9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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こんばんは、黒雨です。
1週間ギリギリの投稿となりました。
もしかしたら週1投稿が難しくなるかも知れないです。
それではどうぞ!


僕のこれから

東京から走らせた電車は沼津に到着した。皆がそれぞれの家へ帰っていくなか、僕も帰ろうと姉さんの後をついて行こうとすると、

 

 

「待たれよ、リトルデーモン0号」

 

 

ヨハネ口調の善子ちゃんに呼び止められた。

 

 

「お前に少し話がある」

 

 

「僕に?」

 

 

聞き返すと善子ちゃんは辺りを見回し、誰もいないことを確認していた。

 

 

「いったいどうしたの?」

 

 

「ちょっと祐に聞きたい事があるの」

 

 

「聞きたい事?」

 

 

「そうよ。祐ってさ・・・その・・・す、好きな人とかいないの//?」

 

 

善子ちゃんは落ち着きがないまま僕に聞いてきた。

 

 

「好きな人?」

 

 

僕が聞き返すと善子ちゃんは小さく頷いた。

 

 

「好きな人か~。姉さんや海未姉、皆の事は好きだよ」

 

 

そう答えると善子ちゃんは頭を抱えていた。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「えぇ、大丈夫よ。じゃあ私の事は?」

 

 

「善子ちゃんの事?もちろん好きだよ」

 

 

すると善子ちゃんの顔が急に沸騰したかのように赤くなっていた。

 

 

「善子ちゃん本当に大丈夫!?」

 

 

「大丈夫だから!本当に大丈夫だから!」

 

 

善子ちゃんはそう言っているがどう見ても大丈夫に見えない。

 

 

「善子ちゃん、ちょっとの間じっとしてて」

 

 

「え?」

 

 

困惑してる善子ちゃんの額に僕は手を当てた。

 

 

「う~ん、熱は無いみたいだけど・・・」

 

 

それでも善子ちゃんの顔は赤くなっていき、遂には善子ちゃんが僕を前へ押した。

 

 

「この鈍感野郎~~~!!」

 

 

と最後に大声で叫びながら走り去って行った。

 

 

「え・・・?」

 

 

突然の事に僕はその場に数分間止まっていた。

 

 

「何が気に障ったんだろう・・・?」

 

 

理由も分からないまま僕は淡島への帰路に戻った。帰る頃には夕日も完全に沈み、夜となっていた。

 

船を降りて桟橋に着くと、先に家に帰っていた姉さんが待っていた。

 

 

「おかえり、祐。随分と遅かったね」

 

 

「ただいま、姉さん。ちょっと色々あってね・・・。姉さんこそ、こんな時間に外でなにをしてるの?」

 

 

「私はちょうど星を見てたところ。今日はよく晴れてからね、綺麗に見えるよ。だから一緒に見よう」

 

 

そう言って姉さんも僕の手を引っ張った。僕は今日で2回も人に引っ張られる事になった。

 

星空の下、僕と姉さんはテラスに仰向けの状態で上を見上げていた。姉さんの言っていた通り、真っ暗な地上とは違って上空は幾つもの星々で輝いていた。もしかしたら流れ星も見えるんじゃないかと思った。

 

 

「・・・なんだか色々あった夏休みだったね」

 

 

姉さんがふと呟いた。

 

 

「どうしたの?まだ夏休みの中盤だというのに」

 

 

「だって、私がもう一度スクールアイドルを始めるなんて思いもしなかったし、それに祐が記憶を思い出したら海未さんの弟だったり・・・」

 

 

「次はラブライブの地区予選決勝もあるよ」

 

 

「これじゃ夏休み後半も色々ありそうだね」

 

 

僕達は他愛もない話をして微笑んでいた。

 

 

「ねぇ・・・祐は本当に良かったの?海未さんの所に戻らなくて」

 

 

姉さんが急に話題を変えた。

 

 

「・・・うん、姉さんも聞いていたでしょ?これが僕の選んだ答えだって。僕はAqoursの皆を最後まで手助けをしていくつもりだよ。姉さん達の輝きを見てみたいんだ」

 

 

「そっか・・・ありがとう。でも待って。最後までって事は・・・!」

 

 

姉さんが何かに気づき、急に起き上がる。どうやら姉さんは気づいたようだ。

 

 

「・・・姉さんの思ってる通りだよ。姉さん達3年生が卒業する時に、僕も海未姉の所に戻るから」

 

 

僕の言葉を聞いて、姉さんは大きく驚くかと思ったが、まるで分かっていたかのように落ち着いていた。

 

 

「そう・・・だよね。記憶が戻ったんだから元の家に帰るのがあたりまえか・・・」

 

「・・・うん、姉さん達が失った時間を取り戻したように、僕も海未姉と離れた7年の時間を少しでも取り戻したいんだ」

 

 

「そっか・・・」

 

 

「ごめんね・・・せっかく星を見ていたのに僕の話で重くして」

 

 

「ううん、祐のせいじゃないよ。元は私が聞いたのが最初なんだから。それにまだ星空は見れるよ。ほら!流れ星!」

 

 

姉さんが指を指した方向に僕も目を向けると、一瞬だけだが流れ星が流れていた。

 

 

「あ〜あ・・・願い事を言おうとしてたのに」

 

 

「どんなお願いをするつもりだったの?」

 

 

「もちろん、ラブライブ優勝だよ。祐は何?」

 

 

「僕も同じだよ。東京の神社でもお願いしたけどね」

 

 

「じゃあ優勝は確実だね」

 

 

「まだ分からないよ」

 

 

「あはは、そうだね。じゃあもうそろそろ寝ようか」

 

 

「うん、おやすみ姉さん」

 

 

「おやすみ祐。私は天体望遠鏡とか片付けなきゃいけないからまた明日」

 

 

僕は姉さんと別れて自分の部屋に戻っていった。そして僕は部屋にある写真を飾った。それは記憶が戻って初めて撮った海未姉とのツーショット写真。僕達姉弟の時間が再び動き始めた印だ。きっと海未姉もこの写真を飾ってくれてるだろう。僕はそう思いつつ寝床についた。

 

 

~~~~~

 

一方、

 

 

「果南から聞いていたけど、祐があんなに鈍感だったなんて・・・。あれじゃ祐に告白しても本人が気づかないじゃない。どうしよう・・・」

 

 

恋する堕天使は鈍感な彼にどうすれば思いが届くのか悩んでいた。

 




ありがとうございました。
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