「Thank you Friends」を聞いていると、もう卒業式のような気分になっています。
それではどうぞ!
「う~ん・・・、ここは・・・」
目が覚めた僕の視界に広がっていた景色は先の見えない暗闇だった。起き上がって歩き出しても、まるで進んでいるような気が全くしない。どうしてこうなったのか、僕は立ち止まって少し前の事を思い出す。
「確か、慰霊碑の前にいた海未さんにペンダントを見せたら・・・見せたら・・・あれ?何故だろう、この先の事があやふやだ・・・最後に海未さんが僕に向かって誰かの名前を呼んでたような気が・・・」
すると、暗闇が消えていき、その中から景色が広がってきた。
「ここは・・・病室?」
僕はいつの間にかとある病室の中に立っていた。そこには赤子の出産を立ち寄っている家族の姿があった。その母親の両手には、産まれたばかりの赤子が抱えられていた。どうやら無事に産まれたらしい。父親は泣いて喜び、一緒にいた女の子は興味深そうに赤子を見ていた。
「今日から貴方はお姉さんで、この子は貴方の弟になるのですよ。海未さん」
「本当ですか!?では私は早く家に戻って一緒に遊びたいです。それでお母様。この子はなんて言う名前にするのですか?」
すると母親は、少し考えるため景色を見ていた。僕も外を見たら、真夜中の筈なのに青い空が広がっていて、雪が降っていた。
「・・・そういえば今日はクリスマスイブでしたね」
窓の景色を見て母親は呟いた。
「きっとこの子はサンタさんから私達家族へのプレゼントなのかも知れません。そしてこの青い空・・・決めました。この子の名前」
そう言うと、海未さんと父親は母親の方を向いた。
「この子の名前は・・・せいや。聖なる夜ではなく、青い夜と書いて青夜にしましょう」
そう決めた母親は赤子に呼びかける。
「今日から貴方の名前は園田青夜。私達が貴方の家族ですよ」
名前を呼ばれた赤子は小さく笑っていた。
その名前が聞こえた時、僕は自分の中のあやふやがようやく解決した。
「そうだ・・・!思い出した!確かあの時、僕が海未さんに自分の記憶喪失の事を話してペンダントを見せた途端に海未さんが動揺して、その中に映ってあった幼い頃の僕と海未さんの写真を見て海未さんが僕を園田青夜と呼んだんだ・・・!」
問題が解決したところで、辺りが変わり、さっきと違う景色に変わっていた。そこは寝泊まりするような個室、窓から見える景色は海が広がっていた。
「もしかして・・・ここは船の船内?」
船と考えて僕は例の事故が頭をよぎった。そうなる事をまだ知らないこの部屋では誕生日を祝う声が聞こえた。
「青夜、10歳の誕生日おめでとう!」
父親と母親と海未さんが祝ってくれていた。
「青夜に私からのプレゼントです」
そう言って海未さんは水色のペンダントを渡した。
「そのペンダントはですね、私が持ってる物と色違いの物なのですよ。中身は私と青夜が初めて2人で撮った写真が入っています。これで私達がたとえ離れてもこのペンダントで繋がっていられますね」
「ありがとう、海未姉ちゃん!」
青夜は喜んですぐにペンダントを首から下げていた。そして誕生日会が終わり、父親と母親が部屋を出ていき、海未さんもお手洗いに出ていって数分が経過した瞬間に悲劇が起きる。
突然に船体が傾き、青夜の方へ荷物が押し寄せて身動きが取れなくなっていた。
「これは・・・僕が見ていた夢・・・!」
どうやら海未さんは本当にあの事故の生還者だったんだと確認する事が出来た。それはともかく、僕が見た夢の通りならこの後・・・、
「青夜!無事ですか!?今、船が沈もうとしていますので急いで避難しますよ!」
お手洗いから戻って来た海未さんが必死に呼びかける。だが、青夜は押し寄せてきた荷物に頭を打ち、気絶していた。
「待っててください!今助けますから!」
海未さんは必死に荷物をどかそうとするが、荷物が重なっていて、動かせなかった。
「海未姉ちゃん・・・助けを呼んだ方がいい・・・僕は足を怪我してしまったみたいで動けないんだ・・・たとえここから出れても、海未姉ちゃんの足でまといになるだけだから」
青夜は逃げるように言うが、
「貴方を置いて逃げるわけにはいきません!」
海未さんはそれを拒否して荷物をどかそうとする。
「お願い・・・海未姉ちゃんの力じゃこれらはビクともしない・・・だから助けを呼んで・・・このままだと海未姉ちゃんも道ずれになってしまう・・・僕はまだ大丈夫だから・・・」
「青夜・・・分かりました。必ず助けを連れて戻って来ますから、どうか無事でいて下さいね」
青夜のお願いに海未さんが折れて、助けを呼びに部屋を出た。しかしその数十分後、船が沈んでしまった。海未さんは助けを求めたが、救助する人が聞く耳を持たずに海未さんを担いで救助船に乗せられた。そして、救助船内では、
「青夜・・・ごめんなさい・・・私のせいで・・・」
海未さんはその場にしゃがみこんで泣き崩れてしまった。
だが、海未さんの知らないところで青夜は助かっていた。浸水する事で荷物が浮き上がり、何とか身動きが取れるようになり、海上へ顔を出す事が出来た。そして近くの瓦礫に掴まり、海を漂っていった。
それを見た僕には1つの結論が出た。もしかして青夜が海を漂い、流れ着いたのが淡島だったら・・・
「僕は姉さんに助けられる前までの記憶が無い。そしてさっきまで見た場所・・・その場所で決まった名前・・・何故僕がそれを見ることが出来たのか・・・それは当時そこにいたからだ。その場にいたのは父さん・・・母さん・・・海未さん、違う、海未姉・・・そして僕・・・ようやく思い出したよ」
そして暗闇の中、僕は自分の名前を呼ぶ。
「僕の名前は・・・園田青夜だ」
ありがとうございました。
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