9人の少女と生き別れた姉弟   作:黒 雨

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あの娘の意外な一面

「入っていいずら」

 

 

花丸ちゃんに案内されて着いたお寺は、辺りの雰囲気か今の天候のせいなのか、少し寒気を感じた。

 

 

「えっ…ここですの…?」

 

 

「連絡したら、自由に使っていいって」

 

 

「イイの~?」

 

 

「室内を使わせてもらえるのはありがたいね。でも大丈夫なのかな…?」

 

 

僕はそう言って後ろを向き、ここに来てからずっと僕の背中に隠れて右腕を抱き締めるように持っている姉の姿を見る。姉さんは僕の肩に顔を乗せたり背中に顔を隠したりしながら目の前のお寺を見ていた。そして、僕と姉さんがなにかやり取りをしてる時に何故か周りからの視線を感じていた。

 

 

「お寺の方はどちらにいらっしゃるんですの?」

 

 

「ここに住んでる訳じゃないから…」

 

 

すると花丸ちゃんは持っていた懐中電灯の光を下から顔に当て、

 

 

「いないずら~」

 

 

「ひぃぃ!?」

 

 

よくある驚かす手法を使ったが、今の姉さんには十分すぎる効果だった。

 

 

「こんなに怖がっている果南ちゃん初めて見たずら」

 

 

「そうかしら?私たちはこういう場所で果南がユウにハグする姿はずっと見てたから」

 

 

「もはや見慣れた光景ですわね。それでは雨が止む間、ここで雨宿りしていくことにしましょう」

 

 

「えぇ!?」

 

 

「そうですね。折角お寺を貸してもらえたわけだし」

 

 

「祐も!?」

 

 

「フフフッ。暗黒の力を!リトルデーモンの力を!感じ…!」

 

 

「仏教ずら」

 

 

「…知ってるわよ!」

 

 

「OK!それじゃあLet's Go!」

 

 

鞠莉さんの号令に合わせて皆がお寺に入っていくなか、僕もついていこうとしたが、姉さんに腕を引っ張られた。

 

 

「ねぇ…。やっぱり帰ろう。それか他の場所にしようよ」

 

 

「それは無理だよ姉さん。他の場所に移動してたらそれこそ曲作りができる時間がなくなってしまうし」

 

 

「そうだけど……あっ!そ、そうだ!実は私、この後父さんからお店の仕事を頼まれてるんだった。だから帰らなくちゃ…!」

 

 

「今日は父さんから仕事は頼まれてないでしょ。それに、こんな雨だと淡島の船は出てないからすぐには帰れないよ」

 

 

「えっ!それじゃあ…!」

 

 

「姉さん…早くいくよ」

 

 

「往生際が悪いですわよ!さぁ早くいらっしゃい!」

 

 

「イーヤーだー!」

 

 

僕は姉さんの右手を、ダイヤさんは左手を持って嫌がる姉さんを引っ張る形でお寺に入っていった。引っ張ってる途中は姉さんの駄々をこねる声が雨音と同時に響いていた。

 

お寺の中は外の雨雲で暗く、唯一の光は仏壇を照らすろうそくの光だけだった。

 

 

「電気は?」

 

 

「無いずら」

 

 

「Really!?」

 

 

「どどどっどうする!?私はへ、平気だけど…」

 

 

こうは言っているが強がっているのがバレバレなので、姉さんの話しているときの声と態度が動揺を隠せてない状態だ。そして外から雷の音が聞こえると、姉さんはすぐさま近くの木柱にしがみついていた。

 

 

「…他にすることも無いし、曲作り?」

 

 

「そうですわね」

 

 

「でも、また喧嘩になっちゃったりしない?」

 

 

「きょ、曲が必要なのは確かなんだし、とにかくやれるだけやってみようよ!」

 

 

「それより姉さんは大丈夫?この後も雷は鳴ると思うし、流石にずっとそこ木柱にいるのは…」

 

 

「わ、私は大丈夫!雷が鳴っても平気だから!」

 

 

するとまた外で雷が鳴り響いた。その音が聞こえた姉さんは今いる木柱から速足で僕の方に向かってきた。

 

 

「ハグ~!」

 

 

そして姉さんが再び僕の右腕を抱きしめ、お寺の入り口にいた時と同じ態勢になっていた。それを見て最初は姉さんの意外な姿に少し驚きを見せていた1年生たちだったが、ここ短時間の間に同じ場面が何度もあったので今ではすっかり見慣れた光景となっていた。

 

 

「ねぇ。果南って昔から外で雷が鳴ってるとああいう状態になるの?」

 

 

「はい。最初の頃は私や鞠莉さんでしたが」

 

 

「そうね。でもユウと出会ってからはずっとベッタリね」

 

 

「ふ~ん…」

 

 

善子ちゃんは少し考える仕草をした後、何かを決断したかのような表情をして僕に近づき、

 

 

「…//」

 

 

何故か顔が赤面のまま僕の左腕を抱きしめた。それによって僕は右に姉さん、左は善子ちゃんの左右に腕を掴まれ挟まれている状態になった。

 

 

「善子ちゃん?急にどうしたの?」

 

 

「…実は、ヨハネも少し怖かったから(全然怖くないけど)…//」

 

 

「善子ちゃんも雷が?さっきまでは平気そうだったけどちょっと意外だね。でも何でまた僕の腕に?」

 

 

「えっ、それは…」

 

 

「それは?」

 

 

僕がふと思った疑問を善子ちゃんに聞くために顔を向けると、善子ちゃんは僕から目をそらしてまた考えるしぐさを始めた。気のせいか、善子ちゃんの赤面が更に赤くなっているように感じているとまた外で雷が鳴り響いた。すると、善子ちゃんが急に抱きしめていた僕の腕を振り払って、

 

 

「ヨ、ヨハネが空の落雷からリトルデーモンを守護するためよ!//」

 

 

「えっ…?」

 

 

と言って木柱の近くに移動していった。善子ちゃんのこれらの行動は一体何だったのか、僕の中では疑問でいっぱいになっていったのだった。その疑問から切り替えるべく、僕は持っていたカバンの中身を取り出した。

 

 

「まぁ、とりあえず鞠莉さんが言ってたように曲作り始める?一応ノートや筆記用具は持ってきたから」

 

 

「Oh!Thank youユウ!それじゃあ皆始めましょうか!」

 

 

鞠莉さんの一声で皆は止まっていた曲作りを再開することにした。

 

 

「(さては善子ちゃん。かなりのヘタレずらか…?)」

 

 

「(これはかなりHardになったわね…。鈍感なユウだけでも時間がかかるのに、善子がヘタレとなるとゴールが更に遠くなるわ…)」

 

 

 




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