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~そして現在~
祐の現状を知った果南は旅館を飛び出して病院へ走っていった。私達も果南の後を追いかけるようにして病院へ向かった。
病院に着くと、医師に案内されて祐の病室にたどり着いた。部屋に入ると、1つのベットに寝転がっている祐の姿があった。
「祐!」
果南はすぐさまに祐の元へ駆け寄って体を揺すったが、祐の目は1度も開かなかった。そこへ医師が部屋に入ってきて現状を教えてくれた。
「彼は現在、昏睡状態にあります。急に倒れたのは、今まで失ってたはずの記憶が急な勢いで彼の脳に入っていったため、彼の脳がそれに対応しきれずに意識を失ってしまったのでしょう。その間も彼の脳に記憶が入っていくため、彼が意識を取り戻すのは全ての記憶を思い出してからだと思われます。ただし、それは何時になるのかは分かりません。何せ、産まれてからと考えると10年分の記憶が1日で彼の脳に入っていったため」
「そんな・・・祐・・・」
医師がそう告げた後、果南はその場にしゃがみこんでしまった。その時、私はある事に引っかかった。
「あの・・・どうして祐は急に記憶を取り戻すようになったのですか?」
私がそれを聞くと、医師は答えた。
「実は彼の姉と名乗る方が病院に通報して下さって彼を病院に運ぶ事が出来ました。ただ、彼自身はそれを覚えてないため確認する事が出来ないため血液検査をした結果、見事に一致しました」
それを聞いた果南は顔が真っ青になっていった。まさか本当に祐の姉がいたというの・・・。しかしそれ以上に、祐の事を考えると急に苦しくなるこの胸の感覚は一体何なのよ・・・。
そう考えていたら、病室のドアが開き、1人の女の人が入って来た。背中まで伸びてる藍色の髪に黄金色の目、遠目から見たら祐と瓜二つのような顔をしている。まさかこの人が祐の本当の姉・・・。
「お、お姉ちゃん。あの人って・・・」
「お、落ち着きなさいルビィ。私達の目が狂ってなければあの人は・・・」
ダイヤとルビィがこんなにも慌てているってことはやっぱりこの人はあの・・・
「・・・初めまして。園田海未と申します」
海未さんはそう言って頭を下げた。それを聞いた私達は呆然としていた。まさかあのμ'sのメンバーとこんな形で会うなんて誰が予想していたのか。
「・・・本当に祐のお姉さんなんですか?」
果南は立ち上がって睨みつけるようにして海未さんを見つめた。
「はい、松浦祐。いえ、彼の本当の名前は園田青夜で私の弟にあたります」
「園田・・・青夜・・・!」
梨子が急に顔を青ざめた。
「梨子ちゃん?」
千歌が心配そうに声をかける。
「うん、大丈夫だから。実はね、私は園田青夜君の事を知っているの」
「え?」
皆が一斉に梨子に顔を向けた。
「私と青夜君は同じ小学校の同じクラスだったの。でもある日、学校で彼の訃報が告げられた。だから彼はもうこの世にはいないはずじゃ・・・」
「えぇ、私も初めはそう思っていました」
海未さんが話に割って入った。
「でも、青夜はこうしてここにいます。弟と私が持ってたペンダントがそれを証明してくれました」
海未さんはそう言ってペンダントを私達に見せた。確かに2人が一緒に写っていた。しかも、千歌達のアルバムには無かった祐の幼い頃の写真だ。
「・・・確かにこれは受け入れざるをえませんわ」
ダイヤが諦めるように呟いた。
「では、私はこれで失礼します」
海未さんが帰ろうとした時、
「待ってください!祐をどうするつもりですか!?」
果南はそう海未さんに問いただした。
「私は青夜が園田家に戻って来て欲しいのが本望ですが、彼の意思に全てを任せるつもりでいます」
海未さんはそう答えて病室を去った。
いなくなった後の病室に無言の時間が訪れた。
「・・・悪いけど、皆は先に帰ってくれない?今は二人きりにさせて欲しいの」
果南が静かに口を開けた。皆は心情を理解したのか、次々と病室から出ていった。でも、私だけは病室を出ようとしなかった。今外へ出たら、祐が離れていくような気がしてさっきよりも苦しくなっていった。
「善子ちゃん?まだ帰らないの?」
「ヨハネよ」
私はそう返答して眠っている祐へ近づいてその手を握った。ずっと眠っていたのか、少し冷たかった。
「リトルデーモンの心配をするのはヨハネとして・・・当然の・・・事でしょ・・・」
いつの間にか私の話してる言葉が途切れ途切れなっていて、握っている私の手を見たら水滴が目元から流れ落ちている事に気づいた。そっか・・・私は今泣いているんだ。祐への愛しさが涙となって落ちてきたのかしら。そしてこの感情。そうか、私は祐の事が・・・。
「ねぇ、もしかして善子ちゃんは祐の事・・・」
果南が何かを察したかのように私に尋ねてきた。この状況ではもう隠す事は出来ない。今の私のこの気持ちを。
「・・・えぇそうよ!私は祐の事が好きなの!初めて会ってから私がどれだけ堕天使になって周りが離れていっても祐だけは離れずに受け入れてくれた。私はそれが嬉しかった。だから私にとって祐は友達以上に大切な人なのよ!」
私は涙を流しながらも自分の思いを果南に言い放った。
「でも祐がこのままだと何処かへ離れてしまうような気がしてとても怖いの・・・。だから離れたくないのよ・・・」
すると、果南は静かに私を抱き寄せた。
「ありがとう。祐への思いを私に言ってくれて。大丈夫。私がいるからもう怖くないよ。きっと祐は戻ってくる。祐が私達を置いていくはずない。だって祐は私達Aqoursの大切な仲間なんだから。だから私達はそれを信じよう。ね?」
果南の言葉に私は果南の胸に顔をうずめて泣いていた。それから果南は私が泣き止むまで頭を撫でながら抱きしめてくれていた。その後の事はあまり覚えてなく、どうやらそのまま眠ってしまって果南と一緒に祐の病室で眠ってしまったらしい。
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