9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

29 / 69
こんにちは、黒雨です。
初めて評価のバーに色がつきました。
評価して下さった方々ありがとうございます!
それではどうぞ!


幼馴染のアルバム

「ふぁ~~、よく寝た」

 

 

寝袋から起き上がったが天井が近かったため、頭をぶつけた。不幸だわ・・・。本当なら皆と同じように床で寝れる筈だったんだけどな・・・。昨日、千歌の部屋に9人も寝れるスペースが無かったから皆でジャンケンした結果、私が負けた。これも不幸なのかしら・・・。

 

何処で寝ようか考えてたら、廊下で祐が寝る事になっていたから私もそこでいいと言ったら果南が祐の罰にならないからと言って却下された。そして皆で考えた結果、家から持って来ていた寝袋をロープで繋いで空中に浮く形で寝る事となった。

 

朝、寝袋から下を見下ろすと誰もいなかった。

 

 

「あれ?皆は・・・?」

 

 

辺りを見回すと、時計が目に入る。時間を見ると起床時間をとうに過ぎていた。

 

私は慌てて階段を降りると、Aqoursの皆は朝食を食べていた。

 

 

「あ、ようやく善子ちゃん起きてきた」

 

 

「善子さん寝坊ですわよ!」

 

 

「ヨハネよ!どうして起こしてくれなかったのよ!」

 

 

「マルは起こそうとしたよ。でも善子ちゃんが起きる気配が無かったずら」

 

 

「うっ・・・」

 

 

意表を突かれた私は朝食を食べることにしたが、食べながらあることに気づいた。

 

 

「あれ?・・・祐は?」

 

 

Aqoursの皆は揃っているが、祐の姿だけが見当たらなかった。

 

 

「そういえば、私が1番最初に廊下に出たけどその時から既に祐君はいなかったような・・・」

 

 

1番最初に起きたらしい千歌も見てないなんて・・・

 

 

「祐なら急に父さんの手伝いが入ったから今日だけ家に戻ったよ。いくら退院したといってもまだ病み上がりだからね」

 

 

と果南が答えてくれた。

 

 

「では、祐さんが戻って来るまでに新曲の準備に取り掛かりましょう」

 

 

ダイヤが今日の方針を決めた。午前中は昨日と同じく海の家を手伝って、午後からは新曲を作っていく事になった。

 

昨日よりはお客さんが入るようになったけど、未だに私が作った堕天使の涙と鞠莉のシャイ煮が売れ残っていた。どうして売れないのかしら・・・

 

 

「は~~~」

 

 

あまりの売れなさに私と鞠莉はため息をつかずにはいられなかった。今日の夜も同じ物になりそう・・・。

 

午後からの練習が始まるまでの間、皆は千歌の部屋で休憩していた。私は千歌の机の上に置いてあるお茶を手に取ると、1冊の本が目に入った。何の本か千歌に聞いてみた。

 

 

「これって何の本なの?」

 

 

「それはね、私と曜ちゃんと果南ちゃんと祐君のアルバムだよ。小さい頃はよく遊んでいたから写真がたくさんあるんだ」

 

 

祐の幼少期・・・見てみたいかも。

 

 

「へぇ・・・ちょっと見ていい?」

 

 

「うん!いいよ!」

 

 

「マルも見たいずら~」

 

 

「ルビィも!」

 

 

ずら丸やルビィに続いて次第に皆が集まってきた。

 

 

「うわぁ~懐かしいね」

 

 

「千歌ちゃん達はこの頃から全く変わってないわね」

 

 

「wow!very cute!」

 

 

皆がそれぞれの意見を言うなか、私は写真を見ていてある事に気づいた。

 

 

「・・・ねぇ千歌。このアルバムには祐の子供の頃の写真は無いの?」

 

 

私は千歌に尋ねた。確かに祐の写真はあったが、どれも小学生以降の写真ばかりで、それ以前の写真は3人が写ってる物だけで祐の写ってる物は1枚も無かった。

 

 

「え・・・?」

 

 

千歌は気づいてないようだったから、見せるとようやく気づいていた。

 

 

「そういえば千歌ちゃん。私達っていつから祐君と遊ぶようになったんだっけ?」

 

 

「えっと確か・・・」

 

 

曜が千歌に聞いていた事から何だかおかしくなり始めた。何で二人とも祐の幼馴染なのに知らないのよ・・・

 

 

「・・・果南さん。聞きたい事があるのですが」

 

 

ダイヤは皆が盛り上がってた時に1度も言葉を発さなかった果南に尋ねた。

 

 

「今日は何日か分かっていますか?」

 

 

「え・・・24日だけど」

 

 

「私は常に疑問に思っている事がありました。祐さんは平日の24日は朝の生徒会には必ず来ていません。理由は家の手伝いと言っていました。ですが、休日もそうだとしたら何故祐さんだけなのですか?何時もなら果南さんも一緒に手伝っているではありませんか」

 

 

ダイヤの問いに果南は無言のままだった。

 

 

「あともう一つは善子さんが指摘したので気づきました。祐さんの幼い頃の写真は私や鞠莉さんも見た事がありません。以前、果南さんの家に行った時に飾ってあった写真を思い出しましたが家族の集合写真にも祐さんは写っていませんでした。これらの事から私が言いたい事は・・・」

 

 

「ダイヤ。それ以上は言っては駄目よ」

 

 

ダイヤの言葉を鞠莉が止めた。

 

すると果南、携帯を少し触った後、口を開いた。

 

 

「いいよ鞠莉。ダイヤの想像している通りだから」

 

 

「果南ちゃん・・・」

 

 

幼馴染の千歌と曜も果南に心配の声をかける。

 

果南は少しためらう仕草をしたが話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐は私の弟じゃない。私と祐は血の繋がった姉弟じゃないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に皆は沈黙を通した。

 

 

「どういう事よ・・・弟じゃないって・・・意味がわからないわよ・・・じゃあ祐は誰なのよ!」

 

 

私は思わず果南に声を荒らげた。

 

 

「・・・ダイヤ、今日の練習は無しでいい?皆に今から話す事があるから」

 

 

「・・・えぇ。構いませんわ」

 

 

ダイヤの了承を得た果南は話し始めた。

 

 

「7年前、あの日は荒れた海がようやく落ち着いた朝だったよ・・・」

 

 




ありがとうございます。
次回からは過去の話になります。
評価、コメント、誤字などがありましたらお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。