9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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こんばんは、黒雨です。
新学期が始まると、なかなか小説を書く時間が確保出来ないので大変です・・・。
それではどうぞ!


いざ、東京へ

予選が終わった次の日、私達は松月の前で予選結果の発表を待っていた。皆が携帯を睨んでいるなか、私はこういった待つ事が苦手だから、ずっと走り出したくて仕方がなかった。そして我慢の限界が来て、

 

 

「ちょっと走ってくる!」

 

 

と言い残して私が走り出そうとすると、

 

 

「結果を早く知らなくてもいいの~?」

 

 

千歌が私を呼び止めた。確かに早く結果が知りたい。でも、まだ待たなければならない。どっちを取るか、私は渋々と待つ事にした。

 

すると、携帯を見ていた曜から、

 

 

「結果が来たよ!」

 

 

と声がかかったので、私達は曜の元に集まった。

 

結果は・・・なんと、予選を突破したチームにAqoursの名前が入っていた。

 

 

「あぁ~!やったよ皆!予選突破だよ!」

 

 

店の前だということを忘れてるかのように千歌が大声をあげた。周りも喜んでいるなか、私は急いで走り出した。

 

 

 

「果南ちゃんどこへ行くの!?」

 

 

曜が聞いてきた問いに私は答える。

 

 

「病院!祐にもこの事を教えてあげたいから!」

 

 

私は全速力で病院に走っていった。皆も遅れながらも私を追いかけてきた。

 

 

そして病院に着いた私は受付で祐に面会をしに来た事を伝えると、

 

 

「松浦祐さん?つい先程退院して病院を出ていかれましたよ」

 

 

「え・・・?」

 

 

この人は何を言っているんだと私が思っていると、祐の担当医が私に気づいて近づいてきた。

 

 

「祐がもう退院したってどういう事ですか?」

 

 

私がそう聞くと医師は、

 

 

「実は、私達も貴方に彼の退院を伝えようとしたのですが、彼がそれを断ってきたのです。そして彼は出ていく際に置き手紙みを置いて行きました。もし、姉さんが来た時はそれを渡して欲しいって」

 

 

と答えて、ポケットから手紙を取り出して私に渡してきた。

 

私は恐る恐るその手紙を開けた。

 

 

「姉さんへ。数日の間、園田家へ向かうために家を空けます。自分の生き方を証明するために。PS、ラブライブ予選突破おめでとう!」

 

 

手紙を読んだ私は少しの間、その場で硬直していた。私達が予選突破していた事を祐が祝福してくれたから本来なら嬉しい筈なのにその本人がいないだけでこんなにも嬉しい気持ちが沈んでいくなんて。私は止まってた足を出口へ進めて行った。

 

出口には後から追いかけてきた皆が待っていた。私は事の事情を皆に話した。すると突然千歌が、

 

 

「だったら今すぐ追いかけよう!」

 

 

と急に決断したかのように答えた。それに皆も賛同するかのように納得していた。

 

 

「千歌、何言ってるの?祐は東京に行っているんだよ。それに、園田家が何処にあるのか分かるの?」

 

 

「大丈夫!梨子ちゃんなら知ってるかも知れないし。それに私も東京で知りたい事があるから」

 

 

さっきまで大声で話していた千歌が急に声を小さくした。どうやら、ようやく病室前だという事が気づいたみたい。

 

 

「私達の学校、浦の星は今廃校の危機でしょ。でもμ'sは音ノ木坂をこの時期にはもう廃校を阻止したらしいんだよ。だから私達と何が違うんだろうと思って。それが知りたいから東京へ行きたいの。そこなら何か分かるんじゃないかな~と思って」

 

 

「千歌・・・」

 

 

あの子供のような千歌がこの時だけは大人のように見えた。千歌が前を向いているのに私が落ち込んでいては駄目だ。そう感じた私は皆と一緒に東京へ行く事に決めた。

 

 

~~~~~

 

 

電車に揺られて数時間、僕は自分の生まれた場所、東京に来ていた。ここには何年も来ていないせいか、辺りの建物が変わり果てていて、僕が居た頃とは大きく変わっていた。危うく道まで変わっていたら本当に迷ってしまいそうだ。

 

僕は思い出した記憶を辿って東京を歩いていき、そして見つけた。記憶を失う前までずっと住んでいた自分の家に。中に入ろうとしたが、7年間も顔を見せた事が無かったので、自分の家なのにインターホンを鳴らした。すると入り口の戸が開き、中から海未姉と似た女性が出てきた。

 

 

「どちら様ですか・・・?」

 

 

女性は僕の顔を見て首を傾げていた。

 

 

「久しぶりだね。母さん」

 

 

僕がそう言ったら、

 

 

「・・・まさか青夜さんですか!?」

 

 

「そうだよ。海未姉から何も聞いていないの?」

 

 

「はい。あの娘ったら青夜を見つけたと言っていただけで、それ以外は何も・・・」

 

 

「昔から海未姉は自分の事は自分だけで解決しようとしていたからね。それで海未姉は何処に?」

 

 

「海未さんなら今の時間は道場にいらっしゃいますよ。見に行かれますか?」

 

 

「うん、そうするよ」

 

 

そう言って僕は荷物を置いて隣の道場へ歩いていった。

 

道場に到着して、中に入ると、海未姉が真剣な眼差しで遠くの的を見つめていた。そういえば、海未姉は昔から弓道を習っていて、全国大会にも出場する程の腕前だったな。あれから何年も経ったのにまだ続けていたんだ。そして海未姉は弓を構え、瞬きもせずに的を見つめてその矢を放った。放たれた矢は遠くの的の中心を確実に射抜いていた。僕はそれを見て、海未姉に拍手を送った。

 

 

「青夜!?帰って来ていたのですか!?」

 

 

「うん、さっきね。それにしても、まだ弓道を続けていたんだね。凄かったよ、さっきの一矢」

 

 

「ありがとうございます。弓を構えている時は心が落ち着きますからね。貴方がここに戻って来たという事は・・・」

 

 

「その答えは明日伝えるよ。早く戻って来たのは、決める前に家族の顔を見ようと思ってね」

 

 

「・・・そうですか」

 

 

「後は父さんだけなんだけど何処にいるか知らない?」

 

 

「・・・お父様なら裏庭にいらっしゃいますよ。案内します」

 

 

そう言われて、僕は海未姉の後をついて行った。しかし気の所為だろうか。海未姉の顔がさっきと違って何処と無く沈んでいたような感じがした。




ありがとうございます。
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