投稿が少し遅れてすいません。寝床についたらつい寝落ちしてしまって作業ペースが遅れていました。
それではどうぞ!
~2年前~
その日は姉さん達が、イベントを終えて東京から帰ってくる日だった。だがその日に限って、外は生憎の大雨だった。僕は姉さんに駅で待つようにと携帯でメールして家を出た。
船着き場に向かっていると、前からこの大雨のなかなのに傘を持たずに歩いて来る人がいた。しかしよく見ると背まで伸びてる青い髪のポニーテール、間違いない。
「姉さん!」
僕がそう叫ぶと、前の人は足を止めたのですぐに駆け寄った。この大雨の中歩いてきたのか、全身が濡れていて髪の毛で目元が見えない状態だったが間違いなく姉さんだった。
「姉さん、どうしてこんな無茶を・・・」
僕がそう言おうとすると、姉さんはいきなり僕の背中に手を回して抱きついた。
「ごめん祐、私・・・私・・・」
姉さんはすすり泣きながら呟いていた。これは何かあったと思い、姉さんを僕の傘の中へ入れて家へ戻り、話を聞いた。
「姉さん。一体何があったの?言いたくないなら無理して答えなくてもいいよ」
「・・・大丈夫。帰ったら祐に言うつもりだったから。実はね、私・・・東京のライブでわざと歌わなかったの」
「・・・それはつまり棄権したという事なの?」
「・・・うん」
「どうして?あれだけ頑張ってきたのに・・・」
「・・・実はライブの始まる前の練習で、鞠莉が足を捻って怪我したの」
「そんな・・・」
「でも鞠莉は大丈夫、平気としか言わなかった。そんな状態の鞠莉を私は見てられなくて・・・。それに、鞠莉には私達の事より自分の将来に進んでほしかったから」
「将来の道に?それは一体どういうこと?」
姉さんの最後の言葉に疑問を浮かべた。
「鞠莉にはね、海外の学校から留学の話が来ていたの。そこへ行けば有名大学の推薦が貰えるから先生も、鞠莉の両親も留学に賛成だったの。でも、鞠莉はそれを拒否したの」
「理由ってもしかして・・・」
「学校を救うためにスクールアイドルを始めたから。このままだと、私達や学校廃校のせいで鞠莉は自分の将来への可能性を捨ててしまう事になる。だからそんな事はしてほしくなかった」
「だから歌わなかったと」
「・・・うん」
「・・・これから姉さんはどうするつもりなの?」
「私は・・・スクールアイドルを辞めようと思うの。鞠莉の未来のために」
「姉さんはそれでいいの?それは鞠莉さんの思いを・・・」
「分かってる。悪いのは私だから、鞠莉に嫌われても構わない」
「姉さん・・・」
~~~~~
「あの時もこんな大雨だったかな・・・」
学校からの帰り、大雨の中、僕は帰路につきながらそう呟いた。ダイヤさんは今頃、千歌ちゃん達に真実を話している頃だろう。鞠莉さんはどう受け止めるのかな・・・。そう考えているうちに家に着いた。
家には先に帰っていた姉さんがダイヤさんと鞠莉さんと一緒に写っている写真を見つめていた。
「姉さんはやっぱり好きなんだね。鞠莉さんの事が。」
「・・・うん。嫌いになんてなれない」
姉さんは静かにそう答えた。
「鞠莉に強く当たる時、胸が苦しくて仕方なかった。でもこうしないと鞠莉は諦めてくれない。それに本当は鞠莉の言う通り、私はスクールアイドルを鞠莉やダイヤとまたやりたい。でも、それだとまた鞠莉が前に進めなくなる。それだけは・・・」
「どんな未来かは誰もまだ知らない。でも楽しくなるはずだよ」
僕が歌った詩に姉さんは少し動揺した。
「祐、それって・・・」
「覚えてる?姉さんが夏祭りに披露する予定だった新曲の一部だよ。先の困難を想像するよりも今を楽しむ事で姉さんが想像する未来とはまた別の未来が見えると思うんだ。だからまだ始まったばかりなんだよ。姉さん達の未来は」
そう話していると、姉さんの携帯が鳴った。
「もしもし?・・・うん、分かった」
二言で姉さんは携帯を切った。
「・・・鞠莉からだった。今から部室に来てって」
「行ってくるといいよ。そして伝えてくるといいさ。姉さんの今の気持ちを」
「・・・うん」
姉さんは頷いて家を出た。
~果南~
祐に後押しされて私は学校に来ていた。鞠莉の話ってなんだろう・・・もう話すことなんて何も無いのに。
そう思いながら部室に行くと、全身を雨に打たれたような状態の鞠莉が背中を向けて立っていた。
「・・・何?」
「いい加減話をつけようと思って」
鞠莉はそう返してきた。部室に入ろうとすると、鞠莉の足元から濡れている事が分かった。まさか、あの雨の中を・・・どうしてそこまでして・・・
「どうして何も言ってくれなかったの?思ってることをちゃんと話して、果南が私のことを思うように、私も果南のこと考えているんだから!将来なんかは今はどうでもいいの!だって、果南が歌えなかったんだよ。放っておけるはずない!」
鞠莉はそう言ってこっちに振り向いた。その目元には涙で溢れていた。すると、私の頬に痛みがはしった。鞠莉が私の頬を叩いたんだ。
「私が・・・果南の思う気持ちを、甘く見ないで!」
私だって鞠莉のことを思ってしたのに、私の気持ちを知らないで・・・
「だったら・・・だったら素直にそう言ってよ!リベンジだとか、負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ!」
「だよね・・・だから・・・」
鞠莉は自分の頬を私に向けた。私が鞠莉の頬を叩けばお互い様になるかも知れないが、それでは何も変わらない。痛みではなく優しさで解決、それは・・・
「ハグ・・・しよ・・・?」
私は両手を大きく広げた。鞠莉は泣きながら飛び込んで来た。私はそれを受け止めた。鞠莉が泣いてるように、私も目に涙を浮かべていた。
ごめんね鞠莉・・・そしてありがとう。私達の事を思ってくれてて。
2人で学校を出ると、ダイヤの妹のルビィちゃんが衣装をダイヤに渡していた。
「やるからにはとことんやりますわよ!」
まるであの頃のダイヤに戻っているようだった。
「よぉ~し!これでAqoursは9人だ!」
千歌は私達が増えた事を大きく喜んでいた。
でも、私達にはやっぱりアイツがいてくれなきゃ・・・。そこで、私は千歌に尋ねた。
「ねぇ千歌。私ね、1人スクールアイドルに誘いたい人がいるんだけどいい?」
「うん、もちろん!それで、果南ちゃんが誘いたい人ってどんな人?」
「それはね、皆が知っているアイツだよ」
私がアイツと呼ぶだけで、皆は納得をしていた。どうやら皆が想像している人はどうやら同じみたいだ。
ありがとうございました。
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