9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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こんにちは、黒雨です。
思いのほか、個人的に意外と早く次を投稿出来てやや満足していました。
それではどうぞ!


姉の思い悩み

次の日、僕は鞠莉さんに呼ばれて理事長室に来ていた。

 

 

「sorryユウ。急に呼び出したりして」

 

 

「大丈夫ですよ。僕も昨日姉さんが何を聞いたのか気になっていたので」

 

 

あの後、鞠莉さんの家から帰ってきた姉さんに内容を聞こうとしたら、

 

 

「ごめん聞かないで。私からは言えないから」

 

 

と返されてすぐに部屋へ戻っていた。その時の姉さんの顔は落ち込んでいるように見えた。今日の朝も姉さんは普段と同じように笑顔で僕と接していたが、その笑顔は作っているか引きつっているかのように見えた。

 

 

「果南には私から言ったの。これは私の口から言わないといけないから」

 

 

鞠莉さんは少しためらう仕草をしたが話を続ける。

 

 

「実は学校説明会が中止になったの」

 

 

その言葉に僕は驚きを隠さずにはいられなかった。なぜなら、

 

 

「中止…ということは浦の星は」

 

 

「えぇ。入学募集を取りやめて統廃合することになったの」

 

 

「打つ手はもうないのですか?」

 

 

「いいえ、私は諦めない。まだ覆せるかも知れないから」

 

 

「…この事を知っているのは僕と姉さんだけなのですか?」

 

 

「そうね。皆には今日から行く新しい練習場所で言うつもりにしている。ユウは生徒会で行けなかったはずだから先に伝えることにしてたの」

 

 

そうだった。今日は新しい練習場所に行く日と生徒会の仕事が重なってる日だったからダイヤさんの代わりに僕が引き受けてたんだった。

 

 

「それにこれは私の口から言わなきゃいけない事。だから果南に言わないでと伝えたの。だからユウもまだ皆には言わないで」

 

 

「わかりました。じゃあ僕はこれで」

 

 

「待って。最後に」

 

 

理事長室を出ようとしたら鞠莉さんが呼び止めた。

 

 

「帰ったら果南のそばにいてあげて。最近すごく思い悩んでいたから」

 

 

「最近?今回の事よりも前にですか?」

 

 

「いつからかは分からないけど、最近の果南はいつもよりずっと元気がないわ。ユウは何か心当たりとかないの?」

 

 

「僕は何も知らないけど。姉さん、一体どうしたんだろう…」

 

 

何か思い当たる節がないかを考えながら僕は理事長室を出て帰路についた。

 

夕日が沈む時刻、家についたときには既に姉さんは帰っていてテラスの椅子に座っていた。

 

 

「お帰り祐」

 

 

「うん、ただいま姉さん」

 

 

やはり姉さんの表情は朝と変わらない。

 

 

「新しい練習場所はどうだった?」

 

 

「いい場所だったよ。室内は広いし雨が降っても練習ができる。それに鏡もあったからダンス練習の時に自分の姿見ながら出来るのがよかったかな」

 

 

「…鞠莉さんから聞いたよ。統廃合のこと」

 

 

すぐさま本題に入ると姉さんの作っていた笑顔がなくなった。それは二年前のスクールアイドルを終わりにした時に自分を責めていた頃の表情だった。

 

 

「姉さん、今は統廃合のほかに何を悩んでいるの?」

 

 

姉さんはそれを聞くと椅子から離れて海を見て呟いた。

 

 

「…ごめんね祐。私のせいで」

 

 

「どういうこと?私のせいって」

 

 

「私が祐を巻き込んでしまったから。浦女の廃校問題に」

 

 

「まさか、それで自分を責めていたの?」

 

 

「だって!私が祐を浦女のテスト生に勧めなかったら祐は悩まなくても良かった!普通の高校生活だって出来た!全部私のせいなんだ…!あの時の鞠莉みたいに私が祐の将来の可能性を潰してしまってるから…」

 

 

その言葉を聞いて僕は思った。きっと姉さんは二年前の事と今回の事を照らし合わせたんだろう。また自分のせいで誰かの未来を変えてしまうのが怖かった。だからあの時と同じように自分を責めていたんだ。

 

 

「自分のせいだなんて言わないで。僕は浦の星に行ったらやりたい事が見つかると言ってくれた姉さんの言葉を信じてテスト生になったんだ。そしたら僕はやりたい事を見つけることができた。可能性を潰したんじゃない。寧ろ見つけてくれた。感謝だってしている。だからさ、姉さんはもっと前向きになっていいと思うよ。」

 

 

僕は姉さんの隣で伝えた。

 

 

「鞠莉にも言われた。前よりもネガティブになってるって。でも正直、自分に自信が持てないよ」

 

 

「大丈夫だよ。姉さんならきっと」

 

 

「本当に?」

 

 

「嘘なんてつかないよ」

 

 

「…わかった。祐が私を信じたように、私も祐を信じて努力してみるよ」

 

 

それを言っていた時、かすかだが姉さんに純粋な笑顔が戻ってきたように感じた。

 

 

「これで少しは肩の荷が楽になった?」

 

 

「うん、ちょっとだけね。ありがとう。やっぱり祐と一緒にいることが今の私の幸せかな。こうやって悩み事を打ち明けられて、それを真摯に向き合って聞いてくれる。私はそんな祐が」

 

 

「僕が?」

 

 

「弟でよかったってこと!」

 

 

「それは嬉しいな。さぁ、肌寒くなってきたし姉さんもそろそろ部屋に入ろ」

 

 

「うん」

 

 

こうして僕たちは部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

今日も言えなかった

 

 

だけど、どうしても伝えたい

 

 

七年前に貴方と病院で向き合った時からずっと思ってた

 

 

弟になった貴方と初めて家に帰ってきた時はこれからずっと一緒にいれると思っていた

 

 

でも、記憶が戻った貴方には帰る場所がある

 

 

だから貴方が帰るまでに伝えなきゃ

 

 

私の気持ちを

 

 

でも、きっと貴方は違う意味で受け取ってしまうでしょう

 

 

それでも構わない

 

 

だって私の他に貴方の事を好きな人が鈍感な貴方に気づいてもらおうと努力している

 

 

私はあの子の恋心に貴方が気づいて、二人で両想いになってほしいから

 

 

だから私は言えるだけでいい

 

 

家族としてでも、ましてや姉としてでもなく

 

 

私が伝えるのは一人の女の子としての貴方への恋心

 

 

「ずっと前から私は貴方の事が好きでした」と

 

 

これは千歌達にも、鞠莉やダイヤにも、そして善子ちゃんにも言えない

 

 

私だけの報われぬ恋




読んでいただきありがとうございました。
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