別の作品も始めようかと考えていて本作品と両立が出来るかと不安になっています・・・。
神社を後にした僕は希さんが言っていた事の意味を考えながら帰路に向かって歩いていた。その間も言われた言葉が頭をよぎっていた。
「それを聴けば君の悩みも解決するかも知れへんし。当時の海未ちゃんの思いも分かるかもやから」
あの言葉は一体どういう意味なのだろう・・・。僕は希さんがくれたCDに目を向けた。
「海未姉のソロ曲・・・か。これを聴けば分かるのかな。でも僕の悩みだけでなく海未姉の思いも?」
僕は歩いていた足を早めて家に帰ろうとしたが、ふと思いついた疑問で足が止まった。
「待てよ。もし家で聴いてたら、海未姉にバレて最後まで曲が聴けないような気がする・・・。歌詞を書いたのは海未姉。すなわち、これは海未姉の詩という事だから、絶対に止められるな・・・。昔から海未姉は恥ずかしがり屋だから」
そう思った僕は、帰る足を別の方向に向けて歩き出す。まだ海未姉の過去をもっと知る必要があると判断し、ある場所へ向かった。海未姉の事を誰よりも知る人の元へ。
着いたのは、和菓子屋(穂むら)。ここならば海未姉が作ったソロ曲も聴けるし、希さんが言ってた事の意味も分かりそうだ。僕は入り口の戸を開けて中に入った。中に入ると店員さんはいなく、僕一人の状態だった。
「ごめんくださ~い」
と声をかけると奥から声が聞こえた。
「すいませ~ん!今行きま~す!」
やがて声が大きくなり店員さんが慌てて出てきた。
「いらっしゃいませ!和菓子屋(穂むら)へ・・・あれ?」
店員さんは僕の姿を見て固まっていた。橙色の長髪、さっきまでの慌てよう、この人は昔とまるで変わっていなかった。
「青君・・・?やっぱり青君だよね!?私の事覚えてる!?」
そして、一目見ただけで僕と海未姉を見分ける事が出来る海未姉の幼馴染。
「もちろんだよ。穂乃果ちゃん」
僕が名前を言うと、穂乃果ちゃんは急に飛びついてきた。
「よかったよ~!海未ちゃんから記憶喪失って聞いてたからもしかして穂乃果やことりちゃんの事を忘れてるんじゃないかって心配したんだから~!」
「色々心配かけてごめんね。それにしても、見た目は昔と変わってるのによく僕を海未姉と間違えなかったね」
「もちろん!2人を見分けられるのは穂乃果とことりちゃんだけなんだから!」
穂乃果ちゃんは胸を張って答えた。
「折角だから家に上がっていってよ!ちょうどことりちゃんも家に来てるから!」
と言って僕の腕を引っ張り、店から出て裏にある穂乃果ちゃんの家に連れ込まれる形でお邪魔する事になった。
「ことりちゃん!青君が遊びに来たよ!」
襖を開けた先にはもう1人の幼馴染が座っていた。
「もしかして青君?久しぶり~!」
やはりことりちゃんも僕の事を間違えなかった。
「2人は一体どうやって僕と海未姉を見分けているの?」
僕はふと思った疑問を投げかけてみた。2人の答えは、
(海未ちゃんはロングヘアで青君がショートヘア)
と口を揃えて答えた。もっと2人だけが知ってる違いとか秘密を言うのかと期待していたのだが、意外と普通だった。今度会った時はカツラでも被って会いに行こうかと思った。
「ところで青君は今日、どんな用事で来たの?海未ちゃんのお土産?」
「実は海未姉の事でね・・・」
そして事情を話した。
「うん、だいたい事情はわかったよ。海未ちゃんのソロ曲の内容の意味が知りたいんだね」
「うん、そうなんだ」
「それにしても、やっぱり希ちゃんは凄いね~。初めて会った青君の事まで知ってたなんて。それも最近の事まで」
「占いの凄さを実感したよ・・・」
「まずは海未ちゃんの曲を聴いてみようか。それで青君の感想を聞かせてよ」
そう言って穂乃果ちゃんは部屋からPCを下ろしてきて、僕が貰ってきたCDを入れた。PCの画面には曲の題名に(私たちは未来の花)と出ていた。
曲調は和風のような音に、海未姉にしては意外なロックが混ざっていた。そして歌詞、確かに希さんの言っていた通り、題名に(私たち)と入っていたからか、至るところに(私たち)という言葉が流れていた。この曲から想像するのは、お互いが別々の道を歩んで離れていっても、未来では互いが成長して新しい自分に会えるというような景色が浮かんだ。
「にしても、海未姉の言ってる君って一体誰のことだろう?」
「え~!もしかして青君気づいてないの!?それはね・・・」
穂乃果ちゃんが続きを言おうとしたが、ことりちゃんに口を塞がれて聞こえなかった。
「ごめんね青君。ここからは青君だけで解いてほしいな。ここまできたら海未ちゃんはきっと答えを教えてくれるから」
「そっか・・・後は自分で何とかしてみるよ。今日はありがとう」
そう言って僕は居間を出て帰ろうとしたら、
「待って青君!」
穂乃果ちゃんに呼び止められた。
「これだけは知っておいて欲しくて。海未ちゃんは昔、青君がいなくなってからずっと不思議な夢を見るようになったらしいの。きっと海未ちゃんはその夢からこの曲を作ったと穂乃果は思うよ」
不思議な夢・・・僕が見ていたように海未姉も見ていたのか。
「教えてくれてありがとう、穂乃果ちゃん」
最後に言い残して僕は家へ向かった。僕が見ていた夢はあの事故で離れ離れになった姉弟とその後の姉。じゃあ海未姉は一体・・・。
一方、そんな考え事をしてる彼の近くでは・・・
「ねぇ、あれ祐君じゃない!?」
「まさか本当に見つかるなんて・・・」
「でも、これからどうするんですの?」
「もちろん、祐が選んだ答えを知るために海未さんの家に行く」
ありがとうございます。
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