの。それがマルの夢だから」

 

 

「なるほど。それなら、体験入部してみたらいいんじゃない?」

 

 

「体験入部?なるほど。その手があったずら。早速明日からルビィちゃんを誘ってみるずら」

 

 

「頑張れ花丸ちゃん。じゃあ僕は帰るよ」

 

 

と言って僕は図書室を後にした。

 

次の日、僕は姉さんといつものランニングをして神社から降りて帰っていると、階段の途中で座り込んでる千歌ちゃん達の姿があった。

 

 

「千歌?」

 

 

と姉さんが声をかけると、3人はそれに気づいた。

 

 

「果南ちゃんと祐君!もしかして上まで行ってたの?」

 

 

「一応ね、日課だから」

 

 

「日課!?」

 

 

姉さんがそう言うと、3人は驚いていた。

 

 

「千歌達こそ、どうしたの?急に走り出して」

 

 

「鍛えなくちゃって、ほら!スクールアイドル部も出来たし」

 

 

千歌ちゃんがそう答えると姉さんは少し考える素振りをして、

 

 

「ふ~ん。そっか、まぁ頑張りなよ。私は店を開けなきゃならないから。ほら、祐も学校に遅れるよ」

 

 

「それはマズいね。じゃあ3人とも。また学校で」

 

 

と言って僕達は走って家に戻り、僕は学校の準備をして家を出ると、テラスには姉さんと鞠莉さんがいた。辺りには久しぶりに会った親友とは思えない嫌悪感が漂っていた。

 

 

「どうしたのいきなり!」

 

 

「うふふ、果南とユウをスカウトに来たの!」

 

 

「スカウト?それに祐も?」

 

 

「何で僕まで・・・」

 

 

「休学が終わったらスクールアイドルを始めるのよ!浦の星で!」

 

 

「鞠莉・・・それ、本気?」

 

 

「でなければ、戻って来ないよ」

 

 

「・・・私はもうスクールアイドルはやらない。たとえ休学が終わったとしても」

 

 

姉さんは鞠莉さんのスカウトに冷たく返して、家に戻っていった。

 

 

「・・・相変わらず頑固親父だね。ユウはどうするの?」

 

 

「・・・僕はまだ考えさせて下さい。それでは」

 

 

と言って僕は答えを出せず、鞠莉さんのスカウトの答えから逃げるように学校へ向かった。

 

教室に入ると、

 

 

「おはよう祐君!」

 

 

と千歌ちゃんがいつも以上に元気な挨拶をしてきた。

 

 

「おはよう。千歌ちゃん。何かいい事でもあったの?」

 

 

「うん!なんと、花丸ちゃんとルビィちゃんが体験入部しに来てくれたんだよ!」

 

 

「それは良かったね」

 

 

「うん!これでラブライブ優勝だよ!」

 

 

「それはまだ早いような気が・・・」

 

 

千歌ちゃんが盛り上がってると、

 

 

「千歌ちゃん。あまり大声で言うとダイヤさんに聞こえちゃうよ」

 

 

と曜ちゃんに指摘され、ようやく冷静になった。

 

 

「ダイヤさんには内緒なの?」

 

 

僕は曜ちゃんに尋ねた。

 

 

「うん、ルビィちゃんが体験入部してる事は知らないみたいだし、花丸ちゃんが内密にって言ってたから」

 

 

「なるほど、花丸ちゃんも入ったのか・・・」

 

 

「?祐君、さっき何か言った?」

 

 

「いや、特に何も」

 

 

危うく独り言が曜ちゃんに聞かれるところだった。

 

休み時間、図書室で僕は花丸ちゃんに今の状況を聞いてみた。

 

 

「ルビィちゃんは楽しそうに部活をやってるずら。これならマルがいなくてももう大丈夫」

 

 

「そうなんだ。花丸ちゃんは体験入部してみてどうなの?」

 

 

「マルは体力無いからついて行くのが大変ずら。だからマルには無理ずら」

 

 

「それは大変だね、でも花丸ちゃん頑張れ」

 

 

「祐さんはスクールアイドル部に入らないずら?」

 

 

花丸ちゃんの意外な質問に僕は少し考えて、

 

 

「う~ん、僕は別にいいかな。生徒会も忙しいし。じゃあ、休み時間が終わるから」

 

 

と答えて僕は図書室を出た。

 

 

いつも僕はそうだ。千歌ちゃん達にも生徒会が忙しいからという理由で断ったんだっけ。正直、生徒会はそこまで忙しくはないし、兼任をする事は出来る。でもスクールアイドル部、それにAqoursだと千歌ちゃん達とは別に3人の姿が浮かび上がる。その3人の事を思うと、スクールアイドル部に入るのを拒むもう1人の自分がいた。

そんな心境で僕は教室に戻った。

 

 

 




ありがとうございます。
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